YURiKAさん待望の1stアルバムが遂にリリース。アニソンシンガーという夢に出会った一万年と二千年前のあの日から今日まで、そのすべてが詰め込まれたアルバム「KiRA☆KiRA」についてたっぷり語っていただいた。後半には音楽プロデューサー水野大輔さんもまじえて、レコーディングや筋トレのマニアックな裏話も……
文・取材:高橋敦
『KiRA☆KiRA』
YURiKA
待ち望んでいた出会いから生まれた「ROMA☆KiRA」
──デビューから5年で遂にのファーストアルバム。数々のアニメOP/ED曲に加えて、挿入歌として担当したカバー曲、アルバム用の新曲も加わり、全16曲の大ボリュームです。
YURiKA:担当させていただいたアニメのOP/ED曲だけでありがたいことに9曲もあるんですよ。それをすべて収録しつつ、既発曲をまとめただけのベストアルバムっぽくはならないようにしたくて。そのために強力な新曲も揃えました。だから新曲も「これもアニメの主題歌なの?」ってくらい豪華な曲になってます。
──その新曲を中心にお話を聞いていこうと思います。アルバム冒頭を飾るインスト曲「MAGICAL FESTA」は、MAGICALといえばこれはもう?
YURiKA:わたしのデビュー曲とセカンド曲をオープニング主題歌に使っていただいた大切なアニメ作品、「リトルウィッチ・アカデミア」の世界観をイメージした曲を、そのデビュー曲からお世話になっている吉田穣さんに作っていただきました。このアルバムは始まりと今が一緒にあるようなものにしたかったんですけど、それを象徴する曲でもあります。
──続いて歌い出される「ROMA☆KiRA」は、先日に配信開始されたNetflixアニメ「ロマンティック・キラー」のOP主題歌です。アルバム頭の大切なポジションに最新曲を持ってきましたね。
YURiKA:この3年ほど、アニメの挿入歌やゲームの主題歌は歌わせていただいていたんですけど、YURiKAとしてアニメの主題歌は歌えていなかったんですよ。待ち望んでいたそれを叶えてくれたのがこの「ROMA☆KiRA」でした。
──アニソンシンガーはアニメ作品との縁があってこそ成り立つ存在ですものね……でもそれが薄れてしまっていた間もYURiKAさんは、アニソンカバーアルバムなど様々な表現で、あくまでもアニソンシンガーとして活動し続けてきた印象があります。
YURiKA:みなさんにそう思えてもらえていたなら嬉しいです。実際その3年間、いろんな機会に「アニソンシンガーのYURiKAです」って自己紹介するじゃないですか?でもアニソンを新しくは歌えていないわけで、YURiKA=アニソンシンガーとまだ思ってもらえてるのかな?という不安は正直あったんですよ。それでもアニソンシンガーであるために今できることをやり続けいこう!という3年間でした。そうしてやっと出会えた作品が「ロマンティック・キラー」で、その出会いから生まれた曲が「ROMA☆KiRA」なんです。だからもう迷いなくアルバムの先陣に選びました。
──疾走感と美しさのあるストリングスにドライブしまくるベースと、白戸佑輔さん作曲・編曲らしさも溢れるサウンドですよね。
YURiKA:いい曲ですよね!白戸さんには前に「薄明パラレル」という曲をご提供いただいてそれ以来なんですけど、この曲も本当に好きです。
「わたしが思うKey曲らしさ」を詰め込んでもらった
──アルバム新曲としてはまず「Key to my next gate」の登場です。作詞・作曲が折戸伸治さんで「Key」というのはもちろ……
YURiKA:わたし「Key」ブランドのゲーム作品とその音楽が大好きで!ゲーム「Summer Pockets」の楽曲に参加せていただいたときも本当に嬉しかったんです!Key楽曲だけのカバーライブもやったんですよ!アルバム用の新曲をどんな作家さんにお願いしようとなったときも、いちばんに思い浮かんだのはKeyの音楽で。だからその音楽を生み出してきた折戸さんにダメ元でお願いしてみたら快く受けていただけて。Key作品の曲ではないんですけど、この曲には「わたしが思うKey曲らしさ」を詰め込んでもらったんです!
──とにかくすごい熱量なのが伝わってきました。次は、新曲ではないのですが、アニメ「宝石の国」OP主題歌「鏡面の波」についても少し。いまやアニメ音楽界の注目作家のおひとりである照井順政さん。その独特の照井楽曲にアニメファンが初遭遇したのがこの「鏡面の波」だった気がします。
YURiKA:ライブでもみなさんに強い印象を与える曲になってますね。どんな流れで進んで来たセットリストでも「鏡面の波」が来たら流れが完全に変わるというか。対バンやフェスでわたしを知らない人たちに向かって歌うステージでも、この曲が始まると「え?これ何?」みたいな雰囲気になったりします。
──そこからアニメ「アニマエール」挿入歌のカバー曲「CRAZY GONNA CRAZY」「じょいふる」があり、そしてアニメ「怪人開発部の黒井津さん」挿入歌「ミラクルステップ」です。アニメ本編に声優としても出演して劇中でも歌った曲ですね。
YURiKA:マミーちゃん役で出演させてもらいました!まさか自分が声優をやらせてもらう機会があるなんて思ってもみなかったですよ。
──憧れの田村ゆかりさんや堀江由衣さんと同じ作品のクレジットに声優としても並ぶことになりました。
YURiKA:そうなんですよ!過去に「生徒1」みたいな形で「リトルウィッチ・アカデミア」に出させていただいたことはあったんですけど、今回はもう「マミーちゃん役のYURiKAです!」という名付きの役で!田村さん堀江さん、遊佐浩二さんや三木眞一郎さんもご出演してますし、わたし寺島拓篤さんと戦ってるんですよ!おかしなことになってますよわたし!

この歌い方の引き出し、久々に開けたな
──引き続きとにかくすごい熱量。その挿入曲ブロックに続いてアルバム新曲「Crave」が来ます。
YURiKA:作詞にZAQさん、作曲にGRANRODEOの飯塚昌明さんを迎えてのアニソンアーティストコラボ曲です!先ほどの「Key to my next gate」もそうですけど、アルバム新曲も「アルバム全体の構成のためにこういう曲がほしいからそれを得意そうな作家さんに発注」みたいな話ではぜんぜんないんです。わたしの「この作家さんと曲を作りたい!からスタートしてます。GRANRODEOさんなんてわたしファンクラブに入ってましたからね!
──熱量!実際に聴くと、曲と歌詞の一体感に驚かされました。サビに入る英語の合いの手などまさにZAQ節!ですし。
YURiKA:まず飯塚さんに作曲をお願いして、それで届いたデモを聴いたらもうゴリゴリにかっこよくて。大喜びしつつ、さあこの超かっこいい曲の歌詞を誰に頼もう?となって思い浮かんだのがZAQさんでした。先ほどの「この作家さんと曲を作りたい!」リストにも当然名前を挙げていましたし。
──その流れだからこそ、曲と歌詞のハマりが完璧なのかもですね。「こういう内容を歌いたい」といった要望はあらかじめZAQさんに伝えたのでしょうか?
YURiKA:この3年間の、アニソンシンガーとしてもっと輝きたいけど自分が何をがんばってもそれがアニメ作品とのご縁に直結するわけではないけどいざチャンスが来たときのためにがんばっておかなきゃいけない……みたいな、くすぶって足掻いてという、その感情をオラオラ!とぶつけるような歌にしたいということをお伝えしました。
──その感情を乗せた歌声には、これまでのYURiKAさんのイメージにはなかった、ダークで艶っぽい激しさを感じました。
YURiKA:実はわたしとしては、デビューを目指して活動していた頃から、というか普通にカラオケで歌うときでも、こういう歌い方とかキーは元々好きなんですよ。でも自分の曲ではあまり出したことがなかったかもしれないですね。自分的には「この歌い方の引き出し、久々に開けたな」って感じです。それを新鮮に受け取っていただけるのは嬉しいですね。
──続いては「BEASTARS」楽曲ブロック。「リトルウィッチ・アカデミア」と並んで、YURiKAさんといえば?で思い浮かべる人が多そうな作品ですね。
YURiKA:アニメ自体が人気も高く素晴らしい作品ですからね。ひとつの作品でその各回の物語に合わせて何曲も歌わせていただくというのは、アニソンシンガーとしても滅多にできない経験でした。「眠れる本能」は主人公、オオカミのレゴシをイメージした曲で、「月に浮かぶ物語」はウサギのハルちゃん、のように。
ラジオがただただ好きだからラジオの曲を作りたい
──そして最後のアルバム新曲「パーソナリティ」。作曲は「リトルウィッチ・アカデミア」のOP担当/ED担当として共にデビューした大原ゆい子さん。編曲もそのときから組んでいる吉田穣さん。その上に作詞は、アルバムで唯一、YURiKAさんご自身です。
YURiKA:仲良しコラボ!わたしは、この曲このタイミングなら自分で作詞することに意味があるって思える、そういうときにだけ作詞をさせてもらってるんです。今回この曲は、ゆい子さんに吉田さん、それに演奏陣やエンジニアさんたち、デビューからずっと近くで見守ってくれていた人たちと一緒に作った曲をアルバムに入れよう!というものだったので、そのメンバーでの曲作りに自分もより深く参加したいということで、歌詞を自分で書くことにしました。
──ラジオっ子であるYURiKAさんらしさが存分に発揮された、ラジオ番組の構成に沿って進む曲になっています。
YURiKA:ラジオに助けられてきたことへの感謝を形に、というかラジオがただただ好きだからラジオの曲を作りたい、ラジオ番組みたいな形の曲にしたい、というのが最初からあって。だから番組の初めは挨拶的なトークのパート、おたよりを読んでそれにレスポンスして、2通目を読んでそれにまた返して、最後にエンディングトークという、ラジオのフォーマットに沿った曲構成なんです。ゆい子さんにも最初から「ラジオみたいな構成でおたよりを読んでお話しするように歌いたいから歌メロは音数多めで」ってお願いして。Aメロで始まって最後にAメロに戻って終わるのも、わたし元々そういう構成の曲が好きなんですけど、それをラジオのオープニングトークとエンディングトークに当てはめられるなと気付いてそうしてもらったんですよ。そしたらゆい子さんから届いたデモの仮曲名が「MOJISUU OOME」ってなってました。
──明確な構想があった上に、それを遠慮なく頼める大原さんとのコンビだったからこそ、狙い通りの形にできた曲かもですね。
YURiKA:それにゆい子さんはそれこそアニメの曲をたくさん作っていて、「これこれこういう曲をお願いします」というガッチリとした注文を受けて曲を作る経験も豊富じゃないですか。だからテーマが明確な方が曲を書きやすかったりもするみたいです。吉田さんのアレンジもわたしのイメージを完全に理解してくれていて。曲の頭に入るラジオ風の時報あるじゃないですか?あれ吉田さんが作ってくれたんですよ!
──作詞家YURiKAさんも「ラジオ番組をそのまま歌に」という発注に完璧に応えていますよね。その上、歌詞の中の「薄明」のワードからたどるとちょっとエモい物語も見えてきたり。
YURiKA:わたし台本からぜんぶ自分で用意して自分でしゃべってる「自演ラジオ」というのを配信してるんですけど、ラジオの歌詞を自分で書いてラジオの歌を自分で歌ってる「パーソナリティ」はその音楽版っぽくもありますよね。あとラジオってトークの中にふと、その番組を長く聴き続けている人には通じるちょっとした小ネタが出てきたりすることあるじゃないですか。そういう小ネタってわかれば面白いし、でもそこがわからなくても番組自体の面白さは変わらないんですよ。「パーソナリティ」の歌詞に入れた「薄明」も、この歌はこれ単体でちゃんと完結する歌詞にした上で、ずっとファンでいてくれている人に楽しんでもらえる要素も入れてみた感じです。
──ラジオ的な構成やそこの引用の巧みさなど、情緒も工夫も感じられる素晴らしい歌詞です。書き上げるまでに時間はかかりましたか?
YURiKA:それがゆい子さんのデモをいただいてから一日もかからないくらいで「こんな感じかな」という最初のバージョンを書き上げまして……どうなんでしょう?歌詞ってもっと悩んで時間をかけて書いた方がいいんですかね?
──悩まず書き上げられてこの仕上がりなら最高ですよ!ライブの本編ラストとかに、夜中にラジオを聴いているような暗い照明の中で聴いてみたくなる名曲です。

今日まで一緒に戦ってきてくれた曲!
YURiKA:ライブといえばわたしいつも、アンコールで歌う曲をあらかじめは決めてないんですよ。アンコールを始めるときにお客さんに何曲か候補を挙げて、拍手の反応次第で決めてるんです。
──「〇〇が聴きたい人、拍手ー」ですね。
YURiKA:そうですそうです。その候補も「今夜はアニメ主題歌から」「今夜はカップリング縛りで」とかその日ごとにテーマがあって毎回違うんですけど、候補に「MIND CONDUCTOR」が入ってるともう絶対に「MIND CONDUCTOR」が勝つんですよね。
──「MIND CONDUCTOR」最強説!その曲がアルバムのラストを飾るのはもはや必然ですね。
YURiKA:1stの「Shiny Ray」に続いて「リトルウィッチ・アカデミア」のこちらは2クール目のOP主題歌で、わたしの2ndシングルです。ライブやイベントで歌って来た回数はこの曲がいちばん多いと思うんですよね。デビュー直後のいろいろ悩む時期もこの歌詞に助けられ、アニサマでも歌わせていただいて。今日まで一緒に戦ってきてくれた曲!みたいな思い入れもあります。ファンのみなさんもYURiKAといえばこの曲というイメージは強いみたいです。みんながわたしに向けてサイリウムをピンクで振ってくれてるのもたぶん、この曲のCDのジャケットがピンク基調だからで。
──改めて聴くとこの曲って、2ndにして歌うの相当難しくないですか?
YURiKA:難しいんですよー。AメロBメロは全パートが個人戦というかすべての楽器がそれぞれで動いているので、この楽器を聴いてリズムを取っておけばだいじょうぶ歌いやすい!みたく頼れる音がなくて。でもだからこそ、サビですべての楽器が出会って一体になったときすごい盛り上がるんです。だから、歌うのは難しいんですけど、みんなに乗ってもらいやすい曲でもあると思います。頼りになる、一緒に戦える曲ですね、やっぱり。
シングル版とは感触がけっこう変わっていたりもします
──さてそんな1stアルバム。YURiKAファンかつオーディオファンという方に向けて聴きどころを挙げるとしたら?
YURiKA:オー……ディオ……
水野:そういう面で言いますとですね。
YURiKA:(助かった!という顔)!
──(助かった!という顔)ではここからは、YURiKAさんの音楽プロデューサーの水野大輔さんにも参加していただいて。
水野:まず収録曲はすべて96kHz/32bitで録ってます。そこからミックス・マスタリングを経たのがハイレゾ配信の96kHz/24bitファイルですね。
YURiKA:そうなんです。96kHz/32bitで録ってます!
水野:もっとマニアックな話で言うと、以前とはマスタリングのスタジオとエンジニアさんが変わっているので、同じ曲でもシングル版とは感触がけっこう変わっていたりもしますね。
YURiKA:そう、マスタリングが違うんですよ!
──これぞ音楽やオーディオのマニアが気にしそうな情報、ありがとうございます!

デビューのときからアルバムを想定した音作りをしていました
YURiKA:マスタリングのスタジオとエンジニアさんが変わったのって「Le zoo」からでしたよね?
──ということは「Le zoo」より前の楽曲は今回のアルバムでのマスタリングでの変化がより大きい?
水野:ですね。もちろん「Le Zoo」以降の曲もアルバム用に再マスタリングしていますが、そちらは当時も今回も同じエンジニアさんですから、そんな大きな違いはないと思います。それより前の曲はマスタリングのスタジオもエンジニアさんも変わっていますから、変化も大きめです。あとミキシングは基本的には、デビューからずっと同じエンジニアさんにお願いしています。ただ「BEASTARS」の曲はサウンドプロデュースからまるっと神前暁さんにお任せしたので、ミキシングなども神前さんの所属するMONACAのチームによるものです。
──アルバム用再マスタリングのポイントを挙げるとすれば?
水野:やはりその「BEASTARS」の曲は他の曲と音が少し違っているので、その曲と他の曲をアルバムにまとめて違和感なく聴けるように調整するのには苦労しました。具体的には、「BEASTARS」曲である「Le Zoo」を調整の基準点にして、それをリファレンスに他の曲の音をそこに寄せていく形で調整してあります。
──アルバム用のマスタリングって何?と疑問だった方は、今のお話を踏まえてこのアルバムに収録のバージョンと既発バージョンを聴き比べてみるのも面白いかもですね。
水野:実はYURiKAのプロジェクトにおいてミキシングを最初からずっと同じエンジニアさんに固定していたのも、いつかアルバムを作るとき「デビュー曲と最近の曲で音が違いすぎててアルバムに並ぶと微妙」みたいなことにならないようにという狙いもあってのことだったんですよ。同じ狙いでミュージシャンの方々もできるだけ固定していて。それが実ってこのアルバムでは、頭から続けて聴いたときの流れの途切れなさ、統一感みたいなものを確保できていると思います。
YURiKA:曲調はバラバラなのに統一感ありますよね。
水野:YURiKAはアニソンシンガーですから、アニメのタイトルごとにぜんぜん別のサウンドの曲を歌っていくことになるのはわかっていたんです。なので最初からそれを想定した音作りをしていました。
──「すべて計画通り」感がありますね。
水野:アルバムまで5年かかるとは想定してませんでした(笑)。
ファンのみんなと再会するときに説得力がほしくて
──アルバムのブックレットでは、これまでのアートワークでの衣装を現在のYURiKAさんが着用して過去と今を表現していたりもします。その昔の衣装の頃の曲からこのアルバムへの種が蒔かれていたと考えると胸熱です。
YURiKA:わたし本人は当時のビジュアルを見ると「わたしまんまるだな」って感じなんですけど。
──当時もまんまるってことはないと思いますけど、たしかに現在はすごくソリッドに仕上がってますよね、筋トレの威力で。
YURiKA:筋トレが趣味になるとも腹筋が割れるとも、当時は想像もしてませんでした。
──筋トレはボーカリストとしての体づくりのために始めたんですか?
YURiKA:いやぜんぜん。外出自粛期間でファンのみなさんの前に出る機会がなくなったとき、シンガーのYURiKAではなくヲタクとしてのわたしコバヤシは思ったんです。もしもコバヤシがYURiKAのファンだったとして、この期間が明けて久しぶりにライブに行ったとき、YURiKAがまんまるだったらどう思うだろう?って。逆にそこでビシッとソリッドなルックスになってたら、YURiKAはこの状況でも自分を磨いて今日のために備えていたんだ!って伝わるじゃないですか。ファンのみんなと再会するときにそういう説得力がほしくて。それが筋トレの動機だったんです。
水野:いやそんなレベルじゃない筋トレやってましたよこの人。
YURiKA:でもジムとか通ってないし自宅でやってただけですよ。
水野:自宅だけでそこまで仕上がってるからおかしいんだよ!実際、少し前にYouTubeにアップした筋トレ動画もファンの人から「これは激しすぎていきなりは無理」って言われて。
YURiKA:だからEASYバージョンも一緒に映す形にしてあるじゃないですか!
【全身3分半】全身引き締める鬼のアニソン筋トレ - MIND CONDUCTOR - YURiKA
今は通しでバーン!と歌ったらもうほぼ完成形
──EASYバージョンが必要な時点でお察しですね。でも動機はそうだったとしても、そこまでの筋トレの成果は結果的には歌にも現れたのでは?
YURiKA:余裕ができたのは感じます。特にライブだと、前は最初から最後までもう肉体的にただただ必死で。それが今は、前は必死だったレベル以上のパフォーマンスを発揮しながら、ここで緩急をつけてみたいな聴かせ方や見せ方のことを頭の中で考える余裕もある感じです。
水野:レコーディングでも、例えば「Crave」とか激しめの曲では特に、シンガーとしてのパワーアップを感じますよ。音源として完成された状態だけ聴くと、これまでの激しい曲も「Crave」も、どちらも同レベルに仕上げられています。でもその完成形に至るまでの過程が前と今ではぜんぜん違ってるんですよ。前は何度もテイクを重ねてあの部分はどのテイクが良かったとかそういう検討を重ねて、完成形に一歩一歩近づけていく感じだったんです。
──今はそうではないということですね。
水野:今は通しでバーン!と歌ったらもうほぼ完成形です。それはこの5年での技術や表現の面での成長に加えて、体力筋力による体のコントロールが全く違ってきてるんだろうなと思います。だからこそ「完成音源は前も今も同じくかっこいい」っていうのが歯痒かったりもするんですけど。「実際のYURiKAはすごいパワーアップしてるんだって!」というのが。
──そこはライブで存分に発揮されるのでは?
水野:ですね。YURiKAの場合はそれこそデビュー前の小林友里花から応援してくれているファンの方もいてくれますけど、そのときから彼女のそういう、ロックな曲をパワフルに歌うところを評価してくれている方も多くて。今はそこがもう発声からして違っているので、そこは改めて感じてもらえたらなと。素人、アマチュア時代は、その調子で2曲3曲歌ったら声が枯れてしまうような、がむしゃらな歌い方でもいいわけですよ。でも今はがむしゃらにではなくしっかりコントロールして、当時以上の迫力や勢いを出せるようになっています。それは今の筋肉、ボディもあってこそでしょうね。彼女がこうやって筋トレ効果を見せつけてくれたおかげで、ボーカリストは筋トレするべき!っていう昔からの話に、あ、本当にこんなに変わるんだって納得できましたよ。
YURiKA:筋トレやってよかったです!それにまだやってますからね。今日も筋トレやってからここにきてますから。
水野:周りからむしろ筋トレやりすぎで体壊さないかって心配されてるんですよ、この人……
「KiRA☆KiRA」にはいろんな輝きが詰まっています
──ということでそのYURiKAさんの筋肉……いや歌を体感してもらえる、初のライブツアーもまさにスタートしたところです。さらにそのツアーの合間にご自身主催のライブイベントもあれば別のイベントへの参加もあり、年末年始は盛りだくさんですね。
>>YURiKA NEWS & INFORMATION
YURiKA:この取材を終えて明日からまさにツアーのリハが始まります。アルバム収録曲はもちろん、アルバムに入れられなかった曲もやりますし、アルバムに参加していただいた作家さんたちにちなんだカバー曲もやりたいなって思ってます。
──では最後に、リスナーのみなさんにメッセージを。
YURiKA:このアルバム「KiRA☆KiRA」には、「ロマンティック・"キラ"ー」のキラキラから始まって、「リトルウィッチ・アカデミア」の魔法のキラキラ、「はねバド!」の汗のキラキラ、「BEASTARS」の月の輝きや青春のキラキラ、「宝石の国」の宝石のキラキラだったり、いろんな輝きが詰まっています。全曲主役のアルバムなので、お気に入りの曲を見つけて、そしてライブにも来ていただけたら嬉しいです。
YURiKA「KiRA☆KiRA」オーディオレビュー
『KiRA☆KiRA』
YURiKA
オーディオの観点からもやはり、アルバムの始まりを飾る象徴的な楽曲「ROMA☆KiRA」に注目してみよう。
まさにキラキラな音を詰め込みながら、それらの音をボーカルのためのスペースをしっかり確保して配置。その配置はスピーカーだけではなくイヤホンで聴いてもうまく機能している。空間だけではなく帯域のポジション分けも完璧。例えばベース。ボーカルの下に潜り込む低重心のポジションニングのおかげで、サビ裏で細かく動き回ってもボーカルを全く邪魔しない。単純に音量的にボーカルを押し出し楽器を控えるのではなく、細やかな調整によって歌が立てられているわけだ。
主役は歌。でもその活躍も周りのサポートがあってこそ。だからそちらの描写もおろそかにはしない。歌ものポップス、そしてアニソンとして、実に好ましい仕上がりだ。(高橋敦)
>>YURiKA作品一覧