【最大48%オフ】麻倉怜士セレクト!ユニバーサル・ミュージック クラシック名演奏・名録音28選

2022/06/24

オーディオファンから絶対的な支持を得るオーディオ・ビジュアル評論、麻倉怜士のセレクト企画。今回は、ユニバーサル・ミュージックが誇る膨大な作品群より、三大クラシックレーベル「ドイツ・グラモフォン」「デッカ」「フィリップス」に加え、ドイツの名門「ECM」のカタログより、オーディオファン必聴の世紀の名演・名録音28タイトルを厳選してセレクト。
また、当企画のローンチを記念して、こちらでご紹介のアイテムの期間限定プライスオフも実施!是非この機会に、麻倉怜士セレクトによるユニバーサル・ミュージック クラシック名演奏・名録音28選をご堪能下さい。

◆◇◆




 ドイツ・グラモフォン(DG)、デッカ(DECCA)、フィリップス(Philips)の三大クラシックレーベルが蝟集するユニバーサル・ミュージックのアーカイブは、クラシック・ファンの垂涎の的だ。その膨大なコレクションから、これは絶対に聴いておきたい、世紀の名演奏・名録音を詳細なインプレッションと共に、ご紹介しよう。登場する演奏家はきら星の如く……、
  指揮者ではヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロ・マリア・ジュリーニ、ゲオルグ・ショルティ、カルロス・クライバー、ペーター・マーク、エルネスト・アンセルメ、小澤征爾、グスターボ・ドゥダメル。
  オーケストラはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、シカゴ交響楽団、ボストン交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団。
  ピアニストは、マウリツィオ・ポリーニ、ラザール・ベルマン、ピエール=ロラン・エマール、ダニール・トリフォノフ、ヤン・リシエツキ。弦楽奏者はチョン・キョンファ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ダヴィッド・オイストラフ、アンネ=ゾフィー・ムター、ヴィクトリア・ムローヴァ、ヒラリー・ハーン。室内楽はボザール・トリオとベルリン・フィルハーモニー八重奏団。
  さらに特別にECMレーベルから、キース・ジャレット、アンドラーシュ・シフ、ハインツ・ホリガーなどの傑作ハイレゾを選択した。ユニバーサル・ミュージックが誇る天下の名演奏・名録音ハイレゾをダウンロードして、聴こう。


麻倉怜士




■期間限定プライスオフ


【最大48%オフ】麻倉怜士セレクト!
ユニバーサル・ミュージック クラシック名演奏・名録音28選


特集:「麻倉怜士セレクト!ユニバーサル・ミュージック クラシック名演奏・名録音28選」のローンチを記念して、対象アイテムを期間限定プライスオフ!

・対象作品:こちらのページでご紹介の28作品
・実施期間:~2022年8月24日(火)
※プライスオフ後の価格が、各ページに表示されています。
※アルバム販売のみプライスオフが適用されます。




■交響曲編


3279¥1874

モーツァルト:交響曲第40番・第41番
/ドヴォルザーク:交響曲第8番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ヘルベルト・フォン・カラヤン

 RCAとDECCAの共同プロデュースによるカラヤン/ウィーン・フィルシリーズの代表作。私はこのステレオLPを子供の時に買って以来、CD、SACDなどさまざまなメディアで聴いてきたが、本DSDはとても芳しい音がする。グロッシーな弦、木管の麗しさ、金管のヴィヴットさ、そしてトゥッティでの美麗な表情……という、この時代のウィーン・フィルならではの美味しさを堪能。美的なカラヤンの手に掛かり、ウィーン・フィルがより美の頂点に登り詰めたよう。磨き上げられた流麗なフレージングはまさに美の極致と言っても過言ではない。ゾフィエンザールの音響も芳しい。 オーケストラは左右に雄大なスケールで定位し、かつ個々の楽器も見事にその存在を主張している。
 後年にベルリン・フィルと録音したモーツァルト(1970年、ベルリン・イエス・キリスト教会)は、ものすごく艶々とした質感で、響きの量がたいへん多く、オーケストラ総体としてマッシブだ。一方、59年にウィーンで録音されたこのモーツァルトは、内声部までしっかりと捉えられ、響きと直接音のバランスも適切で、しかもディテールまでたいへん鮮明だ。モーツァルト:交響曲第40番 ト短調は1959年3月、交響曲第41番ハ長調「ジュピター」は1962年5月、ドボルザーク:交響曲第8番 ト長調 は1961年10月,ゾフィエンザールで録音。 

3871¥2241

Beethoven: Symphony No.6 in F, Op. 68
Los Angeles PhilharmonicCarlo Maria Giulini


 20世紀の名指揮者、カルロ・マリア・ジュリーニの「田園」は、星の数ほどリリースされている同曲で、私のベストスリーに入る名演・名録音だ。1979年11月に音楽監督を務めていたロサンゼルス・フィルを振って、録音。
 芳醇なアナログの香りが漂う、格調高い「田園」だ。第1楽章は実に悠々としたテンポ感で、一音一音を丁寧に描く。ゆったりと流麗な音楽の流れに身を任せたくなる、抱擁力の大きな演奏だ。ジュリーニならではのレガートの丸さが耳に心地よい。フォルテ部分でも悠然とインテンポを守り、過度のコントラスト感に走らない、誠実な音楽の造形であり、ジュリーニの人間性豊かな音楽づくりと、精緻なロサンゼルスフィルのアンサンブルが合体した、まさに世界遺産的な名演奏といえよう。音色はヨーロッパのオーケストラのように、渋い。各楽章の印象を記す。
 第1楽章「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」は、景色の美しさに陶然としている有様。 第2楽章「小川のほとりの情景」。優雅に豊かに音楽が流れ、麗しい気分で小川を眺めている。チェロの悠然たる旋律が心地好い。時間の流れが引き延ばされているように、世界がゆっくりと動いている。ここぞという場面でのアゴーギクが効く。
 第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」は打って変わって、躍動だ。溌剌とした速いテンポで進行する。第2楽章では輪郭が丸かったが、ここではくっきりと鮮明。オーボエとファゴットの絡みもスリリング。トゥッティでの弦の倍音感も豊潤だ。
 第4楽章「雷雨、嵐」は、凄まじい衝撃音の饗宴。ティンパニの強打、低弦の不気味なトレモロ、クレッシェンドの急激な昂揚……、第1、第2楽章の静謐さのとの対比が凄い。
 第5楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」は壮絶な嵐が完全に過ぎ去り、平和で安寧な気分が戻ってきた。また、実にゆったりとした、悠然とした音楽が奏でられる。ジュリーニの歌心の深さが堪能できる素晴らしい田園風景だ。1979年11月、ロサンゼルスで録音。



3748¥2108

シューベルト: 交響曲第3番・第8番《未完成》
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団カルロス・クライバー

 クライバーのアルバムはどれも世界遺産だが、本作も、極めて劇的なシューベルトだ。どんなに人口に膾炙している作品でも、クライバーの手に掛かると、本当はこんな音楽だったのか、こんな切り口があったのかと感嘆する。「未完成」も最近でこそ、ダイナミクスと尖鋭さを打ち出す演奏が多くなったが、1978年の本録音当時は、ロマンティックで馥郁たる演奏がほとんどだった。そんな時に、ハイスピードとハイ・ダイナミックレンジで衝撃的な「未完成」が登場したので、みんな驚いたのである。
 録音も素晴らしい。40年前の録音とは思えない音の新鮮さ、だ。躍動感と躍進感というクライバー音楽の美質を、最良の質感で聴かせてくれる。クライバーの細部まで明確に彫塑する音楽性が音で見事に捉えられている。ムジークフェラインザールの豊かな響きのの中でも、響きの量に埋もれることなく、輪郭感が鮮明にして、ディテールまでの粒立ちが細やかだ。一音一音に生命力が漲り、音が自在にホール空間を飛翔する様子が、ひじょうにリアルだ。どんなに強音でも、しなやさと美しさを保つウィーン・フィルの豊麗な音色感に酔う。1978年9月、ウィーン、ムジークフェラインザールにて録音。DGのオリジナル・アナログ・マスターから独Emil Berliner Studiosにて2012年制作DSDマスター。

4920¥2810

メンデルスゾーン:交響曲第3番、真夏の夜の夢
ペーター・マークロンドン交響楽団

 スイスの名指揮者とロンドン交響楽団による、幸せなメンデルスゾーンだ。アナログ時代から定番とされ、私もLPで愛聴していたが、久しぶりにハイレゾで聴いてみると、実に素晴らしいではないか。「スコットランド」交響曲の第一楽章冒頭のイ短調のミラシド♪の導入を聴くだけで、一瞬にして物憂げな雰囲気や、荒涼たる海辺の景色がイメージとして強烈に浮かんでくる。ようやく入る第1主題もヴィヴットで躍動的だが、同時にどこか哀愁が漂い、叙情性が濃い。第2楽章の五音音階旋律も、ハイスピードだが、感傷的で、心に染み入る。第3楽章の悠々たる音進行の雄大さ。快速な第4楽章は、今なら空からのスコットランド散歩だ。
 憧れとロマンな劇付随音楽「真夏の夜の夢」。弦の音が濡れ、木管がしっとりと奏される。序曲では、艶艶したグリッサンドが色気たっぷりだ。アナログの極致的なすべらかなサウンドを、正確伝送のデジタルで聴けるというのも、不思議な気持ちがするが。1957年2月、1960年4月、ロンドンはキングズウェイ・ホールで録音。



3748¥2108

マーラー: 交響曲第5番
シカゴ交響楽団サー・ゲオルグ・ショルティ

 1969年、シカゴ交響楽団の第8代音楽監督に就任したショルティの初レコーディングがこのマーラー第5番だ。冒頭の尖鋭にして柔らかなアドルフ・ハーセスのトランペットの素晴らしさ!三回繰り返される三連符の鮮明さ。その頂点のスフォルツアンドの全音符が、広大なシカゴシンフォニー・ホールの空間に、見事なソノリティを保ちながら消え行く様の美しさ。次の爆発的なトゥッティの偉容さと鮮烈さ。シャープな斬れ味!まさに、ショルティだけのワン・アンド・オンリーの峻烈マーラーだ。
 本録音の意義は、オーケストラを細部まで徹底的に描きだす解像度の高さと、ホール音響の豊かさが両立していることだ。直接音も間接音も、どちらもたいへん鮮明なのである。作曲者の細部への徹底したこだわりが識れるのと同時に、演奏された場の様子も耳で分かる。第1楽章最後のホールに轟き渡る、低弦ピッチカートの雄大さにも圧倒。録音のクオリティの高さ、その鮮鋭さも圧倒的だ。 1970年3月、シカゴ、メディナ・テンプルで録音。この当時、オーケストラホールの改修工事の失敗により、サーカス公演の会場だったメディナ・テンプルを録音会場として使っていた。DECCAのオリジナル・アナログ・マスターより英Classic Soundにて2012年DSD化。    

-



■管弦楽曲編


3748¥2108

カラヤン/舞踏への勧誘~オーケストラ名曲集
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ヘルベルト・フォン・カラヤン


 カラヤンの凄いところは、クラシックの本流のドイツ・オーストリアの定番大曲はもちろん、ポピュラーな小品でもまったく手を抜かずに、100パーセントの芸術的挑戦することだ。私がクラシック音楽に目覚めた時は、適当な編曲、適当な演奏、適当な音質の、小品アルバムが横行していた。尺を縮めるために前奏、後送を省く、制作コストを抑えるために無名の指揮者、無名のオーケストラを使う、音も普通……というもので、これは音楽初心者の情操にもよくないのではと、子供ながらに思ったものだ。
 そこでカラヤンだ。このアルバムで初めてクラシックに触れた人は幸せだ。音楽とは、こんなに面白いものだと、あの大指揮者カラヤンが手取り足取り教えてくれるからだ。それも、こんな小曲でも全力投球するカラヤンの音作りが体験できるのだから。「舞踏への勧誘」のロマンティック性と、舞踏の躍動感、「妖精の踊り」の心地好いファンタジー、「メフィスト・ワルツ 第1番」の躍動と、みずみずしいオーケストラの響き、チャーミングなフレーズが横溢する 「歌劇売られた花嫁の ポルカ」……、というわけで、毎曲に感動。録音もドイツ・グラモフォンの音だ。スケールの大きさ、ピラミッド的な周波数特性、そして細部までの磨き込みに、これまた感動。1971年9月、ベルリンのイエス・キリスト教会で録音。

3279¥1874

グリーグ:劇音楽《ペール・ギュント》から
/アダン:バレエ《ジゼル》

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ヘルベルト・フォン・カラヤン

 このLPはかつての私の愛聴盤だった。新宿の「コタニ」というレコード屋で買って、バレエ音楽が大好きな私は、すぐに家に帰って、貪るように聴いた記憶がある。当時のビクターのアンサンブルステレオというレコードプレーヤー、アンプ、スピーカーまで一体になった手軽な装置で聴いても、まさに感動のDECCAサウンドだった。
 気力、精力が充実したカラヤン、グロッシーなウィーン・フィル、そして天下のジョン・カルショー録音……とくるのだから、傑作でないはずはない。 60年代のDECCAの録音技術がいかに素晴らしかったかが、はっきりと認識できる、まことに華麗で、音色が豊か、そして満天の星のように輝きを放つ音だ。ベルリン・フィルの重厚さと違う、ウィーン・フィルならでは洗練された黄金美。 響きがゾフィエンザールいっぱいに拡がる様や、ウィーン・フィルらしいしなやかで絢爛な弦の音色もたいそうの快感。CDになってもカラヤン=ウィーンフィル=DECCAの三大噺のセットを購入……と、これまでも何度となく接しているが、このハイレゾを聴いて、実はここまでの情報量がオリジナルのアナログマスターに入っていたのかと思うと、感慨深い。1961年9月、ウィーンのゾフィエンザールで録音。



3748¥2108

ファリャ:《三角帽子》《恋は魔術師》他
スイス・ロマンド管弦楽団エルネスト・アンセルメ

 DECCAの録音力を最大限に発揮した天下の名アルバムだ。プロデューサーのジェームズ・ウォーカーとロイ・ウォレスが組んだ名作だ。エルネスト・アンセルメは、「 《三角帽子》三角帽子」を1919年に、ロンドンで初演した当の指揮者。1952年のモノ録音以来3度目の1961年録音の本アルバムは、アナログ時代から決定盤とされていた。
 冒頭、左に位置するティンパニの連打、続くセンターやや右の金管の躍動、センター位置のテレサ・ベルガンサが「奥さん、閂をかけなさい」と歌う、しっとりとした輝き、左右に拡がる男性コーラスの野性味、そして最後のティンパニの一撃。皮がしなり、音程が少し低くなった途端に、ホールいっぱいに響きが拡がる。これが61年前の録音とは信じられない鮮明、鮮鋭、そして極彩色のもの凄く新鮮な音だ。ブリリアントでカラフルなDECCAサウンドの極致。まさに輝かしい油彩だ。 1961年2月、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールで録音。カプリングは、1955年10月に同じヴィクトリア・ホールで収録された歌劇《はかなき人生》間奏曲と舞曲、バレエ《恋は魔術師》組曲。1オリジナル・アナログ・マスターから英Classic Soundにて2012年に制作したDSDマスター(2.8MHz)。 

3871¥2241

ホルスト:組曲《惑星》作品32
ボストン交響楽団小澤征爾

 華麗、壮麗、ダイナミック……と、われわれが「惑星」に抱くイメージが、まったくそのままのゴージャスな「惑星」だ。「火星」は、重戦車のような地響きが鳴り続けるが、マッシブなたげでなく、細部まで磨き抜かれた洗練性も。「金星」のファンタジー性、「水星」のコケティッシュさ、「木星」の豊麗さも、感動的。「木星」では中間部のホルンとチェロの音色融合、そしてヴァイオリンE線の高域旋律と金管の融合が快感的。「海王星」のコーラスも宇宙的。録音もたいへん上質。細部まで明瞭に描かれ、ホルンなどの奥行き情報も豊か、音色の華麗さ、カラフルさもこの作品を活かす重要要素だ。1979年12月、ボストンシンフォニーホールで録音。



3748¥2108

チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》
ロサンゼルス・フィルハーモニックグスターボ・ドゥダメル

 「くるみ割り人形」には古今の名演奏、名録音が蝟集しているが、最近の制作では、私はこのドゥダメル/ロス・フィルがナンバーワンだ。ひじょうに繊細で、色彩的なドゥダメルの演出を、たいへん優れた音質で届けてくれる。音の情報量が多く、音のグラテーションがカラフルで絢爛だ。弦はしなやかで、音の飛翔が躍動的。木管のコケティッシュな音色、金管のブリリアントな進行……と、楽器描写が克明。しかもソノリティが素晴らしい。会場の豊かな空気感を伴って、奥行き方向に立体的な音場再生が堪能できる。2013年12月、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサート・ホールでのライヴ・レコーディング。

-



■協奏曲編


3871¥2241

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、他
アンネ=ゾフィー・ムターニューヨーク・フィルハーモニック,
クルト・マズア


 たおやかで、健やか、そしてブリリアントなベートーヴェンだ。前奏はニューヨーク・フィルならではの華麗で、明瞭、力感の籠もったもの。マズア時代だが、やはり固有の輝きは、古典曲でもしっかりと感じられる。ムターのヴァイオリンがまた色っぽいのである。湛える七色の音色が混色し(絵の具は減色混合だから言い方がおかしいが)、さらに艶っぽく、輝かしくなった。心に染みる音色だ。アーティキュレーションは楷書型で、一音一音が明瞭で、音が立つ。でも同時に滑らかさや、すべらかさが聴けるのが、ムターの美芸だ。
 もともとカラヤンに見出された時からのグロッシーな音色に風格と品格が加わった。特に弱音の、かそけきながらも強靱な芯を聴かせる芸には感動。しかも、弱音でも大きなヴィブラートも伴うから、耳をくすぐられているようで、とても色っぽいのである。 そんなムター芸は、オーケストラ伴奏のない第1楽章終盤で、たっぷり堪能できる。この遅さは何だと驚くカデンツァである。永遠に音が長く続くいていくのではないかと思ってしまうほど、だ。そこからの音量とスピードを急激に増すクレッシェンドも、見事。
 第2楽章でも、弱音芸が素晴らしい。ミニマルのように同じ音形の繰り返しでの、かそけさは最高だ。第3楽章は対照的に大元気。ニューヨーク・フィルの艶とムターの艶が融合し、ダブルグロッシーだ。ダブルストップが倍音をさらに豪華にしている。転調してト短調になった下行と上行旋律のなんと、チャーミングなこと。第3楽章のカデンツァは、第1楽章のそれと違い、強靱な輪郭と力感に溢れる。全曲を通して山有り、谷有りのたいへんドラマティックなムター・ベートーヴェンだ。2002年5月、ニューヨークは本拠地のディヴィッド・ゲフィン・ホールでライヴ・レコーディング。

3871¥2241

ベートーヴェン、メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
ヴィクトリア・ムローヴァ, ジョン・エリオット・ガーディナー,
オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク


 ロマン派を拓いたベートーヴェンで始まり、ロマンティック真っ只中のメンデルスゾーンで閉めるという明確なコンセプトの選曲だ。
 ムターとはまったく違うベートーヴェンだ。ピリオドスタイルの剛毅な古楽器オーケストラに乗って、ヴィクトリア・ムローヴァのバイオリンが中央に確固たる音像を持って登場。明晰なアーティキュレーションのムローヴァが、きわめて尖鋭でダイナミックなオルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティクと、丁々発止の競奏を繰り広げる。特に第3楽章はキレ味が鋭く、スリリングだ。まさに「尖鋭×尖鋭」だ。
 メンデルスゾーンでも躍動するオーケストラと硬質なヴァイオリンが、繊細で鮮明なロマンの世界を繰り広げる。ピリオド的な小気味よさと、楷書的なシャープネスは、このロマンティックな作品でも変わらない。第2楽章でも、感情の深さに耽溺することなく、スクウェアに徹している。音調は低音がしっかりと安定して再生されるピラミッド型だ。2002年6月12日、イギリスのイングランド地方の東部のワトフォード市コロッセウムで録音。



3748¥2108

ドヴォルザーク: チェロ協奏曲、他
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ヘルベルト・フォン・カラヤン



 ロストロポーヴィチは8回も、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を録音している。本ハイレゾのカラヤン/ベルリン・フィルとのコンビは、68年の録音。ロストロ・ドボルザークの決定的名盤とされていた演奏だ。まずカラヤン/ベルリン・フィルが圧倒的に素晴らしい。ダイナミズムの起伏が大きな演奏で、ロストロポービッチを迎えるにふさわしい重量級のイントロだ。ロストロポービッチのチェロはまことに器量が大きく、線が太く、堂々たるものだ。悠々迫らざるテンポ感。これ以上遅くしたら、崩れるという遅さでも、もの凄い緊張感だ。カラヤンの流麗な歌いもたいへん豊かで、まさに名人芸。ベルリン、イエス・キリスト教会のソノリティは素晴らしく、中央のロストロポービッチのチェロ音像の奥にオーケストラが構え、さらに手前の弦、その奥の木管、さらに奥の金管という奥行き方向の音場も豊かに聴ける。1968年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。DGのオリジナル・アナログ・マスターから独Emil Berliner Studiosにて2012年制作DSDマスターを使用。

3871¥2241

ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、他
―ピアノと管弦楽のための作品集

ヤン・リシエツキNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団
クシシュトフ・ウルバンスキ


 若きピアニストと、若き指揮者の刺激的な協演だ。ヤン・リシエツキは本録音時に弱冠23歳。カナダはカルガリーでポーランド人の両親の元で生まれ、わずか9歳でオーケストラ・デビューしたという逸話の持ち主だ。以後、世界各地の有名オーケストラとの共演、室内楽、リサイタル活動にて、主要なコンクール入賞履歴なしに、いまや世界的なスターピアニストだ。
 協演のクシシュトフ・ウルバンスキ/NDRエルプフィルは以前、ミューザ川崎ホールで聴き、知情意が高い次元で均衡した、現代ドイツを代表するサウンドを堪能させてくれた。NDRフィルは、ヘンゲルブロックの下で機能的なドイツ系モダーンオーケストラに進化した(ヘンゲルブロックはピリオドだが)。その成果を若きウルバンスキは見事に発展させ、開花。しなやかにして剛毅、エッジが立つが柔軟な音が聴けた。特にトゥッティの響きに深さと潤いがあり、包まれるような香しさがあった。
 では本音源だ。リリシズムの極のような透明な音響である。ショバン名曲中でも、この「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ ト長調 / 変ホ長調」は、ロマンの香りが特に濃厚な曲だが、若き俊英は、はっとするような新鮮でクリヤーな音色をロマンティックに響かせる。ソノリティが素晴らしい。ビアノの音が明瞭で、こまやかな響きのフラグメントが、会場に広く、美しく消えゆく様からは、エルプホールのアンビエント性能の高さが感じられる。途中から入るオーケストラのスケールの大きさと同時に、細かな部分までの解像感にも驚かされる。 「ドン・ジョバンニ・バリエーション」では、2つのスピーカーの間からファントム的に立ち上がってくる濃密な空気感に圧倒された。2016年6月、ハンブルグのエルプフィルハーモニーで録音。



3748¥2108

チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
チョン・キョンファロンドン交響楽団アンドレ・プレヴィン

 韓国の名ヴァイオリニスト、チョン・キョンファが22歳の時、1970年にロンドンで録音したデビュー・アルバム。たいへん有名な音源だ。エッジにメリハリを与え、大胆なヴィブラートによる艶艶したチャイコフスキーは、まさに若きチョン・キョンファの独壇場。若さと情熱に溢れた本演奏は、アナログ時代から私の愛聴盤だが、旧いアナログ録音がハイレゾで、ここまで鮮烈に蘇るのかとたいへん驚く。ここまで透明度が高く、空間には音の粒子がこれほどキラキラと飛び散り、チョン・キョン・ファはこれほどの音楽的なエネルギーを放射していたのか、濃い音楽性を発露していたのかに、改めて感動した。それはマスターに限りなく近い音が、ハイレゾを通して届けられたということに他ならない。親しんできた愛聴盤のほんとうの音は、ここまで凄かった。アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団の伴奏も躍動的。1970年6月、ロンドンはキングズウェイ・ホールで録音。

-



■独奏曲編


4278¥2445

Bach: The Well-Tempered Clavier I
Pierre-Laurent Aimard

 ピエール=ロラン・エマーエマールを初めて聴いたのが、2012年のベルリン音楽祭はフィルハーモニー小ホール(室内楽ホール)でのピアノリサイタル。第1曲のリストの演奏が始まってしばらくしたら、客席からけたたましくケータイの着信音が。ピエール=ロラン・エマールは、怒って演奏を中断。しばらく楽屋に引っ込み、5分ほどしたら再度登場。リストのロ短調ソナタのダイナミックレンジの広いことには感心させられた。歌わせる歌謡的なフレーズでは夢見るようなロマンティックな表情で一方、リストならでは複雑で俊速なパッセージは、正確に精密に力感を与えていた。
 近現代作品のスペシャリストとみなされていたエマールが、衝撃的なバッハをリリースしたのが、08年の「フーガの技法」であった。サンプリング周波数は年代を反映し、44.1KHz。レンジの狭さは感じるが、しかし、安定感とスケールの大きさ、細工を弄さず、伽藍を積み上げ、堂々とバッハの晩年大作に挑むピアニストの矜持と覚悟が狭い帯域にぎゅうと濃縮され、痛切に伝わってきた。 本アルバムは「フーガの技法」に続く、第2作のバッハ。2014年3月、ベルリンで録音されている。静謐で鮮明、精妙で明快、そして知的で緻密な名演。音質もナチュラルで、ピアノから発せられる響きの質がきわめて上品。タッチが明晰で、2つのスピーカーの中央に、タイトな音像が安定的に定位している。録音後、このJ.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻の演奏会が日本各地で開催され、絶賛の嵐だった。

3871¥2241

ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ
ヒラリー・ハーン

 ヒラリー・ハーンのCDデビュー(ソニー・ミュージック)は1997年、バッハの無伴奏作品(ソナタ第3番、パルティータ第2番&第3番)だった。それから20年後に、DECCAレーベルにて『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』全曲を再録音した。
 たいへん素晴らしい。透明度が高く、輪郭が明晰。音的、もしくは音楽的内実がきわめて緻密に描かれる。一音一音にもの凄く強い意志が漲り、細かく音場空間に飛び散る音の粒子がリジッドな体積感を持ち、そのひとつひとつに強靭な音楽的信念が籠もっている。無伴奏だからこそ、ヒラリー・ハーンの凄さが、何の虚飾なしに、ダイレクトに体験できるのである。
 音質も素晴らしい。直接音と間接音のバランスが絶妙。たいへん明瞭でクリヤーにして、ソノリティもたいへん豊か。小さなホールの最前列で聴いているような、鮮明なレゾリューションと臨場感が聴ける--というより、体験できる。センターに美しく定位したヴァイオリンの響きが剛毅だ。まさにヒラリー・ハーンの畢生の名演であり、ハイレゾ録音の地平を確認できる名録音だ。2017年6月、ニューヨーク州バート大学リチャード・B・フィッシャーセンターで録音。



3748¥2108

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ダヴィッド・オイストラフレフ・オボーリン

 古く佳きアナログの世界に浸れる(?)ハイレゾだ。ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)とレフ・オボーリン(ピアノ)のコンビによる演奏は、録音後半世紀以上経過した今でも、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの決定版として尊敬され続けている名アルバムだ。ベートーヴェン的な強固な構築性の上に、豊かな歌心が躍動する名演奏。どこまでも伸び行く艶艶した美音はオイストラフのワン・アンド・オンリーのサウンドだ。録音も気を衒わない正攻法で潔癖。ステレオ録音初期らしく、清潔なソノリティにて、センター位置に大きくヴァイオリンとピアノの音像が描かれる。剛性がきちんとあり、同時にふくよかさも豊かに感じられるアナログ的な音調が素敵だ。1962年、パリはシャン・デュ・モンドで録音。

3259¥1833

Chopin: Polonaises
Maurizio Pollini

 1960年、18歳でショパン国際ピアノ・コンクールで優勝した、マウリツィオ・ポリーニの75年の録音だ。シャープで強靱な打鍵による寄らば斬るぞ!という、もの凄い鮮烈で、エッジの立ったポロネーズ。左手も右手も、極めてシャープだ。この方向を徹底的に突き進むのだという、迷いが皆無のストレートな音楽道を鋭く聴かせる。感情に耽溺せず、楽譜に忠実に突進するのである。その音色は徹底的に硬質。ダイヤモンドが鮮烈に輝くようだ。音質も極上。最高の集中と燃焼を聴かせる演奏と同様に、音場の正確な中央位置に鮮烈な輪郭を持った、インフォーカスの音像が屹立している。大ピアニストの演奏スタイル遍歴を知れる世界遺産的な名アルバムだ。1975年、 ウィーンで録音。 



3748¥2108

ムソルグスキー:展覧会の絵
/ショスタコーヴィチ:24の前奏曲(抜粋)

ラザール・ベルマン

 かつて一世を風靡した、歴史的アルバムだ。1975年に、それまで鉄のカーテンに向こうにいたラザール・ベルマンが、堂々のニューヨーク・デビューを果たし、リストの『超絶技巧練習曲』を演奏、圧倒的なテクニックは大評判を呼んだ。それをきっかけに世界的にベルマンブームが巻き起こった。3年後の1978年に、ドイツ・グラモフォン(DG)に録音された本「展覧会の絵」は再度、世界に衝撃を与えた。
  「強靱」を絵に描いたような、まさにベルマンならではの「展覧会の絵」だ。徹底的に楷書スタイルを貫き、エッジをしっかりと立て、鮮鋭に奏でる。どんな複雑なスコアでも。内声部を含め、音符の鳴りが確実だ。音の壁のような重厚さと、それを構成する一音一音のクリヤーな隈取り感がベルマンの極意だ。1978年4月27-28日、ミュンヘンのヘルクレスザールで録音。

-



■室内楽編


4920¥2810

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲《大公》、《幽霊》
ボザール・トリオ


 ボザール・トリオによるベートーヴェン:ピアノ三重奏曲集。冒頭のメナヘム・プレスラーのピアノからして、すでにノックアウトだ。しずしずと奏されるテーマの何と高貴で、美しいこと。それに素敵な響きがピアノにノーブルで貴族的な音色を与えている。ピアノは奥に位置し、明らかに間接音を多く取り込み、前面左のヴァイオリン、右のチェロは響きは少なく、直接音がダイレクトに来る。このピアノの残響感と弦の明瞭感がクロスするのが、刮目の臨場感につながっている。
 第1楽章の冒頭は、ピアノの豊かな響きから始まり、その上にヴァイオリンとチェロが、たいへん明瞭に、クリヤーに音を紡ぐ。第2楽章は逆に、ヴァイオリンとチェロのストレートな調べに、ピアノの豊饒な響きが乗る。パターン的には真逆だ。楽器によって直接音と間接音の割合を変える作品は少ないが、本作は豊麗な音楽性と臨場感が切っても切れない関係にあることが、痛切に感じられるという意味で、たいへん注目される。1964年 スイス、ラショードフォンのムジカ・テアトルで録音。オリジナルレーベルはフィリップス。

3871¥2241

シューベルト:ピアノ五重奏曲《ます》
アンネ=ゾフィー・ムターダニール・トリフォノフファユン・イ,
マクシミリアン・ホルヌングロマン・パトコロ


 ヴァイオリンの女王、アンナ・ゾフィー・ムターと、若手のトップピアニスト、ダニール・トリフォノフが、アンサンブル「ムター・ヴィルトゥオージ」の3人の若手弦楽奏者による、シューベルト《ます》
のピアノ五重奏曲、そして有名歌曲のコンピレーション。
 まったくもって超快速の「ます」だ。これほどのハイスピードで泳ぎまくれば、釣り人にキャッチされることは決してないであろう。現代の名手たちが奏でる「ます」は、まことにハイコントラストで、音の立ちが極めてシャープだ。特にアンネ=ゾフィー・ムターの豪傑なヴァイオリン、ダニール・トリフォノフのキレ味抜群の鮮明なピアニズムが効く。
 ところが、歌曲からのヴァイオリンとピアノへの編曲による「セレナード」は、「ます」のような超特急で、ギンギンの演奏ではまったくなく、対照的にメローでセンチメンタル。まるで小唄を聴いているような、情緒てんめんなシューベルトなのだ。ヴァイオリンが人の声のように、歌っている。「アベ・マリア」は、まるでG線上のアリア。低音で太く、ウエットにメロディが奏でられる。「ます」は心臓に刺激的だったが、歌曲の方は、心に染みいる情感が素敵。2017年6月、バーデン=バーデン祝祭劇場で録音。



3748¥2108

ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番・第2番
ベルリン・フィルハーモニー八重奏団員

 66年当時のフィリップス録音の高い水準が痛切に分かる名作だ。ドライなソノリティで、弦楽器の直接音が、ダイレクトにリスナーに向かって飛んで来る。緻密で充実した音の塊だ。2つのスピーカーの間の音像位置も明瞭。ベルリン・フィルハーモニー八重奏団の音楽的な、そして表現意欲に溢れた奏風は、感情が大きく揺れ動くブラームスの弦楽六重奏曲には最適だ。 
 第1番第2楽章ニ短調のバリエーションは、溢れんばかりの音楽的血潮の熱さ!テーマ旋律のトリルが、何ともチャーミングだ。第一変奏のチェロに被るヴァイオリンとビオラのオブリガードの麗しさ。目眩く絢爛なバリエーションが終わって、回帰したテーマが、なんと深く聴けること。まさにベルリン・フィルハーモニー八重奏団の演奏芸術であり、DSDの再生芸術だ。1966年1月と1968年10月にベルリン・ヨハネスシュテイフトで録音。

-



■ECM編


5093¥2648

Johann Sebastian Bach: Six Sonatas For Violin And Piano
Michelle MakarskiKeith Jarrett

 1987年の平均律クラヴィーア曲集第1巻からはじまったキース・ジャレットのクラシック録音。以後、ゴルトベルク変奏曲、フランス組曲、ヴィラ・ダ・ガンバ・ソナタ、リコーダ・ソナタ、平均律クラヴィーア曲集第2巻---と、怒濤のようにバッハを録ってきた。本アルバムは、2010年にニューヨークで録音。バッハ作品としてはフランス組曲以来18年ぶりだ。ヴァイオリン・ソロは古楽からジャズまで幅広い分野で活躍する、アメリカ人ヴァイオリニストのミシェル・マカースキー。(マカルスキとも)。鮮烈な演奏と録音だ。たっぷりとした響きの中に、鋭い音像を持つヴァイオリンとピアノが中央に位置する。明晰、明瞭な演奏と同様に、音の解像度も透明度も格段に、高い。ECMならではの伶俐で、クリヤーなサウンドだ。2010年11月20-22日、録音ニューヨーク、アメリカン・アカデミー・オブ・アーツ・アンド・レターズで録音。

5093¥2648

Franz Schubert
András Schiff

 ピアノ作品ではどんなピアノを選ぶかが、その成否を決める。アンドラーシュ・シフは1980年代後半から1990年代前半にかけてDECCAレーベルにシューベルトのソナタ、即興曲全曲を録音しているが、この時は、ウィーンといえばのベーゼンドルファーだった。約30年を経て、今回はフォルテピアノに替え、改めてシューベルト作品に臨んだ。それが自ら所蔵する、1820年ウィーン製のフランツ・ブロードマンのフォルテピアノ。
 ハイダイナミックレンジの現代ピアノとはまったく違う、やわらかさ、優しさ、芳醇さが素敵だ。音の輪郭が丸く、滑らか。弱音が美しく、強音でも現代ピアノのようなしゃっきり、くっきりのハイコントラストではなく、豊かな階調を湛え、肌触りの良い感触だ。 フォルテピアノは、それ自身がドライで素朴な音色なので、ソノリティが不足すると、潤いも不足する。でも、ボンのベートーヴェンハウスの豊かな響きが潤いを与えている。シューベルトを囲む友人の会、シューベルティアーデではこんな音色が流れていたのかと、イメージが膨らむ。2014年7月2日-5日、ボンのベートーヴェンハウスで録音。



3259¥1833

Robert Schumann / Heinz Holliger: Aschenmusik
Heinz HolligerAnita LeuzingerAnton Kernjak


 オーボエの名手というだけでなく名作曲家でもあり、名指揮者でもあるハインツ・ホリガー。このアルバムはホリガーがオーボエとオーボエ・ダモーレを吹き、チェロのアニタ・ロイツィンガー、ピアノのアントン・ケルニャックと共演した、シューマンを中心にした選曲だ。
 「ハインツ・ホリガー / 灰の音楽~シューマン&ホリガー:室内楽作品集」が国内盤CDのタイトル。schenmusik「灰の音楽」とはクララ・シューマンによって焼き捨てられ灰になってしまったシューマンの「チェロのためのロマンス」の話に由来する。この話に触発されホリガーが作曲したのが(チェロとピアノのための)「ロマンセンドレス」。
 オーボエ、チェロ、ピアノのシンプルな三重奏。音場内は音で満たされる。3つの楽器が2つのスピーカーいっぱいに広がり、しかも面積が大きいだけでなく、隙間がない。音の体積感が大きく、音場は3つの異なる楽器の音色、響きで充満する。中でもオーボエの浸透力、浮き立ち力は強く、鋭い。ピアノは決して明瞭ではなく、曖昧な輪郭感。チェロもふくよかで豊かだが、高く解像するわけではない。しかし、オーボエだけはどこまでも明瞭なのである。主役が誰だか明確に分かる録音だ。そのヘンの機微が分かるのもハイレゾならでは。2012年7月、2013年11月、チューリッヒで録音。

3259¥1833

Tigran Mansurian: Requiem
RIAS KammerchorMünchener Kammerorchester,
Alexander Liebreich


 アルメニアの作曲家ティグラン・マンスリアンが2011年に作曲した「レクイエム」。1915-17年にオスマン帝国(現トルコ)であったとされるアルメニア人虐殺の犠牲者の追憶のために書かれた。
 現代音楽っぽい不協和音は出てくるが、基本的には調性に基づいた音楽で、詠唱を聴いているような気分になる。オーケストラの音数は少なく、神秘的な音空間に合唱が響いている。柔らかく、ふくよかな、まるでマシュマロのような優しい質感の弦と管楽器と、繊細でグラテーション豊かな合唱が絡む。空間が立体的で、奥にも手前にも拡がる。混声合唱が空間でうねりを生じ、それが空気の揺らぎとなり、幻想的な臨場感を感じさせている。2016年1月ベルリン、イエス・キリスト教会で録音。



 

 | 

 |   |