オーディオのプロが推薦!2021-2022 WINTER SALE 必聴盤!

2021/12/27

現在、絶賛実施中のe-onkyo music冬の恒例厳選タイトルプライスオフ。2022年1月31日までの期間限定で、3700タイトル以上の対象アイテムが、最大70%オフにてダウンロードいただけるキャンペーン。こちらでは、オーディオ評論家など6名のオーディオのプロが、プライスオフ対象作品の中より、特にオーディオ的に優れた必聴ハイレゾ作品をジャンルごとに厳選してご紹介。潮晴男氏、小原由夫氏、鈴木裕氏、高橋敦氏、西野正和氏、山本浩司氏(50音順)のe-onkyo musicでもお馴染みのプロがセレクトした優秀録音の数々をお得にダウンロードいただけます。

【インデックス】
▶️潮晴男がセレクトする「洋楽ロック/ポップス」必聴盤!
▶️小原由夫がセレクトする「ジャズ」必聴盤!
▶️鈴木裕がセレクトする「クラシック」必聴盤!
▶️高橋敦がセレクトする「アニメ」必聴盤!
▶️西野正和がセレクトする「J-POP/邦楽」必聴盤!
▶️山本浩司がセレクトする「洋楽ロック/ポップス」必聴盤!
※セレクターは50音順




潮晴男がセレクトする「洋楽ロック/ポップス」必聴盤!

 

「オールディーズからロック、ポップスまで幅広いジャンルから選んだベスト10である。録音の年代から言えば古くは2トラックのアナログ時代、続いてマルチトラック、そしてアナログとデジタルが混在する激動期から最新のものまで含んでいる。デジタル時代になっても頑なにアナログ録音を続けていた作品もあり、こうしたタイトルはまさしくeオンキョーの配信においてハイレゾの器の大きさを活かすことが出来る楽曲だと思う。アナログ時代からクォリティの高さを誇っていた作品もいくつかあるので、ぜひともマスターテープ直結の凛々しいサウンドをお楽しみいただきたい。同じタイトルのレコードをお持ちのオーディオファンはこれを機会に聴き比べてみるのも一興である。」(潮晴男)




Wheels Of Fire』/Cream

 1968年、スタジオ盤とライブ盤をカップリングした2枚組で発表され、全米1位を獲得したクリームの代表作となる3作目のアルバムである。代表曲の「ホワイト・ルーム」や「クロスロード」が収録されているが、メンバー各人の超絶的なプレイが素晴らしいアンサンブルを生み出した傑作である。録音はロンドンのIBCスタジオとニューヨークのアトランティック・スタジオで行われ、スタジオ盤はトム・ダウド、ライブ盤はビル・ハルバーソンがそれぞれ担当している。スタジオ録音にはプロデューサーのフェリックス・パパラルディも演奏に参加して音楽に彩を添えている。クラプトンもジャックも今聴くと声が若い。そんなリアルなサウンドが聴けるし、ハイレゾ収録版はジンジャーのダブルバスドラムの太い音もよく捉えられている。「クロスロード」以降の曲はサンフランシスコのウィンターランドとフィルモアでのライブ録音だが、こちらは会場の響きと熱気溢れている。


On The Radio: Greatest Hits Volumes I & II
Donna Summer

 ディスコ・クイーンのドナ・サマーが1979年にリリースした初のベスト作品集である。オリジナル・アルバムには未収録の「オン・ザ・レディオ」とバーブラ・ストライサンドとのデュエット曲「ノー・モア・ティアーズ」のロングバージョンが加えられている。「ラブ・トゥ・ラブ・ユー・ベイビー(愛の誘惑)」のライブバージョン、「マッカーサーパーク」などいずれもお馴染みのヒット曲で構成されているが、当時のレコードと同じく曲間のないディスコ・ミックスで繋げられている。ドナ・サマーの伸びやかさのあるボーカルもしっかりと捉えられているが、どの曲からもダンピングの効いた当時のディスコミックス・サウンドが溢れ出す。懐かしもあるものの改めて聴き直してみると新鮮な感動が沸き起こるのはハイレゾ・バージョンならではと言えるだろう。





Get The Knack』/The Knack

 1978年にロサンゼルスで結成されたロックバンド、ザ・ナックがリリースしたデビュー・アルバムである。この「ゲット・ザ・ナック」でいきなりビルボード6週連続1位という記録を樹立して一世を風靡した。ボーカルとリズムギターのダグ・フィーガーが熱唱するシングル・カットされた「マイ・シャローナ」は今でも多くのアマチュア・バンドがコピーする名曲だ。オーストラリア出身のマイク・チャップマンがプロデュースしたということもあって、ぼくにはイギリス風のサウンドに聴こえていた。シャローナは当時のダグが思いを寄せていた彼女の名前だったが、かなり意味深な歌詞から放送禁止にしたラジオ局もあったという。ハイレゾ・バージョンはタイトにしてパワフル、収録にかけた予算が18,000ドルだったということが嘘のような仕上がりである。



Chromaticaレディー・ガガ

 レディ・ガガが主演した「アリー/ スター誕生」のサウンドトラックに続くレディ・ガガ名義の6枚目のアルバムである。先行シングルとして配信された「ステューピッド・ラヴ」やアリアナ・グランデとの競演となる「レイン・オン・ミー」、ブラックピンクとの競演となる「サワー・キャンディ」、エルトン・ジョンとの競演となる「サイン・フロム・アバーブ」など多彩な楽曲が収録されている。加えて本作ではレディ・ガガ本来のダンサブルでポップな内容に仕上げられていることもファンには嬉しいことと思う。エフェクターを巧みに使いこなして浮遊感たっぷりの仮想空間を作り出す一方、パワフルでダイナミックな音作りのサウンドがスピーカーの外側にまで飛び出す。ガガの張りのあるボーカルもニュアンス豊かに捉えられているが、ハイレゾならではのレンジ感とズシリとした手応えが味わえるエレクトロ・サウンドを堪能することができる。




Band On The Run
Paul McCartneyWings

 1973年、ナイジェリアのラゴスで収録したポール・マッカートニー&ウィングスの3作目のアルバムである。当時のメンバー二人が治安の悪いナイジェリア行きを嫌がり急遽脱退したり、ラゴスのスタジオが未完成だったりと悪戦苦闘したものの、エンジニアのジェフ・エメリックのサポートにより完成した曰くつきの作品だ。「ジェット」とタイトル曲の「バンド・オン・ザ・ラン」をシングル・カットしてPRを重ねたことが功を奏し、アルバムとしても全英、全米とも1位を記録した。本作はそのリマスター・バージョンだが、元のクォリティが高くなければこんな音にはならなかったことだろう。抜群の鮮度感で甦ったハイレゾ・サウンドが味わえるタイトルである。



A Night At The Opera
Queen

 英国で初めてチャート1位を記録し1975年にリリースされた彼らの代表的なアルバムである。また当時の英国のポピュラー・ミュージック史上最高の制作費が投入されたことでも話題となったが、このアルバムのハイライトはなんといっても2018年に公開された映画と同名のタイトルが付けられた「ボヘミアン・ラプソディ」である。ステレオフォニック効果を引き出すため多重録音を駆使した音作りがなされているが、鮮度が落ちないよう工夫を凝らすとともに、ボーカルトラックの慎重な扱いによりフレディを初めとする声の質感に気を配った作りがなされている。ハイレゾ・バージョンはオリジナルのファースト・ジェネレーションのマスターテープから最新のデジタル技術を用いてボブ・ラドウィックがリマスターした音源が採用されていることもファンには見逃せない。繊細にしてダイナミクスに富んだサウンドを聴くことの出来るロックの逸品だ。




Gaucho』/Steely Dan

 音の錬金魔術師として徹底して音作りにこだわるスティーリー・ダンが前作「エイジャ」の成功を受け莫大な制作費と2年半という製作期間を経て作り上げたアルバムである。マルチトラックレコーダを駆使し楽曲ごとにあるいはパートごとにスタジオに招聘されたミュージシャンは数知れず。しかもすべて一流のミュージシャンをばかりを起用するという徹底した完璧主義がサウンドにもよく反映されている。このアルバムを持ってスティーリー・ダンは一度活動を停止する。改めてハイレゾで聴くと彼らのこだわり方が半端ないものだったことが良くわかる。楽器やボーカルの音に汚れがまったくなく、音の一つ一つが実に細やかでまるでジグソーパズルのようにはめ込まれている。都会的でありお洒落で洗練された音楽とサウンドに出会うことの出来る貴重なアルバムと言ってもいいだろう。「ガウチョ」もリリース当時からオーディオ・ファイル必携の一枚だったが、今もって十分その期待に応えるだけのポテンシャルを備えている。



Meet The Supremes
The Supremes

 シュープリームスが発表した「愛はどこに行ったの」をフィーチュアしたアルバムである。作詞・作曲はホーランド=ドジャー=ホーランド。元々はマーベレッツが歌うことになっていたが収録を拒否されシュープリームスに回ってきたという曰く付きの曲だが、1964年6月にシングルとして発表され、ナンバー1に輝いた。同年8月同名のタイトルをつけアルバムとしてリリースされている。この他にもヒット曲の「ベイビー・ラヴ」、「カム・シー・アバウト・ミー」を加えたモータウン・サウンドが堪能できる作品だ。メイン・ボーカルのダイアナ・ロスはもちろんだが、コーラスを付けるフローレンス・バラードとメアリー・ウィルソンの声もとても60年近く前の録音だとは思えないほどフレッシュで生っぽい。「キス・オブ・ファイヤー」では一部オーバーレベルで歪んだ箇所もあるが、そうしたところまでもハイレゾは正確に映し出す。バッキングのギターの音色もテナーサックスもハイレゾ・サウンドならではのクォリティでシュープリームスの音楽を甦らせている感じだ。




Pet Sounds[Mono & Stereo]
The Beach Boys

 ビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンがビートルズの「ラバーソウル」に触発されて作った可愛らしいタイトルのつけられたアルバムである。メンバーも加わっているが、ボーカルとコーラスが中心で、バックの演奏はキャロル・ケイのベースを初めとするレッキングクルーである。音楽関係者からは絶賛されたが、そうした評価とは裏腹にメランコリックなサウンドゆえアルバムのセールスは不調だった。それでも後に傑作との評価を勝ち取りビーチ・ボーイズの代表作になる。リリース当初のモノーラル・ミックスと1997年に発売された「ペット・サウンズ・セッションズ」のリアル・ステレオバージョンのいずれの曲も収められている。ステレオ・バージョンでは伸びやかで空間の広がりを感じさせる美しいサウンドを聴くことの出来るハイレゾ・アルバムである。


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潮 晴男(うしおはるお)
オーディオ・ビジュアル評論家・ウルトラアートレコード代表・米子ふるさと観光大使。
オーディオ・ビジュアル専門誌をはじめ情報誌、音楽誌など幅広い執筆活動をおこなう一方、音響監督として劇場公開映画やCDソフトの制作・演出に携わる。ハリウッドの映画関係者との親交も深く制作現場の情報にも詳しい。2017年、高音質ジャズレーベル、ウルトラアートレコードを麻倉怜士と設立しパッケージソフトのリリースとハイレゾ配信を開始する。米子ふるさと観光大使として鳥取県米子市の魅力を発信している。




小原由夫がセレクトする「ジャズ」必聴盤!

 

「ハイレゾで楽しむジャズの醍醐味は、ソロとバックの距離感や、音像定位とステレオイメージの再現にある。例えばピアノトリオでは、ピアノ、ベース、ドラムのそれぞれの音像がステレオ音場の中でどう配置され、ソロがどう聴こえるか。それはビッグバンドでも同様で、大きな編成のアンサンブルを背に、ソロ楽器がどう定位するかといった点だ。ヴォーカルが入っても同じで、リズムセクションを従えた声が、どう浮かび上がってくるかといった点に耳を傾けてみたい。ハイレゾであれば、高S/Nに支えられてステレオイメージの見通しも一段と立体的に見えることだろう。」(小原由夫)




After Midnight[Remastered]
Nat King Cole

 クリスマス近くになると、何故か優しい表情のヴォーカルが聴きたくなる。ナット・キング・コールがそれにはピッタリだ。本アルバムは古いモノラル音源だが、驚くほど生々しいサウンドだ。当時の勢を尽くした制作体制を裏付けるし、192kHzマスタリングの恩恵もあるだろう。


SHANTI sings BALLADS
SHANTI

 優秀録音アルバムを何枚も輩出したSHANTIは、現代のJ-Jazz界を代表する人気女性シンガー。このバラード中心のアルバムも、伸びやかでチャーミングな声をセンターにくっきり定位させた録音で、オーソドックスなミキシング・バランスながらも、質感再現が鮮明かつリアルだ。




TRINACRIA
ANDREA BENEVENTANO Trio

 イタリアの中堅ピアニストの1st.アルバムにして、名盤と誉れ高きピアノトリオ盤。左右に大きく広げたピアノが導くリラックス・ムードやハイテンションな空間感が素晴らしい。ベースとドラムも中央に定位するが、団子状態にはなっておらず、分離がとてもいい。アコースティック楽器のナチュラルな質感も心地よい。


Ub-X
橋本一子 Ub-X

 奇才・橋本一子が06年にリリースした本作は、ベース、ドラムとが対等な関係にあるユニークなピアノトリオ。3者が織り成すインプロビゼーション空間は、スタジオのナチュラルなアンビエンスを伴って立体的な奥行き感を展開する。その中を橋本のスキャットと自由奔放なピアノが泳ぐよう。




Somethin' Blue
山中千尋

 若手女性ピアニストが多数活躍中のJ-Jazz界において、山中千尋は4ビートを追求する 王道派。2管が描くブルージーな雰囲気は、 ギターも絡んで実にスリリングなムードを胎んでいる。ソロとリズム・セクションの前後感もしっかりと再現される。


Kind of Pink
ユッコ・ミラー

 女性サキソフォニストの期待のホープ。躍動感のあるサックス・プレイは、スピード感に溢れたフレージングを連発! スクッと屹立するソロの爽快感が実にカッコいい。リズム・セクションによる、後方からの鼓舞するようなビートも楽しみたい。




You'd Be So Nice To Come Home To
Alexis Cole With One For All

 今や日本を代表するジャズレーベルといって過言でないヴィーナス・レコード。今回多数のカタログの中から本ヴォーカル盤を選んだのは、暖かくしてこのウォームで瑞々しい声を聴きたいから。溌剌とした声がセンターにピタッと定位する。ドラムの音が若干クローズアップ気味のミキシング・バランスで、右chからのシンバルの切れ味も聴きドコロ。


70 ストロング
スティーヴ・ガッド

 ジャズ/フュージョンドラマーのレジェンドが発表したアニバーサリー盤。達者な5人組が醸し出すグルーヴィーなアンサンブル。ソロを取るトランペットや左chのギターの定位もいいが、主役ガッドのスネアの乾いた響きとハイハットの多彩なフィルインが堪らない!



 

小原由夫(おばらよしお)
理工系大学卒業後、測定器エンジニア、雑誌編集者を経て、92年よりオーディオ&ヴィジュアル評論家として独立。
自宅には30帖の視聴室に200インチのスクリーンを設置。
サラウンド再生を実践する一方で、6000枚以上のレコードを所持し、超弩級プレーヤーでアナログオーディオ再生にもこだわる。
ハイレゾ音源再生にも積極的に取り組んでおり、よりよいネットワーク環境整備に余念がない。

著書は「ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事」(DU BOOKS)。
主な執筆雑誌は、「HiVi」「ステレオサウンド」(以上、ステレオサウンド)、
「オーディオアクセサリー」「Analog」(以上、音元出版)、など。
Web系は「NIKKEI STYLE/AVフラッシュ」(日経電子版)に連載を持つ。




鈴木裕がセレクトする「クラシック」必聴盤!

 

■ハイレゾでカラフルなオーケストラ曲の愉しみを
「近現代のオーケストラ曲から10タイトルを選んでみた。協奏曲や交響曲もあるが、いずれもさまざまな楽器を使い、色彩感豊かな音を聴かせてくれる。録音のいい、ハイレゾの情報量の多いソフトでは、各パートのやっていることを把握できつつ、その音の重なりの美しさ、ハーモニー感。そして立体的に見えるテクスチャーなどを楽しめる。音楽作品として表現しているものや精神性を受け取れるとともに、耳の快楽、脳の愉悦とでも言うべき楽しみも持っているわけだ。
  ひとつ説明しておきたいのはフォーマットについてだ。
セレクトした中では44.1kHzのサンプリング周波数のものもあって、この数字を物足りなく感じる人もいるかもしれないが、bit深度としては24bitある。bit数は一般的には「音量のステップの細やかさ」と技術的に説明されることが多いが、筆者が実際にそういった音楽ファイルを聴いて体感するのは、その数字が大きくなることによって細部の音像のフォーカスが合ったり、空間の奥行きが出る、というハイレゾらしい傾向だ。特に編成の大きなオーケストラ曲を聴く場合、16bitと24bitの差はかなり大きい。
  正直に言うと筆者は10代の頃から近現代のオーケストラ曲が好きで、大学ではオーケストラ部でヴァイオリンを弾いていた。またそういった曲をよりよく再生するためにオーディオに凝り、勉強し、気がついたら現在の仕事になったという経歴を持つ。だからこそ身をもってハイレゾの威力を知っている。この愉しみを是非、多くの方に味わってもらいたいと思って選ばせてもらった。」(鈴木裕)




奇蹟のニューヨーク・ライヴII ベルリオーズ:幻想交響曲
小澤征爾サイトウ・キネン・オーケストラ

 ウィーン国立歌劇場音楽監督という、世界のオペラ界の頂点に上りつめた小沢征爾。2002/03年から2009/10年のシーズンまで務めた意味の凄さがいまひとつ日本では伝わっていないような気がする。その2010年の12月にニューヨークのカーネギーホールで行われたコンサートのライヴ録音だ。音楽を一生懸命盛り上げて楽しませてくれるという小沢征爾の美点が良く出ている演奏だ。サイトウ・キネン・オーケストラという共通の文化を持ったオーケストラとの相性はもちろん良いが、やや前のめりの演奏が聴けて楽しい。録音はワンポイント・ステレオマイクを基本とした素直なもので、演奏の旨みを伝えてくる。


マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団アントニ・ヴィト

 マーラーがウィーン宮廷歌劇場の音楽監督だった時期の終り、1906年と07年の、ふたつの夏休みに作曲された8番。第7交響曲の終楽章といい、この8番といい、頂点に上り詰めたマーラーの気持ちがベースにあるのを感じる音楽だ。オケはいわゆる4管編成で、ティンパニーも出来たら3台ずつを二人で叩くことを指示。合唱団も多く、サブタイトルの通り(マーラーは決して認めなかったが)”千人の交響曲”だ。しかしこの編成を、ポーランド出身の指揮者で20世紀音楽での活動も多いアントニ・ヴィトが的確に指揮。マルチマイクによる収録も奏功して、全員で演奏、歌唱している時も音が塊になることなく聞き分けられる、いい録音になった。




ストラヴィンスキー: バレエ音楽「火の鳥」(オリジナル版)
/「ペトルーシュカ」(1947年版)

ストラビンスキーロバート・クラフト,
フィルハーモニア管弦楽団

 ロバート・クラフトは、長年ストラヴィンスキーのアシスタント的な仕事をしていたが、指揮者としては《春の祭典》の初演指揮でも有名なピエール・モントゥーに師事。このアルバムは1997年から98年にかけて収録。クラフトが70歳台中盤の頃の録音で収録にはロンドンのアビーロードスタジオが使われている。作曲者直系の解釈も興味津々だが、SNのいいスタジオの環境においてマルチマイクで収録したためか音像それぞれが大きく、特有の生々しい臨場感。特にオケの精密なバランスコントロールが求められる《ペトルーシュカ》での、前後左右に楽器が大きく見えてくる様はかなりの快感。指揮者のま後ろにいて聴いているようだ。


ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》
/バーンスタイン:《ウエスト・サイド物語》より
シンフォニック・ダンス

アンドレア・バッティストーニ東京フィルハーモニー交響楽団

 2017年発表の録音だが、特に《ハルサイ》は現代の演奏としてはテンポが遅めなのが特徴。マイクも楽器にかなり近くセッティングしてあり、ルーペで拡大したように細部が見えてくる。ドゥダメルやクルレンツィスのこの曲の録音のように速いテンポによる爽快感よりも、ひとつひとつのフレーズの成り立ちや音の重なりを味わいつつ、それがこの曲のプリミティブな面を強調して聴かせてくれる。特に低弦や打楽器のアーシーさが凄い。録音によってのみ成立する土俗性。《ウエスト・サイド・ストーリー》ではその音の”厚さ”がラテンの”熱さ”につながっている。




ホルスト:組曲「惑星」Op.32
ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
クレア・ラターデイヴィッド・ロイド=ジョーンズ

 作曲されたのは1914年から16年にかけて。つまり第一次世界大戦の前半と重なる。そして実は描かれているのは直接的な「惑星」ではなく、たとえば「戦いをもたらす者=火星=軍神マルス」というように占星術上のイメージでの星たちを描いている。この演奏はその占星術のイメージが色濃く出ているし、実際の録音としてもダイナミックレンジを広くとって、ffでの叩きつけるような感じからppの響きまでリアルに捉えられている。カップリングの、ソプラノ独唱付きの「神秘のトランペッター」 も聞き物だ。収録は2001年2月、グラスゴーのシティ・ホールで。指揮者のロイド・ジョーンズ、67歳の時の仕事だ。


ラヴェル: 管弦楽作品集 第2集
フランス国立リヨン管弦楽団レナード・スラットキン

 ラヴェルが生まれた町はフランスの南西部、バスク地方のシブールだが、スペインとの国境から10kmくらいも離れていない位置にある町だ。母はバスク人、父はスイス系。つまり、フランス、スペイン、スイスという複数の文化がラヴェルの音楽に内在するように感じるが、ユダヤ系アメリカ人の指揮者であるスラットキンが振ると、フランス的な瀟洒さよりもより濃い色彩感で、エモーショナルな匂いのするラヴェルを聴ける。また「夜のガスパール」はラヴェル自身はピアノバージョンしか作曲しておらず、マリユス・コンスタンによる管弦楽版を収録。マリユスはパリ音楽院でメシアンやブーランジェ、オネゲルに師事した作曲家で、1990年に編曲されたこのオケ版が面白い。これも聴き物だ。




ショスタコーヴィチ: ピアノ協奏曲第1番/第2番
ボリス・ギルトブルグリーズ・オーウェンス,
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団,
ヴァシリー・ペトレンコ

 1番は『ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲 ハ短調』というのが正式名称で、編成も小さく、演奏時間も20分程度。自作や他人の曲からのフレーズの引用が織り込まれ、速いテンポの部分のアンサンブルも楽しい。2番の協奏曲は息子のピアノの練習用として書かれているが何かショスタコの素顔というか、素直さを感じる曲想。そこに弦楽四重奏曲をピアノソロに編曲したものを入れてある意欲的なプログラム。マルチマイクによる収録で、主役であるピアノが良く録れてるのは当然だが、弦楽合奏やオケもリアルな音像感がある。


バルトーク: 管弦楽のための協奏曲&弦楽器、
打楽器とチェレスタのための音楽

ボルティモア交響楽団マリン・オールソップ

 “オケコン”はバルトークがアメリカに渡って書き上げた曲。オケの各楽器をコンチェルトにおけるソロ楽器のように扱ったり、室内楽的アンサンブルやシンフォニックな部分もあるなど、バルトークのオーケストレーションの集大成的な作品でもある。”弦チェレ”も精緻な書式の中に立体的な音楽が立ち上がってくる。オールソップが2007年にこのアメリカのオケの音楽監督に就任した後の2009年と10年に収録。ワンポイント・ステレオマイクを基本とした録音で、オーケストラの奥行きがよく出て来るのが楽しい。各楽器の定位も明確なので、オーケストラに近い席で聴いているような気持ちにさせられる。




武満徹: 鳥は星形の庭に降りる/3つの映画音楽/精霊の庭/ソリチュード・ソノール/他[日本作曲家選輯]
武満徹ボーンマス交響楽団マリンオールソップ

 武満徹の作品を21世紀も20年以上たったいま聴くと、日本の近現代の”クラシック音楽"を代表する作曲家だとあらためて感じる。1930年生まれで96年に没しているが、西洋音楽を咀嚼して音楽を作ったのではなく、オリジンがやはり決定的に違うのを感じる。それは山田耕筰でも黛敏郎とも異質のものじゃなかろうか。そのオリジンを感じたのか、マンハッタン出身の指揮者とアメリカのオーケストラが取り上げたのかもしれない。アメリカの文化では、オリジナリティがあるものを良しとするからだ。このアルバムを先入観なしにフラットに聴いてもらえれば、その響きの美しさや音楽の喚起するイメージの深さ、繊細さに虜になるはず。演奏も流麗なもので、響きのテクスチャーを見事に構築している。


藤倉大:箏協奏曲
LEO鈴木優人読売日本交響楽団

 藤倉大は1977年大阪生まれ。ロンドンを拠点に国際的に活躍する作曲家だ。その藤倉に箏協奏曲を委嘱したのが1998年横浜生まれの箏奏者、LEO(今野玲央)。この録音は2021年4月30日にサントリーホールで無観客ながら世界初演されたもので、26分弱の演奏時間。箏という楽器の表現能力の高さが存分に発揮され、オーケストラとのシンフォニックなサウンドも美しい。クラシックというジャンルの時代の先端でこうした音楽が生まれているのがうれしい。こうしたジャンルにも”歌は世に連れ”といったことが当てはまり、70年代までのストイックで無調を強調とした音楽とはまた違ったカラフルでヴィヴィッドなサウンドだ。他に藤倉による箏の独奏曲「Ryu」「Tsuki」「Shinza」の3曲も収録されている。この機会に是非接してもらいたい音楽だ。



 

鈴木裕(すずきゆたか)
オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター
1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。大学時代はオーケストラでヴァイオリンを弾き、ジュネス・ミュージカルにて朝比奈隆、尾高忠明、小林健一郎といった本物の指揮者たちから薫陶を受ける。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。オートバイのロードレースの全日本選手権に1987年~1992年参戦。
音楽之友社、音元出版、ステレオサウンド社などのオーディオ雑誌、ウェブ媒体にて執筆。音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ、音元出版銘機賞、『オートサウンドウェブ』等の選考委員。ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテストや、ハイエンド・カーオーディオ・コンテストの審査員。
衛生放送ミュージックバード『鈴木裕のオーディオって音楽だ!』パーソナリティ(2012年より。引き続き放送中)
音楽/オーディオ以外の趣味は、散歩、野良猫との交流、自転車のロードバイク。
マイカーはMGB-GT(1970年)。




高橋敦がセレクトする「アニメ」必聴盤!

 

「年末年始プライスオフ企画に「アニメ・ゲーム」のジャンルも用意されているとのことで、その分野での「オーディオ評論家セレクト」を任せていただきました。その立場からのセレクトを依頼されたのですからもちろん、音質面で基準をクリアする作品であることは選出の絶対条件となります。
 とはいえオーディオファンであっても、「音がいい!」の一点勝負で説明&おすすめされてその作品を聴きたくなるかと言われると「いやそれは……」って感じでしょうし、こちらの紹介にも熱が入りにくいです。ですから、まずは音質以前の話として純粋に推しつけたい作品をピックアップし、その推しポイントや内容についてから語らせていただき、その後にオーディオ的な視点からのポイントについても説明する、という形にまとめさせていただきました。前半の内容紹介に音楽好きアニメ好きとして琴線に触れるところがあったら、その作品に実際に触れてみていただきつつ、後半で挙げているオーディオ観点からのポイントもチェックしてもらえればと思います。
 また以降各作品の紹介では、収録曲から特に一曲の名前を挙げてあります。気になった作品があればまずはその曲から聴いていただくと、紹介文で触れているポイントはわかりやすいはずです。」(高橋敦)




黒猫と月気球をめぐる冒険堀江由衣

 シンガーとして発展途上かつサウンドプロデュースも比較的シンプルなことが多い初期作品は、声優さんの声の魅力が特にピュアな形で生かされていることが多いと思えます。堀江由衣さんのこちらの2ndアルバムも、近年の作品ほど楽曲やサウンド全体としての存在感は強くはなく、堀江さんの声の存在感の比重が大きい印象。ご自身は「すごく普通」と思っているという、言い換えれば「変な癖がまるでなく高純度」な、堀江さんの声の魅力を堪能するのに絶妙な一作です。
 その声の感触の聴こえ方の違いに注目することで、例えばイヤホン試聴のリファレンスとしては特に活躍してくれそう。また「フェイク・ファー」などの曲はボーカルとベースのバランスがイヤホンの特性によって大きく変わって聴こえやすいので、そこもチェック項目にできるかと思います。


〔CORE〕駒形友梨

 早見沙織さん東山奈央さんという「歌が異様にうまい」お二人を筆頭に音楽分野でも活躍している方々が多い、1991年度組の女性声優さんたち。そして「歌うま1991年度声優」といえば駒形友梨さんも見落とせません。こちらのミニアルバムは全体を通して憂いも感じさせる大人の雰囲気。1990年代ガールズポップのカップリング曲やアルバム曲を想起させるようなウェット感のある曲調もあって、駒形さんの歌の表現力が特にわかりやすい形で発揮されている印象です。
 1曲目「starting in the haze」は、冒頭のブレスから息遣いの細やかな歌い回しに同じく繊細なシンバルワークなど、オーディオ的なポイントも満載な上に、再生時間2分ほどいう短さ。リファレンス曲的にも使いやすいのでは?歌や演奏のダイナミクスの再現性に注目です。




Rhythmic Flavor伊藤美来

 タイアップ曲をアルバムにどう組み込むか?は、個性の強いアニメ作品に完全に寄せたタイアップ楽曲を生み出すアーティストにとって大きな課題。伊藤美来さんのこちらのアルバムは、アルバム中盤を完全に別の雰囲気な別ブロックに切り分けるという潔さでそこを突破しています。そのブロックのためのアルバム新曲がギター主導のロックになっており、伊藤さんの別の表情、魅力を引き出す形になっているのも見事です。
 録音も全体に素直で良好ですが、一曲だけ挙げるなら「孤高の光 Lonely dark」でしょうか。昨今逆に珍しいのでは?というほどにストレートで王道、アニメオープニングらしい勢い、ドライブ感のある曲。それを良好な音質で楽しめるのって嬉しくないですか?


Empathy上田麗奈

 デビュー作であったミニアルバムに続く2ndとも捉えられる1stアルバム。ミニアルバムは上田さんのパブリックイメージのまま本当に内省的でしたが、こちらでは外に向けての広がりを感じさせる曲も増えています。とはいえ上田さんの声や歌は単純に開放的な雰囲気は与えてくれませんが。上田さんの作品では録音後の音程補正なしが基本とのこと。たしかに、中島美嘉さんの歌と同じく、それをなくしたら意味が変わってしまうような揺らぎやずれ、不可分な不安定さがあります。演劇的な表現も強く、湿った激情や静かな狂気を感じさせる歌い手です。
 その歌の魅力が特に顕著な「いつか、また。」はオーディオとの相性も良さそう。音数を最小限に絞って最大限の効果を生み出しているギターやドラムの音色や演奏ニュアンスに注目です。




Colon佐々木恵梨

 「ゆるキャン」ED曲でおなじみの佐々木恵梨さん!……ですがこのアルバムを聴けば、ゆるキャン曲は佐々木さんの一面に過ぎないことを思い知らされることでしょう。ゆるキャン曲の印象を「アコースティックで素朴」とすれば、アルバム曲の多くは「エレクトリックでプログレ」や「ニューウェイブでジャジィ」など、そういう雰囲気。そこに挟み込まれるとゆるキャン曲にも、往年のプログレアルバムに挟み込まれるアコースティック小曲のような趣きが生まれてくるから不思議です。
 オーディオ視点から聴くと、これはスピーカーで聴いた方が面白い!と思わせてくれるような空間表現もポイントになりそう。例えば「Part of Me」のスネアドラム的な音色は、スピーカーで聴くことで郷愁を感じさせる遠鳴りが生きてきます。


decade wind結城アイラ

 作詞作曲家としての活躍も著しい結城アイラさんですが、こちらはシンガーとしてのデビュー10周年を記念して2017年に発売されたベストアルバムです。何はともあれアニメ「ACCA13区監察課」EDテーマ曲「ペールムーンがゆれてる」は、楽曲、歌唱、録音と全ての面からぜひ聴いて!とおすすめしたい一曲。まるで昔から耳に入ってきていたスタンダード曲のように、初めて聴いたときから心になじむ楽曲です。
 また本作はFLAC 96kHz /24bitのほか、WAV 96kHz/32bitでの配信もされており、そちらにはボーナストラックとして「うた」の32bit/384kHz版まで含まれます。お手持ちの再生システムがそれに対応しているなら、オーディオマニアとして挑戦してみるのはいかがでしょう?




GUNDAM SONG COVERS
森口博子

 話題となった作品ですのでご存知の方も多いでしょう。森口博子さんによる、自身の楽曲も含めてのガンダムシリーズ楽曲のカバーアルバムです。凄腕敏腕ミュージシャンとのセッションによる同時レコーディングでの収録も多数。録音もその緊張感を見事に捉えた生々しいものとなっています。
 すべてが素晴らしいですが強いて一曲を挙げるなら、「フリージア / with 塩谷哲」でしょうか。歌とピアノのみによる演奏ですが、森口さんの歌も塩谷のさんのピアノも表現の大きさは一騎当千。素晴らしいスケール感です。それをさらに広げる、良質な響きの豊かさも聴きどころ。MVの風景はキングレコード関口台スタジオに見えますが、レコーディングも同じスタジオ、もしくはそれと同様に高さや広さのあるスタジオで行われたものと思います。


Letters and Doll ~Looking back on the memories of Violet Evergarden~
石川由依 (ヴァイオレット・エヴァーガーデン)

 名作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。その各エピソードからインスピレーションを受けて制作された楽曲をヴァイオレット役を演じた石川由依さんが歌うという、新しい形での表現が試みられた作品です。バックトラックはシンプルにまとめられており、存在感はあえて出してきません。おかげで石川さんの声、歌の魅力に耳と心が自然と集中。堀江由衣さんと同じく個性ではなく純度が印象的な石川さんの声の魅力をたっぷり味わえます。
 1曲目「Colored Memories」の第一声から、ミュージカルの経験も豊かなことが生きているのでしょうか、マイクに向かってではなく客席に向かって歌っているかのような歌い方に感じられるのもポイントです。スピーカー再生だとその雰囲気がさらにわかりやすいかもしれません。




TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』
エンディング・テーマ「ちいさな冒険者」
アクア(CV:雨宮天)めぐみん(CV:高橋李依),
ダクネス(CV:茅野愛衣)

 アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」ED曲を収録のシングル作品。アニメソングにハンバート ハンバートの佐藤良成さんを起用する時点でその発想に脱帽ですが、それがましてやああいう雰囲気の「このすば!」だったわけですから、延々と帽子を脱ぎ続けたいほど脱帽です。アコースティック楽器のサウンドを素直に素朴に収めた録音という意味では、近年のアニメソングでこれに勝るものはそうそうないのではないでしょうか。だってハンバート ハンバート相当の音なわけですから。
 そうなるとやはり、良質なスピーカーシステムで聴いてみてほしくなります。カントリー系の素朴な楽器のその素朴さは本当にそのまま、そして空気感まで見事に捉えた録音が、例えば「焚き火を囲んで歌い奏でている」とか、そのような光景を心に浮かべさせてくれることでしょう。

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高橋敦(たかはしあつし)
ポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に活動するライター。音元出版主催アワード「VGP」においてはライフスタイル分科会審査員を務める。そのほか、アーティストインタビュー、ギター関連製品や家電などの分野も少々。




西野正和がセレクトする「J-POP/邦楽」必聴盤!

 

「決められた作品群の中からアルバムをセレクトしていくのは、選者の個性を出すことができ面白い作業でした。どんな基準で選出していこうか考え、私は一つの大きな基準として “オーディオ的なリスニングに耐えうる音質” を掲げてみました。実際に細かな音質確認の試聴を進めていくと、なかなかの難題であったことに少し後悔。邦楽というジャンルは音圧ガッツリ系な作品が多く、繊細なオーディオ機器で聴くと耳が痛くなるサウンドに仕上がっていることが多いためです。とはいえ意外な良作との出会いもあり、個人的には聴いていて宝探しのようなワクワクする選出作業となったのでした。」(西野正和)




GUNDAM SONG COVERS (Digital Edition)
森口博子

 現代デジタル録音作品でありながら、広い音像、程よい音圧、等身大に浮かび上がるボーカルが再現できます。“確実に売る” というレコード会社の高い本気度が、作品の音質にまで行き届いて感じられました。M1 「水の星へ愛をこめて」 の森口さんの歌唱の素晴らしさはもちろん、名手・寺井尚子さんのバイオリンも圧巻!


The Very Best of MAYO SHONO
庄野真代

 私の好みよりも音圧は高めで、現代風なマスタリングだと感じました。最近の楽曲と並べて聴いても、音量が小さいとは思わないはず。それでもアナログ録音時代の良さが光り、耳が痛いとは感じない音質です。大ヒット曲のM3 「飛んでイスタンブール」 と M1 「モンテカルロで乾杯」 が素晴らしいのはもちろん、私のイチオシは筒美京平作品の名曲で、マイナー調とメジャー調がいったりきたりするのが快感な M4 「マスカレード」。豪華なストリングスを含め、名曲の輝きをハイレゾで楽しんでください。




The Songs中村雅俊

 昭和ドラマのエンディングで流れていた 「海を抱きしめて」 は、ときどき聴き直したくなるメロディーと歌詞です。それが筒美京平先生の作曲だったと大人になって知ったとき、それはそれは納得したものです。ハイレゾで 「海を抱きしめて」 が聴ける日がくるなんて! 音像が広く、アナログ録音の良さを残す好感触なマスタリング。音圧は分厚いものの耳に痛くはありません。


テレサ・テン ベスト・ヒット
テレサ・テン

 良い意味で、レコード時代から音質を全く触っていないようなハイレゾ化サウンド。ですので、音圧は低めで敏感な高額オーディオで鳴らすのに丁度良い音の手触りでしょう。上手く再現できれば、レコードを超える音質も夢ではないかも? 名曲のガチンコ音質勝負ということなら、M15 「つぐない」 よりも M16 「愛人」 のほうが高音質に私は感じました。皆様のハイレゾ再生環境での勝負の行方はいかに?




 

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー 株式会社レクスト代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』をプロデュース。




山本浩司がセレクトする「洋楽ロック/ポップス」必聴盤!

 

「ここでは渡されたロック/ ポップス系のリストの中から音の良さでお勧めできるハイレゾファイルを10タイトル選んでみた。録音時期は1970年代から2020年代までと、ほぼ半世紀に渡る中から選出したが、まずは良質なオーディオ機器で聴いてその魅力が際立つ作品という観点で選んでみた。
 音の良いアルバムとは? と問われれば「そのアーティストの魅力がきちんと伝わってくる作品」と答えるが、具体的に言えば、周波数レンジ、ダイナミックレンジがきちんと維持されていて、優れたスピーカーで聴けば眼前に生々しいサウンドステージが出現し、そのミュージシャンが自分のためだけに演奏してくれているというイリュージョンを惹起してくれる作品ということになる。」(山本浩司)




Music From Big PinkThe Band

 1968年作品。元祖アメリカーナとして多くの音楽ファンから以下なお畏敬の眼差しを向けられるザ・バンドのデビュー作。このハイレゾファイルは50周年を記念してボブ・クリアマウンテンが新たにリミックス& リマスターした2018年版。見事なワイドレンジ化とハイダイナミックレンジ化が果たされ、聴き応えが増した。3人のヴォーカリストの魅力が際立つマスタリングが見事。


At Fillmore East
The Allman Brothers Band

 1971年録音。ロックの名作ライヴとして名高いアルバム。最大の聴きどころはツイン・ギターとツイン・ドラムの絡みで、ハイレゾ再生することでそのディティールを顕微鏡でのぞいたかのような高解像度で楽しむことができる。二人のギタリストのモード奏法が炸裂する「エリザベス・リードの追憶」のスリルをぜひハイレゾファイルで。




What's Going OnMarvin Gaye

 1971年作品。「ローリングストーン誌が選ぶオール・タイム・ベスト・アルバム500」で1位にランクされた泣く子も黙る名盤中の名盤。オーディオファイルの耳で聴くとモータウンには物足りない作品が多いが、このアルバムは例外で、驚くほどスムースでクリアーなサウンドが聴ける。クリプスな響きのコンガにジェームズ・ジェマーソンのイマジネイティヴなベースが炸裂するタイトル曲は何度聴いても聴き飽きない。


Phoebe SnowPhoebe Snow

 1973年録音。フィル・ラモーンが共同プロデュースと録音・ミックスを手がけたフィービー・スノウの大ヒット・デビュー・アルバム。ふわふわと漂うスノウの不思議なヴォーカルと独得の響きのアクースティックギターをフィーチャーしつつ当時ならではのジャズ・テイストが横溢した好アルバム。録音はニューヨークのA&Rスタジオ。響きが美しく、眼前で演奏されるイメージも濃厚だ。




SlowhandEric Clapton

 1977年録音。オーガニックで土くさいスワンプ・ロックを思わせるサウンドを録ったのは、名手グリン・ジョンズ。クラプトンの弾くストラトキャスターの伸びやかでクリーンなトーンと人懐こいヴォーカルが広大なサウンドステージにくっきりと屹立する名録音。クラプトンのヴォーカルを左右から挟み込む女声のダブルトラック等聴きどころは多い。


Elton JohnElton John

 1970年録音。ロンドンのトライデント・スタジオで録られたエルトン・ジョンのセカンド・アルバム。冒頭の"Your song”はじめ初期エルトンならではの繊細な感性によって生み出された珠玉の名曲が満載だ。エルトンの弾くベヒシュタインのヌケのよい音色とヴォーカルの生々しさ、ポール・バックマスターのアレンジによるストリングスの荘厳な響きをハイレゾファイルで上手に引き出したい。




Just A Little Lovin'Shelby Lynne

 2008年作品。録音とミックスを手がけたのが2021年春に91才で亡くなったアル・シュミット、プロデューサーはフィル・ラモーン。このコンビの仕事の中でもベストのひとつと思える超高音質作品で、ハイレゾで聴くシェルビー・リンのヴォーカルはとりわけ味わい深い。すべての音楽ファン、オーディオファイルに聴いてほしい現代ポップスの金字塔とでも言うべきアルバム。


Carpenters With The Royal Philharmonic OrchestraThe CarpentersRoyal Philharmonic Orchestra

 2018年作品。1970年代に録られたカレンのヴォーカルとオリジナル・トラックに、リチャード自らが編曲と指揮を担当し、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のオーケストラ・サウンドを融合させている。現代のデジタル・イクイップメントを駆使して仕上げられたそのサウンドに不自然さはなく、オリジナル以上にゴージャスな響きが楽しめる。




evermoreTaylor Swift

 2020年録音。前作『FOLKLORE』同様、チェロやフルート、フレンチホルンなどのアクースティック楽器をフィーチャーした編成で、アメリカン・ルーツミュージックの魅力を現代的にアップデートした見事なサウンドを聴かせる。テイラーの声の魅力がダイレクトに伝わってくる録音が出色で、上質なコットンを思わせる肌合いのよい伸びやかでスムースなサウンドをハイレゾで堪能したい。


Happier Than EverBillie Eilish

 2021年録音のセカンド・アルバム。密室感が充満したアヴァンギャルド・ポップ、そのサウンドスケープはじつに刺激的で、つぶやくように歌うビリーの実像を陽炎のように描写する。デビュー作同様に驚かされるのは、低く伸びたマッシヴな低音。コレをヘッドフォンだけで聴くのはもったいない。ぜひハイレゾファイルを良質なスピーカーで体験してほしい。



 

山本浩司(やまもとこうじ)
1958年生まれ。ステレオサウンド社の月刊HiVi、季刊ホームシアターの編集長を務めたのち、2006年にフリーランスに。HiVi誌、ステレオサウンド誌を中心に評論活動を行っている。
リスニングルームでは4インチ・コンプレッションドライバー、15インチ・ウーファー搭載機のJBL K2S9900をオクターブ(独)のJubilee PrepとMRE220のペアで鳴らしている。
ネットワーク再生は、トランスポートのルーミンU1miniのUSB出力をソウルノートのSACD/CDプレーヤーS3Ver.2につないで楽しんでいるが、つい最近、ソウルノートのマスタークロックジェネレーターX3を導入、その絶大な効果にシビれ、音楽三昧の日々を満喫中。

 

 

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