“だけじゃない”クラシック「融解する境界線〜ポスト・クラシカルの現在地」ポイント10%キャンペーン

2023/03/10

e-onkyo musicにてクラシック音楽を紹介する、その名も“だけじゃない“クラシック。本連載は、クラシック関連の執筆を中心に幅広く活躍する音楽ライターの原典子が、クラシック音楽に関する深い知識と審美眼で、毎月異なるテーマに沿った作品をご紹介するコーナー。注目の新譜や海外の動きなど最新のクラシック事情から、いま知っておきたいクラシックに関する注目キーワード、いま改めて聴きなおしたい過去の音源などを独自の観点でセレクト&ご紹介します。過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を是非お楽しみください。

"だけじゃない" クラシック 3月のテーマ


融解する境界線〜ポスト・クラシカルの現在地



マックス・リヒターがヴィヴァルディの《四季》を大胆にリコンポーズしたアルバムでドイツ・グラモフォンよりデビューしてから約10年。「クラシックの新潮流」と話題を呼んだポスト・クラシカルはいまやすっかり定着し、クラシック、エレクトロニカ、ロック、ジャズの垣根を融解しながら拡大を続けている。

シーンを担っているのは、さまざまな出自のアーティストたち。クラシックの専門教育を受けてきた人もいれば、ジャズ・ピアニストだった人、はたまたメタルバンド出身のオーラヴル・アルナルズのような人もいる。もはや彼らの音楽は「ポスト・クラシカル」という言葉で括ることができないほど多様だ。共通することといえば、自己の内面を深く見つめるような音楽であるということ。折しもコロナ禍で、不安な心を鎮めるようなインストゥルメンタル・ミュージックを集めたプレイリストが再生回数を伸ばしている。静謐で美しく、それでいて実験的な精神も感じさせる注目作をご紹介していこう。

 



 

“だけじゃない”クラシック
「融解する境界線〜ポスト・クラシカルの現在地」
ポイント10%キャンペーン


本企画掲載の8作品を期間限定ポイントアップ!対象アイテムをアルバム購入でもれなく10%*にポイントアップいたします。是非この機会に、過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を、ハイレゾでお楽しみください!

* シルバー会員様は10%、ゴールド会員様は11%、ダイヤモンド会員様は12%のポイントがそれぞれ付与されます。
楽天ペイ決済をご利用の場合、シルバー会員様は9%、ゴールド会員様は10%、ダイヤモンド会員様は11%のポイントがそれぞれ付与されます。


■期間:2023年3月10日(金)〜4月13日(木)23:59:59まで
■対象アイテム:このページでご紹介の8作品 
>>作品一覧ページはこちら
※ポイントアップは「アルバム購入」のみ対象となります。




★☆★



『インナー・シンフォニーズ』 
ハニャ・ラニ、ドブラヴァ・チョヘル ほか

ポーランド出身のハニャ・ラニは、ポスト・クラシカルのみならずチェンバー・ジャズ、アンビエント、フォークなど幅広いフィールドで活躍するピアニスト、作曲・編曲家。実際、彼女の名前はあらゆるところで見かける。このアルバムは、ポーランドのグダンスクにあるフェリクス・ノヴォヴィエイスキ音楽学校の学生時代からの友人、チェリストのドブラヴァ・チョヘルとのデュオ作品で、2015年の『ビャワ・フラガ(白い旗)』に続く2枚目。「シンフォニー」というタイトルがつけられているが、いわゆる従来の交響曲の形式ではなく、自己の内面世界との対話から生み出されるような、さまざまな楽想からなる。


『サラ・カークランド・スナイダー:絶滅が危ぶまれるものたちへのミサ』
ガリカントゥス、ガブリエル・クラウチ(ディレクター)ほか


「シンフォニー」に続き、こちらは「ミサ」を現代の価値観に合わせてアップデートしたアルバム。サラ・カークランド・スナイダーはインディ・クラシック界隈で注目されている作曲家だが、ニュージャージー州プリンストンで子どもの頃から合唱に親しんで育ったという。《絶滅が危ぶまれるものたちへのミサ》と名づけられたこの作品は、キリエ、グロリア、ハレルヤ、クレド、サンクトゥス、ベネディクトス、アニュス・デイといった伝統的なミサ曲の構成をとりながらも、合唱と器楽アンサンブルが織りなす響きのテクスチャーは紛れもなく「今」を感じさせるもの。人間以外の生命、動物、植物、環境に捧げられるミサという考え方も、21世紀ならではだろう。



★☆★




【もっと聴きたい!ポスト・クラシカルの現在地】




『Finding Beauty』
エリオット・ジャック

スウェーデンのレーベル、1631 recordingsからリリースしていたコンポーザー・ピアニスト、エリオット・ジャックのデッカ・デビュー・アルバム。ミュートピアノ(アップライトピアノの内部にフェルト布を張ったもの)の柔らかな響きと、少し切ないメロディが胸を打つ。


『touten I』
Ayatake Ezaki

WONKやmillennium paradeでキーボードを務め、日本のポップス・シーンの中心で活躍する江﨑文武のピアノ・ソロ・アルバム。これもミュートピアノによる演奏だが、柔らかな光が差し込むようなやさしさと、細部まで考え抜かれた美意識に貫かれている。

『Are You Still Somewhere?』
ラヴィニア・マイヤー

ハープ奏者のラヴィニア・マイヤーが、自作曲のほか、ランバート、オーラヴル・アルナルズ、アレクサンドラ・ストレリスキら、ポスト・クラシカルの作曲家の作品を中心に録音したアルバム。イギー・ポップが語りで参加した曲も!



『Ecstatic Science』
yMusic

ブルックリンの新世代チェンバー・アンサンブル、yMusicはもっとも縦横無尽に活躍しているコレクティブかもしれない。今作ではキャロライン・ショウ、ミッシー・マゾーリ、ガブリエラ・スミスら気鋭の作曲家とのコラボレーションで未知の領域を聴かせてくれる。


『Old Friends New Friends』
ニルス・フラーム

ポスト・クラシカルの代表的アーティストであるニルス・フラームが、2009年から2021年の間に録音された23のソロ・ピアノ曲をまとめたアルバム。コロナ禍の最中に自身の膨大なアーカイヴを整理したことから生まれたという本作は、まさに彼の内面を覗くようだ。



『12』
坂本龍一


『async』以来、約6年ぶりとなるオリジナル・アルバムで、闘病生活のなか日記を書くように制作したという12の曲からなる。「こういうことをしたい」「こう見せたい」といったエゴ(それは芸術家にとって必須のものでもある)から、ここまで完全に無縁な音楽というものをはじめて聴いた気がした。




“だけじゃない”クラシック◆バックナンバー

2023年02月 ◆ 躍進する日本のピアニスト
2023年01月 ◆ いま聴きたい来日アーティスト 2023
2022年12月 ◆ 世界の混沌と調和、そして音楽
2022年11月 ◆ 夜の音楽
2022年10月 ◆ 日本の作曲家
2022年09月 ◆ アニバーサリー作曲家2022
2022年08月 ◆ 女王陛下の音楽
2022年07月 ◆ レーベルという美学
2022年06月 ◆ 今、聴きたい音楽家 2022
2022年05月 ◆ 女性作曲家
2022年04月 ◆ ダンス
2022年03月 ◆ 春の訪れを感じながら
2022年02月 ◆ 未知なる作曲家との出会い
2022年01月 ◆ 2022年を迎えるプレイリスト
2021年12月 ◆ 2021年の耳をひらいてくれたアルバム
2021年11月 ◆ ストラヴィンスキー没後50周年
2021年10月 ◆ もの思う秋に聴きたい音楽
2021年09月 ◆ ファイナル直前!ショパン・コンクール
2021年08月 ◆ ヴィオラの眼差し
2021年07月 ◆ ピアソラ生誕100周年
2021年06月 ◆ あなたの「推し」を見つけよう
2021年05月 ◆ フランスの響きに憧れて
2021年04月 ◆ プレイリスト時代の音楽



筆者プロフィール








原 典子(はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。

2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。

 

 | 

 |   |