【対談企画 Part2】 デヴィッド・マシューズ×大江千里 「ジャズとポップス」

2017/06/21
マンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)率いるデヴィッド・マシューズさんの対談企画第二弾のお相手は大江千里さん。1983年にシングル「ワラビーぬぎすてて」、アルバム『WAKU WAKU』でシンガー・ソングライターとしてデビューした大江さんは、以後「十人十色」「格好悪いふられ方」などのヒットを放ち、ポップスターとして絶大な人気を博していましたが、2007年に突如休業を宣言し、翌年にはジャズを学ぶために渡米。2012年にはニューヨークに自ら設立したレーベル“PND REOCRDS & MUSIC PUBLISHING”より、ジャズ・ピアニストとしてのデビュー作『BOYS MATURE SLOW』を全米で発売。そして2016年9月には初のジャズ・ヴォーカル作品『answer july』をリリースし、現在もニューヨークを拠点にジャズ・ピアニストとして活動しています。お二人は昨年、MJQがレコーディングを行っていたニューヨークのスタジオで初対面を果たしましたが、今回はそれに続く二度目の顔合わせ。“ジャズ”そして“ポップス”をキーワードに、大いに話が弾んだ対談をぜひお楽しみください!

構成◎大山哲司 通訳◎一居 純 撮影◎山本 昇







■NYのレコーディング・スタジオでの出会い

--最初に、ニューヨークでお二人が出会った時の印象からお話しいただけますか?

マシューズ 昨年、ニューヨークのシア・サウンドというレコーディング・スタジオで初めて会ったんだ。コーヒーを飲んだり、一緒に写真を撮ったりしたね。大江さんがピアノを弾くミュージシャンだということはもちろん知っていたが、僕はMJQのレコーディングに忙殺されていて、あまり詳しく知らないままお会いしてしまった。だから腰を据えてお話しするのは今日が初めてなんだよ。今回は大江さんの本(編注:『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』KADOKAWA刊)も読ませていただき、これまでどのようなことをなさってきたのかも把握してきた。より詳しく知る機会が得られて嬉しいよ。

大江 スタジオのドアを開けた瞬間に音のパラダイスでしたね。僕はどんなに有名なミュージシャンでも、デビューしたてのミュージシャンでも、スタジオにお邪魔する際には、もし逆の立場だったらと考えてしまい、どこまで入りこんでいいのかと心臓がバクバクしてしまうんですよ。でもニューヨークには、音楽家であれば対等なコミュニティという感じがあるので、「ここに僕が入って行ってもいいんだな」と確認できたらスッと自然に入っていける。マシューズさんにお会いした時は、プロデューサーの川島(重行)さんがトークバックを介して英語で色々なアイデアを提案されていたんですが、そのやりとりを聞いているだけで一緒に音楽を作ってきた同志のような信頼関係が感じられました。
 そして、マシューズさんを紹介していただき、厚かましくも聖域であるピアノの周りで、マイクのセッティングがどうなっているのかを観察したり、マシューズさんの演奏をガラス越しながら食い入るように見たりしていた。もちろん僕はその時にマシューズさんのことを知っていて、どうしてバンドでピアノを弾き始めたかということも知っていました。素晴らしく緻密で繊細な小さいサウンドから豪胆な大きなサウンドまでを使い分けて書けるアレンジャーが、いちピアニストとして演奏している醍醐味。その贅沢感が匂い立つように感じられて、大感激でした。

マシューズ [日本語で]ありがとうございます(笑)。

かつてのポップスターがジャズに転向した理由などを真摯に語ってくれた大江千里さん

■ポップスから一転、正面からジャズの門を叩いた理由

--そもそも大江さんがジャズをやろうと思われたのはどういう理由からですか?

大江 中学3年生の頃、ポプコン(編注:ヤマハが主催していたポピュラーソングコンテスト)に応募するために、ヤマハなんばセンターに行って曲を聴いてもらっていた時期があったんです。結局、高校1年生の時に関西決勝大会に行くんですが、その時に書いたのがボサノヴァの曲で、ビッグ・オーケストラの中でピアノを弾きながら歌うという経験をしました。15歳の子がなぜボサノヴァを書いたかと言うと、『ストーン・フラワー』というアントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムがキッカケでした。ヤマハなんばセンターから家に帰る途中に中古レコード屋を見つけて、そこでジャケ買いをしたんです。たばこを吸っている横向きの顔のジャケットだったんですが、それが素敵で。その頃にウィントン・ケリーやサラ・ヴォーン、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンクらが好きになった。ジャズというのは僕がそれまでトレーニングを受けてきたクラシックとは違うし、自分が書いているポップスとも違う。でもポップスの中にもジャズの中にあるような不協和音が効果的に使われていたりもする。どこにそのセオリーがあるのかが分からなかったので、藤井貞泰さんのジャズ教則本(編注:『実用ジャズ講座理論編』リットーミュージック刊)などを読んで、コードが開いてるとか密集しているというようなことから勉強し始めたんです。同時期にポプコンをキッカケに作詞作曲にも味を占めて、いろいろなクラブで演奏するようになった。そこでソニーの人と知り合い、それから時間がすごく加速していった。19歳の頃に育成という形でメジャー・レーベルからデビューをする準備を始めたんです。それまでジャズという音楽をやりたいとは思っていたんだけど、ポップスを極めるという方向に全部の力を持っていったんです。ジャズは封印して心の中の大事な場所にしまっておき、でもずっとwanna be……いつかやろうとは思っていました。
 40歳代後半になると、僕の周りで堰を切ったように人が亡くなる時期があったんです。母や、親しかった同い年のピアニスト、そして飼っていた犬も亡くなった。頭では人生は1回きりで限りがあるということを分かっていたんだけど、それを受け入れるのが難しくて……。その時にふと、ずっとやりたかったジャズをこの先やる機会があるんだろうか? こんなにいろんなことが起こるのは警告音に違いないと思ったんです。そこで思い出したのが90年代、僕が30歳から34歳ぐらいの時にニューヨークにアパートを借りていた時のこと。ニュースクール・フォー・ジャズ・アンド・コンテンポラリー・ミュージックという大学があって、楽器を抱えたヤツらが音楽用語なんかをしゃべりながら颯爽と歩いていたよなと。ネットで検索してみたら海外から受験できるシステムがあるのが分かったんです。そこでやってみようと思い、その当時習っていたジャズの先生であるベーシストの河上修さんに相談したら、「手伝ってあげるからデモテープを作ろうよ。ソニー・ロリンズのこの曲のソロを丸覚えすればいいから」などと細かく示唆してくれました。先生のおかげでそのデモテープを送ったら“accept”と合格通知がきて、「何日までにTOEFLの合格点を取りなさい」という指示があったんです。そこで事務所を辞め、レコード会社も辞め、2ヵ月半後には身の回りのものをほとんど処分し、飼い始めた1歳にも満たない犬を抱えてニューヨークに渡り、春の学期から学校に入りました。

マシューズ ようやく理解できたよ。大成功しているポップスターが突然自分のキャリアを捨ててジャズに転向したということを私の妻から聞いていて、何でそんな珍しいステップを踏むんだろうとずっと考えていたんだ。あなたの中には常にジャズがあったんですね。これまでのキャリアを通して、ずっとジャズ・アーティストの心を持っていたんだ。成功を収めて、やりたいことを本当に追求できる段階になって初めて動いたということが、今の話を聞いてよく分かったよ。

同志を迎え入れるように大江さんとの対談を楽しむデヴィッド・マシューズさん

■ジャズ・ファンは同じ音楽を愛するコミュニティの同志

大江 ちょうどティーンエイジャーの終わりの頃にジャズが好きになり、『スイングジャーナル』という雑誌を読んでいろんなジャズのレコードを買い集めていました。ニューヨークに憧れて、いつか住んでみたいと思っていたんです。その頃にちょうどブームになっていたフュージョンに傾倒していきます。当時のジャズは過渡期だったと思うんです。11分もある長い曲があったり、どんどん自己陶酔型のソロが多くなって、どこがブリッジなのかが明確ではなくなってきて、マーケットも小さくなってきたように思います。マシューズさんはジョージ・ベンソンやグローバー・ワシントン・ジュニアらとも仕事をしていらっしゃいますよね。その後、川島さんと出会ってMJQを作り、さらに大きな編成の音楽を作ったり、ジャズのスタンダード曲を新たなアレンジで演奏したりされてきた。その強いモチベーション、目標は何だったのでしょう?

マシューズ お金だよ。ジョークだけどね(笑)。最も重要なことは常に音楽なんだ。僕はもともとCTIレコードのアレンジャーとして仕事をしていた。その時にジョージ・ベンソンやグローバー・ワシントン・ジュニア、ニーナ・シモンといったアメリカのグレート・ジャズ・アーティストたちの仕事に携わることができた。でもそれは自分の人生においてはたった3年間のことでしかない。もっと遡ると、7〜8歳の頃に母親に連れられてケンタッキー州の小さな町に行った時に、「お願いだから何か買ってくれ」とねだって、初めてデイヴ・ブルーベックのアルバムを買ってもらったんだ。それからチェット・ベイカーを知ることになり、すべてのソロをコピーしまくるぐらい大好きになってしまった。後にホルンに転向したんだけど、中学から高校にかけてはトランペットを吹いていたので、チェット・ベイカーのソロは全部真似したし、ブルーベックのピアノ・ソロも一生懸命練習した。自分にとって音楽のヒーローはビル・エヴァンス、そしてマイルス・デイヴィスかな。最もクリエイティヴなミュージシャンとしてビル・エヴァンスを崇拝しているんだ。奇しくもマイルスはよくビルを起用してたくさんのアルバムを作ったよね。
 「ジャズとは何か?」という話をすることがよくあるが、なかなか答えは出せない。数ある回答の一つとして僕は、「ジャズとは単なる音楽ではなくて、一つの同じ形態の音楽を愛する人たちのコミュニティだ」と考えている。だからジャズ・ファンは僕と同じ音楽を愛するコミュニティの同志なんだ。愛する音楽をファンと共有できることは、楽しいだけではなくて本当に素晴らしいものだ。それがモチベーションになっていると思う。

それぞれの立場から、ジャズの本質を紐解いてゆくお二人

■常に訓練された耳で音楽を聴くことが大事

--大江さんが昔憧れていたピアニストや、コピーしたピアニストはいますか?

大江 フュージョンの頃はニール・ラーセンをコピーしたりしていたんですが、あとはビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」あたりが大好きだったかな。作曲家としてはセロニアス・モンクを敬愛していて、影響を受けています。今マシューズさんもおっしゃっていたチェット・ベイカーの歌も好きです。一聴すると誰でも歌えるようなシンプルなスキャットメロディなのに、なんでこんなにすべてのアイデアが詰まっているんだろうと驚きました。わずか16小節くらいなのに、卒論のレポートが書けちゃいそうなほど美味しいフレーズが連なっている。彼のスキャットは本当にものすごく素敵で、学校でジャズ・シンガー志望の子たちと休み時間に一緒にユニゾンで歌ったりしてましたね。

マシューズ 僕がジャズの世界に飛び込んだ当時、チェット・ベイカーはジャズ・ミュージシャンにはあまり受け入れられていなかったんだ。ファンキーさが足りないとか、スウィングしていないなどと言われていた。キャノン・ボール・アダレイも同じだったね。でも亡くなってから、ようやく彼らの奏でる本当に美しいメロディに脚光が当たるようになった。彼らのためにも本当に嬉しく思うよ。

大江 僕が大好きなアーティストの名前がマシューズさんの口から出てきてすごく嬉しいです。マシューズさんのCDを聴いていると、ビッグ・バンドの曲では、この曲の譜面はどうなっているんだろうと思うほど上から下まで幅広い音域を使っているし、ホーンのセクションやソリもすごく重厚です。いきなりフリーな場面が出てきたりするけれど、それも重要な意味を持っている。本当に上手いミュージシャンがいないと成立しないアレンジですよね。しかも素材がポップだったりファンクだったり、あるいはバッハだったりして、本当に何でも料理してしまう。その根底にはシンプルかつメロディックな要素があるんです。マシューズさんのソロも本当にメロディックなんですよね。会話をしているようで、観客が前のめりになった時に少し間を空けて、思いがけないところでアンティシペーション(編注:あるコードのコードトーンをノンコードトーンとして“食って”演奏し、その音を延ばして元のコードに解決すること)が入ってきたりする。しかも、想像できないほどの短さで終わってしまったりするんですよ。でもそれがすごく効果的なんです。

マシューズ 僕はかなり若い頃からジャズ・ミュージシャンになりたいと思っていたんだけど、ある時『DOWNBEAT』というジャズ雑誌を読んでいて、ジャズはスポンテイニアス・コンポジション−−−つまり意図的に構築するのではなく、その時の衝動に突き動かされて曲を作るものだと書かれていて、なるほどと思った。でもそのやり方が分からなかったから、作曲の勉強をしたいと親に頼み込んだ。メロディ作りに役立てたいと思ったんだ。結果的には作曲の学位を取得したんだけど、耳による学習もしていた。ビル・エヴァンスやレッド・ガーランドの楽曲を聴いて譜面に書き起こしたりしていたよ。やはりミュージシャンたるもの、耳を鍛えておくべきだと考えているからね。奏でられた音符や音符群が何を伝えようとしているのか、どのように絡み合い、どういう風に繋がっているのかということを理解した上で演奏しないと、その音符を自分のものにして、さらにそれに対する自分の反応を表現することはできない。常に訓練された耳で音楽を聴くことが大事だと思う。

大江 セロニアス・モンクの「ストレイト・ノー・チェイサー」をマイルス・デイヴィスが演奏した時に、レッド・ガーランドがピアニストとして参加していたんです。そのピアノ・ソロがとても有名で、ピアニストのアーロン・ゴールドバーグさんに教わっていた時に、それを聴き取って譜面に起こして持って行って弾いたら、その場でそれを破られてしまった。「君は歌手だったんだから、歌って耳で覚えなさい」と言われたんです。

マシューズ 賢明な先生だね。音楽は紙の上にあるものではなくて、常に身体の中、頭の中にあるものだから。それをきちんと教えてくれたんだね。



■ジャズの地平からもう一度ポップスを見てみると…

--ポップスの世界にいた時は、ポップスとジャズの違いをどのように捉えていましたか?

大江 ポップスをやっていた時には分からなかったんですよね。ポップスという音楽は理解度によってものすごく作品の振れ幅に差が出るジャンルで、ヒットした曲だからといって必ずしもできがいいわけではないんです。僕が言うのも口幅ったいんだけど、ジャズは構造が非常に数学的で、論理的に出来上がっているんですよ。ジャズというフィールドからもう一度ポップスを見ると、いかに音がぶつかっているかが分かる。でもそれを理解した上で、ザ・ビートルズなど本当に耳がいい人たちが作った作品を聴くと、理論では説明できなくても、すごく頷けるサウンドになっていたりする。バート・バカラックの究極のポップス、ギルバート・オサリバンの緻密なマスターピースにはいまだに好きな曲が多いし、何と言ってもチェット・ベイカーが自分で歌っている『シングス』というアルバムは本当にポップで音楽的で大好きなんですよ。

マシューズ ポップスというのはポピュラー・ミュージックに由来しているわけで、たくさんの人が好むようにできている音楽だ。みんなが聴いて、気に入ってレコードを買い、コンサートに行くというビジネス・モデルができている。ポップスの作曲家も心に訴える強いメロディを素直に作っていると思っているけど、一方でジャズというのはみんながみんな気に入るというよりも、コア・ファンの人が多い音楽なんじゃないかな。ファンという言葉もファナティック……つまり“熱狂的な”という言葉から来ているように、一部の人たちが熱狂的に愛する音楽がジャズなんだ。だからジャズ・アーティストの多くはあまりお金持ちではない。マイルス・デイヴィスやキャノン・ボール・アダレイ以外はね(笑)。
 ところで僕は最近東京に移住したんだけど、それこそ天に召されるまで可能な限りずっと弾き続けていたい。そこで、ライヴができるハコを探したいと妻に相談したところ、「あなたは有名なんだから、小さなハコというわけにはいかないでしょ」と言う。いやいや、どこでもできるさ。僕は観客の前で自分の心から湧き上がる音楽を演奏することが大好きで、そうすることが楽しくて幸せなんだ。とにかくやりたい。音楽というのは有名かどうかとか、お金がどうとか、そういうことではない。自分が本当に愛しているものをいつまでもやっていたいという気持ちなんだ。では、なぜ観客が必要かと言うと、音楽というのは対話のようなもので、ミュージシャンが奏でるものがあり、それを聴いてくれる人がいるから成り立つものなんだ。誰も聴いてくれる人がいないところで弾いていたら、ただの独り言になってしまう。このインタヴューを読んでいる人でピアニストが必要な人がいたら、いつでも呼んでもらってOKだよ(笑)。



■自分が音楽をコントロールしているという意識

--ポップスをやっていた頃と、ジャズを始めてからで、ピアノのプレイ面、特にタッチやリズムの取り方に違いはありましたか?

大江 違いはピアニッシモを意識するようになったということですね。小さい音でも細かく変化を付けて大小や膨らみをイン/アウトさせる。昔はリフ的なものを力いっぱい弾いて、その反動で声を出すような感じでした。今はそのフル・ヴォリュームを小さく注意深くして、その中で動いていくという弾き方をしています。リズムの取り方も全く違っていますね。スウィングと言っても、かつては河内音頭みたいに跳ねていたので、その辺りから全部血を入れ換えなきゃと、レッスンを受けたりしたんです。

マシューズ 自分が演奏する時は、指に意識を向けているという感覚はない。脳にコントロールされて動いているというイメージかな。意識して指を動かそうとしているのではなく、脳と指先が一体化して連動している感じだ。自分で指を動かしているのではなく、他の人が動かしてくれているようなイメージで指が動いているという状態だね。

大江 マシューズさんが口ずさみながら演奏されているのを見たことがあるんですが……。

マシューズ それに関しては、20年ほど前から意識してやっているんだよ。自分が音楽をコントロールしているという意識を持つために、敢えて口から出すことにしている。指の筋肉が勝手にやっていることを成果物にするのではなく、自分が本当に脳で意識した音楽を奏でているという意識を強めるためにね。

大江 例えばファの音から始まって、下がっていくとこういうジャズ・フレーズのストックがあり、次にラに行く時にはこういうストックがある。でもものすごく好きだという気持ちをどうやって伝えたらいいんだろうと思って無意識に弾いていると、ストックにないすごくいい愛溢れるフレーズが出てきたりすることがある。弾き終わってから「今のすごく良かったかもしれない、何だったのだろう?」と思うことがあるんです。それをアナライズできればいいんですが、マシューズさんのお話をじっと聞いていて、「そうか、脳か」と思いました。

マシューズ 今の話のように、例えばファまで行って、きっとこの先こうなるだろうというセットがあったとしても、全く自分も予期していなかったところに着地することがある。そうすると「新しいことをやってのけたぞ、何かを作ったぞ」という感覚があって、本当に素晴らしい気持ちになるんだ。

大江さんのニュー・アルバム『answer july』(初回限定盤)をマシューズさんへ進呈

■最後は互い近作を試聴

--ところで、マシューズさんは最近、松田聖子さんの新作『SEIKO JAZZ』のアレンジも話題になっていますね。

マシューズ [日本語で]ねえ(笑)。初めて松田聖子さんにお会いしたのは、実は32年も前のことなんだ。彼女がニューヨークでアルバム(編注:『SOUND OF MY HEART』1985年発売)をレコーディングするということで、フィル・ラモーンがプロデュースして私がアレンジを担当した。30年以上経って再びニューヨークで一緒に仕事をすることになったわけだね。ありきたりな表現になってしまうけれど、彼女は本当にグレートなシンガーだと思っている。スタジオで鼻歌を歌っていたことがあったんだけど、それを聴いただけでも素晴らしい声で感銘を受けたよ。日本のスーパースターの座に長年君臨しているけど、人間としても素晴らしい方だ。また一緒に仕事ができて嬉しかったよ。

--試聴コーナーでは、互いの推薦曲として、大江さんの最新作から「answer july」、そしてマシューズさんの最新録音はハイレゾで「Besame Mucho」などを聴いていただきました。それぞれの印象はいかがでしたか?

大江 目の前で人が演奏しているのが見えるという印象でした。テナーがアルトのように高域からハリがある音に聴こえるし、トランペットもラテンとジャズが混ざり合い、どんどん早口になっていくようなスリルがあって最高ですね。

マシューズ ハイレゾだとドラムの音が本当に映えるね。

大江 風船が大きくなるような感じで、映像が立体的に膨らむイメージがあります。

マシューズ スピーカーから聴こえてくる音そのものが、まさにスタジオで自分の感じていた音なので、本当に素晴らしい。それに大江さんの音楽は、本当に興味をそそる音楽だと思います。美しいポップ・ソングのようにも聴こえますが、よく聴いてみると深みがあって、美しいメロディを持った素晴らしい楽曲だと思うね。

--お二人とも、今日は興味深いお話をありがとうございました。

素晴らしい音楽に、ハイレゾ試聴後も話が弾む



大江千里『answer july』 ソニーミュージック VRCL-10132(CD)
大江さんのジャズ作品として4作目となる本作は、シーラ・ジョーダンやベッカ・スティーヴンス、ジョン・ヘンドリックス、ローレン・キンハンを迎えた初のジャズ・ヴォーカル・アルバム。

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■ライヴ情報

「MJQジャパン・ツアー2017 〜スイングしなけりゃ意味ないね〜」

●マンハッタン・ジャズ・クインテット
デヴィッド・マシューズ(leader & p)、マイケル・ロドリゲス(tp)、クリス・ハンター(sax & fl)、ハンス・グラヴィシュニク(b)、クリフ・アーモンド(ds)

全国ツアー・スケジュール

9月9日(土) 熊本県・大津町文化ホール
問い合わせ:大津町文化ホール Tel.096-293-2146

9月10日(日)静岡県・島田市プラザおおるりホール
問い合わせ:プラザおおるりTel.0547-36−7222

9月11日(月)名古屋ブルーノート
問い合わせ:名古屋ブルーノートTel.052-961-6311

9月13日(水)千葉県・浦安市 浦安コンサートホール
問い合わせ:浦安音楽ホールTel.047-382-3035 

9月14日(木)ビルボードライブ東京
問い合わせ:ビルボードライブ東京Tel.03-3405-1133

9月16日(土)北海道・新冠レ・コード館
問い合わせ:新冠レ・コード館Tel.0146-45-7833

9月17日(日)北海道・幕別町百年記念ホール
問い合わせ:幕別町百年記念ホールTel.0155-56-8600

9月18日(月) 札幌グランドホテル グランドホール
問い合わせ:札幌グランドホテル 宴会予約係 Tel.011-261-3333

9月20日(水)ビルボードライブ大阪
問い合わせ:ビルボードライブ大阪Tel.06-6342-7722

9月21日(木)岡山市・未来ホール
問い合わせ:OHKエンタープライズ Tel.086-255-2888

9月23日(土)神奈川県・大和市やまと芸術文化ホール
問い合わせ:やまと芸術文化ホールTel.046-263-3806

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