【1/7更新】 音楽ライター原典子の“だけじゃない”クラシック

2022/01/07

e-onkyo musicにてクラシック音楽を紹介する連載がスタート!その名も“だけじゃない“クラシック。本連載は、クラシック関連の執筆を中心に幅広く活躍する音楽ライターの原典子が、クラシック音楽に関する深い知識と審美眼で、毎月異なるテーマに沿った作品をご紹介するコーナー。注目の新譜や海外の動きなど最新のクラシック事情から、いま知っておきたいクラシックに関する注目キーワード、いま改めて聴きなおしたい過去の音源などを独自の観点でセレクト&ご紹介します。過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を是非お楽しみください。


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24bit衛星デジタル音楽放送MUSIC BIRD

【新番組】「ハイレゾ・クラシック」

■出演:原典子  ■初回放送:2021年4月2日(金) 
■放送時間:(金)14:00~16:00  再放送=(日)8:00~10:00
毎月ひとつのテーマをもとに、おすすめの高音質アルバムをお届け。
クラシック界の新しいムーヴメントや、音楽以外のカルチャーとのつながりなど、いつもとはちょっと違った角度からクラシックの楽しみ方をご提案していきます。出演は音楽ライターの原典子。
■番組HP→

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■❝だけじゃない❞ クラシック 1月のテーマ


2022年を迎えるプレイリスト



新しい年を迎え、最初に聴く音楽にはどんな思いが込められているだろう? 「今年こそ明るい年にしたい」「コンサートにたくさん行きたい」といった願いとともに、これからはじまる一年に思いを馳せ、お気に入りの音楽に耳を傾けている方もいらっしゃることと思う。
この連載がはじまった2021年4月に「プレイリスト時代の音楽」というテーマで、時代もスタイルもさまざまな楽曲を一枚にまとめた「コンセプト・アルバム」をご紹介した。それから半年以上が過ぎ、クラシック界の新たなトレンドとも言うべきコンセプト・アルバムの新譜は次々と世に送り出されている。そのなかから今月は、新しい時代を予感させるようなアルバムをお届けしたい。


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Of All Joys』/アタッカ四重奏団


キャロライン・ショウのアルバム『オレンジ』で第62回グラミー賞を受賞したアタッカ四重奏団。ソニー・クラシカルへ移籍し、ダンスビート炸裂のアルバム『REAL LIFE』を配信リリースしており、個人的には今もっとも動向が気になるカルテットかもしれない。この最新作ではアルヴォ・ペルトの《スンマ》を冒頭に、《フラストレス》を最後に配置し、ジョン・ダウランド、オルランド・ギボンズ、グレゴリオ・アレグリなどルネサンス作曲家の作品が並ぶプログラムの中ほどに、フィリップ・グラスの弦楽四重奏曲第3番《ミシマ》が。ルネサンスとミニマルを交錯する選曲が秀逸!



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11月の夜想曲』/新倉瞳(vc)


チェリスト、新倉瞳がEMI Music Japanからデビューした2006年、こんなにも自由に大空を羽ばたく姿を誰が予想しただろうか。2013年の冬、留学先のスイスで偶然クレズマー音楽(東欧のユダヤ音楽)と出会い、クレズマーバンドのメンバーとしても活動するようになったというのだから、彼女自身さえ予想していなかったかもしれない。そうやって自分の「好き」にまっすぐ、ひたむきに歩んできた結果、デビュー15周年のアルバムが全曲世界初演という驚くべき一枚となった。新倉が委嘱した作曲家は、ファジル・サイ、藤倉大、挾間美帆、佐藤芳明、和田薫の5人。はじめて出会う音楽が、まっさらなキャンバスに絵を描くような可能性を感じさせてくれる。



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アラ・ナポリターナ
クリスティーナ・プルハー(指揮、テオルボ)、ラルペッジャータ


新譜が出るたびに楽しみなクリスティーナ・プルハー&ラルペッジャータ。最新作は「ナポリ」をテーマに、17世紀から20世紀まで色とりどりの楽曲を集めたアルバムとなっている。ナポリ湾の魚の間の愛、嫉妬、対立について早口で歌うタランテラ《Lo Guarracino》なんて、これぞジャンル無用のラルペッジャータ節全開! とにかく楽しく、陽気に一年のはじまりを迎えたい人にぴったり。



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【もっと聴きたい 2022年を迎えるプレイリスト】




バッハ:アート・オヴ・ライフ
ダニール・トリフォノフ(p)

J.S.バッハだけでなく、W.F.バッハ、C.P.E.バッハ、J.C.F.バッハといった息子たちの作品や、ふたりめの妻アンナ・マグダレーナ・バッハに贈った音楽帳などを収録。「バッハ・ファミリー」の居間にいるような気分になる。


Family
オルガ・シェプス(p)

ピアニスト、オルガ・シェプスが妊娠中と息子を出産してから出会った曲で構成したアルバム。クラシック音楽とともに、映画『ファインディング・ニモ』やゲームの音楽なども入って、リアルな生活と音楽とが結びついている。




Piano Songbook
マルティン・シュタットフェルト(p)


近年、独自路線を歩むマルティン・シュタットフェルトの最新作は、ヘンデル、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ドヴォルザーク、ヴィヴァルディなどの作曲家によるピアノ曲以外の作品を、独自のピアノ・アレンジで収録したアルバム。シュタットフェルトの自作も。


ラウンド・ミッドナイト
~デュティユー、メルラン、シェーンベルク
エベーヌ弦楽四重奏団

ノリに乗っているエベーヌ弦楽四重奏団の最新作は、デュティユーの《夜はかくの如し》とシェーンベルクの《浄められた夜》の間に、カルテットのチェリストであるラファエル・メルランのジャズ風の作品をはさんだアルバム




ヴォイス・オブ・ネーチャー
ルネ・フレミング(S)&ヤニック・ネゼ=セガン(p)

環境破壊の危機に瀕した世界に向けたルネ・フレミングによるメッセージ・アルバム。自然の美しさを歌ったロマン派の歌曲、ニコ・ミューリー、ケヴィン・プッツ、キャロライン・ショウへの委嘱作品などを収録。

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“だけじゃない”クラシック◆バックナンバー

2022年03月 ◆ 春の訪れを感じながら
2022年02月 ◆ 未知なる作曲家との出会い
2022年01月 ◆ 2022年を迎えるプレイリスト
2021年12月 ◆ 2021年の耳をひらいてくれたアルバム
2021年11月 ◆ ストラヴィンスキー没後50周年
2021年10月 ◆ もの思う秋に聴きたい音楽
2021年09月 ◆ ファイナル直前!ショパン・コンクール
2021年08月 ◆ ヴィオラの眼差し
2021年07月 ◆ ピアソラ生誕100周年
2021年06月 ◆ あなたの「推し」を見つけよう
2021年05月 ◆ フランスの響きに憧れて
2021年04月 ◆ プレイリスト時代の音楽


筆者プロフィール








原 典子(はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。

2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。

 

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