“MClassics”レーベル創立1周年記念~特別先行配信「東京六人組」

2022/01/14

文◎ナクソスジャパン


わずか1年で、アーティストからもリスナーからも支持を集めるレーベルに


「ここまでリリース数が多くなるとは想像しませんでした」──

 2021年12月17日。浜離宮朝日ホールで開催された「東京六人組」ランチタイムコンサートの楽屋で、MClassicsレーベルプロデューサーの小野啓二氏はそうつぶやいた。「隔月くらいかな、と考えていたのですが」

 実際、このレーベルの勢いは凄まじい。創立からわずか1年にしてリリース数は15点を数える。今後も、レーベル初となるオーケストラ録音をはじめとして、アンサンブルやソロなど多彩な録音計画が目白押しだという。すでにアーティストの間でもこのレーベルの評判が広がり、リリースの相談が次々と舞い込んでいる。これはまさに、小野氏のプロデューサー/レコーディング・エンジニアとしての実力、アーティストに対する細やかな気遣い、そして完成作の質の高さゆえだろう。


レコーディングした音源をチェックする小野啓二氏(写真右)@Tsuyoshi Shimono



 DXD 352.8kHz/32bitでの収録を基本とし、DSD11.2MHz/1bit, PCM192kHz/24bitほかハイレゾリスナーの需要に応えるさまざまなスペックを揃えた音源は、e-onkyo musicでも大きな注目を集めた。このたびのレーベル創立1周年を記念して、e-onkyo musicでは5作の特別セールを実施。音楽・オーディオ評論家から高い評価を得た作品をセレクトした。(※セールは終了しております)





MClassics注目作品──ピアノからダブルリード・アンサンブルまで



●「小野さんは空間を読む男」──ピアニスト自身も満足する立体感と透明感


『リスト: 巡礼の年 第1年「スイス」 S.160/R.10』
三舩優子


「空間を読む男」が録るフランツ・リストとは? 新レーベル「MClassics」第1弾先行配信スタート(20/12/11掲載)

ソリストやユニットなど多岐に渡り活躍するピアニスト、三舩優子の8年ぶりのソロ・アルバム。演奏者自身が「ストレスフリー」で録音できたと語る、レーベルとアーティストとの信頼関係が結実したMClassics第1弾作品。『レコード芸術』誌特選(2021年1月号)。「ただきれいだというのではなく、音に描かれたそれぞれの情景を目に浮かばせるような、意味のある美しさ」(濱田滋郎)「重量級のエネルギーよりも澄んだ響きを重視した録音である。最低音域も含め、混濁がほとんどなく、作品の構造が細部まで浮かび上がる解像感の高さがそなわる」(山之内正)





●音の「くすみ」をハイレゾで味わう──ピリオド楽器で奏でるブラームス


ブラームスのヴィオラ・ソナタを、作曲者自身が愛用した同種のピリオド楽器で演奏する貴重な試み。山形交響楽団の契約首席奏者ほか室内楽、さらにピリオド楽器奏者として活躍する成田寛と、モダン、ピリオド楽器の両輪で活躍するピアニスト・上野真の味わい深いデュオ・アルバム。「用いられているピアノのくすんだ柔らかい音色がいかにもブラームスに似つかわしい」(中村孝義、『レコード芸術』誌評(2021年1月号))「ナチュラルにして、臨場感溢れる名録音」(麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第57回





●ユーフォニアムはいまここまで凄いことになっている!



 『軒下ランプ』
 佐藤采香(ユーフォニアム)

2018年リエクサ国際コンクールにて日本人初の優勝を飾ったユーフォニアム奏者、佐藤采香による2作目のアルバム。作曲家・加藤昌則氏に委嘱した「軒下ランプ」、バッハの無伴奏作品、吹奏楽ファンにはおなじみのフィリップ・スパークほか多彩な選曲。クラシックファンにはなじみの少ないユーフォニアムのふくよかな音色を、日本のトップ若手奏者による完成度の高い演奏で。『レコード芸術』誌特選(2021年3月号)。「すみずみまで実に丁寧に、そして真摯に磨きをかけられたその表現には一点の曇りもない」「技術と知性の見事な融合」(後藤洋)「きめ細かな、演奏の微細なニュアンスをすくい上げようとする敏感な録音も見事」(西村祐)

 




●シリアスな「高音質バリトン」にどっぷり浸る


『”白鳥の歌”四題 シューベルト、ブラームス、ヴォルフ、マーラー』
 宮本益光(バリトン)


日本を代表するバリトン歌手、宮本益光3年ぶりのソロ・アルバム。ロマン派を代表する4人の作曲家、シューベルト、ブラームス、ヴォルフ、マーラーが円熟期から最晩年にかけて書いた歌曲を収録。人間の「死」と「生」を見つめるシリアスな歌曲の世界に浸りたい方に。『レコード芸術』誌準特選(2021年4月号)。「詩の内容に一体化し、その心理・感情を「声」に転化し得ている」「作品に追い詰められたように、全身全霊を傾けて謳う気迫、真摯なスピリット」(城所孝吉)





●5種類9人の「ダブル・リード」楽器が織りなす絶妙なアンサンブル!


長年名古屋フィルの首席オーボエ奏者として活躍してきた山本直人が主宰する、ダブル・リード(=オーボエ、オーボエ・ダモーレ、イングリッシュ・ホルン、ファゴット、コントラ・ファゴット)のみで構成される驚異のアンサンブル。ダブル・リードならではのビリッとした空気感や音の豊かな伸びにやみつきになるハイレゾファンも多いのでは。『レコード芸術』誌準特選(2021年9月号)。「アンサンブルは驚くほど緊密で、音楽的な意思がしっかり統一されている」(後藤洋)「ダブル・リード属のみ、しかもたった9人のアンサンブルで(シェエラザード)全曲とは何と無謀な冒険かと思いきや、なかなかに楽しめる演奏に仕上がっているのが驚き」(西村祐)





e-onkyo music限定先行配信──東京六人組「Dance」

 
 MClassicsが新作を続々とリリースしていた2021年夏。東京都下では、「東京六人組」のレコーディングが行われた。

稲城iプラザで8月12-14日に行われたレコーディング


 東京六人組は、上野由恵(フルート)、荒絵理子(オーボエ)、金子平(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)、三浦友理枝(ピアノ)の6名によるアンサンブル。それぞれ東京のオーケストラの中心メンバーとして、あるいはソリストとして活躍する多忙な6人でありながら、結成から6年にして今回が4作目の録音(MClassicsとしては初)。驚くほど精力的な活動ぶりである。
 しかし(コロナ禍という事情抜きにしても)彼ら6人も、あるいはプロデューサーの小野氏も、決して公私ともにべったりと付き合うタイプではないという。レコーディング中は音楽づくりに専念し、終わればあっさりと別れていく。この録音現場でも、6人が互いの演奏に対して対等かつストレートに意見を交わし合い、緻密に音楽を作り上げていくプロフェッショナルらしい姿が印象に残った。


レコーディング中にもメンバー全員が率直な意見を出し合い、
アンサンブルの質を高めていく。



 このたびの4作目「Dance」は、そんな彼らのプロフェッショナルな精神がもっともよく現れたアルバムといえるだろう。タイトルやジャケットはポップだが、20世紀前半の「ダンス音楽」を詰め込んだプログラムは、テーマも求められる技術や体力もきわめてハードである。

 当作の収録曲全曲を演奏したランチタイムコンサート(浜離宮朝日ホール、12月17日)では、1曲目にリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』より「7つのヴェールの踊り」(トラック1)が演奏され、メンバー自ら「朝から聴く曲じゃありませんね」と笑いを取った。王女サロメが愛する男の首を所望して扇情的に踊り歌うこの曲は、たしかにいきなりの重量級作品である。続いては、プロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』のハイライト(トラック2-3)。血をめぐる陰惨な対決と若者の恋の絶頂が、ピアノと5つの管楽器でドラマティックに展開され、演奏時間25分にもおよぶ大作メドレーでありながら飽きさせない。大編成オーケストラに劣らないサウンドの迫力と、大編成オーケストラでは気づきにくい個々のパートの細やかな役回り。原曲ファンにとっても新発見の多い編曲に仕上がっている。




e-onkyo music限定先行配信
『Dance』
東京六人組


1    R.シュトラウス: 楽劇「サロメ」 Op. 54, TrV 215 - 7つのヴェールの踊り(磯部周平編)
2-3  プロコフィエフ: バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 (ハイライト) (松下倫士編)
4-5  ダンディ: サラバンドとメヌエット Op. 72
6   ラヴェル: ラ・ヴァルス(浦壁信二編)
7   ハチャトゥリアン: バレエ音楽「ガイーヌ」 - レズギンカ(竹島悟史編)



 生演奏から感じられる熱気、躍動感、一体感は、録音においても余す所なく伝えられている。全員が違う楽器だからこそ、ときに無茶な要求をしあうこともあるが、ひるまずにそれに力技で応えるのが常だという。音楽家として中堅に入り、充実した体力と精神力をそなえた年齢だからこそ成し得る技だろう。

東京六人組 ©Ayane Shindo



 コンサートの休憩中や終演後には、会場先行販売のCDを求めて長い列ができた。メンバーからは早くも次回録音のアイデアが出ているという。「この曲、やりたいんで調べておいてください」──メンバーからそう気さくに声をかけられる小野氏の姿に、レーベルとアーティストの信頼感がうかがえた。

 「録音は手軽にできるという風潮が最近は強いですが、実際に新レーベルとしてレコーディングをはじめてみて、アーティストの方々はさまざまな覚悟や心意気でもってこの新レーベルへの録音に挑んでくださっていると肌で実感しました。」──小野氏は第1作リリースの折にそう語っている。当初の計画を上回る数のリリースが続くのは、レーベルにとってもアーティストにとっても、そしてリスナーにとってもうれしい誤算といえるだろう。

 2年目にも大きな期待がかかるMClassicsレーベル。まだ1年目の消化が追いついていないというリスナーの皆様は、ぜひ、このたびのセールと特別先行配信の機会に当レーベルの作品を聴いてみてほしい。


 また、東京六人組と同じく、新譜『It would be fantastic』も先行配信がスタート。
 名古屋フィルのテューバ奏者として活躍する林裕人による、バッハ、ヘンデルからヴォーン・ウィリアムズ、現代作曲家まで多様な作品を聴かせるアルバム。日本でいかにオーケストラが盛んとはいえ、テューバ奏者は各団にひとり。東京藝大在学中にそのポストを獲得した実力はまさに折り紙つきである。オーケストラ奏者ならではのダイナミズムはもちろん、目を見張る機動性からピアノの減衰に溶け込むような繊細な弱音まで、テューバの独奏楽器としてのポテンシャルを遺憾なく発揮する林のプログラムは、かつての経験者やこの楽器に馴染みのないリスナーが完全に認識を改めるレベルにある。ピアノの新居由佳梨はソリストとしての活躍はもちろん、室内楽奏者として多くの音楽家が絶大な信頼を寄せる貴重な存在。また人気実力派指揮者のひとり、川瀬賢太郎の友情出演にも注目したい。



e-onkyo music限定先行配信
『It would be fantastic』
林裕人(テューバ)



MClassicsレーベル 作品一覧


 

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