T-SQUAREのドラマー坂東慧が最新ソロ『Step By Step!』を発表! 「ミュージシャン同士の音の会話まで楽しめるのはハイレゾならでは」

2016/06/29
日本を代表するフュージョン・バンド、T-SQUAREのドラマー/コンポーザーとして活躍している坂東慧さんが、最新ソロ・アルバム『Step By Step!』をリリース。ハイレゾ音源の配信もすでにスタートしています。そこで、ご本人を試聴室にお招きし、本作のハイレゾ音源を試聴してもらいながら、レコーディングのエピソードなどを伺いました。お相手は、雑誌『キーボード・マガジン』の元編集長、大山哲司さんです。

インタビュー・文◎大山哲司

『Step By Step!』
/坂東慧


■ ロサンゼルス録音の様子と曲作りを振り返って

 T-SQUAREのドラマーとして活躍している坂東慧が3枚目のソロ・アルバム『Step By Step!』を発表した。爽快なフュージョン・サウンドがはじける、夏にピッタリな好盤だ。本作では4曲がLAでレコーディングされ、エリック・マリエンサル(sax)、マイケル・トンプソン(g)、マイケル・ランドウ(g)、フィリップ・セス(key)、ブランドン・フィールズ(sax)といった錚々たるミュージシャンとのバトルを展開している。まずはそのあたりの経緯から聞いてみよう。

 事務所の社長から、「LAでレコーディングしてみないか」という話をいただいたんです。予想もしていなかったのでビックリしましたね。早速、ミュージシャンをリストアップしてもらって、その中から共演する方をピックアップさせていただきました。
 LAでは「Sunset Blvd.」「Headin’to Laguna Beach」「Feel So Good!」「Step By Step!」の4曲を録りました。10日間行っていたんですが、最初の2日間は一発録りでした。向こうのミュージシャンたちの仕事の速さには驚かされましたね。事前にフルサイズのデモを作って、譜面と一緒に渡していたんですが、2回ぐらい弾けばOKテイクが録れちゃうんですよ。各自のソロも2テイクぐらいで全部OKになった。それからマイケル・トンプソンのギター録りが1日あって、その後はミックス・エンジニアに渡して僕はジャケット写真を撮ったりしていました。

 T-SQUAREでもソングライターとして数々の作品を生み出している坂東慧。バンドで演奏する楽曲と、ソロの楽曲とでは何か違いがあるのだろうか?

 T-SQUAREには40年という歴史がありますから、伊東(たけし)さんや安藤(正容)さんの音色やプレイ・スタイルを生かしつつ、何か新しい要素を融合させられればいいなと考えています。ソロ・アルバムの方は、自分の中から出てきたものをそのまま素直に出すという感じです。
 曲作りにはキーボードを使っています。キーボードを弾きながら鼻歌を歌ってメロディを作るという感じで、コードとメロディを同時に作り、リズムが最後になることが多いですね。それからDAWを使ってデモを作ります。
 このアルバムでは、ベーシックなピアノやローズ系の音とシンセ・ソロは全部キーボードの方にやっていただいたんですが、パッド系などの曲の色づけとなるシンセサイザーは僕が全部ダビングしました。音色の作り上げ方などは河野(啓三)さんに勉強させていただいています。T-SQUAREに加入してもう11年経つんですが、最初のころからずっと河野さんのダビング作業を見ていたので、そこから得たものは武器になっています。

〈ニュー・アルバム『Step By Step!』の聴きどころなど、たくさんの話題を届けてくれた坂東慧さん〉

■ ずっと聴き続けていたT-SQUAREの音楽

 実は坂東はドラムを始める前にエレクトーンを学んでいた。その経験が曲作りにも生かされているようだ。彼の曲を聴くと、コードの感覚がキーボードっぽい。現在の“坂東慧”ができるまでの歴史を簡単に振り返っていただこう。

 エレクトーンは4歳から中学2年までやっていました。でも全然練習していなかったので、怒られてばかりでしたね。たいしたことは弾けない(笑)。でもコードの感覚がキーボードっぽいとはよく言われますね。ギターの人からは難しいと言われます。
 ドラムを始めたのは8歳の頃です。エレクトーンのレッスン・スタジオにドラムが置いてあって、それを遊び半分で叩いてみたことがドラムを始めるキッカケでした。簡単にデカい音が出るし、小さい動作で鍵盤を弾くよりも、ドラムの方が動きもあるし楽しかったんですね。ちょうどそのときにやっていた課題曲が「OMENS OF LOVE」でした。そこでTHE SQUAREの音楽と出会い、ライブも観に行くようになりました。当時のドラマーの則竹(裕之)さんに憧れて、コピーをするようにもなりました。
 バンドをやり始めたのは中学生のころです。フュージョンをやるメンバーがいなかったのでL’rc-en-Cielとかやっていましたよ(笑)。当時は海外のミュージシャンにもだんだん興味を持つようになってきて、リー・リトナー、ラリー・カールトン、デイヴ・ウェックル・バンドなどを聴いていました。それからパット・メセニー・グループあたりも。ドラマーとしてはデイヴ・ウェックル、ヴィニー・カリュータ、スティーヴ・ガッドが好きでしたね。それからだんだんテリー・ボジオに行ったり、フランク・ザッパを聴いたり。トニー・ウィリアムス、アート・ブレイキー、バディ・リッチあたりも聴きましたね。いろんなジャンルに興味を持っていて、いろいろと研究していました。
 その後、菅沼孝三さんの道場に通ったんですが、あるとき孝三さんが六本木PIT INNのオーナーさんを紹介してくださったんです。セッションを組んでいただいたんですが、そのときに河野さんと一緒になりました。そこからT-SQUAREにつながっていったという感じですね。そのセッションから1週間後にテレビ番組『タモリ倶楽部』にT-SQUAREが出るという話があったんですが、たまたま則竹さんのスケジュールが合わなかったんです。河野さんから「トラで来ませんか?」とお誘いがあり、これはチャンスだと思いましたね(笑)。それから約半年で正式加入ということになりました。SQUAREの音楽はずっと聴き続けていたので、曲は自然と覚えていましたね。

 そう言えば、以前ここでT-SQUAREのアルバム『PARADISE』について安藤正容らにインタビューした際、坂東が加入する前からSQUAREの楽曲をすべて熟知していたことに驚いたと語っていたのを思い出す。

■ 迫力ある音像がナチュラルに響くLAレコーディング

 さて、今回のニュー・アルバムにはもちろん、BANDO BANDのメンバーとともに日本でレコーディングした作品も収録されているが、LA録音での音の違いなどは感じられたのだろうか?

 BANDO BANDのメンバーは、僕が作る世界観を一番理解して表現してくれるので、最高のメンバーだと思っています。一方、LA録音のメンバーは、日本のメンバーの個性とはちょっと違う方向で選びましたが、初めての顔合わせでどういう演奏が返ってくるのか、最初は予想できなくて不安でもあったんです。
 マイケル・ランドウは最近すごく渋くて、あまり弾かない印象がありました。ブルージーな、すごくスペースのある演奏をしているから、こういう曲を弾いてもらえるのかなとも思っていたんですが、本人的には楽しんで弾きまくってくれたようです。安藤さんもこのアルバムを聴いてくれて、「ランドウがあんなに弾いているのは最近あまりないから、すごく楽しいね」と言ってくれました。しかもすごく近くで弾いてくれたんですよ。アンプは別の部屋に置いてあって、本人が来るまでは別のブースに入って弾くのかなと思っていたんですが、「ドラムの横で弾きたい」と言ってくれて、すごく近い距離でセッションできたんです。本当に嬉しかったですね。
 フィリップ・セスは独特なコードの響かせ方をする人なので、僕としてもそこを狙っていました。自分の持っているコード感とは別のものを期待していたので、すごくいい響きが録れました。
 LAで最初に生音の状態で聴いたときにはあまり音の違いを感じなかったんです。でも、マイクを通してエンジニアが作った音をスタジオで聴いたときにはすごく違いを感じました。音像がデカい。太いし迫力もある。それでいてすごくナチュラルな鳴りだったのでビックリしました。
 「大きい景色を観ているようにしたい」ということはあらかじめ伝えていたんです。LAのでっかい青空のようなイメージでやってほしいと。スタジオに行ってコントロール・ルームに入ったら、大きな青空のイラストが描かれた紙が、コンソールとモニターの間にバーンと貼ってあったんです。そこに僕の写真が貼り付けてあって、その紙を貼ったまま作業をしていたんですよ。響きが変わっちゃいそうな気がするじゃないですか。でもそんなことは関係ないんだと思いましたね。イメージを大切にしてやってくれる。でもまさかそこまでやるとは思わなかった(笑)。

〈本作4曲分のレコーディングが行われたWestlake Recording Studios(LA)のコンソール・ルーム一面に描かれた青空 [写真提供:坂東慧]〉

■ ドラムとベースはアナログ・テープを通して録音

 曲のクオリティの高さは本作最大の魅力だが、もちろんドラマーとしての坂東のプレイも存分に楽しめる。ドラムのプレイやサウンドへのこだわりについて聞いてみた。

 プレイに関しては、「bb Freeway」の最後のドラム・ソロが聴きどころかな。キメが新しい感じにできたんじゃないかなと思って作ったんです。作ったのは自分なんですが、テンポは速いし、ランダムにキメが入ってくるので、いざ叩いてみると難しかった。ほかのメンバーもヒィヒィ言いながら演奏していましたね(笑)。なかなかいいテイクが録れたので、ぜひ注目して聴いてみてほしいですね。
 サウンドに関しては、僕はアナログの音が好きなので、今回はドラムとベースだけアナログ・テープを通して録りました。一度テープに録ってからデジタルに変換したんです。ドラムに関してはアナログの方が全然音が太いんですよ。自然なコンプがかかる感じも好きですね。
 ミックスに関して気になるのはタムですね。基本的に大きく出して欲しいんです。あとスネアの表と裏のバランス。スネアの裏に耳を近付けて聴いたりはしないし、基本的には表の音しか聴いていませんよね。だから裏の音が出過ぎているミックスはあまり好きではないんです。あとキックの低音の出方も気になります。
 LAのミックスは見事なものでした。とにかく世界が大きいんですよ。ハイレゾで聴いたら、日本で録音したサウンドとの違いが分かるかもしれませんね。

■ ハイレゾ試聴「より立体的でリアルな印象でした」

 ということで、実際にハイレゾで視聴してもらうことにした。そのサウンドは予想をはるかに上回るものだったようだ。

 すごくいい音ですね。1曲目を聴いた瞬間にLAに戻りました。あのときの空気感が甦ります。レコーディング時に聴いていた音よりもいいんじゃないかな。より立体的でリアルな印象でした。映像が見えますね。メンバーがすぐそこで弾いているような感覚です。
 音の解像度も高くて、それぞれの楽器がハッキリと聞こえます。「Headin’to Laguna Beach」は、ギターとサックスが中央に定位されているんですが、ほんの少し左右に振られていることに今初めて気付きました。分離がいいですね。マスタリングのときにも気が付かなかったんですよ。

 一発録りでレコーディングしているので、ハイレゾだとミュージシャン同士の音によるちょっとしたコミュニケーションも聴き取れるんじゃないかな。あるフレーズに反応してこのフレーズを弾いているんだなというような、音の会話が楽しめると思います。リスナーにもぜひこういう環境で聴いてほしいですね。

 9月2日には発売記念ライブが行われる。具体的な内容はまだ決まっていないようだが、3枚のソロ・アルバムに収録された曲をたっぷり楽しんでもらえるようなステージにしたいと意気込む。どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。

〈最新作をハイレゾで試聴。「これはすごいですね。一度聴けば、もう戻れなくなりそうです」とその印象を語ってくれました〉

【坂東慧ソロ・アルバム『Step By Step!』発売記念ライブ】

●2016年9月2日(金) 東京 渋谷マウントレーニアホール
開場18:00 開演19:00
前売り4,500円/当日5,000円(ドリンク代別途500円)
出演:坂東慧(Dr)、宮崎隆睦(Sax)、田中晋吾(Ba)、菰口雄矢(Gt)、白井アキト(Pf、Key)
主催:T-SQUARE MUSIC ENTERTAINMENT Inc.
席種:全席自由(整理番号順の入場)
会場お問い合わせ:03-5459-5050(受付時間 全日 11:00~20:00 ※年始を除く)
※一般発売 6月25日(土)

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