HOME ニュース 連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第38回 2016/08/03 CASIOPEAハイレゾ × 一挙18作品 (後編) ~ ハイレゾ界を変える?超高音質音源襲来!~ ● カシオペア愛を感じる、最新リマスタリング 度肝を抜かれた、ソニー・ミュージックスタジオでのカシオペア・ハイレゾ試聴。取材は核心へと迫っていきます。 この鮮烈サウンドは、いったいどうやって誕生したのでしょう。気になるのは、マスター音源のサウンドが実際どうだったのか?というところです。 鈴木:「それはもう、演奏、パフォーマンス的には文句無しに“おおっ!”という感じです。音質的には、アナログマスターテープですと、時代によっては多少の劣化というか、ちょっとナローになっている感じもありました。そのあたりは僕の仕事として、時代とマスターの状態を考えながら補正をしていくというマスタリング作業を行っています。」 それにしても、このハイレゾ作品にはカシオペア愛を感じずにはおれません。単に高音質化したというより、きちんとカシオペア・サウンドのツボを理解してくれているという安心感が、音から伝わってくるのです。 鈴木:「リマスタリングって、非常に難しい。今っぽくしちゃえばいいってわけでは全然なくて、その時代、もしくはその時代のパフォーマンスの素晴らしさを伝えることが重要なんです。カシオペアは、もちろん好きでしたよ。学生時代、それこそ「朝焼け」なんかは何度耳にしたことか(笑)。」 ● やっぱりアナログマスターテープが一番? 今や世界的ドラマー神保彰氏の華々しいデビューを飾ったのが、ライブアルバムの『THUNDER LIVE』。2曲目「セイリング・アローン」が、ソニー・ミュージックスタジオのハイレゾ試聴で素晴らしかった!同席のオーディオ評論家・三浦孝仁氏に解説していただきました。 『THUNDER LIVE』(96kHz/24bit / DSD2.8MHz)/CASIOPEA 三浦:「僕は、やっぱり『THUNDER LIVE』までが一番好き。カシオペアのEastWest時代から、ドラマーが神保さんに変わって洗練されていった頃までの流れを、リアルタイムで知っているわけですよ。『THUNDER LIVE』で凄いのは、神保さんはカシオペア加入直後なんだけど、それ以前の楽曲を、早くも自分のモノにしちゃっているところ。でも、原曲のイメージは壊さない。その上手さが、神保さんには最初からあったんだと僕は思いますね。 アナログマスターって、LPレコードのカッティングを目的としている時代のものだから、今のデジタルにするときにはレコード時代とは違う音作りをしてほしいと思っています。LPレコードが全てではなく、もっともっとマスターテープには、いっぱいいろんな音が刻まれていたと僕は思う。それが今回、カシオペア・ハイレゾの音を聴かせてもらって、すごく良く出てるなと。特に僕みたいに初期カシオペアファンの人からするとゴキゲンなんですよ。」 ● いやいや、デジタルマスターのハイレゾ化も素晴らしいぞ! 確かに初期3作品のアナログマスターは最高です。ですが、私は圧倒的に神保&櫻井の鉄壁リズム隊になってからのカシオペア派。デジタルマスターのハイレゾ化はどうなのか?『EYES OF THE MIND』や『4×4 FOUR BY FOUR』を聴かせてもらいました。 この音が、まさか44.1kHz/16bitから製作されたハイレゾ音源だとは!超高域補正にありがちな、立体音像=位相感の乱れが無いのが素晴らしい。音像は広く、そして分厚いサウンド。アナログマスターからハイレゾ化した初期3作品に金メダルは譲るものの、僅差の銀メダル、銅メダルと言って過言ではないでしょう。 何より、思い出のアルバムが鮮烈に蘇るこの感覚。これこそが旧譜のハイレゾ化に私が望むものです。レコードが擦り切れるくらい聴き、CDのA-B間リピート再生を繰り返して演奏コピーに挑戦したあの楽曲たちが、今、色鮮やかに眼前へと広がっています。44.1kHz/16bitからのハイレゾ化で、私が初めて太鼓判を押せる作品に出会いました! ● DSDか96kHz/24bit、どちらがオススメ? 乃木坂のソニー・ミュージックスタジオで聴いたのは全てDSD音源でした。DSDと96kHz/24bit、どちらがマスタリング・エンジニア的にオススメなのでしょうか? 鈴木:「今回のカシオペアでいうと、DSDがオススメです。本当は96kHz/24bitとDSDの2つとも聴いて楽しんでほしいんですけど(笑)。どちらとも、ちゃんとそれぞれの規格に合わせた音作りをやっていますから。作品によっては96kHzが好きな時もありますね。曲や楽器の数によっては、96kHzの方が合うなという感じです。リマスタリングにおいては、特に古いものはそのまま素直に表現できるという意味で、DSDの方がよりやりやすいというか、表現ができやすい。ナチュラルというか、感情的な部分がDSDは自然に伝わります。」 ● この超絶ハイレゾ、自分のシステムでどうやって鳴らす? さて、ソニー・ミュージックスタジオでのハイレゾ試聴ショックから冷めやらぬ数日後、自分のシステムでもカシオペア・ハイレゾに挑戦です。スタジオで聴いたのと同じ数曲を、発売前ですが試聴することができました。比較のため、DSDと96kHz/24bitの2種類を用意してもらっています。 大丈夫、あの音が鳴ります! 圧倒的な鮮度と音の切れ味。そして聴いたことのないようなダイナミクス溢れるサウンド。ソニー・ミュージックスタジオと同じ迫力、同じ感動が得られるかどうかが一番の心配でしたが、バッチリ鳴ってくれています。スピーカーだけでなく、イヤホン/ヘッドホンでもガンガン鳴ってくれました。 ただ、DSD音源は、ちょっぴり不完全燃焼。私のメインシステムでは、今回のカシオペア・ハイレゾならば、96kHz/24bitの再生の方が素晴らしい結果となりました。DSD音源は小型のUSB-DACからの再生で、96kHz/24bitを再生するメインのDAコンバーターとの実力差が出てしまったようです。私のメインDAコンバーターは、残念ながらDSD非対応なんです。同じ小型USB-DACで96kHz/24bitとDSDを再生すると、DSDの方が優れています。しかし、メインDAコンバーターの96kHz/24bitが、私のシステムでは一番の高音質という結果でした。 DSD音源には、まだまだ秘めた実力がありそうだと感じました。民生機では、もしかしたらDSD音源の全てを味わい尽くせていないのではないでしょうか?フォーマットの数字を追い求めるのではなく、本気でDSD音源を鳴らしてくれるDAコンバーターに、早く私も出会いたいものです。 ● オススメのカシオペア・ハイレゾは、この3作品! 私の独断で3作品を選んでみました。 『CASIOPEA』 『THUNDER LIVE』 『4×4 FOUR BY FOUR』 『CASIOPEA』は、何と言ってもアナログマスターテープからのハイレゾ化であり、当時のカシオペアのキャッツフレーズ通り、“スリル、スピード、スーパー・テクニック”が堪能できます。DSD再生環境があれば、DSD音源がオススメ。ソニー・ミュージックスタジオの鮮烈さを想像しながら、皆さんも挑戦してみてください。 『THUNDER LIVE』は、ドラマー“世界の神保”のデビュー作。当時、弱冠20歳の神保氏が叩き出すリズムの洪水が、ハイレゾで鮮明に描かれています。こちらもアナログマスターテープからのハイレゾ化ですので、再生環境があればDSD規格がオススメ。ライブ盤とは思えぬ完璧な演奏、そして天才たちの若き日のエネルギーが流れるアルバムです。 『4×4 FOUR BY FOUR』は、来日したリー・リトナー(ギター)、ドン・グルーシン(キーボード)、 ネイザン・イースト (ベース)、ハーヴィー・メイソン(ドラム)と共演した作品。来日公演のリー・リトナー・グループの空き日を逃さず、わずか9時間でレコーディングしたとのこと。神保氏によると、海外チームは全て譜面初見での演奏だったいうから驚きです。ドラムはブースに分かれるのではなく、2台並べての演奏だったとか。こんな豪快な企画は、今では絶対に考えられません。その熱演がハイレゾ化で蘇りました。過去のCD盤を寄せ付けぬ、『4×4 FOUR BY FOUR』史上最高音質です。Uマチックデジタルマスターからのハイレゾ化ですので、素晴らしいのはDSDだけでなく、96kHz/24bitも超ゴキゲン。私なら96kHz/24bitを買います。 時代とともに、だんだんと音質が硬くなっていく印象はあります。私は個人的に、初期作品の方がハイレゾ化に向いており、より高音質だと思います。そのあたりをマスタリング・エンジニアの鈴木さんにぶつけてみました。 鈴木:「作品が現代に近づくにつれ、いろんなことをやり始めています。深いコンプレッションをかけ、良い意味では音が洗練されていく印象です。素直な感じのサウンドといえば、初期作品の方でしょう。マスターの中の音も、初期作品がより素直な感じです。時代の移り変わりと、音作りの流行り廃りみたいなものもあります。演奏の変化があり、演っている場所も変わっていきます。ある意味、全作品聴くと面白いですよ。」 『Down Upbeat』や『SUN SUN』なども大好きですので、これから私もハイレゾで聴くのが楽しみです。試聴済みの作品しか太鼓判ハイレゾを選出しないという本連載のルールから、上記3作品を私は押したいと思います。もちろん、発売後は全作聴きますよ! 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