ハイレゾで甦る時代を彩った名歌たち!ソニー・ミュージックの復刻プロジェクト「BESTタッグ」が始動

2022/02/23

ソニー・ミュージック発、注目の大型リイシュープロジェクト「BESTタッグ」が始まります。主に1970年代〜2010年代のヒットソングをアーティストごとに2曲ずつハイレゾ化。ジャンルレスにセレクトされたラインアップは、実に多彩な顔ぶれとなりました。リリース・スケジュールは、第1弾(27タイトル)が2022年2月22日、第2弾(26タイトル)が2022年3月9日、第3弾(26タイトル)が2022年3月23日。全79タイトルの158曲は、今回新たにマスタリングされたものばかり。そのほとんどが初のハイレゾ化で登場します。e-onkyo musicでは「BESTタッグ」の全容や聴きどころなどを緊急取材。当プロジェクトに携わったソニー・ミュージックダイレクトの松田一成ディレクター(制作グループ制作1部)、藤吉博士課長(制作グループ制作1部)、鈴木勝利課長(マーケティンググループ販売推進部)のお三方にお話を伺いながら、その魅力に迫ります。

取材・文◎山本 昇

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■企画を立ち上げた背景


 ソニー・ミュージックから、驚きの企画が届けられた。同社が保持する膨大なカタログから、フォークやロック、歌謡曲・演歌、パンク、ヒップホップ、エレクトロニカなど多様なジャンルから選りすぐったヒット曲・人気曲を「BESTタッグ」の名の下に、2曲入りのデジタルシングルとして全158曲を大放出。リストには、1960年代の終わりから2010年代まで、それぞれの時代を彩った楽曲が並んでいるが、e-onkyo musicでリリースされるのだから、もちろんすべてハイレゾであることは言うまでもない。


「e-onkyo musicさんをはじめ、ハイレゾを提供するサイトに向けて進めていた企画で、とにかく一人でも多くのリスナーの皆さんにハイレゾのクオリティを聴いていただきたいという願いを込めてスタートしたものです」

 こう語るのは、ソニー・ミュージックダイレクトでディレクターを務め、当プロジェクトを立ち上げた松田一成さんだ。

「もちろん、アルバムごとにどんどんハイレゾ化できればいいのですが、コストなどいろいろと難しい面もあります」

 そこで、ちょっとした発想の転換が起きるのだった。

「当社が創業以来お預かりしている幅広い音源の中から、様々なアーティストが生んだヒット曲を2曲ずつ組み合わせて、ハイレゾの形でアピールできないかと」(松田さん)

 確かにどのタイトルもシングル化されたものを中心に、認知度の高いヒットソングで構成されている。

「部分的には例外もあって、例えば桑名正博の〈月のあかり〉はうちではシングルカットしていないのですが、ファンの方々にとってはお馴染みの曲です。そういった場合はアルバム収録曲からピックアップしています」(松田さん)

 配信担当の鈴木勝利さんは、当プロジェクトが浮上した際の印象をこう語る。

「旧譜のハイレゾ化というと、これまではアーティストごとであったり、アルバム単位であったりすることが多かったのですが、今回はヒット曲や有名曲にフォーカスしているのが面白いと思いました」

 大手レコード会社の豊富なカタログには、一定の人気を誇っていながら未ハイレゾ化の音源も大量にある。その中のごく一部とは言え、こうして最良の器で発掘されたことは意義深い。




■シリーズタイトルに込めた想いとは?

 
ところで、「BESTタッグ」というシリーズタイトルはどう決まったのだろう。


「タイトル案はいろいろあって、“○○○ カップリング・シリーズ”といった感じのものもありましたが、カップリングというと、片方がB面というイメージになってしまいます。今回は2曲とも強力な楽曲であることが伝わる別の言い方はないかなと。そこで私の頭にパッと浮かんだのが、かつて年末恒例だった全日本プロレスの“世界最強タッグ”だったんです(笑)。ちょっと昭和な感じが強すぎるかなと思い、社内の若い世代に聞いてみたら、“タッグを組む”という言い方は彼らも普通に使っているということでしたので、大丈夫だろうと」(鈴木さん)

 まさに両A面のハイレゾ版デジタルシングルとして「最強の2曲」をアピールしたいという想いは、第1弾ラインアップの発売日を2並びの2022年2月22日としたことにも表れているという。



■アートワークにも一工夫

 デジタル配信のみとなる今回の企画だが、ジャケット代わりのアートワーク画像が全タイトルにあしらわれている。基本的に、ソニーからシングルとして出ているものはリリース時のジャケットを使用した。ただし、ご存じのとおり、CDシングルの時代は縦位置・横位置とデザインも様々。曲の組み合わせによっては上手く収めるためのレイアウトに苦心したタイトルもあったそう。

「1960年代~2010年代まで、パッケージの変遷も興味深いものがありました。7インチのアナログ盤から8センチのCDになり、12センチのCDシングルが出てからも外箱が付いてきたり……。それらをなんとか、真四角の中にいい具合に収めたいと思って作業しました」(松田さん)

 もちろん、安奈淳/榛名由梨の「愛あればこそ/心のひとオスカル」のように、当時のシングル両面からセレクトされたものはそのジャケ写が1点、ドーンと載っている。




■ジャンルレスに選りすぐられたヒット曲たち

 
 見れば見るほど、絶妙なシャッフル具合に興味をそそられる。ラインアップに上がっているのはそのアーティストを語るのに欠かせない楽曲ばかりだが、膨大なカタログの中からどのような基準で選んでいったのか。選曲プロセスについて、主に第1弾リリース分のセレクトを担当した松田さんはこう説明する。


「決して私の好みだけで選んだわけではなく(笑)、社内スタッフの合議制を取って決めました。基準としては、ドラマやアニメといったテレビ番組やCMなどのタイアップがあるものは優先的に。もちろん、当時のチャートも参考にしながら、まだハイレゾで配信されていないアーティストを中心にセレクトしました」

 第1弾リリースの石川明美「CHA-CHA-CHA」(テレビドラマ『男女7人夏物語』主題歌)、小林明子「恋におちて-Fall in love-」(テレビドラマ『金曜日の妻たちへIII 恋におちて』主題歌)、ザ・ベイビースターズ「ヒカリへ」(アニメ『ONE PIECE』のオープニングテーマ)、ZONE「secret base〜君がくれたもの〜」(テレビドラマ『キッズ・ウォー3 〜ざけんなよ〜』主題歌)、五十嵐浩晃「ペガサスの朝」(「明治チョコレート」CMソング)、センチメンタル・バス「Sunny Day Sunday(「ポカリスエット」CMソング) などは、いわゆるお茶の間でもお馴染みのナンバーでもあるのだが、これだけを聴いても、実にバラエティに富んだセレクションであることが分かる。人気の素材をどのような形で再び世に出すかは、送り手としてのセンスが問われるところでもある。

「うちの会社のメンバーはそれぞれに得意なジャンルを持っていたりするので、そんな中から“これはどう? あれはどう?”と、いろんな意見が交わされていましたね。企画を立ち上げた松田は、昔からたくさんのコンピレーションアルバムを作ってきたアイデアが豊富な先輩で、これまでも驚くような企画を見てきましたが、今回もさすがだなと思いました」(藤吉さん )

「通常はリリースされた年代やテーマで分けるのがセオリーだったりするのですが、今回はあえて、年代もジャンルもごっちゃごちゃ。隅から隅までご覧になって、興味のある曲を探していただきたいですね」(鈴木さん)

「会社設立時のヒット曲であるカルメン・マキの〈時には母のない子のように〉やピーターの〈夜と朝のあいだに〉はもう53年も前の歌ですが、こうしたものも含めた合わせ技でもって、各年代からのいろんな楽曲に耳を傾けていただけたら嬉しいですね」(松田さん)

 片っ端から聴いてみれば、昭和後期から平成へと至る邦楽史の美味しい部分を俯瞰できそうなほど充実したセレクション。多彩なのはアーティストだけでなく、楽曲を提供している作家陣も非常に豪華で、作詞家では阿久悠、なかにし礼 、阿木燿子、湯川れい子、松本隆など、作曲家には筒美 京平、坂田晃一、都倉俊一、林哲司、村井邦彦など大御所の名も随所に見つかる。また、瀬尾一三、星勝、鈴木茂ら優れたアレンジャーたちのいい仕事ぶりも見逃せない。
 中には、大物アーティストが残した足跡も、例えば、ばんばひろふみが在籍したバンバンのオリコン1位獲得曲「『いちご白書』をもう一度」の作詞・作曲は荒井由実のペンによる。ちなみに、この曲の印象的なギターソロは芳野藤丸だが、ハイレゾではこの名演が実に美しく表現されている。芳野藤丸と言えば、SHOGUN(ショーグン)の名盤『ROTATION』(1979年)からのシングル曲で、テレビドラマ『探偵物語』の主題歌に起用された「Lonely Man / Bad City」(エンディングテーマ/オープニングテーマ)も第2弾でリリースされるのでこちらも楽しみだ。


■ハイレゾ化で空間表現もより鮮明に


 では、マスタリングの方向性など、気になるハイレゾ化のプロセスについても伺ってみよう。


「すべての楽曲でハイレゾ用のマスタリングを施しています。もちろん、アナログマスターのものはそこまで遡って行いました。また、今回のマスタリングでは、あえて現代風の音にはしていません。アナログテープで残っているものを含め、当時の温かさや風味を生かした状態で24bit/96kHzに持っていこうと。曲数が多いため、マスタリングエンジニアも3人が作業に当たりましたが、そうしたポリシーは共有しています。無理に今風のサウンドにせず、音源が出たときの雰囲気を生かしながら、ハイレゾならではの良さが出るよう心掛けました」(松田さん)

 出来上がったサウンドの印象について、第1弾リリースの全54曲のマスタリングに立ち会った松田さんは作業の様子を振り返り、次のような感想を語ってくれた。

「元のアナログマスターもハイレゾ化したものも、マスタリングスタジオの大きなスピーカーで聴いた時間は本当に幸せなひとときでした。例えばピーターの〈夜と朝のあいだに〉は、音数はそんなに多くないのですが、楽器が重なるところも全くうるさくないんです。そして、それをハイレゾにすると、元々あった空間表現がより生きてくるという印象を持ちました」

 ボーカルや楽器の質感はもちろん、その空気感まで高解像度に表現されるのがハイレゾの醍醐味。その楽しさを、最新の音響フォーマットにも詳しい藤吉さんはこう語る。

「僕は元々フュージョンとかも好きで、音数の多い音楽もよく聴くのですが、今回のリイシューでは松田も言うように、やはり空間としての鳴りが聞こえてくるのがハイレゾのすごいところだと感じました。いっそうクリアに聞こえる感じも好きなんですが、それよりも空間で鳴っている響き が聞こえてくるのがいいですね。僕はソニーが推進している“360 Reality Audio”も担当しているのですが、こちらも音楽を空間として楽しんでもらえるフォーマットです。一口に“いい音”と言っても、今回の2チャンネルのハイレゾもあれば、立体音響を体験できる“360”もあって、いろんな楽しみ方があるのはいい流れだなと思うし、新しい音楽の聴き方がどんどん生まれています。今回の“BESTタッグ ”シリーズは、僕らがこれまで聴いてきた音楽も、いま聴くとこんなにもいいものだったんだと再認識することができます」




■「ハイレゾ版デジタルシングル」というスタイルの可能性


 これら文化資産とも言うべき優れた楽曲には、あらゆる世代の聴き手にアピールする力が宿る。


「海外で日本の音楽の人気が高まったり、若い世代に80年代の音楽が注目されたりする中ですが、そこは今風に何かを変えるのではなく、当時の空気感や鳴りといったものをきちんと伝えることで、若いリスナーにとって聴いたことのない新しい音として認識されるはずです。その意味でも、松田たちが目指した“原音が持つ雰囲気を大事にする”のはいいアプローチだと思います」(藤吉さん)

 音楽に含まれる情報を余すところなく伝えるハイレゾ。今回提供される楽曲のボーカルもバックの演奏も、どこか心躍るものを感じさせてくれる。

「今回リリースされるものではないのですが、かつて南佳孝さんを担当していたときのことです。音響ハウスでのレコーディングで、蒼々たるメンバーによるオケ一発録りで佳孝さんも仮歌を歌っていたんです。後であらためてボーカルを録音したのですが 、どうもしっくりきません 。結局、みんなで“せーの”で録った仮歌がいちばんいいということで、それを生かすことになりました。やはり、優れたミュージシャンたちが一発録りしたときに巻き起こる緊張感やグルーヴは本当にすごいものだと驚きました。“BESTタッグ ”でお届けする音源にも、そうしたものがたくさん詰まっています。ぜひそのあたりも聴いていただきたいですね」(藤吉さん)

 「BESTタッグ」で甦った楽曲群は、リアルタイム世代には懐かしく、そうでない世代には新しい音楽として聴くこともできる。例えば今回の金井克子や第2弾で登場する平山三紀などは、和物のレアグルーヴとして楽しむことも可能だろう。世代や嗜好によって楽しみ方は何通りにも膨らむ。すべての音楽ファンにとって大切なマスターから、1曲ずつ丁寧にハイレゾ化して届けられるこの度のリイシュープロジェクトを、我々リスナーも大いに楽しみたい。




■ハイレゾの素晴らしさを広げる実験的な企画


 では最後に、お三方からe-onkyo musicリスナーへのメッセージをお伝えしよう。


「うちのカタログにはハイレゾ化されていない、いい音源がまだまだたくさん眠っています。リスナーの皆様からいい反応が得られれば、この企画はさらに第4弾、第5弾 と続く可能性も出てきます。また、歌物に限らず、皆さんがいい音で聴きたい音楽を提供していきたいと思いますので、リクエストなどございましたら、ぜひお知らせください」(鈴木さん)

「せっかくのハイレゾをダウンロードしていただきましたら、小さなイヤフォンもいいのですが、できればスピーカーであったり、ちょっといいヘッドフォンで聴いていただきたいんです。もちろんe-onkyo musicのリスナーの多くの方はご存知と思いますが、そうした音をまだ体験していない 若い音楽ファンの皆さんも、試してみれば絶対に“おー!”っと驚くはずです。今回のハイレゾはクオリティに自信を持って提供していますので、ぜひご体験ください」(藤吉さん)

「“BESTタッグ ”は我々としても実験的な試みでもありますが、これを成功できればさらに、e-onkyo musicさんと一緒にハイレゾの素晴らしさを広げていけると思っています。また、今回は邦楽のみですが、洋楽でもこれに近いコンセプトで出せればいいですよね。そのためにも、ぜひ今回の配信をぞんぶんにお楽しみいただきたいと思います」(松田さん)

 なお、「BESTタッグ」は1曲ずつバラで購入するより2曲セットで買うほうがお得に設定されている。いずれも甲乙付けがたい“タッグ”となっているので、興味のあるタイトルはぜひ一緒にどうぞ。(了)







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