【30%オフ】オーディオ評論家 麻倉怜士セレクト!超ハイスペック・ハイレゾ25選

2022/09/23

e-onkyo musicの大人気企画「オーディオファン必聴企画」に新たなシリーズが登場。今回は「超ハイスペック・ハイレゾ」をテーマに、DSD11.2MHzやDXD384kHzなど、ハイレゾ音源を専門に扱うe-onkyo musicのならではの「スペック縛り」の企画となります。セレクトいただくのは、オーディオ評論家の麻倉怜士氏。その熟練の審美眼(耳)で、超ハイスペック且つ音楽的、更にオーディオ的魅力に溢れる作品25タイトルを厳選してセレクトいただきました。

 

【30%オフ】オーディオ評論家 麻倉怜士セレクト!
超ハイスペック・ハイレゾ25選

 

■実施期間:2022年9月23日~2022年11月23日 
■対象作品:以下で紹介の25作品 >>作品一覧ページ
※プライスオフ後の価格が各ページに表示されています。
(すべてのフォーマットがプライスオフになっています)

※アルバム販売のみプライスオフが適用されます。

 



◆◇◆



 ハイレゾで最高音質はDSD11.2MHzと、DXDと呼ばれるリニアPCMの384KHz/32bit(24bit)だ。そのクオリティは「超越」という言葉がふさわしく、下位のパラメーター(例えばDSD2.8MHzやリニアPCM・192kHz/24bit)を、音質的にも音楽性でも圧倒的に凌駕する。ひとことで言うと、「生演奏にきわめて接近した音調」で聴ける。それは単に高級なコーデックということだけでなく、それを扱う、制作者側のこだわりも格段に違う、DSD11.2MHzもしくはDXDにふさわしい作品をつくろうと、最高の機材、マイキング、録音テクニックを駆使するのである。その意味では、まさに最高のハイレゾがDSD11.2MHz、DXDなのである。
  
 本特集では、そんな圧倒的な音の魅力に浸れるウルトラハイスペック作品を各レーベルから選んだ。制作現場では、実際にはDXDで録音しミキシング、編集を経てマスターが作られる。次に配付用にDXD、もしくは下位パラメーターのリニアPCMに変換される。DSDもここから変換される。DSDでは、編集が不可能なので、このようなプロセスを経由するのである。しかし、面白いことに、そうして作られるDSD11.2MHzは、もとのDXDとはたいそう異なる音調になる。ひとことでいうと「ヒューマンで音楽性が豊かなDSD11.2MHz」、「直裁で鮮明、尖鋭なDXD」---という違いである。本特集では、DSD11.2MHzを持つ作品はDSD11.2MHzを、無いものはDXDを聴く。
 では、レーベルをご紹介しよう。①ノルウェーの、というより世界的な高音質レーベルの代表格の2L②トーンマイスターの平井義也氏が主宰するマイスターミュージック③日本の優れたアーチストの演奏をDSDでリリースするアールアンフィニ④クラシック音楽レーベル、妙音舎のMClassic⑤NOF Label⑥Naxos Japan⑦OMF⑧dream window⑨UAレコード---以上。では超越の音をご紹介しよう。

 

麻倉怜士




■2L

 

5,7884,052

『LJOS』
Fauna Vokalkvintett

(DSD 11.2MHz)



 ノルウェー国立音楽大学出身の女性5人のグループ、Fauna Vokalkvintettが歌う静謐なクリスマス・アルバム。LJOSとはノルウエー語で「光」。録音会場のブリュン教会の響きがたいへん美しく、透明度の高い音場に女声合唱が豊かなハーモニーを湛え、広く拡散していく。響きが繊細で、そのグラテーションが細やかだ。ユニゾンでは妙なる調和が聴け、和音ではそれぞれの音程が、明瞭な音像となる。DXDバージョンでは響きが多いのだが、音の透明感、ディテールまでの情報量の多さ、抜けのクリヤーさは抜群だ。さらにDSD11.2MHzでは、音場の空気感が濃くなった。本アルバムを聴いて、心が浄化されない人はいないであろう。2018年6月、9月、ノルウェーはバールムのブリュン教会で録音。1861年に建てられた信徒席400、レンガ造りの教会だ。


5,7884,052

『stille grender』
Tord Gustavsen, Det Norske Jentekor, Anne Karin Sundal-Ask

(DSD 11.2MHz)


 70年を超す歴史を持つノルウェー少女合唱団のクリスマス音楽集。ハーモニーがたいへん美しく、実にクリヤーで、同時にウォームだ。人の声はこれほど静穏で神々しく、そして清らかであるかが聴ける。特に少女の声だから、そう感じるのであろう。まさしく心が洗われる声だ。録音会場のウラニエンボルグ教会のソノリティが精妙で、空気が澄んでいる。教会の大きな空間が醸し出す、美的な音階の綾が、DSD11.2MHzによって余すところなく表現されている。音場的に奥行きも豊か。ハーモニーの調和や融合に加え、反発して生じる音のうねりの波形が、ビジュアルに見えるようだ。トルド・グスタフセンが弾く、「 2  The Bells」の即興ピアノも直接音と豊かな間接音の調和による美の極致が聴ける。本作品は新時代のクリスマスアルバムの定番になるに違いない。2020年2月、オスロのウラニエンボルグ教会で録音。


5,7884,052

『Early Romantic Horn Sonatas』
Steinar Granmo Nilsen & Kristin Fossheim

(DSD 11.2MHz)

 
ナチュラルホルン(バルブがない)の名手、ノルウェーのスタイナル・グランモ・ニルセンが吹く「ロマン派初期のホルンソナタ」。フェルディナント・リース、フランツ・ダンツィ、ニコラウス・フォン・クルフトのホルンソナタ集だ。典雅で素朴なピアノフォルテを伴奏に、実に巨魁で艶々したナチュラルホルンの豊かな響きが音場空間を占拠する。DSD11.2MHzでは、発せられた音が左右に勢いよく大きな響き音像を形成しながら飛翔していく様子が、実に鮮明に捉えられている。
  弱音の繊細なグラテーションから、こうした堂々とした大吹奏まで、表現のダイナミックレンジがひじょうに広大だ。倍音の多さも、DSD11.2MHzは見事に捉え、そこから多彩な色彩感を生じさせている。クリヤーで、キレがシャープなピアノフォルテの味わいも素敵。楽器の特性がDSD11.2MHzで浮き彫りにされている。2014年6月、アーケシュフース県ベールムのヤール教会で録音。


5,7884,052

『HIMMELRAND』
Uranienborg Vokalensemble

(DSD 11.2MHz)

 オスロのウラニエンボルグ教会を拠点とするウラニエンボルグ・ヴォーカル・アンサンブル(Uranienborg Vocal Ensemble、20から24人の声楽家で構成)の3枚目のアルバムは9人の北欧作曲家の名曲集だ。HIMMELRANDとは、ノルウエー語で「天と地の接するところ」、つまり地平線。ノルウェー教会新賛美歌集と、委嘱にて作曲された新作賛美歌を同じ地平に並べて歌うというコンセプトだ。人の声が、ここまで空間を支配し、空気を振るわせるのかが実感できるという意味で、これほど鮮明で深淵で、透き通ったサウンドは、2L以外には体験できないであろう。
 ウラニエンボルグ教会のアンビエントはひじょうに豊潤で、感覚的には口から発せられた声が、いつまでも濃密に漂っているようだ。いつ果てるともしれない響きの饗宴。オーディオ的にもたいへん鮮明な音だ。歌手の息づかい、心臓の鼓動、微細な表情まで、ここまで聴かせるのかと驚嘆した。2015年10月と11月にオスロのウラニエンボルグ教会でセッション録音。




 マリアンネ・トゥーシェン (ヴァイオリン) とトロンハイム・ソロイスツ (オーケストラ)/ オイヴィン・ギムセ (指揮)のモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲集。本作にははオリジナル版とリマスター版があり、どちらもたいへん素晴らしいので両方、ご紹介しよう。WAV 352.8kHz/24bitだ。
 2006年リリースのオリジナル版は、2Lの名声を一挙に高めた。ひじょうに解像度が高く、弦も木管も、そしてソロヴァイオリンも圧倒的に明瞭。ワイドレンジにして、上質な力感が溢れる。その鮮鋭感の高さ、音場の深さは今、聴いてもたいへん感動的だ。WAV 352.8kHz/24biなので、徹底的にどこまでも抜けるような、もの凄いクリヤーさで、聴ける。
 2016年版はMQA配信のスタートのタイミングで、MQAのボブ・スチュウァート氏がリマスターした。2006年バージョンは、徹底的にディテールにこだわっていたが、2016年バージョンは、オーケストラ総体の質感と響きが素晴らしく、次にその内実として個々のパート、楽器のディテールが浮き彫りされている。つまり全体と個々のバランスが、より上質になった。MQAファイルではないが、質感の緻密さ、暖かさ、そして音場のクリヤーさはMQAを彷彿する。徹底的にディテールにこだわった2006年バージョン、オーケストラ全体のまとまりを重視した2016年バージョンの、どちらも魅力的だ。2006年5月、ノルウェーのトロンデラーグ郡のセルブ教会で録音。


5,7884,052

『CHRISTIANIALIV - Works from Norway's Golden Age of wind music』The Staff Band of the Norwegian Armed Forces, Ole Kristian Ruud
(DSD 11.2MHz)


 タイトル「クリスチャニアの生活〜ノルウェー、ウィンドミュージック黄金時代の作品集」の「クリスチャニア」とは現在のノルウエーの首都オスロの旧名(1925年1月1日に変更)。ノルウェー音楽の「黄金時代」と呼ばれた19世紀後期の作品を、ノルウェー軍音楽隊が闊達に演奏する。軍楽隊というと、行進しながら、勇壮なマーチを勇ましく奏でるという運動部的なイメージがあるが、ノルウェー王国軍のプロフェッショナル・バンド、ノルウェー軍音楽隊の演奏は、まさにシンフォニック。細心のバランスにて、音のテクスチャーを多彩に表現している。
 「ヨハン・スヴェンセン(1840-1911)/ハンセン編:交響曲第2番変ロ長調Op.15」第1楽章。冒頭は、静かにジェントルに始まり、柔らな音調だが、そこから急にクレッシェンドして頂点のトゥッティ強音になった時には、音の質感がまったく変わる。鮮鋭なブライト系になり、キラキラとカラフルに光る音の粒子が活発に舞い踊る。DSD11.2MHzは、そんな驚くほどのテクスチャー変化を大胆に聴かせてくれる。2Lならではの会場の響きの美しさも印象的。でも響き自体が透明だから、楽器音は実にクリヤーだ。音場総体としての響きの高質感を、DSD11.2MHzならでの高解像度で愉しむアルバムだ。2012年6月、11月、アーケシュフース県ベールムのヤール教会で録音。


5,7884,052

『Ujamaa』
Trondheim Symphony Orchestra

(DSD 11.2MHz)


 トロンハイム交響楽団と声楽を交えた、ノルウェーの作曲家ヘンニング・ソンメッロのカンタータ。2Lとしてはの珍しい大編成作品だ。Ujamaaとは「同胞であること」「家族の愛」「仲間」を意味するスワヒリ語。本作のDSD11.2MHz版では情報量、ダイナミックレンジ、音色……のそれぞれで圧倒的な再現性が聴ける。なかでも、「3.America」では多彩な楽器が登場し、途中では「クルニング(家畜を呼ぶ声)」まで出てくる。冒頭の鍵盤打楽器は左だが、徐々に中央に向かって移動。打楽器、ホルン、トロンボーン、トランペットが中央付近に定位、弦は左右いっぱいに拡がる。加えて、それらの楽器の音色が実にリアル。ホルン、トランペット、トロンボーンの金管合奏の融合感も素晴らしい。女性のクルニングはサックスとの絡む。このように極めて音の情報量が多く、全帯域に渡って解像度が高い。人の声も含めたすべての楽器が明瞭に、あるべき音色と位置で鳴っているのである。2Lは大編成でも凄いと認識できた。2017年8月、トロンハイムのオラヴホールで録音。




■マイスターミュージック

 

3,8502,695

『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV1001-1003』
川田知子

(DSD 11.2MHz)


 ソリスト、コンサートミストレス、室内楽と多彩に活躍する川田知子が挑戦したバッハの「無伴奏」。DSD11.2MHzはたいへん鮮明、鮮烈、透明で篤い音楽性が聴ける。センター位置に端正に位置するヴァイオリンから、音の粒子が鋭角的に飛び散る。万華のカラフルな倍音が放射され、緻密で濃密な音像を形成する。その一音一音が明瞭な輪郭を持ち、楽譜がビジュアルで浮かんでくるほどの高解像度なのである。マイスターミュージックの数多い名録音の中でも、これほどダイレクトでストレートな音が聴ける作品も珍しい。
 時間方向におけるアーティキュレーションの些細な違いも明確に聴き取れ、響きがいかに発生し、会場に飛翔し、消えていくかの時間的なプロセスが見えるようだ。単音の力強い押し出し、重音の融合感という質感の違いも、詳しく聴ける。2017年3月30- 31日、千葉県南総文化ホールで録音。


3,8502,695

『我が懐かしのブエノスアイレス』
川田知子, 福田進一

(DSD 11.2MHz)



 ヴァイオリンの川田知子、ギターの福田進一のデュオ。マイスター・ミュージックの平井義也氏は「音量が相当違う二つの楽器は、ワンポイントでバランスが難しい組み合わせです。どちらも弦楽器ですが、"擦る"と"弾く"の質感の違いを感じていただきたい」とコメントしている。
 同じ川田知子作品でも。バッハとはまったく違う「響きの妖艶さ」を堪能するDSD11.2MHzだ。ギターもヴァイオリンも、どちらもロマンティックな楽器だが、「 1  首の差で」は、典雅にタンゴのリズムを刻むギターを伴奏にして、ヴァイオリンが自由奔放に色気を振りまく。その音は瀟洒にして朗らか。とろけるように美しい。ヴァイオリンから発せられる音が、会場のあちこちに反射し、端麗な響きに変わり、ゆっくりと空中を浮遊する。まるで泰西名画の天使の舞いのようだ。
 ギターの歯切れのよい撥音には、響きをあまりまぶさないで、ヴァイオリンには官能的な響きを与えている。音像もヴァイオリンは直接音+間接音にて、2つのスピーカーを睥睨するような大きさだが、ギターはセンターに端正に安定的に定位している。2012年12月26-27日、君津市民文化ホールで録音。


3,8502,695

『ars サクソフォン・デュオ作品集』
冨岡祐子, 田中拓也

(DSD 11.2MHz)



 サクソフォン四重奏団SQアテナの冨岡祐子と、ブルーオーロラSQの田中拓也が組んだ、サックスデュオ。もの凄く鮮明で鮮烈な音の塊が、ハイスピードで音場に広く拡散する。音の立ち上がり/立ち下がりが俊敏で、俊速な音進行だ。音の輪郭の切れ味が鋭く、何の逡巡もなく、ストレートに音が飛翔する。2つの楽器が完璧に調和し、まるで1台のサクソフォンかと錯覚するほど。DSD11.2MHzは音の表面の質感の細やかさ、微少な凹凸の煌めき、音場への華麗な拡散……など、わくわくする音楽的なダイナミズムを聴かせてくれた。2016年5月26-27日、千葉県南総文化ホールで録音。


4,9503,465

『イベール:フルート協奏曲 & ドビュッシー:交響詩「海」他』
工藤重典, パスカル・ロフェ, 兵庫芸術文化センター管弦楽団

(DSD 11.2MHz)


 マイスター・ミュージックの平井義也氏は「イベールのフルート協奏曲はレコーディングがあまり多くなく、工藤さんがぜひとも録音したい演目の一つでした。ライヴとリハーサルの音源を使用しています。ありがたいことに、指揮者のパスカル・ロフェさんも。録音の音を大変気に入って下さったようです」と、コメントしている。
 ワンポイント・ステレオマイクによる大編成録音だ。オーケストラ録音では、最近は世界的にホールトーンを豊かに収録するケースが多いが、イベール:フルート協奏曲はホールトーン偏重ではなく、オーケストラとソロフルートがダイレクトに発するサウンドをそのまま素直に収録している。まさにかぶり付きにて、眼前で聴いている臨場感だ。会場の響きも含めた直接音+間接音の足し算がとても上質なのだ。ワンポイント・ステレオマイクならではの位相的な安定感も、いい。一方、ドビュッシー:交響詩「海」は、ホールのソノリティを豊富に採り入れている。会場の後ろで響きを楽しんでいる風だ。 DSD11.2MHzはリニアPCMに比べ、会場の空気感が段突に透明にして濃く、ソロフルートを始め、オーケストラの各楽器の表情が生々しい。2019年4月19-21日、兵庫県立芸術文化センターで録音。


4,9503,465

『ファゴットとコントラファゴットの快楽』
岡崎耕治, 山田知史

(DSD 11.2MHz)

 
 マイスター・ミュージックの平井義也氏は「ファゴットは一般的にはなじみが薄い楽器ですが、管楽器の中で最も低い音を出します。その低さゆえ、実演では細かいニュアンスを聴き取るのkが難しい(あるいは聴こえない)こともあります。384KHz高解像レコーディングによって、実際で聴く以上に低音独自の響きが再現されます。音の階調の変化を立体的に感じて頂けると嬉しいです」とコメントしている。
 ファゴットの音がこれほど鮮明で、存在感が豊かだったとは、このアルバムを聴くまで、識らなかった。オーケストラでは縁の下の力持ち的な存在で、時折のソロの場面でも、オケの他の楽器も鳴っているので、細かなニュアンスがよく分からない。ところが、ファゴットと低音域のコントラファゴットの合奏の本作では、認識が一新された。これほど弾みが敏捷で、細かなグラテーションを持つとは。しかも低音と中音では、質感が大きく違っているのにも、驚いた。それもDSD11.2MHzだから分かる。息を吹き込み、胴がどのように共鳴し、出音が時間的に瞬時に変化し、それが豊かな響きとなって、会場に拡がり行く---という、ひじょうに細かな時間軸の精密な進行をそのまま聴いているようだ。音場に浮かび上った、ふたつのファゴットの粒立ちがひじょうに細やかだ。


3,8502,695

『J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 / シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ』
清水直子, オズガー・アイディン

(DSD 11.2MHz)


 ヴィオラで奏するバッハの無伴奏チェロ。ヴァイオリンともチェロとも違う、渋く、スウィートな調べが耳をくすぐる。チェロの低音に慣れた耳で聴くと、ヴィオラは浮遊感があり、やや細身だが、「アルト」帯域には、その音にいつまでも浸っていたいと本能的に感ずる魅力がある。ヴァイオリンの華麗さ、チェロの朗々さとも違う、人間的な深さ、安寧さは、まさにヴィオラだけのワン・アンド・オンリーの味だ。そう思わせてくれるのが、マイスターミュージックの名録音。センター位置のヴィオラから発せられる典雅にして深い音が美しく、それを会場に飛び散る響きが、上質に彩る。シューベルト:アルペジョーネ・ソナタではピアノとヴィオラが同質のソノリティを持ち、質感的な同調性が高い。DSD11.2MHzでは、直接音と間接音を巧みに操るマイスターミュージックならではの録音術の真髄が聴ける。2014年1月26日、三鷹市芸術文化センター風のホール、2014月2月日1 横浜市青葉区民文化センター フィリアホールで録音。




■Myo-on-sha Inc.

 

4,4003,080

『Dance』
東京六人組, 上野由恵, 荒 絵理子, 金子平, 福士マリ子, 福川伸陽, 三浦友理枝

(DSD 11.2MHz)

 
 東京の各オーケストラの首席奏者やソリストとして活動する同世代奏者で2015年に結成されたアンサンブル「東京六人組」の最新ハイレゾ。ソロフルーティストの上野由恵、東京交響楽団の首席オーボエ奏者の荒絵理子、読売日本交響楽団首席クラリネット奏者の金子平、東京交響楽団首席ファゴット奏者の福士マリ子、NHK交響楽団首席ホルン奏者の福川伸陽、ピアニストの三浦友理枝---という豪華メンバーだ。
 驚嘆するテクニックがアルバム全編で聴ける。ハチャトゥリアン: バレエ音楽「ガイーヌ」 - レズギンカのような派手でウルトラハイスピードな曲も軽々と。まあ、これほどのアーチスト集団なのだから、それ自体は驚くに値しないが、本当の驚きは96kHz/24bitとDSD11.2MHzの違いだ。DSD11.2MHzに切り替えると、音場の空気が突然、澄み渡り、楽器の位置関係がきわめて正確になる。音像が的確に合焦し、精密な単位で描かれる。音色も断然カラフルになり、ピアノを始めとする木管、金管の固有のキャラクターがより雄弁に語られ始めた。個々の音色が空中で混ざり合い、新しい色を紡ぐ、カンバス上で、絵の具がミックスされ、新しい色が生成されるような、まさに混色の美だ。各奏者の細やかなアーティキュレーションやニュアンス再現も、DSD11.2MHzならでは。


4,4003,080

『Brass Ensemble ROSE with You』
ブラスアンサンブル・ロゼ, 稲垣路子, 近藤万里子, 杉浦美紀, 照喜名有希子, 加藤日名子

(DSD 11.2MHz)


 愛知県を中心に活躍する5人の女性金管楽器奏者による金管5重奏団「ブラスアンサンブル・ロゼ」の結成20周年記念アルバム。左右のスピーカーいっぱいに5人が拡がり、奥行き方向の音場感も深い。96kHz/24bitと比較したが、DSD11.2MHzは圧倒的な表現力だ。それは楽器の音色が関わる部分と、音場だ。金管のそれぞれの楽器の音の粒立ちが断然細かく、そのひとつひとつに緻密な階調感が与えられている。個々の楽器が持つ色合いが明瞭になり、彩度が格段に増した。さらに音場における楽器の定位がより正確に再現され、まるで、目の前でヴェールを剥いだように、クリヤーに音場を見渡せるようになった。空間を舞い踊る響きの粒子も、ひじょうに細かくなり、しかも、色つきの粒が自由に乱舞するようなカラフルな空気感だ。




■NOF Label

 

3,5652,496

『Message for you -メッセージ・フォー・ユー』
水野佐知香, 神谷百子, 赤塚博美

(WAV 352.8kHz/24bit)

 
 ヴァイオリン、マリンバ、電子オルガンという珍しいアンサンブル。DSD11.2MHzではこの3つの異種楽器が見事に融合する様子が聴ける。「1. 渡辺俊幸: おひさま」は ヴァイオリンが中心となり、ラブリーな音調を紡ぎだす。DSD11.2MHzは優しい表情で、なめらかに、すべらかにカラフルな音色を聴かせる。「2. サン=サーンス: 歌劇「サムソンとデリラ - あなたの声に心は開く」は 電子オルガンのハーモニーに乗って、マリンバがメロディを奏する。DSD11.2MHzは電子オルガンのポジションに奥行きが出て、マリンバが手前に浮かび上がる。叩きの質感がより細やかになり、叩く瞬間の多彩な倍音の放出が聴ける。  「 3. 山下康介: テレビドラマ「花より男子」 - 小さな願い」は、マリンバとヴァイオリンのデュオを電子オルガンが支えるという構図だ。DSD11.2MHzではヴァイオリンの音色がしなやかに、マリンバとの合奏感がより緊密になった。洗足学園前田ホールで録音。




■Naxos Japan, Inc.

 

3,5652,496

『passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番』藤田真央
(DSD 11.2MHz)

 
 2017年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝したピアニスト、藤田真央の3rdアルバム。これほど音場が透明で、ピアノが持つダイナミズムが巧みに表現されたハイレゾは稀有だ。
 第1曲のリスト:ハンガリー狂詩曲第2番。冒頭の和音から圧倒的だ。センターに定位したピアノから衝撃的な、そしてボディ感のある、深い音が放出される。透明感がありながら、味わいの濃い音。切れ味がシャープで、上質、弱音から強音までのレンジが広く、微小音に込めたニュアンスの変化もこと細かに描きだす。ナチュラルさと表現幅の大きさが両立するのは、ピアニストの力量と同時に、深田晃氏の録音術の凄さだ。過剰にホールトーンが入り込まないのも、明瞭さを意識した深田録音の美技。録音は2018年1月29-31日、アクトシティ浜松中ホール。ピアノはヤマハコンサートグランド「CFX」。




■dream window inc.

 

3,5202,464

『ルイ・クープラン: クラヴサン曲集』
桑形亜樹子

(DSD 11.2MHz)

 
 桒形亜樹子のチェンバロ、深田晃録音の名コンビだ。深田氏の個人レーベルdream window Treeの第3弾作品だが、これまでの第1弾「メディテイション〜フローベルガーの眼差し〜」、第2弾「J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻BWV846-869」の2作も桒形亜樹子のチェンバロ録音。いかに深田が桒形亜樹子に傾倒しているかが分かろう。今回のチェンバロは、弾くのはフランス・コルマールのウンターリンデン美術館収蔵のチェンバロ。1624年アントワープ、ヨハネス・ルッカース製作による2段鍵盤だ。カナダ製の新弦を張った伝統と現代が融合した銘器だ。「張り替えて数年、馴染んでいい音がする」と、桒形亜樹子が言った。
 圧倒的なクオリティだ。豪奢で華麗なチェンバロサウンド。素晴らしい音色とソノリティだ。一般的な、かぼそく繊細というイメージではまったくなく、ゴージャスでリッチ、剛直だ。音色のカラフルさにも驚く。会場の響きがとてもきれい。響きは深いのだが、ひじょうに透明で、音の粒子があちこちに反射しながら伝播していく様子が高解像で、目に見えるよう。深田録音はいくら響きが多くても、楽器の音がクリヤーなのだが、まさにその美質が最大限に発揮されている。カナダ新弦の音も豪華で繊細にして、彩度感が高い。
 「深田さんは会場に入ると、まわりを見て、すぐにマイクを配置されるのです。普通は手を叩いて会場の響きの具合をチェックするものですが、深田さんは何もしないで、会場を一瞥するだけで、会場の響きの様子がすべておわかりなるのです。たいへん感心しました」と、桒形亜樹子が言っていた。2019年6月10〜14日、フランス、オー=ラン県首都コルマール市ウンターリンデン美術館で録音。




■OMF

 

3,6302,541

『アイム・ソー・ハッピー!』
ハッピー☆マッキーSAXカルテット

(WAV 352.8kHz/24bit)

 
 ハッピー☆マッキーSAX カルテットは2010年に結成。同時期に昭和音楽大学と洗足学園音楽大学で学んだ女性奏者のサクソフォーンカルテットだ。DXDでは音のグラテーションがひじょうに細やかで緻密なので、音高の異なるサクソフォン合奏の醍醐味が、たっぷりと堪能できる。倍音領域の再現性が素晴らしく、4本のサクソフォンの音の質感の違いが高解像度で示され、さらにそれらが合成された音の重層感もまたリッチだ。高域まで何のバリアもなく、すっきり伸び、低域からの解像度が格段に高い。 「17. M.ルグラン: 映画「シェルブールの雨傘」 - アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー(松元啓祐編)」ではメロディとハーモニーの関係が、96kHz/24bitに比べ、明らかに緊密になった。低音の安定感、中音の明瞭さ、そしてハーモニーの融合感の再現性が格段に向上した。2012年3月、相模湖交流センターで録音。




■アールアンフィニ

 

3,9602,772

『ザ・デビュー』
宮本文昭, シエナ・ウインド・オーケストラ

(DSD 11.2MHz)

 鮮鋭、鮮烈を絵に描いたような名録音だ。ウインド・オーケストラ全体のマッシブな量感とディテールまでの明瞭さが見事に両立し、マクロもミクロもたいへん情報量が多い。会場の響きの中にウインド・オーケストラが存在するというより、その勢い、爆発力によって、少々の響きなど吹き飛ばし(?)、ダイレクトサウンドが鋭く発する。 以上は96kHz/24bitでのインプレッションだが、DSD11.2MHzは、実に上品で上質だ。個々の楽器の音のエッジがまろやかになり、端正で綿密な音の重層感がこのウインド・オーケストラの美質だと識れる。倍音領域までクリヤーに鮮やかに伸び、音の体積を規定する天井が遙か上方に高くなり、96kHz/24bitではいまひとつ分からなかった、ソノリティの堆積感がリアルに聴けた。音の表面の微細な凸凹感も、DSD11.2MHzでは明瞭に分かる。高域までの豊かな再現性が、音粒のイメージを明確にするのだ。2011年10月、北とぴあ・さくらホールで録音。


3,9602,772

『プレイズ・ショパン』
實川風

(DSD 11.2MHz)

 2015年のロン・ティボー・クレスパン国際コンクールで第3位(1位なし)入賞した實川風のショパン・アルバム。リニアPCM・96kHz/24bitとDSD11.2MHzの違いが、これほど明白に認識できる作品も珍しい。DXDで録音し、そこからDSD11.2MHzと96kHz/24bitに変換されるわけだが、DSD11.2MHzは、スペシャルな魔法的なフレーバーを音にまぶし、断然の臨場感と音の立体感、そして上質感を聴かせる。センターに位置するピアノの存在感が、ヴェールを剥がしたようにクリヤーに、ハイフォーカスに見える(聴ける)。空気が突然澄み、空気を伝ってくる音にも、格段の透明感が与えられる。ソノリティもとても柔らかいのである。
 ピアノの存在自体に立体感が付与されるだけでなく、一音一音も立体的だ。つまり音が急峻に立ち上がり、頂点で少し平らになり、また急激に立ち下がるという音形が立体的なのだ。ごく微細な時間の音の質感の変化も、実に些細なところまで捉えらるので、奏者のニュアンスが徹底的に深く再現される。スラーの柔らかな推移でも、一音一音がたいへんクリヤーに立つ。軽やか、重たいという運動性、暖かい、冷たい、爽やか……という感情の機微のボキャブラリーもDSD11.2MHzでは、たいへん豊富だ。2017年1月30日〜2月1日 五反田文化センターで録音。    


3,9602,772

『石田組』
石田組, 石田泰尚

(DSD 11.2MHz)


 神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサートマスター、石田泰尚氏が主宰する弦楽合奏団「石田組」。ロック、ポップス、クラシックとジャンルレスの硬派なアンサンブルを聴かせる。公演ごとにメンバーは異なる。「1 紫の炎(ディープ・パープル)」では、flac 96kHz/24bitは、ロックの雰囲気を弦楽器で再現すべく、輪郭を尖鋭に立て、一音一音に隈取りを与える、いかにもハードでメタリックな音調。ファズで歪ませたギターのようなサウンドだ。曲のコンセプトに合致したアーティキュレーションだ。ところがDSD11.2MHzでは、単にメタリックなだけでなく、上質感と緻密さ、そして階調感加わり、格段の再現性だ。
 6曲目は一転して、バロック的な「 リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲」レスピーギ)。DSD11.2MHzは、時間軸解像度がひじょうに細かい。音の時間方向の進行において、音の音の間がより緊密に連携し、緻密につながる。「宮廷のアリア」冒頭、低弦が濃密に鳴り、音像が立体的なイメージで、音場に浮かび上がる。音の微少なふるまいまで観察できるほどの解像度の高さだが、それが単なる音情報の多さに留まらず、音の情緒感をさらに涵養しているところに、DSD11.2MHzの音楽性がある。チェロが始まる前の気配感もだんぜん濃密だ。演奏家の張り詰めた「気」も見えた。2016年10月22日 横浜みなとみらいホール 大ホールで録音。


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『エルガー: チェロ協奏曲』
新倉瞳

(DSD 11.2MHz)


 ソロのチェロと、バックのオーケストラ(山形交響楽団) の音響的、ソノリティ的な同質性が高く、響きの統合性が本録音の醍醐味だ。音色的にもソロチェロと、総体としてのオーケストラが同調し、豊かなソノリティの中で2つが見事に融合する。チェロの音の延長にオーケストラの音がある。会場の響き成分がよほど巧みにコントロールされないと、このユニフォーミティは実現されない。録音家の才覚が識れる。以上は96kHz/24bitでのインプレッションだが、DSD11.2MHzでは、質感が圧倒的に向上した。冒頭のソロチェロの斬り込みは、96kHz/24bitでは、鋭いナイフでスパッと切るようなシャープさだが、DSD11.2MHzは、明らかに切った音の表面に、ひじょうに細かな音の粒子が多数存在し、高格調の響きを形成している。音のエッジも鮮鋭にして、まろやかだ。音の体積がひじょうに大きく、輪郭の内側にも緻密な粒子感を湛えている。オーケストラとの響きの同質感は、さらに緊密になり、倍音がキラキラと音場に散り渡る。2015年5月8日〜10日 山形テルサ テルサホールで録音。




■ウルトラアートレコード

 

5,0933,565

『エトレーヌ [Ultimate Analog Master Ver.]』
情家みえ

(WAV 352.8kHz/24bit)
(DSD 11.2MHz)

 
 最後に私のUA(ウルトラアート)レコードのウルトラハイスペック作品も、ご紹介させていただこう。「情家みえ・エトレーヌ」のUHQCDは2018年1月に発売され、192kHz/24bit音源はe-onkyo musicからダウンロードできる。 2017年8月の東京・代々木スタジオでのセッションでは、2種類の音源を録音していた。PRO TOOLSでの192kHz/24bitのデジタル録音版と、もうひとつはアナログ録音版である。後者はSTUDER A-800で76cm/secという猛スピードで2インチ幅テープを回して、24トラックにマルチ収録した。このアナログ音源は、2チャンネルにトラックダウンし、アナログLPのマスター音源として使用された。そこから、Pyramixで作成したDSD11.2MHz、DXD384kHz/24bitファイルが、エトレーヌ [Ultimate Analog Master Ver.] になった。
 DSD11.2MHz音源は空気感の濃密さが凄く、声が消えゆく際のニュアンスの微細さが、信じられないほどリアルに表現される。ピアノの間奏はスタインウエイフルコンサートならではの音の深み、音の胆力、音の華麗さが堪能できる。音場の豊かさはDSD音源の大きな特徴だが、ビラミックスで変換したサウンドはそうした中にも密度感を保ち音の深みをぎゅっと閉じ込めている。 一方、リニアPCMのDXD384KHz/24bitはきわめて透明度が高く、スケール雄大で切れ味がシャープだ。エネルギッシュで力強く躍動感あふれるPCM特有のサウンドをさらに昇華して聴かせてくれる。2017年8月、代々木スタジオで録音。




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麻倉怜士(あさくら れいじ)

 

津田塾大学・早稲田大学エクステンションセンター講師(音楽)/UAレコード副代表。 日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。 『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。 1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。

 

 



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