【インタヴュー】シンガーソングライターRihwaのデビュー10周年記念アルバム『The Legacy EP』

2022/07/21

北海道・札幌出身のシンガーソングライターのRihwa(リファ)。2012年メジャーデビューし、2013年ドラマ『ラスト・シンデレラ』の挿入歌「Last Love」が、iTunesで14日間連続1位を記録。翌年の2014年には、ドラマ『僕のいた時間』主題歌として「春風」をリリースし、iTunes5週連続1位の偉業を達成。そんなRihwaが今年2022年にデビュー10周年を迎え、KT Tunstallプロデュースによるアルバム『The Legacy EP』をリリース。e-onkyo musicでは、オーディオ・ライターの土方久明氏によるインタヴューを敢行。10周年を迎えるRihwaのこれまでと現在、そしてアルバム『The Legacy EP』について、更に土方氏によるサウンド・インプレッションをご紹介いたします。

取材・文 土方久明/写真 村上宗一郎


★KTタンストールプロデュースによる
デビュー10周年記念アルバム

The Legacy EP
Rihwa


今年、2022年7月11日にデビュー10周年を迎えるシンガーソングライターのRihwa(リファ)。10周年を記念し『映画プラダを着た悪魔』の主題歌「Suddenly I See」を作ったKT Tunstall(ケイティ・タンストール)がプロデュースした10周年記念アルバム『The Legacy EP』をリリース。KT Tunstallの代表楽曲となる「Suddenly I See』」を含めた全6曲入りのアルバムは、5曲を英語で歌い上げています(「Suddenly I See」は英語と日本語でカバー)。




Rihwa スペシャルインタヴュー


アーティスト、Rihwa(リファ)をご存じだろうか。アコースティック・ギターによる弾き語りのスタイルが得意なシンガーソングライターだ。2012年にメジャーデビューし、2013年にはフジテレビ系で放送されたドラマ『ラスト・シンデレラ』の挿入歌「Last Love」が、iTunesで14日間連続1位、さらに翌年にドラマ『僕のいた時間』主題歌としてリリースされた「春風」がiTunes5週連続1位を獲得するなど、J-POPの世界で着実なキャリアを重ねている。

そんな彼女のデビュー10周年を記念したアルバム「The Legacy EP」が、CD、LP、96kHz/24bitのハイレゾファイルでリリースされた。

そのプレスリリースを見ていた僕は1つのことに気がついた。このアルバムのプロデューサーは、なんと映画『プラダを着た悪魔』の主題歌「Suddenly I See」を作った、アメリカの歌姫KT Tunstall(ケイティ・タンストール、以後KTと表記)である。

e-onkyoから届いた事前情報によると、演奏メンバーのキャスティングまでKTが行い、レコーディングもKTの自宅兼スタジオで実施するなど、Rihwaさんは、全面的なサポート受けているという。そして、ハイレゾアルバムのリリースはRihwaさんとって初めてのことだという。これは注目である。

ということで、今回はRihwaさん本人に特別インタビュー!新アルバムがKTのプロデュースによって制作された背景やレコーディングでこだわった点について、根掘り葉掘り聞き出してみた。


土方久明




インタビューが行われたのは、7月上旬の都内某所。取材部屋に入った瞬間に「こんにちは?」と明るい声が聞こえてくる。僕は、オーディオの関係者のインタビューは多いけど、アーティストのインタビューの経験は少ない。だけどその人懐こく明るい彼女に少しホッとした。

――本日はよろしくお願いします。まずは、e-onkyo musicユーザーの皆さんへ簡単な自己紹介をお願いします!

Rihwa:皆さんこんにちは、Rihwaです。えー、なんていえばいいんだろう、自分で歌を書いてそして歌っています!笑

――高校時代に、カナダへ留学され、カントリーミュージックに囲まれた生活をされたのですよね。そして、カナダの学校で行われた音楽イベントで、ケリー・クラークソンの 「ビコーズ・オブ・ユー」を披露して大喝采を浴びてプロを志した。

Rihwa:はい。その時の反応は今でも忘れません。「ビコーズ・オブ・ユー」の歌詞と私のハイトーンが皆に刺さったのかもしれませんが、歌い終わった後にスタンディングオーベーションになって、自分には何かがあるのかもしれない、何かができるかもしれないと思った瞬間でした。

――僕は中学生から邦楽・洋楽のチャートを追っかけてきましたが、「Last Love」が、iTunesで14日間連続1位、さらに「春風」はiTunes5週連続1位を取得していますよね。ドラマか漫画で描かれるようなシンデレラストーリーを経験されています。

Rihwa:ありがとうございます。でもその時は意外に冷静だったんですよ。喜びながらも、次は何をしようかと考えていました。

――そして、デビュー10周年を記念したアルバム「The Legacy EP」が発売される事になった。ここからはそのアルバムについて質問させてもらいます。

Rihwa:はい!

――まずはThe Legacy EP製作の経緯を教えてください。なぜKTタンストール、がプロデュースすることになったのでしょうか?

Rihwa:数年前に所属事務所が変わり、環境が変化したなか、これからどのような音楽を作ろうか?今一番やりたい音楽は何だろう?と考えていたのですが、その時、「今度は一緒に音楽を作ろう、私が貴方のアルバムをプロデュースしてもいいわ」というKTの言葉を思い出したんです。

――え??このアルバムのためにKTにコンタクトをしたのではなく、元々知り合いだったのですか?

Rihwa:はい。KTとは友人関係です。昨今の彼女は、とあるミュージカルで使用される楽曲を丸々プロデュースしていたり、自身のアルバムも制作中の多忙な身だったのですが、私の思いを彼女に伝えたら「Rihwaの力になりたいからいつでも大丈夫よ」と言ってくれたんです。

――それはすごい!

Rihwa:彼女と週に1度時間を決めて、ZOOMでコミュニケーションをとりながら楽曲を作りました。


――The Legacy EPからは本場の洋楽、そしてカントリーミュージックの匂いがします。Spotifyのヴァイラルチャートを聞いているよりも、billboard Hot100でかかっている洋楽を聞いているような印象です。

Rihwa:ありがとうございます!カナダでは、カントリーミュージックが普通にかかっていて自然と身体に染み込みました。

――Rihwaさんはカントリーミュージックが本当に好きなんですよね。The Legacy EP は6曲構成で、オリジナルの楽曲が5曲、そしてKTの代表曲である「Suddenly I See」をRihwaさんが歌ったカバーで構成されています。

Rihwa: まず私がデモ音源をKTに送って、良さそうな楽曲を彼女がチョイスしてくれました。ZOOMでは、仕事やプライベートの話題などたくさん話していました。そんな会話から、楽曲の歌詞が生まれていきたんです。だから、英語詞の曲はすべて私とKTの共作詞になっているんですよ。

――6曲中5曲が英語で謳われているのも特徴的ですね。

Rihwa:今までの私の楽曲は、日本にむけて作ってきたこともあるのですが、今回は私の好きなカントリーミュージックで行こうと思いました。そして、どうせやるなら海外でも通用するレベルの英語詞で歌を書き、歌唱するならやはり英語だなという気持ちもありました。実は全楽曲、英語バージョンと日本語バージョンでレコーディングしたのですが。

――Rihwaさんはハイトーンボイスも評価されていますが、このアルバムでは特に英語の発音が上手いですよね。さらっと聞くと普通に洋楽のアーティストが歌っているように聞こえる。

Rihwa:KTからガッツリとレクチャーを受けたんです。彼女はどこにアクセントを置けば良いのか、どうすればよりネイティブに聞こえるのか、一語一句細かくレクチャーしてくれました。

――あ!だからか。でも、そこまでサポートしてくれるのは友人関係じゃないと難しいですね。レコーディングの様子を教えてくれますか?

Rihwa:レコーディングはKTの家にあるハウススタジオで行いました。山沿いにある大きな家にスタジオが併設されていて、レコーディングブースはガラス張りになっているから大きな山が目の前に見えるんですよ。

日本にある多くのレコーディングブースは閉ざされててるけど、そこはとにかく自然なんです。エンジニアがすぐ横にいる中で歌って、彼女の作った料理を食べさせてもらったり、近所の方が連れてきた犬とアイコンタクトしながらレコーディングしました。

そして何よりもKTが、“Rihwaの好きなように歌って”って言ってくれたのでリラックスできて、声の出方も全然違ったんです。

――それがこのアルバムに現れているのですね。音楽的に楽しい1つの要因になっているように思います。

Rihwa:そして最終的にマスタリングが施された楽曲が送られて来た時に「洋楽になっている!」と感激しました。マスタリングはKTがいつも依頼している海外の方にお願いしていますが、ボーカルの処理の仕方も日本とは違います。日本だと歌詞がしっかり聞こえることを大切にしているせいか、ボーカルがドーンと前にいて大きいのですが、今回のサウンドは、ボーカルがバックミュージックの中に融合していて、空気感が違います。

――そういう発言待っていました!解放的な空間で録音されたからなし得た、伸び伸びとしたボーカルに加え、KTのプロデュースによって、洋楽そのものの音色/音調のマスタリングが施されているように聞こえました。オーディオファンはこの独特の音場と音像を再現すれば良いのですね。

Rihwa:アルバムの制作には約2年かかっています。今まで多くの楽曲を作ってきましたが、このアルバムは私のカントリーミュージックへの想いと、私とKTの“好き”が詰まっており、6曲全てが研ぎ澄まされていると思います。



如何だったろうか?アーティストにはバックボーンや自分がやりたい音楽、リスナーに伝えたい音楽があり、皆、それを表現しようとしている。

Rihwaさんは、その歌唱力と作曲力を生かして、J-Popでメジャーになった経緯があるが、本アルバムでは、元々自分がやりたかったカントリーミュージックを全面的に解禁し、友人であるKTタンストールの全面バックアップにより作られた。だからこそ本作は、サウンドも歌詞も音楽的に充実したアルバムとなっている。
なお、1つ気がついたのだが、本アルバムの帯域バランスや低域の質感および迫力は、KTの最新シングル「キャニオンズ」とほぼ一緒だ。

今回のインタビューでは、特にタイトルの背景がよくおわかりいただけたのではないだろうか。ぜひ皆さんも本楽曲を手に入れて、自宅のオーディオルームで彼女の世界観を表現して欲しい。これこそ、高品位なオーディオ機器を所有するオーディオファイルの特権だ。




土方明久による『The Legacy EP』アルバム・レビュー


★KTタンストールプロデュースによる
デビュー10周年記念アルバム

The Legacy
Rihwa



「The Legacy EP」は、アメリカのポピュラー音楽として愛されるカントリーミュージックをベースとしつつ、現代ポップスのテイストも加えられた完成度の高いアルバムだ。

プロデューサーと歌い手が友人関係ということもあるだろう。全6曲それぞれが、曲のコンセプトに合わせ丁寧にマスタリングされていることが印象的。

共通する音の印象として、比較的ナチュラルな中高域によりギターの質感表現が素晴らしい。ベースやドラムなどの低音楽器は現代ポップスらしい重量感を持つ。多くの楽曲で左右に2人のギターが配置されており音場のベースを作っている。


01. Wisdom  ウィズダム 
イントロから2本のギターが左右に配置されるが、それぞれの質感表現は最初の聞きどころ。ディテールを出しながらもナチュラルな質感を持ち、中高域の帯域バランスがチェックできる。スピーカー/ヘッドホンの中央部には重量感たっぷりのベースが出現し、センターに定位するベースとそこから広がるリバーブ成分の描き分けも聞きどころ。ベースの重量感は強いのでスピーカーシステムでは再生が難しいはず。

02. Legacy  レガシー 
本アルバムのタイトルにもなっている楽曲。イントロの重量感あるドラムから始まるアップテンポな楽曲で、左右のギターが広大なサウンドステージを作り、センターに、ボーカルとベース、キーボードが定位する。

03. The Gift  ザ・ギフト
楽曲冒頭のギターは大きな聞きどころ。質感や引き方の違いをリアルに表現できるハイレゾ音源の優位性を実感できる音源だ。聴感上のSNやノイズフロアのチェックにも最適なタイトルである。

04. Beautiful Woman  ビューティフル・ウーマン
2本のギターとボーカルによるシンプルなイントロからスタート。0:27付近からベースが入ってくるが、ここでは帯域の違うギターとベースの描き分けを表現しつつ、ベースをリアリティ良く出したいところ。0:43から楽器が増えボーカルを包み込むが、そのアンビエントに音像が埋もれないようにしたい。

05. Alanis アラニス
躍動感が強い楽曲。激しいアタックのドラムに呼応するように、ギターのディテールや音色も明瞭に聞こえる。バックミュージックとボーカルの音量的なバランスが上手くマスタリングされてるので、オーディオシステムでは一体感ある演奏を表現したい。

06. Suddenly I See サドゥンリー・アイ・シー
2006年に公開され、興行収入1億2000万ドルを記録した大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の主題歌で、KTタンストールを代表する曲でもある。そのカバーとなった本楽曲は、原曲のメリディアスなテイストを保ちつつ音色や音調は現代風になり、高~低音域までのfレンジが広く、音圧も適度に高められている。イントロのベースの弾力感ある表情やRihwaの伸び伸びとした歌い回しをハイレゾの優位性を持ってリアルに表現したい。曲が流れると、「あ、知っている!」というベテランオーディオファイルも多いはず。




Rihwa プロフィール



Rihwa -リファ-
北海道・札幌出身のシンガーソングライター。
中学卒業後、単身カナダへの留学を決意し、高校生活3年間をカナダ・ベルビルにて過ごす。街中で流れていたカントリー・ミュージックがいつしか自然と体に染込んでいく。
在学期間中、ひょんなことからボーカルクラスの音楽イベントに出演。初めて多くの観客を前にKelly Clarkson「Because of You」を披露し、大きな歓声と共に、国境・言語を超えて音楽が与えるパワーに衝撃を受ける。以降、カントリー・ミュージックをベースにした楽曲制作を始め、帰国後、北海道内を中心にライブ活動を開始。
2022年7月11日にデビュー10周年を迎えた。

オフィシャルHP 
オフィシャルYouTube
▼Instagram @rihwa_official
▼Twitter @Rihwa_Park

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