シンガー&ソングライター鈴木祥子の新譜を含む3タイトルがハイレゾで登場!

2022/06/11

このところ作品のリリースが相次いでいるシンガー&ソングライターの鈴木祥子さん。昨年はEP『GOD Can Crush Me.』とカバーアルバム『My Eternal Songs~BEARFOREST COVER BOOK vol.1』をアナログレコードやCDで発表。そして今年5月には最新シングル『鈴木祥子私的讃美歌集1.』がリリースされたばかり。これらのプロダクトには、ビクタースタジオのチーフエンジニアである中山佳敬さんとのコラボレーションが欠かせなかったと鈴木祥子さんは振り返ります。その曲作りや音作りはどのように行われたのでしょうか。制作の舞台となったビクタースタジオでお二人にお話を伺いました。

文・取材:山本 昇
写真:畔柳純子/中山佳敬/Eri/山本 昇
写真提供:BEARFOREST RECORDS/ビクタースタジオ









かつてのアルバムでアシスタントを務めたエンジニアとの出会い


 

――この度ハイレゾでリリースされる『鈴木祥子私的讃美歌集1.』、『GOD Can Crush Me.』、そして『My Eternal Songs~BEARFOREST COVER BOOK vol.1』という3つのタイトルは、いずれもビクタースタジオの302stをメインにレコーディングされたということですが、今日はその録音やミックスの詳細、聴きどころなどをお二人とご一緒に探っていきたいと思います。中山さんはこれらの作品に、エンジニアとしてはもちろん、プロデューサーとしてもアプローチされています。まずは、お二人の出会いについて教えてください。

鈴木:2018年に、フライングドッグのディレクターである福田正夫さんから、声優で歌手の安野希世乃さんのアルバムへ楽曲提供のご依頼をいただきました。その際、書き下ろした「かすかなかなしみ」を気に入ってくださった福田さんから、「この曲はビクタースタジオのトップエンジニアの中山さんに録ってほしい」というご連絡があり、どんな方なのかとても楽しみだったんです。リズム録りで初めてお会いし、そのミックスを401stで聴かせていただいたら、「なんて素敵な音なんだろう」とすごく感動しまして。ぜひ自分の作品でもご一緒したいと思っていたんです。その後、洋楽のカバーアルバムの制作がスタートしたときに、「これはもう中山さんにお願いするしかない」と考えました。こうして再会したのが、2019年の暮れのことでした。

ハイレゾでリリースされた直近3作について語ってくれた鈴木祥子さん



――安野希世乃さんへの提供曲「かすかなかなしみ」のミックスは、祥子さんにとってどんな感触の音だったのですか。

鈴木:私はドラマーでもあるものですから、ボーカルとスネアの音質は特に注意深く聴いてしまうのですが、中山さんのミックスは、ボーカルの透明感とスネアを中心としたドラムの力強さがとても素敵だったんです。

――なるほど。一方、中山さんは鈴木祥子さんというアーティストに対してどんな印象をお持ちだったのですか。

中山:僕はビクタースタジオにかれこれ30年ほどいるんですが、入って間もない頃に祥子さんのアルバム『RadioGenic』(1993年)でアシスタントを担当させていただきました。そこで初めて祥子さんの音楽に触れ、すごくいいなと感じてずっと聴いていたんです。その後、月日は流れて2018年に安野希世乃さんのアルバムで祥子さんの楽曲の録音があると聞いて、「これはやるしかない!」と、真っ先に手を挙げました(笑)。

名門ビクタースタジオでチーフエンジニアを務める中山佳敬さん




「愛と幻想の旅立ち」のニューミックスも収録~『鈴木祥子私的讃美歌集1.』


――では、作品ごとにお話を伺っていきたいと思います。まずは3タイトルの中で、最も新しい『鈴木祥子私的讃美歌集1.』(2022年5月21日発売)。このジャケットのオビには「神様への愛、あなたへの愛、そして音楽の神聖さを護るために。」とあります。2019年に祥子さんがクリスチャンになられたことが背景にあると思いますが、どのような経緯で制作を始めたのですか。


鈴木:まず、収録曲の一つ「愛と幻想の旅立ち」は、いまはもう閉店してしまった渋谷のライブハウス「サラヴァ東京」で2012年に1人で行った多重録音ライブの音源を基にしたものです。もう10年も前のものなので、自分の記憶からも薄れていたのですが、中山さんが「すごくいい曲なので、再ミックスしてはどうですか」と提案してくれたんです。確かに、中山さんがいまの音でよみがえらせてくれるなら、それは意味があるなと思いました。そうしてビクタースタジオの202stでリミックスしていただいたのが今回の「愛と幻想の旅立ち~2022New Mix~」です。

――「愛と幻想の旅立ち」は、2012年にアナログとCDで限定発売された『(To) my Sweetest Fantasy』に収録されたポップチューンですが、それが今回、あらためてハイレゾでよみがえった形ですね。音源は当時のままですか。

鈴木:エレキギターとピアノの低音を足していますが、それ以外は当時の音源をそのまま使っています。そして、「愛と幻想の旅立ち」のリミックスが出来上がり、カップリングはどうしようかという話になったときに、やはり中山さんから「例えばフューチャー・ファンクのような、これまでの鈴木祥子作品にはない曲調でやってみては?」というサジェスチョンがありまして。曲・歌詞とも中山さんとの共作で仕上げたのが「わがままな彼氏」で、確かにこれまでにない新境地とも言えるものになりました。ボーカルも、基本的にスイートなんだけど、どこかクールに感情を込めすぎない感じになっている。これを含め、『鈴木祥子私的讃美歌集1.』には中山さんのアイデアがふんだんに詰まっています。というわけで、中山さんもコメントをお願いします(笑)。

中山:実は「愛と幻想の旅立ち」の盤は持っていなかったのですが、ネットでトレーラーを見つけて聴いたらめちゃめちゃポップ!! すごくいい曲で、きっともっともっと良くなると思ったんです。そこで、「ぜひリミックスさせてください!」とご提案したんですが、ただの再発ではもったいない。せっかくならこの曲を超えるポップなA面曲を作って、「祥子さん史上最もポップで、キュートさを前面に押し出したシングルを出しませんか」と。そこでお互いにアイデアを出し合って行き着いたのが「わがままな彼氏」です。こうして2曲をダブルA面にしたEPができました。

――「愛と幻想の旅立ち」のオリジナルは、やはりドラマーでもある夏秋文尚さんによるミックスで、こちらも素晴らしいものですが、また別の感性で仕上がったニューミックスもいいですね。

鈴木:まさに10年を経てよみがえったと言うに相応しい音にしてくださったと思います。先ほど、ボーカルの透明感とお話ししましたが、私が感じる中山さんのミックスの魅力は、美しさと攻撃的なものが両方あること。どちらかに寄るのではなく、両者が共存しているところに惹かれるんです。10年目にこんなふうに音楽が帰ってきたのは私にとっても素敵なギフトのようで、ご褒美をいただいた気分で感動しています。

――ニューミックスは、音がより立体的になっていると感じました。

鈴木:そう。陰影が深いと言いますか、確かにすごく立体的ですよね。中山さんはこのミックス、どんなところにポイントを置いて行ったのですか。

中山:ニューミックスのポイントはまさにその部分でした。そこがもっと出せるのではという予感があったんです。オリジナルは2012年のウォール・オブ・サウンド的な感じだったと思うのですが、バランスなどを変えることで、もっと別の境地も拓けるのではないかと。で、やってみたら、思い通りのものができたという手応えはありました。

鈴木:「愛と幻想の旅立ち」の多重録音は、なにせ1人でやっているので、いわゆる空間的な音はあまり捉えられていないはずなんですよね。どれも楽器に近いマイキングで音を重ねていくというスタイルだったので、みんなでやっている部屋の鳴りとかは録音されていないわけです。だから、立体感とか奥行き感が出せるとは思っていなかったんですよ。それが中山さんの手にかかると……。

中山:左右の広がりだけではなく、バランスを変えることで立体感を上手く出せたかなと思います。アプローチとしては、オリジナルミックスの真逆を行った感じではあります。

――ビクタースタジオの機材によるところも大きいのでしょうか。

中山:そうですね。このリミックスも、コンソールでやっていますからね。いわゆるプラグインで攻めたわけでもなく、できる限りハードウェアのエフェクターを使いました。それによってPro Toolsの中だけでやったものとものすごく差が出るわけでもないのですが、そのちょっとした肌触りの違いはハイレゾだとよく分かっていただけると思います。まぁ、高いコンソールを通せばいい音になるというわけでもないのですが(笑)、ミックスのやり方を変えたことがいいほうに作用したと思っています。ただ、この曲は元の音源が16bit/44.1kHzでした。

ミックスダウン用の202stでモニターに耳を傾けるお二人



――そして“賛美歌”のイメージに最もぴったりなのが「祈り求める時に」です。

鈴木:クリスチャンにとって祈りは大切なことで、私も毎日、少なくとも1時間は祈っています。なぜ祈りを求めるのかと言えば、それは神様と通じるためなのですが、祈りを捧げているときに受ける霊感というかインスピレーションがあるんです。あるとき、「もし音楽が私の使命なら賛美歌を書かせてください」とお祈りしたら、1時間くらいでこの曲ができました。「ああ、これは神の御心に違いない」と勝手に解釈して(笑)、初めて書いた純粋なる賛美歌ですが、1人温めていたこの曲を今回、収録することにしました。ピアノも非常に深みのある音で録ってくださって、発表できて良かったと思っています。
 でもね、賛美歌っぽくはないですが、タイトル曲の「わがままな彼氏」も実は神様のことを歌っていまして、言うなれば“ニュー・クリスチャン・ポップ”。この2曲は本当に私的な賛美歌という位置づけなのです。

中山:“ニュー・クリスチャン・ポップ”や“ニュー・クリスチャン・ロック”は最近の祥子さんのテーマですね。

鈴木:そう。アメリカやヨーロッパのキリスト教圏ではクリスチャンのロックやポップスも盛んなのですが、日本ではキリスト教の人口が少ないから、ポップな賛美歌はまだ少ないですよね。私がクリスチャンとして伝導するならポップな賛美歌を作ろうと、「わがままな彼氏」はそんな気持ちを込めて書いたものなんです。曲中に旧約聖書の朗読を挿んだりして。

――ビクタースタジオでレコーディングされた「わがままな彼氏」や「祈り求める時に」について、マイキングなどでこだわったポイントはありますか。

中山:「わがままな彼氏」のドラムは、祥子さんにはこれまでにない録り方をさせていただきました。

鈴木:なんとハイハットがない(笑)。

中山:そう、ハイハットを刻まないでくださいとお願いしました。

――なぜでしょう?

中山:イナタくなるからです。僕のイメージは今どきのヒップホップやディスコサウンドで、そういうグルーヴが欲しかったんです。EDMのような打ち込みのキックとスネアを生のグルーヴで表現するのがカッコいい。ハイハットが入ると、どこかこぢんまりとしてしまうというか、野暮ったいスリーピースになってしまうと思ったので、「ハイハットは絶対に刻まないで、その間はなんとかキックとスネアでもたせてください」とお願いしました。

鈴木:昭和のミュージシャンには非常にハードルの高いリクエストで(笑)。しかも、シンバルもなかった。

中山:金物は一切なし。さらに、「できればスネアのフィルも入れないでください」とお願いしたら、「ここだけはやってもいい?」というのが何ヵ所かありましたね(笑)。でも、やっぱり何度もタカタカやるとイナタくなるので、「どうしても」というところだけにしてほしいと。

鈴木:結局、2ヵ所くらいは入れさせてもらいました。あとはもう、右足と左手に集中するだけでしたね。

ハイハットやシンバル類がないので、マイキングの自由度が高まったというドラム録り



――でも、ハイハットの刻みがないと、他のプレイヤーの方が合わせるのも大変だったのでは?

中山:そこはベースの名村武さんがすごく上手く乗ってくれて、絶妙なグルーヴが生まれています。

鈴木:そうそう。

中山:で、僕のほうはそんな祥子さんを横目にここぞとばかり、通常のセッティングでは立てられないような位置にマイクを設置しました。ハイハットとシンバルがないので、上から狙ってみたり、いちばん美味しいところを捉えることができました。そういう意味でも、独特のサウンドになったかと思います。金物がないということはマイクの本数も減らせるので、その分、位相もよくなりますしね。ビシッとくるサウンドが録れたと思いますよ。

――このスネアの音は確かに素晴らしいですね。まさにビシッという感じとこの空気感。

鈴木:ホット&クールというか、中山さんのスネアは本当に格好いいと思います。

――バスドラの前に見えるのは?

中山:YAMAHAのSKRM100 SUBKICKという低音用のマイクです。オーディオ好きの方は、ヘッドフォンがダイナクックマイクと構造が同じなので、実はマイクの代わりになることはご存知と思います。SUBKICKは、スタジオの定番モニタースピーカーだったNS-10Mのウーファーを振動板に使用したマイクです。

鈴木:面白い!

中山:低音を補強するためのもので、アタックを録るメインのマイクと混ぜて使用します。けっこう前からあるものですが、今回のようにドシッとした感じの音を録りたいときには合うんですね。

――元々ドラムの音にはこだわりがあるのでしょうか。

中山:まぁ、ドラムの音で手腕を評価されるようなところもありますから、レコーディングエンジニアはドラムにこだわる人は多いですよね。これが上手く録れれば、他も大丈夫と言いますか。

――「わがままな彼氏」はリードボーカルを抜いたバージョンも収録されていますが、これを聴くと楽器の音がよく聞こえて、例えばエレピのステレオ感も気持ちいいです。

中山:エレビの録音は本物のFENDER Rhodesで、あの揺れは内臓のトレモロを使っています。ちゃんとテンポに合わせて揺らしています。

――そして、「愛と幻想の旅立ち」にはコーラスをフィーチャーしたバージョンも収録されていますが、この曲のコーラスには祥子さんのポップスへのこだわりも感じます。どこか、大瀧詠一さんのテイストにも繋がるような気がしました。

鈴木:2012年はまだ大瀧さんもご存命で、私も本当に大きく影響を受けていました。その意味では、私なりのナイアガライズムも随所に感じていただけるかもしれません。「愛と幻想の旅立ち」は、アコースティックギターも4回重ねているんですよ。大瀧さんから「ギターはカーペットのように敷くものだ」というお話を伺って、私もやってみようと自分で重ねています。

中山:今回はカーペットというよりは、完全にカーテンになりましたね(笑)。

鈴木:アハハハハ。

中山:オリジナルミックスではあまり目立っていなかったのですが、マルチを開くと「ああ、こんなに入っていたんだ」と。今回はそのギターをフィーチャーしたミックスにしました。





エモーショナルなボーカルも印象的~『GOD Can Crush Me.』


――2021年7月のリリースされた『GOD Can Crush Me.』のタイトルチューンは、曲・歌詞ともに重みを感じさせる1曲です。叙情あふれるボーカルもさることながら、コーラスも非常に印象的ですね。どのようにして生まれた曲なのでしょうか。


鈴木:2020年の11月頃に原型となるデモテープを作りました。当時、中山さんが“エモコア”と呼ばれる音楽を聴かせてくれたんです。私はこのエモコアとか“シューゲイザー”といったジャンルには全く明るくなくて(笑)。でも、その影響なのか、ギターが壁のようにガーンと前面に出ているところにエモーショナルなメロディのボーカルが乗ってくるような曲を作ってみたいなと思ってやってみたのがこのデモです。それを中山さんに聴いてもらって、レコーディングすることになったんですが、場所はビクタースタジオ401stのピアノで録ってはどうかというお話をいただきました。そのとき、私はてっきりピアノでの弾き語りになるのかと思っていたんですが、中山さんは「いや、バンドでやりましょう」と。そのあたり、中山さんはけっこうアグレッシブで(笑)。

天上の高さも特徴的な401stでのピアノのレコーディング



中山:確かにご参考までにエモコアを聴いていただいたりはしていましたが、祥子さんがそれに合わせて曲を作ってくれるとは思っていませんでした。実は、この曲を録る前に、あとでお話しする弾き語りの洋楽カバーアルバム(『My Eternal Songs?BEARFOREST COVER BOOK vol.1』)を作っているんです。そんな流れもあって、ファンはそろそろもっとカロリーの高いものを聴きたいのではないかと思いまして。そこで「この曲はドラムもベースもギターも入ったら、きっと格好よくなりますよ」と、ひと通り録音したところで進言させていただきました(笑)。結局、この日は祥子さんのピアノと仮歌、そしてオルガンを録って、後日、302stで祥子さんのドラムと名村武さんのベース、設楽博臣さんのギターをダビングしました。でも、ピアノは歌のタイミングで揺れているから、ドラムもベースも合わせるのはとても大変だったと思うんですが……。

鈴木:さすがにこれは無理だろうと言っていました(笑)。

中山:ピアノのテンポに合わせてクリックも作ってみたんですが、それがものすごく揺れている(笑)。

鈴木:だから、ピアノを弾き直そうかとも思ったんですが……。

中山:あるいは、ドラムとベースを録ってからピアノを弾いてもらったほうがいいんじゃないかと思ったんですが、なんと祥子さんも名村武さんも、合わせてくれて。

鈴木:無理やり合わせちゃいました。(笑)。

中山:さすが、自分のリズム感だなと(笑)。

鈴木:人間のタイム感の精密さなのか、いい加減なのか分かりませんが、そこは人力の良さなのかなと。

中山:リズム録りで、クリックを使わずに3人や4人で合わせたときに生まれるグルーヴというのはもちろんあるわけですが、弾き語りのつもりで弾いているピアノのテンポ感はそれとは全然違いますからね。でも、絶妙なところにリズムを刻んでくれたので本当にすごいなと思いました。

鈴木:テンポは1番と2番でも全然違うのにね。名村さんはエピック・ソニー時代のディレクターでありベーシストで、長年一緒にリズム隊を組んでいるので、そんな二人の妙でもって上手くいった感じです。このリズム録りは楽しかったですね(笑)。

中山:ギターの設楽さんも、テンポに合わせたはずのディレイがずれてくるから、けっこう苦労していました(笑)。この曲にはそんな皆さんの人力のすごさが詰まっています。

「GOD Can Crush Me.」でハモンドオルガンB-3を弾く祥子さん

 

こちらは通常モードのドラムセッティング



――そもそも、中山さんはなぜ祥子さんにエモコアを聴かせようと思ったのでしょう。

中山:なんでだろう。個人的にジミー・イート・ワールドとかが好きなので、祥子さんにもそのあたりを聴いていただきました。激しい曲なのに、ポップで美メロなサウンドというはあまり聴いたことがなかったそうですが、もしかしたらハマるんじゃないかと勘が働いたんでしょうね。

鈴木:うん、すごくいいなと思いました。

――そんなところにも中山さんのプロデューサーとしての存在感が……。

鈴木:そう。この作品は実際に共同プロデューサーになってもらいましたし、その後の『鈴木祥子私的讃美歌集1.』はすべて中山さんのプロデュースです。中山さんの占める役割がどんどん大きくなってくる(笑)。

中山:ずんずん調子に乗ってしまって(笑)。

――見事な共同作業に繋がったわけですね。この作品にはまた、「NO FEAR / あいすること」のセルフカバーも収録されています。

鈴木:2005年に坂本真綾さんに提供したこの曲は自分でもすごく気に入っていたので、いつかセルフカバーしたいと思っていました。中山さんが他の案件で自宅に録音に来てくれたときに、ちょっと1曲、弾き語りを録ってほしいとお願いしました。

――そのピアノを補完するような、重低音を伴うキーボードサウンドも印象的です。

鈴木:トルネード竜巻の曽我淳一さんですね。やはり中山さんの提案で、弾き語りだとオリジナルと似てしまうので、キーボードを入れて世界観を変えるのも面白いのではと。それで曽我さんのあの独特な世界観が加わりました。

中山:シンセポップな感じが合う気がしたんですよ。それでお願いしたらけっこうハマったというか。

――祥子さんがこの曲に託した世界観を、さらに拡張するようなサウンドだと感じました。

鈴木:この曲の歌詞のテーマには“母性”のようなものがあるんですね。すべてを受け入れて愛する。それを怖れない。愛は怖れないこと。そんなコンセプトで書いたものです。曽我さんのあのサウンドは、私には母の胎内を思わせるような世界だと感じました。

中山:ああ、確かに。

鈴木:曽我さんにはリリックのテーマを話したわけではないので、曲の根底にあるものを自然に感じ取ってくれたのか、自由に弾いたらあのようになったのかは分かりませんが、すごく合致していて。オリジナルとはまた違ったものになったなと感じています。

中山:曽我君は彼なりに、祥子さんの曲をくみ取って弾いてくれたと思いますけど、出てきたものはけっこう曽我君のまんまという感じ。僕はそれが合うと思ったから、「いつもの感じでやってもらえればいいから」と伝えていて、彼はそれを上手く噛み砕いて演奏してくれました。アレンジの妙といいますか、お互いのいいところがピタッとハマった感じですね。

――この曲「NO FEAR / あいすること」のミックスのポイントは?

中山:イントロはモノラルで、途中からピアノが左右にバーッと広がって、さらにシンセのサウンドも広がり、最後はまたモノに戻るという流れを作っています。ピアノはステレオとモノ両方で録れるようにマイクを立てていました。弾き語りの部分のピアノはモノ、曲中ではステレオで録ったものを使っています。

――曲調に合ったピアノの音が独特の響きを感じさせますね。祥子さんのご自宅でレコーディングしたということですが、マイクは何を使ったのですか。

中山:祥子さんの家のピアノはシュベスター(SCHWESTER)のアップライトで、すごく味わい深い音がするんです。

鈴木:小学3年生の頃からずっと弾いているもので、私もすごく好きなピアノです。

中山:僕も好きな音で、その良さが生きるようにと考えて、SONYのサンパチ(C-38B)とNEUMANN のハチナナ(U 87)を混ぜて使いました。とにかく、あのピアノのいい雰囲気を録りたいと。 オリジナルではスタジオの綺麗なピアノの音で、それはそれで素晴らしいのですが、このセルフカバーもやはり真逆と言えるアプローチをしています。

鈴木:クローズドな世界なんだけど、すごく広がりがある。




渾身の弾き語りによる洋楽カバー集~『My Eternal Songs ~ BEARFOREST COVER BOOK vol.1』


――「GOD Can Crush Me.」に次いで2021年11月にリリースされたのが洋楽カバー集の『My Eternal Songs ~ BEARFOREST COVER BOOK vol.1』です。こちらはどのような経緯で生まれたのでしょうか。

鈴木:洋楽がいちばん輝いていた時代と言いますか、私の幼少期から高校生くらいまで――つまり1970年代から80年代の前半くらいまでに、身近な音楽として浴びて育った曲をカバーしてみたいと思ったんです。それも、知る人ぞ知るマニアックな曲ではなく、誰もが知ってる超メジャーな曲を……。
 あの当時、洋楽を聴くのはごく普通のことで、年齢に関係なくみんなが洋楽のポップスに親しんでいました。私もあの頃に、洋楽に接することで自分の音楽観や音楽に対する想いが育まれていきました。そんな音楽に対する感謝を込めて、今度は私からお返しをしなければと。年齢を重ね、大げさに言えば音楽に貢献したいというような気持ちになってきまして。今回の選曲はそんな心境で行いました。
 どこでどう録るかは、最初にお話しした安野希世乃さんへの楽曲提供でご一緒した中山さんにビクタースタジオで録っていただいたことが決定打となり、心を決めました。



――本作はすべてピアノ弾き語り。302stでのレコーディングですね。曲の冒頭に、モーツァルトやバッハの一節を引用している曲が3曲ほどあります。

鈴木:活動を休止していたある時期、ポップスなどは全然聴かずに、最初に通ったクラシックピアノを2年間ほど集中して練習していました。モーツァルトのピアノ・ソナタやショパンの英雄ポロネーズとか、クラシックピアニストに憧れたかつての自分を思い出しながら、楽譜をちゃんと読んで最初から最後まで演奏できるようになりたいと思ったんです。こうした経験によって、楽譜とその向こうにある作曲家の意図を知りたいという気持ちも芽生えて……自分の音楽観も深くなったものだと感慨に耽ったり(笑)。そんな時期を経てまたポップスに戻っていき、今回のカバー集に繋がるわけですね。クラシックから入ってポップスやロックに傾倒していった自らのヒストリーを踏まえ、クラシックも織り交ぜて、7曲全体で一つ世界になるようなものを作りたいと思ったんです。

――なるほど。レコーディングはどのように行われたのですか。

鈴木:中山さんに、1日で録ってもらいました。出来上がったものは編集もほとんどしていないですよね。

中山:はい、ほぼしていません。テイクをたくさん重ねることもなかったですね。多かった曲で3回くらい。アルバムの曲順に録音していきましたが、「おお……」と思わず声が出てしまうような、すごい演奏と歌でした。

――ボーカルの雰囲気は曲によって変えていますね。

鈴木:10代の頃から慣れ親しんだ曲ばかりなので、オリジナルのボーカリストに寄せたくなるというか。「オープン・アームズ」ならスティーヴ・ペリーの歌い方を、「ラブ・オブ・マイ・ライフ」ならフレディの歌い方を真似したいとか、けっこうミーハーな動機で。でも、こんなに自由な気持ちで弾き語りできたのは、302stの環境とスタインウェイ(Steinway & Sons)のピアノ、そして中山さんの音作りがあってこそ。引き出して、さらに押し上げてくれました。こんな音で録ってもらったのは初めてで、マイクの立て方もこれまでに見たことがありませんでした。

――どのようなマイキングだったのでしょう。

中山:僕の中で、ここ数年でブームになっているピアノのマイキングがあるのですが、そのベースとなったのがこのときのレコーディングでした。いまもピアノを録るときは近い形で行っています。

――具体的にはどのような?

中山:弦を直接狙ったマイクに加えて、演奏者の頭の近くにも別途マイクを立てているんです。ピアノの弾き語りでは、歌用のマイクにも当然ながらピアノの音がすごく被ります。通常はそれをどうセパレートするかと考えながらミックスするんですが、そのピアノの音は意外とエネルギーがあっていい音なんですよ。じゃあ、それを生かしてみたらどうだろうと。マイクは他にもピアノから離れたところにアンビエンスを立てて、また、広い302stにはコントロールルームの上部に回転板で響きを制御できるエリアがあって独特の残響音が得られますので、そこにもバウンダリーマイクを仕込んでいます。この残響音にコンプをかけて、フワッとした空気感をギュッとつぶして強めたものをブレンドしたりするのですが、祥子さんのカバーアルバムが、このスタイルの雛形となりました。

鈴木:そうだったんですね。

中山:あのレコーディング以降、僕のピアノの録り方そのものが変わりました。それぞれのマイクのバランスは曲に合わせて変えていて、『鈴木祥子私的讃美歌集1.』の「祈り求める時に」もほぼ同じようなマイキングで録音していますが、バランスを変えているのでまた違ったサウンドに聞こえると思います。

中山さんの最近のピアノ録音スタイルのきっかけとなったマイキング



――ピアニストが聴いている音も足すというのが非常に斬新ですね。お話を伺って、このピアノの音を聴くのがまた楽しくなりそうです。それにしても、歌に関しては1曲目のビリー・ジョエル「オネスティ」と続くギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」でボーカルの表情がガラッと変わるのも印象的でした。

鈴木:録音してみて気付いたのですが、やはり英語はロックンロールを生んだ言語だなと。ロックンロールがなぜアメリカで生まれたのかがよく分かると言いますか、その必然性は確実にある。ロックンロールの創始者の1人であるエルヴィス・プレスリーのお母さんは敬虔なクリスチャンで、教会で歌っていた人ですし。英語という言語とクリスチャニティが結びついたとき、この世に何かが生まれたんだと、このアルバムを作ってみて感じました。で、中山さんの音がとても攻撃的でこれがまたロックンロール。ピアノの弾き語りなのに、なんでこんな音なんだろうと(笑)。

中山:いや、僕は何もしていません。祥子さんがそういう歌い方、弾き方をしたからですよ。

鈴木:そうなのかしら? 最初にラフミックスを聴いたときは、「なんでこんなに低音が出てるんだろう。弾き語りなのにすっごいロックだな」と思って。リスナーの皆さんにも、英語で歌われたこのアルバムのロックンロールを感じていただけると嬉しいですね。

中山:僕はそんなに偉そうなことは言えないのですが、祥子さんのカバーって、原曲の意味とか大事なところをちゃんと分かっているという気がするんです。原曲のイメージを壊していないし、敬意も感じられる。もちろん、カバーであってコピーではないんですが、その曲の根幹にある部分は完璧にコピーされているというか、原曲の良さもちゃんとある。「ああ、それそれ!」っていうのがストレートに伝わってくるんですね。もし、オリジナルを知らない人が聴いても、その良さが分かるカバーになっていると思うんです。

鈴木:あ、それはすごく嬉しいです。曲のマインドと言いますか、その意図を掴むのは得意なんですよ。って、自画自賛ですみません(笑)。

――確かに、その曲が持っている勘どころみたいなものって曲の構成にも現れていますよね。例えば1曲目の「オネスティ」のAメロからサビに入っていくところ。コードは変わるけれど歌メロの音程が変わらないわけですが、印象的な聴かせどころがいきなりきます。

鈴木:そうですね。あそこは“give”と“honesty”を切り離して歌うと感じが出ない。

中山:これまでずっと聴きまくってきたから体に染みついてる(笑)。そこを変えるとしっくりこないんでしょうね。

鈴木:そうなのよ。そして、歌詞に出てくる英語の母音の発音の仕方もよく聴いて真似したりとか。そういうこだわりはありますね。

――そのあたりの感覚も鋭く掴んでいらっしゃるのはさすがです。

鈴木:こだわりと言えば、カーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」もそう。オリジナルを歌っているカレン・カーペンターは息継ぎをしない人で、私は以前からそこに着目していたんです(笑)。同じくカーペンターズの有名曲「スーパースター」の出だしも、“Long ago...”から“far way”までを一息で歌っています。普通だと“Long ago”のあとにブレスを入れたくなるんですけど、切らずに続けることで感情やストーリーの持続性が生まれる。意識的かどうかは分かりませんが、カレンはやはりすごい天才だと思います。

中山:ブレスの位置によって、歌詞のアクセントも変わりますからね。

鈴木:まったく変わりますね。「イエスタデイ・ワンス・モア」も最後のほうで、“Some can...”から“before”までは一息で歌っています。“cry”のところでブレスすると、気持ちが途切れてしまうというか、二つに分かれてしまうんですね。歌が持つ想いとかストーリーが割かれてしまうんです。それがカレンの意図だと思ったので、息継ぎにはこだわりました。中山さんもそれは分かってくれて、上手くできるまで何度もトライさせてもらいました。

中山:この曲の頭には呼吸を整える音が入っています。あえて生かしたほうがいいかなと思って。シンガーでありドラマーでもある祥子さんはそもそも、リズムの取り方が独特だと感じるんですよね。息継ぎの仕方ひとつにもこだわるのは、リズムの担い手と歌い手という両方の感性を合わせ持つ祥子さんならではの感覚なのでしょう。

――なるほど。それは興味深いエピソードですね。ここまでのお話から、スタジオの良好な雰囲気も伝わってきます。

鈴木:音楽は、スタジオの環境が作らせてくれるところもありますよね。

中山:確かに、こうしたスタジオでしか起きないマジックはすごくあります。リズム録りにしても、3人なら3人での独特の緊張感や空気感が音になって表れる。それがビクタースタジオのような空間でレコーディングすることの大きな理由の一つです。プライベートスタジオで1人で作業するだけでは生まれてこないものを伝えたいという気持ちが、祥子さんにも僕にもあるんです。

鈴木:うんうん。

中山:「ここの音がいいからここで録る」ということの大事さは語り継いでいきたいと思っています。



――ではあらためて、本作に収められた半世紀ほど前の楽曲が現代に語りかけるものとは?

鈴木:音楽というものの普遍性でしょうか。時代が移っても、録音の仕方が変わっても、音とか音楽というものは、人の細胞に染み込んで、精神を高揚させたり、落ち着かせたり、身体や心にものすごい影響を与えます。人生観や人生そのものを変えてしまう力が音楽にはあるんですね。その意味で、この『My Eternal Songs ~ BEARFOREST COVER BOOK vol.1』を作ったことで新たな使命感が自分の中に生まれています。いまはこういう不安な時代ですけれど、音楽の力を信じて作った音は絶対に誰かに届いていくと確信しています。音楽に自分は生かされているし、これからも音を鳴らして作って生きていく。大げさかもしれませんが、それが私に与えられた使命なんじゃないかと感じるようになりました。

中山:そうした祥子さんの想いは、今回ハイレゾでリリースされるこの3タイトルすべてに一貫して現れていますよね。やろうとしていることの狙いがぶれてない。それはすごく感じます。自分が本当にやりたいものじゃないと伝わらないというか。

――いい曲は、優れたカバーによってさらに寿命が延びるということもありますよね。このアルバムが昔からの洋楽ファンはもちろん、若いリスナーにも届いてほしいと思います。



名匠テッド・ジェンセンによるマスタリング 


――マスタリングはどのように行われたのでしょうか。


中山:今回の3タイトルのマスタリングはすべて、スターリング・サウンドのテッド・ジェンセンにお願いしました。彼の音作りはすごく肌に合うんです。それも、何度かやり取りをすることもなく、一発で決めてきてくれる。祥子さんの作品はぜひ、テッドにやっていただきたいと思っていました。
 日常、元のハイレゾ音源と16bit/44.1kHzに落としたものを両方聴く僕らにとって、やはりハイレゾには録音していたとき、ミックスしていたときの肌触りがちゃんと残っていると感じるのですが、テッドのマスタリングはそこがはっきり出ています。だから、今回ハイレゾで聴いていただけるのはいい機会なので、僕も嬉しく思っています。人によってはハイレゾで聴くと、ちょっとイメージが変わるかもしれません。

――音楽の聴き方が多様化する中、ハイレゾでリリースすることの意義をどう感じていらっしゃいますか。

鈴木:中山さんもおっしゃったように、スタジオで作った音をダウングレードせず、ダイナミクスも奥行き感もそのままに、音の解像度が最高の状態で聴いていただけるハイレゾには、すごく大事な意味があると思っています。アナログレコードの良さがあって、CDにも取り回しの良さがあり、もう一つ別次元のハイレゾがあることで音楽がより多角的に伝わっていくことは、作り手としてもやり甲斐を感じます。

中山:『鈴木祥子私的讃美歌集1.』と『GOD Can Crush Me.』はSTUDERのアナログマルチで録っています。その後、デジタルにコンバートするわけですが、アナログの良さは極力残すよう心掛けました。アナログからの取り込みは32bit/192kHzなのですが、僕の感覚ではPro Toolsのクロックは192kHzがいちばんアナログっぽいと感じるんです。アナログテープの音にすごく近い。リミックスで収録した「愛と幻想の旅立ち」は元の音源が16bit/44.1kHzだったので、アナログ機材を通して32bit/192kHzに取り込み直していますが、これも192kHzのクロックでミックスしたかったからです。スペック的に16bit/44.1kHzで切られるのは仕方ないけれど、アナログの肌触りに戻すことはできる。この曲を含めすべての曲はスタジオのSSLコンソールを通して、アナログのアウトボードも使ってミックスしていますから、倍音も付加され膨らみも出ています。
 今回、この3タイトルを24bit/192kHzで提供できることは、そうした意味でも一貫性のあるアプローチであり、この音で聴いてもらえるのは僕としても嬉しいですね。

アナログマルチSTUDER A827も稼働!



――今回のプロダクトではエンジニアである中山さんがプロデューサーとしての役割も担ったことが、ことごとく良い方向に作用したようですね。

鈴木:そうなんですよ。本当に何というかワイルドなプロデューサーですけど(笑)、私もけっこう適当でワイルドなところがあるので共感できるというかお任せできるんです。

中山:でも、例えばドラムを革物と金物で分けて録るとか、海外では昔からよくやっていたわけで。XTCとかもそうですよね。僕はそれをいまになってあえてやっているだけで、それほど目新しいことをしているわけではないんですよ。やってみるとけっこう難しいけれど(笑)、録音芸術というか、レコーディングにしかできないことがある。スネアの音作りやマイキングのために、ハイハットとシンバルをどかしてみようというのも理に適っているというか。

鈴木:その意味で、エンジニアの方がプロデューサーを兼ねるのも理に適っているのかも。

中山:こういうプロダクトでは意味があると思いますね。

鈴木:レコーディングで音を司るエンジニアの方はアーティストと同等のウエイトがあるポジションですが、そういうクリエイティブなやり取りをできるのが中山さんとご一緒することの楽しさです。

――素晴らしいコンビネーションですね。

中山:祥子さんが許容してくれるから、こうして泳がせてもらえているんですけれど……。

鈴木:とんでもないです。私はエンジニアの方とうまくいかないので有名だったんですよ。

一同:(爆笑)

鈴木:なんか生意気なことを言って嫌われるみたいな。中山さんのように自分の意図を汲み取ってくださる方は初めてで、その意味でも本当に出会えて良かったなと思っています。



――今日は楽しいお話をたくさんいただき、ありがとうございました。では最後に、e-onkyo musicリスナーへのメッセージをお願いします。

鈴木:e-onkyo musicさんには2016年の『しょうことスタインウェイの午後』、2017年の『しょうことスタインウエイのお正月』といったライブレコーディングのハイレゾでお世話になりました。その後、しばらく間が空いてしまいましたが、中山さんという頼もしいエンジニア/プロデューサーとご一緒することで生まれた作品をこうしてお届けできることを嬉しく思っています。これからも、音や録音の可能性を私なりに広げていきたいし、それをリスナーの皆さんと末永く分かち合っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

中山:僕にとってもすごくいい機会をいただけたわけですが、今後も祥子さんとのプロダクトが続くなら、それはきっとハイレゾに合った音楽だと思うんです。「ハイレゾで聴くのがいちばんだね」と感じていただけるものを、これからも作りたいなと思っています。もちろんCDもいいのですが、ハイレゾのいい音にうっとりするような体験もぜひ味わっていただきたいですね。

鈴木:音にうっとりと酔いしれるような経験! それはぜひ共有していただきたいですね。

アーティストとエンジニアによる素晴らしいコラボレーションを実現させたお二人。ビクタースタジオにて




鈴木祥子 関連作品

 

 

 




PROFILE:鈴木祥子

鈴木祥子(すずき・しょうこ)

1965年8月21日東京生まれ。

1988年9月EPIC SONYよりデビュー。
現在までに13枚のオリジナル・アルバムを発表。

演奏楽器はPiano,Drums,Guitar。
ミュージシャン/マルチプレイヤー/職業作家。

BEARFOREST RECORDS主催。


曲・詞を提供したアーティスト

小泉今日子「優しい雨」
松田聖子「We Are Love」
坂本真綾「NO FEAR/あいすること」「風待ちジェット」「ユニバース」「SAVED.」他
渡辺満里奈「胸がいっぱい」
PUFFY「きれいな涙が足りないよ」
吉村由美「わたしの望み」
石川ひとみ「星のまばたき」―etc...

オフィシャルサイト
ブログ「鈴木祥子のアナログ音楽日誌」


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