マイケル聴くなら、これだ!
~ 圧倒的なグルーヴ、疾走感、そして驚くほど広大なサウンドステージ。
ありがとう、連載50回!
気がつけば、連載50回に到達しました! スタートしたのが2013年10月ですから、もうすぐ4年になるのですね。なんのシガラミもなく音源選別を自由にやらせてもらい、好き勝手に書いてきた50回。よくぞ連載打ち切りにならなかったものだと思います。全て、読んでくださっている皆様、そして太鼓判ハイレゾ音源を実際にご購入いただいている皆様の応援があってこそです。本当にありがとうございます!
それにしてもハイレゾ音源、4年前とは随分と状況が変わってきました。2013年当時は、まだまだ発売タイトルも少なく、新発売音源のほとんど全部をチェックできていたくらい。その中から、お宝のハイレゾ音源を発掘していこうというのが、当初の趣旨だったように記憶します。
しかし、今となっては毎日のように凄い数のハイレゾ音源がリリースされていきますので、もはや全数聴くなんて夢のまた夢。ですので、どうしても私の得意なジャンルやミュージシャン、エンジニアといった視点での太鼓判ハイレゾ音源選定となってしまったことをお許しください。
といっても、太鼓判選定の基準に関しては、連載スタート当初から一切のブレはありません。実際に聴いて、感じて、興奮して、「これだ!」とハートに突き刺さったものだけをご紹介しています。これができなくなった時が、きっと連載終了の時ではないでしょうか。あ、連載打ち切りという線もありますが。
今回の50回記念号は特別なことが企画できませんでしたが、4周年記念の10月には何か考えてみたいです。久しぶりの試聴イベントも楽しそう。本当は『太鼓判ハイレゾ音源コンピ盤』なんて面白そうですが、クリアする問題も多いのかな? レコード会社別で選別すれば可能かも? 考えるだけで、ワクワクしてきました。
50回、お付き合いいただき、ありがとうございます。まだ書き続けられるようですので、今後ともよろしくお願いいたします!
全てのリミッターを取り去った、ハイレゾ版マイケル!
マイケルのハイレゾは既に数多くありますが、私の大好きなアルバムが出ました!
『HIStory - PAST, PRESENT AND FUTURE - BOOK I』(flac 96kHz/24bit)
/Michael Jackson >
マイケルのベスト盤なら『Number Ones』が以前からあったのですが、私は『HIStory』派。CD盤のころから『Number Ones』よりも『HIStory』をよく聴いています。何となくCD盤『Number Ones』は、音がカリカリした印象があって・・・。ハイレゾ版での厳密な比較試聴は行っていませんが、『HIStory』のハイレゾを聴いて「ああ、これこれ~!」とガツンと感じるものがあったので、その直感を重視します。
「Smooth Criminal 」が収録されていないのが、唯一『HIStory』の個人的に残念なところ。でも『Number Ones』には「Heal the World」が無いですから、やっぱり選曲は『HIStory』が好みかも。
曲は、それはもう素晴らしいの一言。ヒット曲満載です。その名曲たちがハイレゾになり、どのようなサウンドになったのか? ここが注目ポイントでしょう。
ズバリ、全てのリミッターを取り去った、マイケル・ジャクソンがそこに居ます。圧倒的に広いサウンドステージ、突き抜ける高音域、首から上が吹き飛ばされそうな低音、高速回転するマイケルが見えるくらいのグルーヴ。その全てにリミッターがありません。
CD盤でも高音質盤だった『HIStory』です。私もイベントのデモで何度鳴らしたことか。その記憶の中のCD盤サウンドを軽く吹き飛ばすくらい、ハイレゾ版『HIStory』は凄いですよ、皆さん!
オーディオ的チェック曲としては、「Billie Jean」がオススメ。実はこれ、サチる寸前なんです。ギリギリの「サシスセソ」。シャーッと高域がサチるようでしたら、おそらく何かオーディオアクセサリーが悪さしています。もしくは、低音の出にくいケーブルが原因かも。「Billie Jean」がサチるようでしたら、まずは高域強調のアクセサリーを撤去してみてください。金属系アイテムが第一容疑者です。
その「Billie Jean」、シンセベースに聞こえますよね? 実はこれ、手でミュートしながら親指で弾いています。ベースのルイス・ジョンソン氏にお会いした時、実際に弾いて見せてもらいました。このベースのグルーヴも聴きどころのひとつでしょう。
有名な「Thriller」の冒頭、扉のキシミ音も面白いです。上手く再現できると、あまりにリアルすぎて笑っちゃうくらい。CD時代にイベントで驚いて、お客さんと何度もリピートして大ウケしたのを思い出しました。ハイレゾで聴くと、そりゃもうギギギギ・・・なんです。楽しんでみてください。
その他、マイケル全般で難しいのは、低音の連打です。オールドのシステムだと、ここまで早い低音のパッセージは再現できないかも。バスレフダクトがボーボー鳴っているスピーカーなら、もうお手上げです。超低域の再現というよりは、実低音と言いましょうか、ミッドローあたりのスピード再現が要求されます。ボーボボーではなくズバババです。
マイケルサウンドを苦手にしている真空管アンプに出会ったことがあります。疾走感が全く再現できていませんでした。ここもチェックポイントです。
ハイレゾになって、とにかくサウンドステージが広いことも注目してください。しかも、濃くて広い。スピーカーで聴いているなら、部屋全体が音楽で満ちるくらいが正解です。ヘッドホン/イヤホンなら、頭の中心に音楽が定位するだけでなく、目を閉じればバーチャル音楽空間が出現します。私がハイレゾ版『HIStory』で一番魅力的だと感じているのは、この広大なサウンドステージなんです!
音質、楽曲、パフォーマンス、そして音楽エネルギー。全てが最高レベルのハイレゾ音源です。オーディオのデモには最適ですね! 私も4周年記念イベントが開催できた暁には、『HIStory』をガンガン鳴らしたいと思っています。連載50回記念に相応しい、文句無しの太鼓判です!
当連載に関するご意見、これを取り上げて欲しい!などご要望は、こちらにお寄せください。
※“問い合わせの種類”から“その他”を選んで送信お願いします。
【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~ スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~ スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
<第27回>『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』 ~ビクターの本気が、音となって届いたハイレゾ音源!~
<第28回>『A Twist Of Rit/Lee Ritenour』 ~これを超えるハイレゾがあったら教えてほしい、超高音質音源!~
<第29回>『ジム・ホール・イン・ベルリン』、『Return To Chicago』ほか、一挙5タイトル ~多ジャンルから太鼓判続出の豊作月なんです!~
<第30回>『Munity』、『JIMBO DE JIMBO 80's』 神保彰 ~喜びと楽しさに満ちたLA生まれのハイレゾ・サウンド!~
<第31回>『SPARK』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~ハイレゾで記録されるべき、3人の超人が奏でるメロディー~
<第32回>『究極のオーディオチェックCD2016~ハイレゾバージョン~』 Stereo ~付録CD用音源と侮れない、本物のハイレゾ!~
<第33回>『パンドラの小箱』ほか、岩崎宏美アルバム全22作品ハイレゾ化(前編) ~史上初?! アナログマスターテープ vs ハイレゾをネット動画で比較試聴!~
<第34回>『パンドラの小箱』ほか、岩崎宏美アルバム全22作品ハイレゾ化(後編) ~アナログマスターテープの良いところ、ハイレゾの良いところ~
<第35回>『エラ・フィッツジェラルドに捧ぐ』 ジェーン・モンハイト ~オーディオ好き御用達の歌姫は、やっぱりハイレゾでも凄かった!~
<第36回>『Queen』ハイレゾ×5作品 ~ 超高音質CD盤をはるかに超えるサウンド!~
<第37回> CASIOPEAハイレゾ × 一挙18作品 (前編) ~ ハイレゾ界を変える?超高音質音源襲来!~
<第38回> CASIOPEAハイレゾ × 一挙18作品 (後編) ~ ハイレゾ界を変える?超高音質音源襲来!~
<第39回> Earth, Wind & Fireのハイレゾはグルーヴの宝箱 ~ 祝・ソニーミュージック カタログ配信スタート!~
<第40回> 日本の宝、あの名盤『FLAPPER』がハイレゾで聴ける日 ~ 祝・ソニーミュージック カタログ配信スタート! その2 ~
<第41回> オーディオ大定番音源の進化は、音の色温度に注目 ~ デジタルでも、あったかいサウンドは可能だった! ~
<第42回> 強い音楽エネルギーこそ、ハイレゾの魅力 ~ 骨太サウンド音源はこれだ! ~
<第43回> 桁違いの制作費から生まれた超豪華名盤が、ハイレゾで更に輝きを増す。 ~ 小室サウンドのハイレゾ決定版! ~
<第45回>神保彰氏の新作ハイレゾ × 2作品は、異なる海外マスタリングに注目!~ 公開取材イベントのご報告 ~
<第46回>生々しいピアノを聴くならこれだ! ~ 大御所スティーヴ・ガッド & ウィル・リーの名サポートも必聴 ~
<第47回>一糸乱れぬグルーヴを聴くならこれだ! ~ 名匠アンソニー・ジャクソン氏のベースを、歴史的名盤で ~
<第48回>DSDを聴くならこれだ! ~ ECMレーベルのDSDシリーズは一味違う。 ~
<第49回>ライブ盤を聴くならこれだ!~ 凄腕ミュージシャンとの一発録音で蘇る、あの名曲たち。 ~
筆者プロフィール:
西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。