【4/9更新】 音楽ライター原典子の“だけじゃない”クラシック

2022/04/09

e-onkyo musicにてクラシック音楽を紹介する、その名も“だけじゃない“クラシック。本連載は、クラシック関連の執筆を中心に幅広く活躍する音楽ライターの原典子が、クラシック音楽に関する深い知識と審美眼で、毎月異なるテーマに沿った作品をご紹介するコーナー。注目の新譜や海外の動きなど最新のクラシック事情から、いま知っておきたいクラシックに関する注目キーワード、いま改めて聴きなおしたい過去の音源などを独自の観点でセレクト&ご紹介します。過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を是非お楽しみください。


24bit衛星デジタル音楽放送MUSIC BIRD
「ハイレゾ・クラシック」

■出演:原典子
■放送時間:(金)14:00~16:00  再放送=(日)8:00~10:00
毎月ひとつのテーマをもとに、おすすめの高音質アルバムをお届け。
クラシック界の新しいムーヴメントや、音楽以外のカルチャーとのつながりなど、いつもとはちょっと違った角度からクラシックの楽しみ方をご提案していきます。出演は音楽ライターの原典子。
■番組HP→




"だけじゃない" クラシック 4月のテーマ


ダンス



あたたかくなるにつれ、身体を動かしたくなる春。ということで4月は「ダンス」をテーマに、ユニークなアルバムの数々をご紹介していきたい。
人類の文明の黎明期から存在するダンスには音楽が欠かせない。クラシック音楽においても、古くはルネサンス~バロック時代の舞曲から、ハンガリーやルーマニアなどの民族的舞曲、ロシアのバレエ音楽、ジャズのリズムを取り入れたアメリカの音楽まで、ダンスに関わりの深い音楽がたくさんあるが、それらのなかには「踊るための音楽」として生まれ、次第に「聴くための音楽」へと変化していったものも多い。
さまざまな土地、さまざまな時代の人々の姿を生き生きと映し出すダンス音楽で、世界を旅してみよう。


★☆★



オン・アーリー・ミュージック
フランチェスコ・トリスターノ(p 、シンセサイザー)


ルネサンス~バロック音楽に登場する「ガリヤルド」「クーラント」「フォリア」「パヴァン」といった言葉は舞曲を表すもの。バッハからテクノまで縦横無尽に活躍するピアニスト、フランチェスコ・トリスターノの新作アルバムでは、こういった舞曲のリズムが、現代のクラブでかかっているダンスミュージックのように生き生きとバウンスし、グルーヴしている。ピーター・フィリップス、ジョン・ブル、オーランド・ギボンズ、ジローラモ・フレスコバルディといった作曲家の作品とともに、トリスターノのオリジナル曲が並ぶユニークな古楽アルバム。
音響的にも、スタジオワークを駆使してさまざまな創意工夫が凝らされていて面白い。スタジオのあちこちにセットしたマイクでピアノのあらゆるレゾナンスを捉え、ソステヌートペダルやエレクトロニクスなども使いながら響きを重ねていくことで、豊かなサウンドの絨毯を作っていく。ピアニストとしてだけでなく、作曲家、プロデューサーとしてのクリエイティビティが存分に発揮されている。



アメリカ
ダニエル・ホープ(vn)チューリヒ室内管弦楽団 ほか


こちらもクラシックという枠を超越した活動で知られるヴァイオリニスト、ダニエル・ホープの新作アルバムのテーマは「アメリカ」。ジョージ・ガーシュウィンの有名曲を組曲にしてヴァイオリン、ジャズ・トリオ(マーカス・ロバーツ・トリオ)と弦楽オーケストラで演奏した《Gershwin Song Suite》は、もうジャズそのもの。ステップを踏みたくなるようなスウィング感たっぷりの音楽に、ニューヨークの摩天楼が広がる。
そのほか、ソウル・シンガーのジョイ・デナラーニを迎えたサム・クック《ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム》、スティーヴン・スピルバーグ監督による新作映画も話題のレナード・バーンスタイン《ウエスト・サイド・ストーリー》組曲、アメリカ初の黒人女性の作曲家フローレンス・プライスの《崇拝》、アーロン・コープランドのバレエ《ロデオ》より「ホーダウン」、クルト・ヴァイルの《American Song Suite》などを収録。まぎれもなくアメリカの音楽でありながら、ヨーロッパやアフリカなど世界のさまざまな土地からの移民のルーツを感じさせるアルバムとなっている。



★☆★




【もっと聴きたい ダンス】




黒パイプのダンス
マルティン・フレスト(cl)リチャード・トニェッティ(指揮、vn)オーストラリア室内管弦楽団

超絶技巧とエンタテナーぶりで人気のクラリネット奏者マルティン・フレスト。『黒パイプのダンス』と名付けられたこのアルバムには、コープランドのクラリネット協奏曲、ブラームスの《ハンガリー舞曲》をはじめ、東欧ユダヤ人のクレズマー音楽、ピアソラ、現代スウェーデンの作曲家など多彩な作品が収録されている。


Dance
東京六人組


上野由恵(フルート)、荒絵理子(オーボエ)、金子平(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)、三浦友理枝(ピアノ)というスーパープレイヤーからなる東京六人組。R.シュトラウス、プロコフィエフ、ラヴェル、ハチャトゥリアンなどの作品をオリジナルの編曲で聴かせてくれる。




Danzon(ダンソン)~コープランド、バーンスタイン、ウォーカー、ピアソラ、マルケス
原田慶太楼(指揮) NHK交響楽団

今もっとも注目を集める指揮者、原田慶太楼の本格的デビュー録音となるアルバム。アメリカをテーマに、バーンスタインやコープランドといったメインストリームの作曲家のほか、黒人作曲家のウォーカー、アルゼンチンのピアソラ、メキシコのマルケスと、アメリカの多様性を示すプログラムとなっている。


ジャーニー・イースト
ネマニャ・ラドゥロヴィチ(vn)
レ・トリーユ・ドゥ・ディアブル ほか

セルビア出身のヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチによる東ヨーロッパからロシアをめぐる旅のアルバム。ブラームスの《ハンガリー舞曲》、ドヴォルザークの《わが母の教え給いし歌》からセルビア民謡、ショスタコーヴィチやプロコフィエフまで。文化的な共通点も多い東ヨーロッパとロシアの平和を願わずにはいられない。




Dances
ベンジャミン・グローヴナー(p)

1992年、イギリス生まれのピアニスト、ベンジャミン・グローヴナーの3rdアルバム。バッハのパルティータからショパンのマズルカやポロネーズ、グラナドス《詩的なワルツ》など、鍵盤作品のなかにあるダンスのエッセンスを感じられる一枚。最後はモートン・グールドの《ブギウギ練習曲》で締めるところもニクい。


スザート:ダンスリー ルネサンス舞曲集
ソフィオ・アルモニコ

ティールマン・スザートによって1551年に出版された《ダンスリー》は、当時のヨーロッパで流行していた旋律をもとに編曲・編集された舞曲集。この全曲を、日本を代表するフラウト・トラヴェルソ奏者によって設立されたソフィオ・アルモニコが録音。愉悦に満ちたルネサンスの舞曲を現代によみがえらせている。




“だけじゃない”クラシック◆バックナンバー

2022年03月 ◆ 春の訪れを感じながら
2022年02月 ◆ 未知なる作曲家との出会い
2022年01月 ◆ 2022年を迎えるプレイリスト
2021年12月 ◆ 2021年の耳をひらいてくれたアルバム
2021年11月 ◆ ストラヴィンスキー没後50周年
2021年10月 ◆ もの思う秋に聴きたい音楽
2021年09月 ◆ ファイナル直前!ショパン・コンクール
2021年08月 ◆ ヴィオラの眼差し
2021年07月 ◆ ピアソラ生誕100周年
2021年06月 ◆ あなたの「推し」を見つけよう
2021年05月 ◆ フランスの響きに憧れて
2021年04月 ◆ プレイリスト時代の音楽


筆者プロフィール








原 典子(はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。

2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。

 

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