ベートーヴェン弦楽四重奏曲、後期作品の皮切りとなった名作を収めた恍惚の世界!
活動期間は長くないながら、日本でも熱狂的な支持者を持ち、伝説のレーベルとしてカルト的な人気を誇る、アメリカのレコード・レーベル「Everest Records」の数あるライブラリーの中から、結成70年のキャリアを誇る弦楽グループ、ファイン・アーツ・カルテットの、1962年から63年にかけてレコーディングされたベートーヴェンカルテットの名盤がハイレゾにて復刻!
この弦楽四重奏曲第12番は、私生活のトラブル、またナポレオン失脚後の社会情勢の中でスランプに陥っていたベートーヴェンが、ロシアの貴族であるガリツィン公爵の依頼によって、14年ものブランクを破って最初に作曲したカルテット作品である。1822年に取り掛かり1825年に完成した。ピアノソナタや室内楽をすでに書き上げ、「第九交響曲」や「ミサ・ソレムニス」に取り掛かっていた頃にあたる。これ以降の作品を「後期」と分類する。
この作品の絶対的な魅力を確かにしている大きな要因のひとつが、第一楽章の出だしの主和音のヴォイシングである。最も単調かつ簡単であるはずトニックの三和音を、あえて7つの音を使って、相当のテクニックと集中力とチームワーク駆使しなければ奏でられないように考え抜いて配置している。奏者4人の互いの、絶妙な張力で保たれるバランスとその意外性が、聴く者を作品の世界観へと深く誘い込む力となっている。どこまでも美しく歌い交わされながら進む二楽章では、人生の苦難、葛藤を真に乗り越えた者の深みと穏やかさを感じ取ることができる。只々、その優美な流れに聞き惚れてしまいそうになるが、テーマが5回に渡り変奏される事をふまえて聴いてみると、楽しみがより広がる。巧みな気分転換を図るような第3楽章のスケルツォ。気持ちの良い自由さと軽やかなリズムが特徴的だが、要求される演奏技術は並大抵のものではない。そして、第4楽章でフィナーレを迎える。
この作品はベートーヴェンの、いわゆる「一般的な和音」の使い方が「ありきたり」であった試しがないという事を伺い知るには、最適の例であるといえる(ピアノコンチェルト第5番『皇帝』の冒頭と同じように)。
『皇帝』と共通して、変ホ長調はベートーヴェンの作品において、雄大さ、堂々たる勇ましさを特色づける調であるといわれる。それも、甘美さと繊細さに裏付けされた力強さである。演奏するファイン・アーツ・カルテットは、1946年にシカゴ交響曲の一員であった第1バイオリンのレナード・ソーキン氏と、チェロのジョージ・ソプキン氏が中心となって結成し、歴史上もっとも長く存続している弦楽四重奏団である。古典から近・現代に渡る幅広いレパートリーと、メンバーを入れ替えながらも、揺らぐことのない技術と独自の普遍的な音楽性で、現在もグローバルに活動を展開しながら高い評価を獲得している。充実したサウンドに身を預け、時を忘れて名演に没頭することができる一枚!
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【ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127/Fine Arts Quartet/ハイレゾ】