【最大44%オフ】麻倉怜士セレクト「普遍」と「革新」に挑戦しつづけた創立125周年のドイツ・グラモフォン傑作集

2023/10/27

設立125周年を迎える世界最古のクラシック専門レーベル「ドイツ・グラモフォン」。e-onkyo musicでは連続企画で、その本質と魅力に迫ります。シリーズ第4弾となる今回は、前回に引き続きオーディオ評論家の麻倉怜士氏をセレクターに迎え、名演奏家の宝庫ともいえるドイツ・グラモフォンの作品群より『「普遍」と「革新」に挑戦しつづけた創立125周年のドイツ・グラモフォン傑作集』と題して、演奏、録音ともに優れた作品を厳選してご紹介いたします。

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●はじめに


 ドイツ・グラモフォン(DG)は1898年6月、円盤レコードを発明したエミール・ベルリナーが、故郷のドイツ・ハノーファーに建てたプレス工場からスタートした。もともとはイギリスのグラモフォン社(旧EMI)の子会社だったが、第一次世界大戦で敵国資産として没収、ドイツ・グラモフォンとなった。以来、DGがメディアを通じたクラシック音楽の普及に果たした役割は、限りなく大きい。再生メディアはSP、モノラルLP、ステレオLP、CD、SACD、ハイレゾ、ダウンロード、配信……と激変しているが、クラシック録音のメッカとしての地位は、いつの時代も不動だ。

 DGの凄さは、常に最高の音楽家の名演奏をパッケージ化し続けていることだ。1913年に、巨匠ニキシュとベルリン・フィルで、ベートーヴェンの「運命」を機械式録音したのを嚆矢始とし、20世紀最高の指揮者と言われるヴィルヘルム・フルトヴェングラーはベルリン・フィルやベルリン国立歌劇場管弦楽団を指揮し、電気録音(磁気ワイヤー、テープレコーダー録音)で続いた。
 戦後のDGは50年代以降、黄金時代を迎える。フルトヴェングラーの後釜を襲ったヘルベルト・フォン・カラヤンと契約。カラヤンはヨーロッパ楽壇の帝王に昇りつめ、DGに名録音を数多く遺した。ベルリン・フィルとの強力コンビによるベートーヴェン、ブラームス全集を初め、スカラ座とのオペラシリーズなどで、絶大な人気を博した。その後、DGのアーチスト陣容は若手からベテランまで多種に拡大、発展していく。

 その125年の歴史を貫くキーワードが、「普遍と革新」だ。DGはクラシック音楽のもっとも普遍的、定番的なカタログを、網羅する。バロック以前から現代音楽まで、バラエティに富んだスタイル、作曲家の作品が揃う。特にドイツ・オーストリアの作品の充実度は、他レーベルの追随を許さない。それは演奏もそうだ。まずはDG作品を買っておけば、普遍的な名曲、名演奏が聴ける。
 今回、ピックアップしたなかでは、ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタイン、クラウディオ・アバド、サー・サイモン・ラトル、アンドリス・ネルソンス、ワレリー・ゲルギエフ---の指揮者、マウリツィオ・ポリーニ、マルタ・アルゲリッチ、クリスチャン・ツィメルマン、ダニエル・バレンボイム、ピエール=ロラン・エマール、エレーヌ・グリモー---のピアニスト、アンネ=ゾフィー・ムター、ルノー・カプソン、ヒラリー・ハーン、ダニエル・ホープ----のヴァイオリニストは、まさにDGの「普遍性」を代表するエバーグリーンなアーチストだ。
 一方DGには、音楽シーンを革新するアーチストも多数、擁す。ヤニック・ネゼ=セガン、マンフレート・ホーネック、ジャナンドレア・ノセダ、 ミッコ・フランク、ジョン・ウィリアムズ、マックスリヒター---の指揮者、作曲家、ユジャ・ワン、チョ・ソンジン、ヤン・リシエツキ、ヴィキングル・オラフソン、チョ・ソンジン、ブルース・リウ---のピアニスト、リサ・バティアシュヴィリ、ダニエル・ロザコヴィッチ、マリア・ドゥエニャス---のヴァイオリニストたちが、斬新な音楽を展開する。
 革新といえば技術革新への視座も見逃せない。SP、モノラルLP、ステレオLP、CD、SACD、ハイレゾ、イマーシブ……とメディアが革新されるたびに、いちはやく対応し、世界の名演奏家の名演を新メディアに載せて、積極的に世に送り出している。最近ではストリーミング時代に、より簡便に名演奏、名ライブにアクセスできる独自の定額制配信サービス「STAGE+」をスタートさせている。
 「普遍」と「革新」に挑戦しつづけた創立120周年のドイツ・グラモフォン・ハイレゾ傑作集をダウンロードして楽しもう。

麻倉怜士

 




■オーケストラ作品

¥11,714 → ¥6,794

『ベートーヴェン:交響曲全集』
ヨーロッパ室内管弦楽団, ヤニック・ネゼ=セガン





 2020年のベートーヴェンの生誕250年を記念して交響曲全集。まさに「革新」のベートーヴェンだ。ヤニック・ネゼ=セガンとヨーロッパ室内管弦楽団のコンビではシューマン、メンデルスゾーン交響曲に次ぐ、3回目の共演。
 軽快で、雄暉、そして敏捷……聴き慣れた音楽から、まったく新しい曲想を引き出す。実に新鮮で、聴いたことの無いベートーヴェンだ。あらゆるフレーズにヴィヴットな生気が漲り、ハイスピードで駆け抜ける。爽快で、痛快な最先端のベートーヴェンだ。俊速な中にもアクセントが籠もり、メリハリの効いたダイナミックな音楽が展開する。「英雄」第1楽章の3拍子はまるで俊速舞曲のよう。「運命」の休止符の短さにも驚く。「田園」も田舎の情緒を感じる間もなく、田舎道をフルスピードで駆け抜ける。7番第4楽章は、まるで新幹線。ハイスピード、ハイシャープネス、ハイコントラストな新時代の超特急ベートーヴェンだ。録音は極上。ソノリティとオーケストラの直接音が、上手くバランスしている。2021年7月、バーデン・バーデンの祝祭劇場で収録。



¥5,093 → ¥3,055

『ブルックナー:交響曲第1・5番/ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》より前奏曲と愛の死』
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団アンドリス・ネルソンス


 アンドリス・ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によるブルックナー・シリーズのファイナルアルバムだ。ブルックナー交響曲全集完結のめでたいアルバムの冒頭に「「トリスタンとイゾルデ」前奏曲を配置した意味と意義とは何か。2021年5月にライプチヒ・ゲバントハウスにての録音だが、これはコロナ禍真っ最中だ。まさにトリスタン和音に象徴される危機と混迷の時代にあって、その響きの持つ意味と深さを体感させてくれる名演なのだ。冒頭の第1小節の熱いクレッシェンドを聴くだけで、その思いが伝わってくる。
 スケールの雄大さと、各プルトの質感の良さが両立した名録音だ。弦、木管、金管のバランスが良く、FFでは音響的な包み込みが、現場的な臨場感を高める。ゲバンドハウスの会場のソノリティの美しさも、本アルバムの価値を高めている。ある程度離れた距離から客席で聴いているような空気感が感じられる。現場的なソノリティ。オーケストラの奥行きも深い。2019年5月、 2020年11月、2021年5月、ライプツィヒ、ゲヴァントハウスで録音。


¥3,748 → ¥2,108

『マーラー:交響曲第9番』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団, レナード・バーンスタイン



 超有名な作品だ。当時のカラヤンの独裁下にあったベルリン・フィルが奇蹟的にライバル、バーンスタインの粘度の高い濃密なマーラーを演奏したことで大評判になった。ハイレゾでは、パズルのような音の重層感と密度感が痛切に感じられる。ベルリン・フィルハーモニーホールの開放的な音調でも、これほど高密度で濃いマーラーが聴けるのがバーンスタイン版の醍醐味。カラヤンのチョコレートケーキ的なスウィート系マーラー像とは次元を異にする。録音はやや古さを感じさせるが、剛毅なグロッシーさは堪能できる。バーンスタインがベルリン・フィルを指揮したのはこの1979年10月4日と5日録音のマーラー第9のみ、だ。まさに 一期一会。








¥3,871 → ¥2,241

『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番・第8番・第9番 他』
ボストン交響楽団アンドリス・ネルソンス


 アンドリス・ネルソンス指揮、ボストン交響楽団のショスタコーヴィチ:交響曲第5番、第8番&第9番は特に素晴らしい。ネルソンスの音楽は聴き手も奏者も幸せにする。聴き慣れた名曲から新しい姿が立ち現れる。
 交響曲第9番変ホ長調。弦のヴィヴットな愉しさ、ピッコロのコケティッシな表情、ファゴットやオーボエの懐かしさ、そしてトゥッティの見渡しのクリヤーさ、解像度の高さ……など、さすがのハイレゾ力。ボストンシンフォニーホールのソノリティの暖かさ、響きの豊かさ、ディテールまで磨き込みの麗しさ……は音場再現の幸せだ。
 交響曲第5番ニ短調第1楽章の悲劇的な序章でも、透明感の高さと潤いを忘れない。第4楽章は、多数の楽器が重なっているのに、これほどにもクリヤーな音調が得られるのか、驚くほどだ。この曲にありがちな、いかにも鉄のカーテン的な重々しさや悲劇性とは無縁の透徹感と、いまにも踊り出したくなるようなリズムのヴィヴットな弾みは、まさにネルソンスだ。


¥3,871 → ¥2,241

『ライヴ・イン・ウィーン』
アンネ=ゾフィー・ムターウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ジョン・ウィリアムズ


 ジョン・ウィリアムズとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は初顔合わせ。あのウィーン・フィルが「スターウォーズ」!という意外性が愉しい。ムジークフェライン・ザールで、2020年1月に録音と、コロナ禍直前の滑り込みライブだった。
 「スターウォーズ」は映画サウンドトラックのロンドン交響楽団バージョンが有名だが、さすがはウィーン・フィル。柔らかく、しなやかで、艶に満ちたサウンドだ。ハリウッド流の華やかさと、ヨーロッパの伝統が重なった音調。ムジークフェライン・ザールの豊かなソノリティとウィーン・フィルのグロッシーさが相俟って、映画音楽に深い意味合いを与えている。「13.Raider's March」の冒頭のトランペットはマーラーやブルックナーなどの後期ロマン派の音がする。版元資料に面白い話があったので、そのまま紹介しよう。
 リハーサル中にもう一つの嬉しい驚きがありました。ウィーン・フィルの金管楽器奏者たちが、スター・ウォーズの「帝国のマーチ」をプログラムに追加できないかと尋ねてきたのです。「正直言って、これまで聴いた“帝国のマーチ”の中で最高の演奏のひとつでしたよ」とウィリアムズは振り返った。「彼らは、まるで自分たちの作品を演奏するように演奏しました。プログラムの最後に演奏する機会を与えてくれたことにとても感謝しています」。2020年1月18&19日、ウィーン、ムジークフェライン・ザールで録音。





































¥5,856 → ¥3,279

『John Williams: The Berlin Concert』
Berliner Philharmoniker, John Williams



 2020年のジョン・ウィリアムズ/ウィーン・フィルに続き、ベルリン・フィルも指揮。2021年10月、ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音た。お馴染みの「スター・ウォーズ」「スーパーマン」「レイダース」「ハリー・ポッター」「E.T.」……の名メロディが、次ぎ次ぎに演奏される。
 せっかく、ジョン・ウィリアムズがウィーン・フィルとベルリン・フィルを振ったのだから、世界最高と言われる2つのオーケストラはどう違うかを検証したみた。ウィーン・フィルの恒例のニューイヤー・コンサートはオーケストラ、会場、曲目が同じで、指揮者が毎年違う。なので、指揮者の個性が比較で分かる。 今回は、指揮者と曲目が同じ、オーケストラと会場が違う。ウィーン・フィルはムジークフェライン・ザール、ベルリン・フィルはベルリン・フィルハーモニーだ。会場込みで、オーケストラサウンドはどう違うか、サウンドだけでなく表現の姿勢も探った。
①『ジュラシック・パーク』のテーマ
 ベルリン・フィルは荘厳で壮麗。スケールの大きさと、細部までの丁寧な描写が両立している。ディテールまで、ひじょうにクリヤーに、そして雄大に語られる。金管の活躍も目覚ましく、音楽が躍動し、前進力が強い。さすがは雄暉で、ハイエネルギーが美質のベルリン・フィルだ。
 ウィーン・フィルは冒頭のホルンからして、まったく違う。実にすべらかで柔らかいのである。木管も弦も、ウィーン・フィルならではの典雅な美音。ベルリン・フィルは、クリヤーなベルリン・フィルハーモニーの会場の響きを通して、細部を積み重ね大伽藍を建築する音構造だが、ウィーン・フィルはムジークフェライン・ザールのソノリティの中に音全体を包み込み、その総和としての響きを実にしなやかに、麗しく聴かせている。クリヤーで、現代的、デジタル的なベルリン・フィルとは対照的な柔和で、古典的、そしてアナログ的なウィーン・フィルだ。
②『未知との遭遇』から抜粋 
 不協和音が連続するスコアを、ベルリン・フィルは驚くほどの正確さとアンサンブル能力で描き切る。作曲者の意図をそのまま再現する能力は凄い。始まりから3分までの不協和音の連続を経た弦の旋律の質感は現代的。
 不協和音のテンション感を強調するベルリン・フィルに対し、どんな不協音でも暖かいのがウィーン・フィル。かなり和音が激突しているが、その衝撃は典雅でスウィートな響きで修飾され、まさに「ウィーン・フィルの未知との遭遇」になる。不協の連続を経た弦の旋律は、実にウィーン的だ。
③『スター・ウォーズ エピソード5 / 帝国の逆襲』から 帝国のマーチ 
 ベルリン・フィルは、もの凄い迫力と恐怖が迫り来る衝撃感を聴かせる。ジョン・ウィリアムスがスコアに書いた感情表現をさらに倍化し、恐怖感を増幅する力がベルリン・フィルには備わっている。細部まで切れ込みが鋭く、金管と打楽器の進行力は、ひじょうにパワフルだ。解像度も高く、スコアにある、あらゆる音がディテールまで捕捉されている。
 ウィーン・フィルでは怖い曲なのだが、ベルリン・フィルのように機能を総動員して、これでもかというように恐怖を分厚く打ち出すのではなく、オーケストラが持つ暖かさ、しなやかさ、潤い感……などのヒューマンなテクスチャーが、単に恐ろしいだけでなく華麗さ、エンターテイメントさ……という、わくわくするような感情も呼び起こしている。ホルンの響きも美的だ。これもまったくベルリン・フィルと違う質感で、その違いこそが、二つの世界最高オーケストラの個性だ。


¥3,871 → ¥2,241

『Mozart: Serenade In G, K:525 "Eine kleine Nachtmusik"; Divertimento No.15 In B Flat Major, K.287』
Berliner Philharmoniker, Herbert von Karajan




 筋肉質で輪郭とエッジ強調のピリオド奏法もよいが、そればかり聴いていると、何か精神的に圧迫感を感じることも。たまには、シット・バック・リラックスにてゆったりとした気分で、豊潤で艶々としたサウンドの古典派を聴きたくなることもある。それならカラヤン・ベルリン・フィルハーモニーの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」で決まりだ。
 豊麗、壮麗なカラヤンのゴージャスモーツァルト。ベルリン・フィルの名手を引き連れてサンモリッツでの避暑レコーディングだ。精密さや綿密さも感じるが、何より名手たちにのひのびと奏でさせる、カラヤンの手綱の巧さ。音楽がハイテンポで快適に前進する、前傾姿勢のモーツァルトだ。編成が大きく、響きの倍音感も豊かだが、ロマン的な脂ぎった感じはなく、内声部もしっかりと再現され、少し厚い絹の感覚。ここでも色濃くカラヤン的な美学が味わえる。まさに美の極致のモーツァルト。1965年8月19-21日にスイスはサンモリッツ、ヴィクトリアザールで録音。







¥3,259 → ¥1,833

『ヴィヴァルディ:四季―リコンポーズド・バイ・マックス・リヒター』
マックス・リヒター, ダニエル・ホープ, ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団, アンドレデリッダー




 ドイツ・グラモフォンが2006年から始めたクラシックの有名曲を現代の作曲家が"再構成"する、『リコンポーズド』は発想力の勝負だ。今回は超有名なヴィヴァルディ:四季。これまでのシリーズでは、既存音源のコラージュ、もしくはコンピレーションだったが、今回は、音符そのものを改変している。原曲の75%を捨て、残りの25%を、それに基づきながら新たにリメイクした(だから邦題『25%のヴィヴァルディ』という)。そこはかとなくヴィヴァルディの痕跡が残る程度だが、でもあの四季の雰囲気は、あちこちに感じられ、あまりに人口に膾炙しすぎた曲から新たな体験が得られる。リコンポーズしたマックス・リヒターがキーボードを担当している。
 壮大な実験作品にふさわしい、ひじょうに情報量の多いサウンド。第一曲「春」は、壮麗な低音部のオステナートに乗って、高弦が装飾的なフレーズを連続させる。高低の対比感が、鮮やかだ。ヴィヴァルディのオリジナルに比べ、周波数とダイナミックレンジ的な拡大が著しいトランストリプトであり、ハイレゾ(JEITA定義ではハイレゾではないが)は、まさにその狙いにふさわしい広大な表現力を有し、泰西名曲のリニューアルと、ベストマッチだ。2012年3月、ベルリンのb-sharで録音。




■ピアノ作品

¥6,926 → ¥3,982

『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集』
クリスチャン・ツィメルマン, ロンドン交響楽団, サー・サイモン・ラトル




 ツィメルマンの2度目のベートーヴェン:ピアノ協奏曲全曲。旧録音は巨匠レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルとの共演。晩年のバーンスタインが1989年にウィーン・フィルを指揮した演奏会でのライヴ録音の第3番、第4番、第5番と、その2年後、バーンスタイン亡き後、ツィマーマンがウィーン・フィルを弾き振った第1番、第2番---だった。約30年ぶりの再録音の相手はサイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団。
 第1番冒頭で、ラトルとロンドン交響楽団が、これほどピリオドしていると驚き。軽やかで、まるで舞踏のよう。音だけでなく、音楽的なDレンジも広大だ。ラトルも脱皮しているが、ツィメルマンも負けず躍動している。一音一音が明晰で、ウィーン・フィルの前作より、よりダイナミックさが増している。弱音と強音の間が広大で、スフォルツアンドの強靱さも印象的だ。
 録音もまさに実演を彷彿するような臨場感に溢れるもの。ピアノ音像は大きいが、同時に引き締まり、きれいな輪郭を描く。ホールトーンは少なめで、直接音がくっきりと聴ける、清涼な音だ。ピアノにまつわる響きも過剰でなく、ツィメルマンのアーティキュレーションが明晰に聴ける。「皇帝」冒頭の堂々たるカデンツァでは低音部が充実したピラミッド的なバランスのロンドン交響楽団と、煌びやかなピアノとの対比が鮮やか。2020年12月、ロンドンで録音。


¥3,259 → ¥1,833

『プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番/ラヴェル:ピアノ協奏曲』
マルタ・アルゲリッチ, ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団, クラウディオ・アバド


 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番を聴く。まさに鮮烈を絵に描いたような演奏であり、録音だ。アナログマスターなのだが、音が良い意味でデジタル的である。細部まで透徹して描写し、クールな音色にて、ピアノとオーケストラの絡みの密度感が高い演奏芸術を素直にそのまま捉えている。若きアバドは、オーケストラにとっても難曲を見事にコントロールしている。高域のきらめき感、中域の豊かな感情感、低域の剛性感……のすべてがアルヘリッチの素晴らしさ!シャープで鮮烈な音楽性が本ハイレゾで堪能できる。1967年、ベルリンはイエス・キリスト教会で録音。















¥5,093 → ¥3,055

『ユジャ・ワン / ラフマニノフ:ピアノ協奏曲全集&パガニーニ狂詩曲』
ユジャ・ワン, ロサンゼルス・フィルハーモニック, グスターボ・ドゥダメル



 2023年はラフマニノフ生誕150周年。それを記念してメディアリリースや、コンサートではラフマニノフ作品が、数多く登場している。ユジャ・ワンは生誕150周年を記念のラフマニノフのピアノ協奏曲全4曲連続演奏をアメリカ各地で展開。そのロサンゼルスでのライブだ。2023年2月に、グスターボ・ドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニックとの協演にて、ラフマニノフのピアノ協奏曲全4作品、「パガニーニの主題による狂詩曲」を収録。
 ドゥタメル/ロスフィルとユジャ・ワンは相携えて、ラフマニノフのロマンティック世界を耕す同志だ。ピアノ協奏曲第2番では、冒頭の強靱な打鍵からして、すでにノックアウトだ。剛毅でスケールが大きく、低域の雄大さ、中域のなまめかしさ、高域の躍動……が、実に印象的。ユジャワンのピアニズムは完璧に安定し、表現意欲に溢れ、歌いがひじょうにロマンティック。まさにラフマニノフが現代にいたら、こう弾いたであろうというイメージが強烈だ。録音も圧倒的に素晴らしい。ディズニーホールでのライブ収録だが、ドゥタメル/ロスフィルのディズニー録音の他の作品(私はくるみ割り人形が大好き)と同じく、まるでスタジオ収録のような鮮明さ。2023年2月、 ロサンゼルスはウォルト・ディズニー・コンサートホールで録音。






¥4,451 → ¥2,577

『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』
ヴィキングル・オラフソン





 アイスランド出身のピアニスト、ヴィキングル・オラフソンがゴールドベルグに挑んだ。2023-24年のシーズンに、6大陸でゴールドベルグの世界ツアーに出る。今年12月には来日し、全国各地で公演する。東京ではすみだトリフォニーで清水靖晃&サキソフォネッツと、協演。これには私も行く予定だ。
 オラフソンは、こうコメントしている。「ゴルトベルク変奏曲は、これまでに書かれた鍵盤音楽の中で最もヴィルトゥオーゾ的なもので、驚くほど見事な対位法の使い方、崇高な詩的表現、複雑な思索、深い哀感が無数に含まれています。シンプルで優美なアリアという質素な和声の枠組みの上に築かれた30の変奏曲の中で、バッハは限られた素材を、後にも先にもない無限の多様性に変えてみせています。バッハこそが、最高の鍵盤楽器ヴィルトゥオーゾであると思います」。
 ピアノならではの美しさ、静けさ、音色変化……という楽器特有のアーティキュレーションが活かされた、新鮮なゴールドベルグだ。「1.アリア」の珠玉のような彩色されたピアノ音が実に美しい。「第1変奏」のハイスピードは、グールドの55年盤に匹敵し、現代のゴールドベルグの最先端だ。これほど速くても、ピアノ的な美はしっかりと保っている。音数が多い楽譜だが、特定の音にアクセントを与えず、均整のとれたレガートにて、猛スピードで進行するのである。「第30変奏」は堂々たる揺るぎない進行。録音も極上。2023年4月、アイスランドで録音。


¥3,259 → ¥1,833

『J.S.バッハ:フーガの技法』
ピエール=ロラン・エマール



 近現代作品のスペシャリストとみなされていたエマールが、衝撃的なバッハをCDリリースしたのが、08年のこの「フーガの技法」であった。サンプリング周波数は年代を反映し、44.1KHz。レンジの狭さは感じるが、しかし、安定感とスケールの大きさ、細工を弄さないで、伽藍を積み上げながら、堂々とバッハの晩年大作に挑む矜持と覚悟が、狭い帯域にぎゅうと濃縮された音から、痛いほど伝わってくる。タッチが太く強靭、精妙で明快、そして知的で緻密な名演だ。そこから生じる響きは決して開放的ではなく、音場としては比較的狭いが、その凝縮感もまた本演奏の世界観の重要なパートを形成しているのである。音の核が濃い。















¥3,871 → ¥2,241

『グリモー、シルヴェストロフを弾く』
エレーヌ・グリモー


 エレーヌ・グリモーならではのコンセプチュアルなアルバムだ。モーツァルトとウクライナの現代作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937年生まれ)の作品を巡り、過去と現代を「使者」がつなぐというユニークなコンセプトだ。モーツァルトが5曲続き、6曲目のシルヴェストロフの「The Messenger」が使者の役目を果たす。その後の5曲がシルヴェストロフ作品だ。
 演奏と録音はたいへん素晴らしい。まずモーツァルト。「1.Fantasia No. 3 in D Minor」の冒頭のニ短調ならではの寂寥感、絶望感が広大なDレンジにて語られる。「2.Piano Concerto No.20」は第1楽章のニ短調のデモニッシュさ、オーケストラの響きの峻厳さ、ピアノの哀しい輝きと、第2楽章変ロ長調の優しい安寧さの対比が素晴らしい。第2楽章の中間部の短調部での哀しみがドラマティックだ。 シルヴェストロフの「 6.The Messenger (For Piano and Strings)」は波の音から始まる。モーツァルト的な安寧な弦楽によるメジャー旋律だ。
  「7.Two Dialogues with Postscript - I. Wedding Waltz」も親しみやすい古典的な旋律だが、メジャーとマイナーが交錯するのがモーツァルト流。「11. 3 Bagatelles, Op. 1 - III. Moderato」は北欧的な憂愁とロマンが聴ける。録音も極上。ビアノの端正で美しい響きと、オーケストラの清涼でエレガントなテイストとの合算が素敵だ。会場の響きが透明で、適度なアンビエントが美的。2020年1月22-27日、ザルツブルク大学講堂で録音。


¥3,871 → ¥2,241

『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番~第32番』
マウリツィオ・ポリーニ



 マウリツィオ・ポリーニは、近年ベートーヴェンの再録音に取り組んでいる。今回はピアノ・ソナタ第28番と第29番を約45年ぶりに再録音。2020年にリリースした第30番~第32番を合わせて再度、ベートーヴェン後期ソナタを完成させた。28番第1楽章の冒頭を聴いただけで、本演奏の円熟が分かる。何ごとにも動じない安定感と、細部までの温かな眼差し、悠々としてテンポ感、そしてホールの豊かな響きを味方に付けた、響きのコントロール……まさに、大巨匠の音楽だ。ミュンヘンはヘルクレスザールにおける無観客レコーディングなので、ソノリティが豊潤にして、響きが厚く、でも同時に楽器音がクリヤーに聴ける本ホールの持ち味が、存分に発揮されている。2021年-2022年、録音。


¥3,871 → ¥2,241

『ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、夜想曲第15番・第16番、マズルカ第33番~第35番、子守歌』
マウリツィオ・ポリーニ



 ショパンの作品55~58を収録した。まさに威風堂々の大ショパンだ。雄大なスケールと細部への細やかな切り込み、そして感情のダイナミック・レンジの大きさが、ポリーニの芸術を物語る。最新録音だけあり音の新鮮さと、切れ味の鋭さがひしひしと伝わってくる。特にピアノの音色の盤石的な安定感、どこまでも伸びているDレンジ感、音の色の華麗さは、心に染みいる。音楽的な素晴らしさとに加え、現在のポリーニの地平を見事に描ききった高水準な録音も本アルバムの価値だ。2018年5月、ミュンヘンで録音。





¥3,871 → ¥2,241

『ブルース・リウ 第18回ショパン・コンクール優勝者ライヴ[Live]』
ブルース・リウ



 2021年10月の第18回ショパン国際ピアノ・コンクールでは、カナダ出身24歳のブルース・リウ、Bruce (Xiaoyu) Liuが優勝。本ライブアルバムは、そこで演奏されたソロ作品集だ。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」「作品33の4つのマズルカ」「作品10の練習曲」「 作品4のワルツ変イ長調」「スケルツォ第4番 ホ長調」「モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲変ロ長調」という曲順。弾いたピアノはイタリアのFazioli。ショパンコンクールでの初優勝だ。 
 実に美しく、詩情に溢れる音であり、音調である。センターに定位したピアノから清涼で、ブリリアント、そして色彩豊かな音がワルシャワ・フィルハーモニーホールに広く拡散される様子が、丁寧に収録されている。コンテストの記録という目的もあるのか、直接音が主体なので、演奏の細やかなディテールが、実に正確に捉えられている。表情豊かな弱音から、輪郭をくっきりと表出する強音までのダイナミックレンジは広大。ホールトーンもきれい。ショパンコンクールの記録であり、現代のピアニズムの水準も計れる。2021年10月、ワルシャワのショパン国際ピアノ・コンクールでのライヴ録音。



¥3,871 → ¥2,241

『シマノフスキ:ピアノ作品集』
クリスチャン・ツィメルマン




 現代を代表するピアニスト、クリスチャン・ツィメルマンが生誕140周年のシマノフスキを弾く。面白いのは、新旧異なる会場で録音されていることだ。1994年5月14日-21日にコペンハーゲンのティヴォリ・コンサートホールでは「仮面劇(マスク)」が、2022年6月18日-22日の福山は、豊田泰久氏が設計を手掛けたふくやま芸術文化ホールでは、前奏曲やマズルカが録音されている。ティヴォリ・コンサートホールの「 Masques, Op. 34 - I. Sheherazade. Lento assai. Languido」は強靱な打鍵がくっきりとした隈取りを持つ。90年代の録音だけあり、現代のピアノ録音のような徹底的な鮮明さではないが、音の芯がしっかりとした、安定したサウンドだ。ホールトーンも抑制的だ。
 福山のふくやま芸術文化ホールの音は?「20 Mazurkas, Op.50-No.13,Moderato」はまったく違うソノリティ。いかにこのホールの鳴きがよく、ピアノをさらに引き立てているかが分かる名録音だ。ピアノ自体の響きが実に美しく、ピアノの直接音とホールからの音響をいただく間接音のバランスも素晴らしい。豊田の建築音響の凄さが明瞭に分かり、ツメルマンのシマノフスキーへの愛も痛切に感じられる名アルバムだ。


¥3,871 → ¥2,241

『Encores』
Daniel Barenboim



 あの大巨匠ダニエル・バレンボイムがシューベルト、シューマン、ショパンなどのピアノ発表会ピースを弾いてくれた。「1.アンプロンプチュOp. 90, D. 899 - 第3番変イ長調」は滋味に溢れたシューベルトだ。冒頭の右手のゆったりとし感情が色濃い旋律、それを支える繊細なアルベジオ、低音音符の雄渾さ……を聴けば、いかにバレンボイムが、シューベルトに対して愛情を注いでいるかが、一聴瞭然。たゆたうような美しい旋律の流れ。変イ長調ならではの愛情感、幸福感が麗しく伝わってくる。「2.楽興の時」の深い感情を想い、シューマン「3.トロイメライ」の何気ないフレーズに込められた意味を感じ、ドビュシー「16.月の光」では月の輝きに無限のグラテーションを観る。巨匠は小品でも手を抜かないぞ……という宣言するようなピース集だ。せっかくだから、96kHz/24bitで聴きたかった。2017年、2020年4月、ベルリンのピエール・ブーレーズ・ザール、テルデックス・スタジオで録音。










¥3,871 → ¥2,241

『ナイト・ミュージック』
ヤン・リシエツキ


 1995年、ポーランド人の両親のもと、カナダで生まれた天才ピアニスト、ヤン・リシエツキ。13歳&14歳の時の音楽祭での演奏が、ポーランド国立ショパン協会からリリースされ、CDデビュー、15歳でドイツ・グラモフォンと契約し、17歳でショパン:練習曲集(全曲)をリリースしている。ショパン:夜想曲wでは、私は「豊かなニュアンス 悠然としたテンポにて、これほど感情豊かで、心に突き刺さるノクターンが聴けるとは」と、評した。
 今回はモーツァルト、ラヴェル、シューマンの作品で構成された「夜の音楽」。感情表現をピアノでの音色変化、フレージングの細かな綾の変化にして、音として聴かせるテクニックは抜群だ。モーツァルトの「キラキラ星変奏曲、Mozart: 12 Variations in C Major on "Ah, vous dirai-je Maman", K. 265/300e」を全曲聴こう。
 12の変奏のそれぞれに愛情と優しさに溢れた「キラキラ星」だ。テーマの麗しさ、第1変奏のヴィヴットさ、第2の流れるような円滑さ、第3の弾けの色彩感、第4の低域の弾力感、第5の優しい躍動、第6の野を駆る疾走感、第7の寄せては返す波のようなリピート芸、第8のハ短調の寂寥感、第9テーマ再来の懐かしさ、第10のダイナミックレンジの広大さ、第11のピュアなナチュラルさ、第12のフィナーレは突き抜けた華麗さ---ライブ収録だが、ソノリティが良く、音像はとてもクリヤー。響きと直接音のバランスも好適だ。


¥3,871 → ¥2,241

『ヘンデル・プロジェクト』
チョ・ソンジン



 2015年ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝した韓国のピアニスト、チョ・ソンジンのバロックとロマン派の作品。ヘンデルの組曲と、ブラームスの「ヘンデル変奏曲」をカップリングした。チョ・ソンジンは、「より明瞭さを追求するために、サスティンペダルを極力使わず、バロック音楽の表現を重視しながらも、モダンピアノの可能性を引き出すためにダイナミクスを一部変更しています」と述べている。ピアノのバロックは、表現のダイナミックレンジの広さ、音色の多彩さ、そして奏者の思いの込められる受容性……から、チョ・ソンジンがあえて挑戦するにふさわしいテーマ。  ピアノ性能が十全に発揮されたヘンデルだ。クラヴィーア組曲第1巻第2番ヘ長調の第1楽章Adagioはピアノのトリルの装飾が美しく、右手の旋律もシンプルに響く。第2楽章Allegroは左手のスタッカートと右手の躍動が、ダイナミックに対比する。第3楽章 Adagioはサスティンペダルを使わとも、響きが美麗だ。同じヘンデルをプラットフォームにしたブラームスの「ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガ 変ロ長調」は、それとは対照的に、ピアノのロマン的な側面を強調することで、ピアノの表現性をダイナミックに聴かせる。スタッカートとスフォルツアンドが同居し、低音の偉容さは比類ない。2022年9月、ベルリンはジーメンスヴィラで録音。







 


 

■ヴァイオリン作品

¥5,093 → ¥3,055

『モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集』
ルノー・カプソン, ローザンヌ室内管弦楽団




 2022年9月にドイツ・グラモフォンとの契約したヴァイオリニスト、ルノー・カプソンが、音楽監督を務めるローザンヌ室内管弦楽団を弾き振りしたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲集。実に爽やかで、心地好いモーツァルトだ。モーツァルトのメジャー調の素敵な響きを、軽快に、明朗に、そして情感豊かに奏する。そんな爽快なローザンヌ室内管弦楽団の持ち味と、ルノー・カプソンの歌心とは完全に一体だ。しゃれたアーティキュレーションがアクセントになり、伸びやかにモーツァルトの世界を歌う。録音も、たいへん爽やかで、ヴァイオリンとオーケストラの豊かな感情表現を適確に伝えている。ホールのアンビエントが美しく、弦の音を美的に修飾している。2022年9月--10月、ローザンヌ、ボーリュ劇場で録音。




¥3,871 → ¥2,241

『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 他』
ダニエル・ロザコヴィッチ, ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団, ワレリー・ゲルギエフ



 ドイツグラモフォンのベートーヴェン記念年のヴァイオリン協奏曲録音は、ダニエル・ロザコヴィッチだった。2001年ストックホルム生まれ、8歳で公式デビュー、15歳でDGと専属契約を結んだ天才ヴァイオリニストの、これが3番目のアルバムだ。ライジングスターのベートーヴェンのバックにゲルギエフ/ミュンヘンフィルを充てるとは、これ以上考えられない最高のプロデュースだ。ゲルギエフを相手に一歩も引かない若者のベートーヴェンは見事、喝采もの。音質も素晴らしい。オーケストラの拡がり、質感が実にクリヤーに聴け、センターに位置したヴァイオリンの音がホール一杯に拡がる様は実に感動的。オーケストラも豊かな奥行きを持つ。オーケストラもヴァイオリンも演奏の様子が極めて明瞭に聴けると同時に、ソノリティの拡がり、深みも同時に味わえる。2019年12月、ミュンヘンのガスタイクホールで録音。


¥5,093 → ¥3,055

『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 他』
マリア・ドゥエニャス, ウィーン交響楽団, マンフレート・ホーネック




 メディアを通じた音楽鑑賞のエキサイトは期待の新人との遭遇だ。本作は、2021年メニューイン国際コンクール第1位に輝いた、スペイン出身の20歳の新星ヴァイオリニスト、マリア・ドゥエニャスのドイツ・グラモフォン、デビューアルバム。マリアはその他にも、2018年「ウラディーミル・スピヴァコフ国際ヴァイオリン・コンクール」、2021年「ゲッティング・トゥ・カーネギー・コンクール」、2021年「ヴィクトル・トレチャコフ国際ヴァイオリン・コンクール」で優勝するなど、多くの世界的コンクールで成功を収めている。。2022年10月にDGと専属契約を締結。
 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲冒頭のニ長調のオーケストラの上行音階旋律で、何と音が美しいのかに感動。ムジークフェライン・ザールでの録音らしく、実にしなやかで綿密、伸びやかだ。響きが深いと同時に、ひじょうにディテールな部分まで、クリヤーに捉えられている。ヴァイオリンは確実にセンターに定位し、その奥にウィーンシンフォニカが、左右に広く展開している。ライブならではの響きの心地よさと細部までの目配りの確かさが、本録音の大きな魅力だ。ムジークフェライン・ザールの豊潤なソノリティを味方につけた響きのコントロールが素晴らしい。闊達で、自在に旋律を巡るマリア・ドゥエニャスのヴァイオリンも大いに聴き物だ。第3楽章「ロンド」のアクセントと躍動感も素晴らしい。カデンツァの切れ味が豊かで、複数の弦を同時に弾く和音の重層感も見事。2023年1月25日~28日、ウィーン、ムジークフェラインでライヴ録音。


¥3,259 → ¥1,833

『チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲』
リサ・バティアシュヴィリ, シュターツカペレ・ベルリン, ダニエル・バレンボイム



 リサ・バティアシュヴィリは、世界的に注目が集まるグルジア出身のヴァイオリニスト。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はこれまで意識的に避けてきたという。CDジャーナルによると「あまりにも多くのヴァイオリニストがこの作品を演奏し、あまりにも多くの解釈が私の頭の中にあるからという理由で避けてきた」ということだ。彼女のやる気を引き出したのは、「あなたとチャイコフスキーを演奏したい。その思いに突き動かされて、私はこの協奏曲を研究し、自分のレパートリーの一つに取り入れた」と言ったバレンボイムだったと、CDジャーナルはリポートしている。
 冒頭のオーケストラの導入部が、これからヴァイオリンを迎える心構えとわくわく感を演出。あたりを睥睨しながら堂々と入るバティアシュヴィリのヴァイオリンは、一音一音が慈しむように発せられ、音の表面のなめらかさと、それと対照的な内実の深さと緻密さが同居する。チャイコフスキーのこの通俗名曲でも味わいの深さという点では、最近のベストではないか。悠々としたテンポ感も体感的に気持ち良い。オーディオ的なサウンドも素晴らしい。ナチュラルで解像感と階調感がここまで深い同曲の録音も随一だ。録音は2015年5月、ベルリンにて。







¥5,093 → ¥3,055

『ベートーヴェン、シューマン、フランク作品集[拡張ヴァージョン]』
ルノー・カプソン, マルタ・アルゲリッチ




 ルノー・カプソンがドイツ・グラモフォンとの契約した第1作はマルタ・アルゲリッチと共演したエクサン・プロヴァンス音楽祭でのライヴ録音。シューマンのソナタ第1番、ベートーベンのソナタ第9番「クロイツェル」、フランクのソナタが収録されている。このラインナップも豪華だが、演奏もさらにゴージャスだ。アルゲリッチの一音一音が神がかった崇高な響き。くっきりと描かれ、輪郭が明晰。フレージングの確かさは圧倒的だ。端正なカプソンと、疾走感、剛毅、高剛性のアルゲリッチとという組み合わせはたいへんスリリング。ピアノとヴァイオリンがセンターに大きな音像を持ち、明晰で、尖鋭だ。2022年4月23日、エクサン・プロヴァンス音楽祭のプロヴァンス大劇場でのライヴ録音。







¥3,871 → ¥2,241

『パリ~ショーソン/プロコフィエフ/ラウタヴァーラ』
ヒラリー・ハーン, フランス放送フィルハーモニー管弦楽団, ミッコ・フランク


 ヒラリー・ハーンの最新作。「パリ」にまつわる名曲集だ。長年、パリで共演し、2018-19年にアーティスト・イン・レジデンスを務めたフランス放送フィルハーモニー管弦楽団と共に録音した。1916年から17年にかけて作曲され、1923年パリで初演されたプロコフィエフの協奏曲第1番、パリ出身のショーソンによって書かれ、パリでイザイが初演したショーソン「詩曲」、そして本アルバムの指揮者、ミッコ・フランクの親しい友人であったフィンランドの作曲家ラウタヴァーラ(2016年に没)の2つのセレナード----という内容だ。
 ヒラリー・ハーンはラウタヴァーラの「愛へのセレナード」のクールな耽美性、「人生へのセレナード」の叙情性……と、楽曲のコンセプトを明確にメッセージとして伝えてくれる。音場センターにヒラリー・ハーンがポジションし、そこからやや距離を置いた奥に、オーケストラが居る。個個の細かい楽器の音像より、全体としてのマッシブな響きを重視しているようだ。ヴァイオリンもオーケストラも過度にカラフルさを強調せず、しっとりとした音調で聴かせる。2019年2月、6月、パリにて録音。


¥3,871 → ¥2,241

『Across The Stars』
Anne-Sophie Mutter, The Recording Arts Orchestra of Los Angeles, John Williams



 ヴァイオリンの女王、アンナ・ゾフィー・ムターは、クラシックシーンに留まらず、活動の範囲を積極的に拡大している。ロックのライブハウスでコンサートをしたり、レパートリーをクラシック以外にも貪欲に開拓している。本作はその最新版だ。映画音楽界のレジェンド、あのジョン・ウィリアムズとの共演。彼の作品を本人の指揮によるロサンゼルス・レコーディング・アーツ・オーケストラの伴奏で演奏する。
 凄く濃密、こってりとしてディープなまさにアンナ・ゾフィー・ムター節。ここまでの感情的、感傷的なシネマサウンドは他人は奏せないであろう。「1.レイのテーマ[「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」から」は、もともとのジョン・ウイリアムスのスコアもひじょうにエモーショナルなものだが、アンナ・ゾフィー・ムターはそれに輪を掛けて、感情的な調べを重奏する。もともと彼女のヴァイオリンはクラシックの泰西名曲でも、独特のエモーションの深さが際立っていたが、より物語風で、心に染みいらなければならない映画音楽には、ベストマッチング。
 2019年4月にソニー・ピクチャーズ・スコアリング・ステージのスタジオで、5日間にわたって録音。かつては「オズの魔法使」、「風と共に去りぬ」、「雨に唄えば」、「アラビアのロレンス」「E.T.」など、数々の名作のサウンドトラックが収録された縁の場所だ。







 




 

 

ドイツ・グラモフォン125周年記念企画(シリーズ第1弾~第3弾)


◾️第3弾:ドイツ・グラモフォン125周年記念企画第3弾 麻倉怜士セレクト「天才たちの名演・快演・凄演」

◾️第2弾:オーディオ評論家・山之内正厳選!ドイツ・グラモフォン〜世界最古クラシックレーベルの多様性〜


◾️第1弾:設立125周年 麻倉怜士セレクト「ベスト・オブ・ドイツグラモフォン」


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