ただいまe-onkyo music内で「ポイントアップ・キャンペーン」好評開催中のアールアンフィニ・レーベル。
当キャンペーンにあわせて4月21日よりe-onkyo musicでの独占先行配信がスタートしたニューアルバム『夢の色彩』について、ヴァイオリニストの伊藤万桜さんにインタヴューを行いました。
ヴァイオリン、アルト・サクソフォン、ピアノという個性的なトリオが奏でる魅惑的な“夢の色彩”。なぜこのトリオを録音したのか? 曲はどのような意図で選んだのか? レコーディングで大変だった点は……?
ぜひ、記事をお読みいただきながらお聴きください。
取材・文:ナクソス・ジャパン
INTERVIEW:伊藤万桜
『夢の色彩』レコーディングの様子
左から伊藤万桜(ヴァイオリン)、黒岩航紀(ピアノ)、陬波花梨(アルト・サクソフォン)
──デビュー・アルバム『フレッシービレ』に続く2作目のリリース、誠におめでとうございます。本作『夢の色彩』はヴァイオリン、アルト・サクソフォン、ピアノのトリオということで、アンサンブル奏者としての伊藤さんの魅力を新たに発見できるアルバムかと思います。トリオによるアルバムを2作目として送り出す理由や意気込みをお聞かせください。
伊藤万桜(以下、伊藤):昨年録音した『フレッシービレ』では、後期ロマン派の作曲家リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ(トラック1-3)を取り上げました。今年2月に東京オペラシティリサイタルホールで行ったリサイタルでは、そこからさらに時代を進めて、セルゲイ・プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタを演奏し、さらに1991年生まれの作曲家・石川潤さんの新作「デジタルアートのためのソノリティ」を初演させていただきました。色々な仕掛けがマッチして、お客様にも喜んでいただき、演奏会を成功させることができました。そうした流れの中で、私の関心が現代音楽へと近づいていった一面がまずあります。
加えて昨年、ご縁があって、サクソフォン奏者の陬波花梨(すわかりん)さんと「メルマーレ」というヴァイオリンとサクソフォンのデュオを結成しました。その後、黒岩航紀(くろいわこうき)さんにピアノをお願いし、3人で全国ツアーを行うことに。このユニークかつ新鮮なトリオから得た濃厚な感触が、どんどん新しい曲にチャレンジしてみたいという意欲の源になりました。
──本アルバムには、ジャン=リュック・ドフォンテーヌ、ラッセル・ピーターソン、アストル・ピアソラの作品が収められています。ピアソラ以外は一般によく知られている作曲家ではありませんが、いずれも親しみやすく美しい曲想だと感じました。収録作はメンバーの皆様で決められたのでしょうか。
伊藤:陬波さんとこの編成のオリジナル楽曲を探してみたのですが、サクソフォンとヴァイオリンとピアノというのはかなり異色で、オリジナルのレパートリーが少なく、ようやく出会ったのがピーターソンのトリオでした。ところが、日本ではまだ楽譜の入手が困難で、ピーターソンにメールで問い合わせたところ、思いがけず直接ご本人から楽譜を購入することができました。それが、本作『夢の色彩』に収録した「三重奏曲(トリビュート・トリオ)」です。
ドフォンテーヌの「夢の色彩」は、私たちが勝手に師匠と仰いでいる同編成のアンサンブル、フラトレス・トリオの演奏を聴いて感動し、弾いてみたい!とビビッときた楽曲です。フランスの作曲家ドビュッシーを思わせる色彩豊かな作風で、今回のアルバム・タイトルにもしているイチオシの作品です。
──レコーディング中のエピソードをお聞かせください。
伊藤:ホールを全日貸し切り、演奏会さながらの環境でレコーディングに臨んだのは『フレッシービレ』の時と同じでした。ただ今回は、3つの楽器の音量にかなり差があったので、慎重にマイクと各楽器の距離を吟味してセッティングした上で演奏したことが、一番の違いだったと思います。でも、最初の録音の時より余裕が出たのか、3人で合わせて弾くことに手応えや充実感をしっかり持つことができた点が、アルバムにも表れていると自負しています。
──アールアンフィニ・レーベル代表の武藤敏樹さんにもお伺いします。伊藤さんのおっしゃるとおり、ユニークな編成のため、レコーディングに際してさまざまな工夫をされたことと思います。ご留意された点などをお聞かせいただけますでしょうか。
武藤敏樹:今回のレコーディングで一番留意したのは、ヴァイオリン、サクソフォン、ピアノそれぞれの音量バランスと音像定位です。
ステージ上の楽器の位置は、ヴァイオリンは左側、サクソフォンは右側、ピアノはセンターなのですが、ヴァイオリンとサクソフォンではあまりにも楽器自体の音量に差があるため、そのままワンポイントで録るとサクソフォンは巨大、ヴァイオリンは弱小な音になり、極めて歪なバランスになってしまいます。
実際のライブでは視覚的補正もあり違和感はありませんが、レコーディングでは、そのままスッピンで録ると不自然な仕上がりになります。
そのため、各楽器にはオンマイクをステレオで独立してセットし、サクソフォンはメインメイクからかなり離れた位置で演奏しています。
全体を支配するメインマイク、各楽器のオンマイク、ホールトーンをブレンドするアンビエンスマイクのミキシングにより、全体の音場バランスや音像定位を調整しましたが、いかに3つの楽器をナチュラルかつ細かいニュアンスを漏らさず録れるかということに細心の注意を払ってレコーディングを行いました。
ぜひ、そうした細かいソノリティー(響き)を味わっていただければ嬉しく思います。
3つの楽器のバランスに気を配ったマイクセッティング
──今回の新譜リリースにともなって、はじめて伊藤さんの演奏に触れるe-onkyo musicのリスナーの方もいらっしゃると思います。その方々に向けてメッセージをいただけますと幸いです。
伊藤:私のヴァイオリンを初めて聴くのが『夢の色彩』になる方には、是非デビュー・アルバム『フレッシービレ』やコンサートの演奏も聴いていただければと思います。
あわせて、私や陬波さん、黒岩さんのさまざまな側面を知っていただけたらととても嬉しいです。
今年の8月11日には、軽井沢大賀ホールで私たち3人の大賀ホールデビュー公演「SUMMER CONCERT in Karuizawa “情熱の異色トリオ”」が開催されます。この演奏会では、今回のアルバム収録曲に加えて、それぞれのソロの曲も演奏する予定です。私は東京文化会館でのデビューリサイタルの思い出の曲や、ヴィエニャフスキの「ファウスト幻想曲」を弾きます。真夏の軽井沢大賀ホールで、どんなトリオの化学反応が起きるか……? ぜひ、ご期待ください。
──伊藤さん、そしてトリオの今後のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。
レコーディングして間もないフレッシュな“夢の色彩”を
e-onkyo musicのリスナーの皆様に独占先行にてお届けします。
PROFILE:伊藤万桜
公式ウェブサイト:https://www.maoito.info/
Twitter: https://twitter.com/ma0vn
Instagram: https://www.instagram.com/mao_317/
YouTube: https://www.youtube.com/c/ViolinistMaoIto