『Finally Enough Love: 50 Number Ones』 Madonna
~世界のトップ・プロのリマスターをハイレゾで体感!~
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■マドンナのアルバム 『レイ・オブ・ライト』 は、音質チェックCD盤の金字塔!
本連載は今回が101回目。また新たな気持で、お宝ハイレゾ音源の探求に全力で挑みますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。
1999年ごろ、まだ私がプロのオーディオ開発者として未熟だったときのお話。製品開発のジャッジメントをより高い領域で行うために、レコーディング・エンジニアさんやマスタリング・エンジニアさんといったトップ・プロに協力いただいていた時期があります。そのころ、エンジニアさん達がヘビロテで使用していたチェック音源が、マドンナの 『レイ・オブ・ライト』 でした。
なかでも9曲目 「フローズン」 は、どれだけ音楽制作スタジオで聴かされたことか。諺の “習わぬ経を読む” ではないですが、大量に聴いたおかげで、だんだんと 「フローズン」 のチェック・ポイントが分かってきたものです。
マスタリングの神様と言われたテッド・ジェンセン氏の腕が光る仕上がり。未だに、その音像の美しさは輝き続けています。ぜひ機会があれば 『レイ・オブ・ライト』 を聴いてみてください。
当時、問題となったのがCD盤生産国による音質の違い。同じデジタル・データなのに、嫌になるくらいアメリカ盤 『レイ・オブ・ライト』 の音が良いではないですが。 当時の日本に流通していた 『レイ・オブ・ライト』 の輸入盤はヨーロッパ生産のCD盤オンリー。どうしてもアメリカ盤 『レイ・オブ・ライト』 が仕事的に欲しかった私は、アメリカに出張するエンジニアさんにお土産として買ってきてもらいました。裏表紙のMade in USA が輝くように見えたものです。
音源配信となった現代では、CD盤生産国による音質の違いって、なんとも滑稽でオカルトに感じることでしょう。でもレコードやCD時代には、プレスする国はもちろん、CDプレス工場の音の良いレーンまで拘ったものです。果たして、夢があったのか無かったのか。つい最近のお話しなのに、もはや遠い昔のように感じます。
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■ダンス・トラックなのに耳が痛くないマスタリングとは!
マドンナのダンス・ヒット・トラックのベスト盤がハイレゾ音源で登場。しかも 「フローズン」 を収録している。これは聴かねばなるまい。しかし、残念ながら 「フローズン」 はダンス・アレンジの別バージョンでした。しかし、年代順に並ぶダンス・ヒット曲のハイレゾは圧巻です!
こういった50曲もあるアルバム、しかも年代は1983年作品の 「Holiday」 からスタートするのですから、どうやって音質の統一感を持たせたのか興味津々。80年代の流行った音質というのは、料理に例えるなら、どちらかというと薄味といった印象。現代の激辛サウンドとの整合性は難しいのでは?
答えは簡単。年代順に楽曲を並べることで、少しずつ音質が現代化していくというオチでした。それでも 「Material Girl」 を新鮮な気持ちで楽しめるのですから素晴らしい仕上がりだと思います。
マスタリングを担当したのはマイク・ディーン氏。ダンス・ヒット・トラックのベスト盤ということで、どんな猛烈な音圧が飛び出してくるのだろうかと不安になり、アンプのボリューム位置を通常よりも6dBくらい下げて試聴開始。すると拍子抜けするくらいに綺麗な音像が飛び出しました。これならオーディオ的な試聴でも十分に楽しめます。
高音圧の圧縮サウンドではなく、ダンス・トラックとしての適正な音量感を維持しつつ、制作年代ごとの音質差を可能な範囲で微調整し、ひとつのアルバムとして楽しめるようにマスタリングされています。さすが、世界のトップ・プロによるマスタリングは素晴らしい! 音圧を詰め込みすぎることなく迫力あるサウンドは実現できるという、お手本のようなマスタリングです。
単曲でハイレゾ 購入するなら、3曲目「Material Girl」、19曲目「Frozen」、ラスト50曲目「I Don't Search I Find」、あとはお好きな楽曲を加えてのラインナップはいかがでしょう? 80年代のトキメキが感じられる 「Material Girl」 を2022年最新リマスターで楽しみつつ、アレンジは異なるもののチェック音源として耳タコな 「Frozen」 の再発見、そして最新音源の激辛な低域による快感。どれもサブスクとは一味違う、ハイレゾ音源ならではの凄みを感じていただけると思います。
合わせてチェックしていただきたいのが、音像の広がり。一度、イコライザーなどのエフェクトはオフにして、マスタリング・エンジニアが提供したそのままの音像を体験してみては? 左右はもちろん、上下、前後に自然に広がっていく余韻成分は、非常に良い位相表現が生む立体世界です。
50曲もあり、私も聴いてない曲がたくさんあります。このマスタリングの仕上がりなら、まだまだ隠されたお宝サウンドが、50曲の中にあるかもしれません。見つけたら、ぜひ私にも教えてくださいね。
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【バックナンバー】
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<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~ スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~ スペシャル・インタビュー後編
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<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
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<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
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<番外編>『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』を、イベントで実際に聴いてみた!
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<第85回>『28 NY Blue Featuring Oz Noy & Edmond Gilmore』神保彰~低音ハイレゾ新定番誕生!(神保氏メール・インタビュー有)~
<第86回>『モダン・ジュズ』PONTA BOX~アナログ2CHダイレクト・レコーディング音源で聴く、ポンタさんのドラム!~
<第87回>『ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット[Live]』 ノラ・ジョーンズ~第2の定番リファレンス音源になり得る、生々しさ抜群のライブ音源!~
<第88回>『On A Friday Evening[Live]』 Bill Evans Trio ~ハイレゾは1975年へのタイムトラベルを実現する!~
<第89回>JIMSAKU スペシャル・インタヴュー!
<第90回>『ハバナ・キャンディ』 パティ・オースティン ~ボーカルのチェックに必須なハイレゾ音源はこれだ!~
<第91回>『Silver Lining Suite』上原ひろみ ~逆境が生んだオーディオ必聴盤!~
<第92回>『Another Answer』 井筒香奈江~日本が世界に誇れる高音質ハイレゾ音源!~
<第93回>特別編 神保彰スペシャル・インタヴュー!
<第94回>『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)』 諏訪内晶子~オーディオ確認音源としても、この音色は超魅力的!~
<第95回>『Jazz at the Pawnshop』 Arne Domnerus ほか~オーディオ名盤と愛され続ける、流石のサウンド!~
<第96回>『安藤正容 Farewell Tour』 と 『大瀧詠一』~アナログ録音とデジタル録音、甲乙つけがたいハイレゾ!~
<第97回>ALFA MUSICレーベル 『THE WORLD ON A SLIDE』 ほか ~総勢19人ものトロンボーンの洪水!~
<第98回>『sinfonia』溝口肇~この立体的な音像を、オーディオ製品開発のリファレンス音源に!~
<第99回>『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios』宇多田ヒカル~歌姫がライブ盤になってオーディオに帰ってきた!~
<第100回>『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』100回記念スペシャル かつしかトリオインタヴュー!
筆者プロフィール:
西野 正和(にしの まさかず)3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー 株式会社レクスト代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』をプロデュース。