マイ・ベスト・ハイレゾ2021発表!

2021/12/25

年末恒例企画”マイ・ベスト・ハイレゾ 2021”発表!
音楽/オーディオ業界の方々に、今年一番聴いた、特に良かったハイレゾ作品を3作品ずつ選んでいただきました。
作品選びの参考にぜひご覧ください!

※敬称略、五十音順にて掲載 
※本企画には一部2021年発売でない作品を含みます 


【インデックス】







市川 誠(CDジャーナル編集部)

『Brahms: Piano Concertos』
András Schiff, Orchestra Of The Age Of Enlightenment

 担当させていただいた弊誌ウェブの「ハイレゾハイカラ生活」で、牧野さん、國枝さん、長谷川さんが2021年に紹介した作品から1作ずつ挙げます。作品についての詳細は弊誌ウェブでのお三方の紹介をどうぞ。まず、ECMから発売されたこのアルバムは、とくにハイレゾで聴きたい一枚。音のダイナミズム、ニュアンスをすばらしい解像度で再現する天衣無縫の夢のような音楽。クラシック音楽の録音ならではの楽しさをたっぷり味わわせてくれます。


『THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY:イラクの音楽』
V.A.


 キングレコードの「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」シリーズ150タイトルがe-onkyoのラインナップに入ったのは2021年の大きな出来事でした。そのなかのひとつ、『イラクの音楽』は1977年と1981年に録音された音源を収録する、イラクの音楽を知るのに避けては通れない作品です。とくに現地でフィールドレコーディングされた「スーフィのジクル(イスラム神秘主義の儀式)」は臨場感たっぷり。スピーカーの前で、固唾を呑んで聴き込んだ約25分の音の小旅行です。


『Let It Be[Super Deluxe]』
The Beatles



 ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』で、自分のなかにあったビートルズ像が大きく更新された2021年。ドキュメンタリーとあわせて楽しんだのがこの“特盛”アルバムでした。アルバムの『ゲット・バック』をはじめ、これまでブートレグのそれなりの音質でしか聴けなかった貴重音源の高音質にむせかえりつつ、一曲ずつ消化しながら堪能しました。発売から何十年も経って新たな顔を見せてくれる作品は、これからもまだありそう。楽しみです。


市川 誠 (いちかわ まこと)
CDジャーナル編集部
CDジャーナル』ウェブの連載「ハイレゾハイカラ生活」担当編集。牧野良幸さんの「こちらハイレゾ商會」は毎月第2火曜日、國枝志郎さんと長谷川教通さんの「注目タイトル Pick Up」は毎月第4火曜日に更新しています。どちらの連載も2022年で9年目に突入。これからもどうぞ御贔屓に。



印南敦史

『Subaqueous Silence』
Ayumi Tanaka Trio



田中鮎美は、ノルウェー在住のジャズ・ピアニスト。2016 年の『Memento』も印象的だったのですが、その時点で醸成されつつあった豊かなオリジナリティは、老舗ECMから登場した本作によって、いよいよ感性の域に到達したと感じます。なにが衝撃的だったかといえば、全体を貫く“静寂”。極限まで無駄を削ぎ落としたうえで、ぽつりぽつりと必要な音だけを置いていくようなアプローチに、とても共感できるものがあったのです。仕事中に流しておいても邪魔にならないし、もちろんじっくり聴き込むことも可能。だから結果的には、今年いちばん聴いた作品として記憶に残ることになったわけです。

『American Utopia on Broadway (Original Cast Recording)』
David Byrne


話題の『サマー・オブ・ソウル』から、ザ・スミスを題材にした『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』まで、2021年は優秀な音楽映画が目立ちました。そして、そんななかでも群を抜いていたのが、デイヴィッド・バーンによるブロードウェイ・ショーを、スパイク・リーがまとめ上げた『アメリカン・ユートピア』。シンプルな舞台装置の衝撃もさることながら、バーンを含む計12人のメンバーによるマーチングバンド形式の演奏も最高でした。だから、サウンドトラックも、申し分なく楽しめたというわけ。


Let It Be[Super Deluxe]』
The Beatles



僕はいままでリマスターのたぐいにさほど関心がなく、しかもオリジナル・アルバム至上主義者でもあったため、アウトテイクに興味をそそられるようなこともなかったのです。が、このアルバムを耳にして考え方が変わりました。なぜって何十年もさんざん聴き込んできた作品のはずなのに、印象がまったく違うから。リアリティが際立っているし、なんならメンバーがすぐ目の前にいるみたいな感じ。これは驚き。というわけで、とても衝撃的な体験だったのでした。


印南敦史 (いんなみ あつし)
作家、書評家。
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。その後、ほかのウェブサイト「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)など。
・e-onkyo music 連載「印南敦史の名盤はハイレゾで聴く」「印南敦史の「クラシック音楽の穴」



岡田 卓也 (e☆イヤホン) 

『One Last Kiss』
宇多田ヒカル


映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のために書き下ろされた新曲。完結となった映画のテーマソングとしての話題性はもちろん、イヤホンやヘッドホンの試聴に使用される方が非常に多く、まさに今年を代表する一曲。

『一途』
King Gnu


目を見張る躍進を果たした『King Gnu』の最新楽曲がハイレゾでも配信開始となりました。とにかく音数の多い楽曲で、アップテンポのリズムに合わせて、音が押し寄せるような、全部サビみたいな一曲。


「No Time To Die」
ビリー・アイリッシュ/フィニアス


ダニエル・クレイグ最後の『007』のメインテーマに起用された楽曲。ゆったりとしたテンポの進行ですが、諧調の豊かさに聞き入ってしまいました。三曲を通して、話題性の高さとよく聴いた楽曲を選んでしまいましたが、どれも名曲ばかりですので、ぜひハイレゾで聴いてみてください。


岡田 卓也 (おかだ たくや)
イヤホン・ヘッドホン専門店e☆イヤホンを運営する株式会社タイムマシン専務取締役兼株式会社TMネットワーク代表取締役社長。イヤホンやヘッドホンを100機種以上所有し、TBSテレビ「マツコの知らない世界」に3回出演した「イヤホン王子」としても知られる。




工藤寛顕(だいせんせい)

『愛のシュプリーム!【アーティスト盤】』
fhana


TVアニメ「小林さんちのメイドラゴンS」主題歌である本楽曲は、第1期主題歌の名曲「青空のラプソディ」も手掛けたfhánaによる華やかなポップソング。
Towanaさんとkevinさんによるラップを中心に据えた構成も印象的ですが、生演奏によるストリングスとブラスのファンキーな音作りも聴きどころです。明るく軽快な世界観がどこかじんわりと心に染みるような温かさがあり、様々な表情の細かなところまでじっくりと聴き込んでいただきたい1曲です。
アーティスト盤にカップリングされている「閃光のあとに」も、透明感のあるシンセサウンドとカッチリとしたリズム感がマッチした楽曲で、ある意味で「愛のシュプリーム!」と音色としては対照的な魅力を持っているかもしれません。通して再生すると、ついついどちらの楽曲もインスト音源まで聴き込んでしまいます。

『サウダージ - From THE FIRST TAKE』
ポルノグラフィティ


一発録りのパフォーマンスを切り取る「THE FIRST TAKE」についに登場したポルノグラフィティのお2人。
生音のリアリティと緊張感を音源化するこのコンテンツとハイレゾの相性はさぞかし良いだろうな、と思っておりましたが、この楽曲は想像以上でした。岡野さんの全くブレの無い力強いボーカルに込められたスピード感のあるニュアンスの強弱が克明に描かれ、めちゃくちゃ聴き応えのある1曲に仕上がっています。
一発録りでありながらそれを感じさせない安定感も流石で、20年以上歌われてきただけに、ライブなどで数々の名演を生み出してきた名曲ですが、そこに新たな1ページを刻んだことは間違いありません。


Beatbox Only "SPROUT"』
SHOW-GO


世界で活躍するヒューマンビートボクサー・SHOW-GOさんのアルバム。
手数が多くテクニカルかつオリジナリティのある楽曲構成が魅力的で、ダブルボイスなどの独創的でキャッチーなサウンドが組み込まれており、ヒューマンビートボックスを聴き慣れていない人でもその異質さを感じ取っていただけるのではないでしょうか。
何より印象強く感じた点は、頭内定位との相性の良さ! イヤホンやヘッドホンにおける頭内定位は敬遠する人もいますが、本アルバムはぜひ一度イヤホンやヘッドホンでも聴いてみていただきたいです。構成されているすべての音が人間の口から出ている、ということが強く意識できると思います。


工藤寛顕 (くどう ひろあき)
フリーランスのライター/MCとして執筆活動や動画出演を行う傍ら、株式会社Precious tone所属の作詞家としても活動中。学生時代にアイドルゲームの楽曲をより良い音質で聴きたい一心からポータブルオーディオに傾倒し、そのまま好きが高じて入社したオーディオ専門店のPRスタッフを経て独立。ポータブルオーディオを中心としたライティングや、生放送番組のMCなど、経験を活かした幅広いジャンルで活躍する。
Hiroaki Kudo / 工藤寛顕




國枝志郎

『Rupt and Flex (1994 - 96)』
Seefeel




2021年はシューゲイザーが盛り上がった年だった。Seefeelはギターをエレクトロニクスに持ち替えたポスト・マイブラ的電子シューゲイザー・サウンドで90年代に人気を博したユニット。Poleのステファン・ベトケによるリマスターが施された素晴らしいボックスセット『Rupt and Flex』をWarpから2021年春にリリースしたが、ハイレゾはセレクション『Reduct』(たった4曲!)のみしか配信されずがっかりしていたら、それから8ヶ月もたった12月に突然ボックス全45曲がハイレゾ配信!ちょっと早いクリスマスプレゼントだった。

『Pink Moon』
Nick Drake




これは事件だった。たった3枚のオリジナル・アルバムを残して世を去ったシンガー・ソングライターのラスト・アルバムが梅雨の最中に突如ハイレゾ化。曇った空からの贈り物。残る2作も早くハイレゾ化してください。


『THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY:バリ/スアール・アグンのジェゴッグ』
スアール・アグン=サンカルアグン村対プンダム村からのグループ


2021年のハイレゾにおける偉業。キングレコードが1970年代から世界各地の民族音楽を現地もしくは来日時にレコーディング、150タイトルの一大シリーズにまとめ上げた民族音楽集成が5ヶ月に分けてハイレゾ化。この熱意には頭を垂れるしかありません。どれも必聴の貴重な文化遺産。それにしてもこのジェゴクは熱いなんてもんじゃない。


國枝志郎 (くにえだ しろう)
音楽ライター/レコーディング・プロデューサー

・CDジャーナルweb連載「ハイレゾハイカラ生活/注目タイトル Pick Up




齊藤(株式会社アユート)

『WINGS』
大橋彩香


個人的に2021年最も聴いたアルバムです。バラエティに富んだ楽曲構成、綺麗さとともにドス?の効いた芯のある独特の心地よい歌声が魅力的。コロナ禍の中でも前向きな気持ちになれる、そんな清々しいアルバムです。オススメは「ダイスキ。」「like the melody」

『超革命的恋する日常 (24bit/96kHz)』
和氣あず未


ベースラインが気持ちいい楽曲が多く、夜によく聴いていました。可愛らしい歌声が何気にふくよか目な低域とマッチしています。全体的に歪感が少なく、小音量でゆったり聴くのが心地良いです。オススメは「恋煩い」「安曇野小夜曲」


『U』
millennium parade, Belle


音の分離、空間の表現などとても秀逸だと思います。とても面白い楽曲で、サブスクでも聴いていましたが、この曲はハイレゾで是非聴いて欲しい曲です。2021年個人的に一番オーディオ機器の試聴をする際に聴いた曲かもしれません。


齊藤 (さいとう)
株式会社アユート
Astell&KernやULTRASONE、Acoustuneなど多数のオーディオブランドを取り扱う流通・代理店アユートのオーディオ部門責任者。
「アユートの営業S」というアカウントの中の人。ゲームミュージックと特撮が特に好き。




島 健悟(ダイナミックオーディオ5555 4F)

『Another Answer』
井筒香奈江



5月にCDが発売され、10月22日にハイレゾ配信されたニューアルバム。今回もチーム井筒香奈江の魅力がたっぷりです。オリジナルの輝く街の2つのアレンジの聞き比べも楽しめます。個人的にはDSD11.2MHzに惹かれます。コロナ禍での作品でありアーティストの思いが伝わります。

『Billie』
MAYA



MAYAハイレゾ2作品目は新レーベルAMBIVALENCEより発表。彼女なりのビリーホリデーが凝縮した作品です。ハイレゾだから再現できる空気感、細かいニュアンス。そしてMAYAの本気がひしひしと伝わってきます。演奏も一体感がありその相乗効果もお楽しみいただけます。


『パリ』
ヒラリー・ハーン, フランス放送フィルハーモニー管弦楽団, ミッコ・フランク


2019年2月、6月にパリで録音された最新アルバム。音質もさることながらフランス放送フィルハーモニー管弦楽団との一体感を感じる演奏となっております。この生々しさがやはりハイレゾの魅力だと感じさせるアルバムです。個人的に好きなヴァイオリニストです。


島健悟  (しま けんご)
ダイナミックオーディオ5555 4F
データ再生の魅力を伝えるためにオーディオ専門店として色々とチャレンジしております。
ハイレゾにはまだまだ知らない世界が隠されております。
それを引き出すことによりもっとアーティストの真意が解るのではないかと思っております。
是非その魅力をお店でご体験ください。




竹田 敦(吉田苑)

『イキルチカラ』
Nicogi



Fundamental 代表、鈴木哲氏のもう一つの顔である、ギタリストアルバムです。S/N比に拘ったシステム開発を行い続け、自らの楽曲録音のために満足行くマイクアンプが無いため、ご自身で製作したマイクアンプでレコーディングされた楽曲です。既存の録音と比較しても、空気の録音(気配)が良く、録音現場の空気から細かなニュアンスまでが余すこと無く録音されています。空間表現力とS/N比のチェックに最適な1曲です。

『SEIKO』
新妻 聖子



ミュージカル女優、新妻 聖子の魅力が詰まった一枚です。ハイレゾ音源ならではの情報量を生かしたダイナミックレンジの広さからくる、エネルギーに満ちた声の再現性が見事です。ミュージカル曲らしいドラマチックな構成と5オクターブの音域を持つ歌唱が合わさって中域のシステムチェックに欠かせない曲となっております。


『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 (96kHz/24bit)』
反田恭平, アンドレア・バッティストーニ


反田さんのピアノは、知性と感情のバランスのとれた演奏ながら、ロマンティックなラフマニノフ。バッティストーニ氏の指揮も単なる伴奏にとどまることなく、ピアノとオーケストラの素晴らしい競演になっています。また、各楽器の細かい表情まで感じられるような録音も好印象で、演奏、録音ともに優れた名アルバムです。


竹田 敦 (たけだ あつし)
吉田苑株式会社
福岡のオーディオショップ 店長の竹田です。データ再生の可能性を追求して十数年、ようやく結論らしき物が見えてきた気がします。ハイレゾ音源の登場により機材性能の底上げが急速に進み、各メーカーの音作りにまで影響しています。オーディオは新しい世界に突入したと感じております。




竹田響子(サウンドクリエイト)

『Cande y Paulo[Japan Deluxe]』
Cande y Paulo




2017年にYoutubeでいわゆる「バズった」デュオで、女性のCandeがコントラバスを弾きながら歌い、Pauloがキーボード。クラシック音楽の名門DECCAからのデビュー。
エキゾチックな見た目通り、アルゼンチン出身とのことで、Jazzのスタンダードの「Summertime」や「I Fall in Love easily 」の他、ロックのカバーも収録されています。日本盤では何と梶芽衣子さんとのデュエットで「修羅の花」を日本語で収録。日本とは異なる空の色や、湿度感、そういう雰囲気を纏っている1枚です。ハイレゾは96/24。声のなめらかさが増してCandeさんの存在に奥行きが出ます。
ちなみにCandeさん、youtubeで見ましたが、立ち姿が素敵です。

『Recomposed By Max Richter: Vivaldi, The Four Seasons』
Max Richter, Daniel Hope, Konzerthaus Kammerorchester Berlin, André de Ridder


既にご存知の方は多くいらっしゃると思われる1枚をあえて今年のベスト3に。コロナ禍において、Max Richterによって再構築された冒頭の「春」は、とりわけ春の喜びを引き立てます。オーケストラの音合わせのようなSpring0から始まる四季は、冬を越えた木の芽吹きに似て、体を伸ばし、世の中が動いていく、音楽が始まるワクワク感をより一層高めてくれます。現代解釈で聞かせてくれるヴィヴァルディの四季は、今の時代の空気によく合っているとも思います。「古き良き」も良いですが、「今を生きる」クラシック音楽に今後も期待!MQAもありますが、私は44.1/24のハイレゾで。細やかな表現が音楽をより鮮やかなものにしてくれます。


『「竜とそばかすの姫」オリジナル・サウンドトラック』
Various Artists



今夏、ロードショーで大泣きした「竜とそばかすの姫」のサウンドトラック。映画を観てすぐ音楽が聴きたくなりました。良録音ですからこれをハイレゾで見つけた時は嬉しかった。色彩の鮮やかさ、主人公の心の動き、聴いているだけでシーンが蘇ります。


竹田響子 (たけだ きょうこ)
サウンドクリエイト
銀座で海外メーカーのオーディオやヴィンテージスピーカーを扱うオーディオ店の販売員。「女性でオーディオ販売」というのがまだまだ珍しい空気がありますが、一人でも多くの音楽愛好家に、その人に合った音、オーディオをお届けするのが私の仕事。2010年から始めた営業日毎日アップしているブログでは、ご納品例や製品の紹介もしています。ぜひチェックしてみてください!




田中啓文(Stereo Sound ONLINE)

『ブルース・リウ 第18回ショパン・コンクール優勝者ライヴ[Live]』
ブルース・リウ


第18回ショパン国際ピアノコンクールは、日本人2名の上位入賞やYouTubeでの生配信など、様々な点で今後のクラシック界のターニングポイントとなる大会だった。そんな話題満載の本大会で優勝したのは、中国系カナダ人のブルース・リウ(24歳)。第1次から第3次審査まで審査員全員がYES(次の審査に進めるかどうか)をつけたほどの実力の持ち主だ。演奏は一音一音を慈しむように繊細で美しく、それでいてドラマチックで情熱的。彼のショパンは、一般的なショパンの物悲しいイメージとは異なり新しく健康的だ。聴いているとエキサイトしてくる。特に歴史的名演と言われている彼のモーツァルトの《ドン・ジョバンニ》の「お手をどうぞ」による変奏曲は、ぜひともハイレゾのような良い音質で聴いてもらいたい。

『Lean Into It (30th Anniversary Edition)』
Mr. Big


90年代に青春を過ごしたHR/HMファンならば、1度は聞いたことがある名作中の名作Mr.Big「Lean Into It」が、アナログマスターテープからのリマスター版として登場。ネットなどのコメントを見ると「音圧が低い」「滑らかになって刺激が減った」と否定的な意見が多い。プロの仕事を舐めてもらっては困る。それは君のリマスターの認識が間違っているか、安物のイヤホンでちまちま音を聴いているからそう思うのだろう。ロック音楽だよ。大きなスピーカーで大音量で聴いてごらん。でも耳が痛くなったりしないだろ。スーパーグループと言われた4人の声・楽器のアンサンブルがより生き生きと聴こえてくるはず。オーディオファイルも満足する素晴らしいリマスターになった。


『Sing My Pleasure』
ヴィヴィ(Vo.八木海莉)



毎年300本近い作品が作られている日本のアニメ業界。とはいえその多くがラノベや漫画など原作がある作品だ。そんな中でも「Vivy -Fluorite Eye's Song」のような原作を持たない作品の中からも良作が生まれるところに、日本のアニメ業界の底力を感じる。本作品のキーワードが「歌」ということで、放送中からその楽曲が随分話題となった。そんな話題作の主題歌(主人公の歌声)を担当したのが、今年メジャー・デビューしたばかりの八木海莉(19歳)。若干声に幼さが残るが、本作の主人公が人間見習い?のアンドロイドということで自分的にはしっくり来た。スピード感のある楽曲にせつないメロディ、そこに意味深の歌詞が乗ってくる。これを聴くと否が応でも作品の期待が膨らんでくる。2021年の良作。見逃している人は絶対観た方がいいぞ。


田中啓文 (たなか ひろふみ)
Stereo Sound ONLINE(株式会社ステレオサウンド)
オーディオ雑誌編集部のインターネット部門を支える1児のパパ。良く聴く音楽はハードロック/ヘヴィメタル、アニソン、たまにクラシック。エレキギターの音色が好物で、アンプで歪ませたエレキギターの音を、いかにして歪ませないアンプ+スピーカー(イヤホンも)でピュアに聴くかという、矛盾した命題に挑み続けている




筑井真奈(PHILEWEB)

『Piazzolla (96kHz/24bit)』
宮田大


日本を代表するイケメン!チェリスト宮田大さんの最新アルバムは、全曲ピアソラだけに特化した作品。ピアソラといえばアルゼンチンのタンゴを音楽的にさらに洗練させた存在として知られていますが、情熱的で叙情的なその音楽を、本当に「チェロを歌わせるように」表現する宮田さんのテクニックに脱帽です。1曲目の「鮫」から、そのダイナミックな「海の王者」の佇まいに引き込まれてしまいます。Tr.2の「タンガータ」ではピアノとの掛け合いが息もつかせぬ展開を見せ、Tr.8の「スール:愛への帰還」は人間の悲しみを映画的な物語性で語り尽くします。「どこを切り取ってもピアソラなんだけど、それぞれに深い味わいがある」、通しでぜひ聴いてほしいアルバムです。

『Headphone Concert 2021』
藤田恵美


今年2月に開催された「ヘッドフォンコンサート」、参加者がヘッドホンでレコーディングに(コンサートのように)参加するという新しい試みを行った音源がハイレゾでも配信されました。「HEADPHONE CONCERT」と銘打たれているのでヘッドフォンで聴かないといけないのかな?と最初は思っていたのですが、どっこいスピーカーでもかなり楽しめる作品になっているのです。ヘッドホンで聴けば、彼女の透明感のある歌声が身体にじんわりと浸透してきますし、スピーカーではそれぞれの楽器の位置関係が明確に見えてきて、ミュージシャン同士の息のあった掛け合いもまた楽しめます。コンサートであることを忘れるほどの極上の音質です!


『Let It Be[Super Deluxe]』
The Beatles


51年ぶりにリリースされた『Let It Be』のリマスター版になりますが、これを聴くにはぜひDisney+で配信されている『ザ・ビートルズ:Get Back』も見てほしい(6時間もありますが)。メンバーが喧嘩ばかりしていた暗い時期と言われることも多いようですが、スタジオに籠もっての楽曲制作やルーフトップ・コンサートでは、ロックバンドとしての原点も感じさせてくれます。お蔵入りになったというグリン・ジョンズミックスと、最新ミックスもデータ再生ならば聴き比べも簡単! 神格化されすぎてしまったバンドですが、やっぱり根底には「ロックンロールを楽しもうぜ!」っていう若い衝動があったのだということを改めて感じさせてくれます。


筑井真奈 (ちくい まな)
音元出版
オーディオ&ビジュアル専門サイト「PHILEWEB」の中でも、特にクオリティ軸を中心にオーディオ製品の魅力を紹介するPHILEWEB AUDIOの副編集長を担当。オーディオのイベントも少しずつ開催できるようになってきてホッとしています。動画でのオーディオ紹介もとても楽しいですが、やっぱりリアルで触れ合えることの大切さも改めて感じた年でした。




西野正和 

『モダン・ジュズ』
PONTA BOX



村上“ポンタ”秀一というドラマーと同じ時代を生きることができ感謝。あのドラムを生演奏で体験できたのは、今になって考えると夢のようです。ポンタ氏のドラムを最も鮮やかに記録できていると感じるハイレゾがコレ。巨匠エンジニア高田英男氏のアナログ2CHダイレクト・レコーディングだから成し得た、限界まで生々しいサウンドが味わえるのはハイレゾだからこそ。

『ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット[Live]』
ノラ・ジョーンズ


ファースト・アルバムのノラ・ジョーンズが帰ってきた! そんな印象すらあるベスト盤的なライブ・アルバム。ライブ会場が見えるような立体的音像は圧巻。この分厚いミッドローはハイレゾ音源の賜物であり、CD規格では聴くことができなかったと思います。


『JIMSAKU BEYOND』
JIMSAKU



ドラマー神保彰氏とベーシスト櫻井哲夫氏の夢のようなユニットが、また新作で、しかもハイレゾで聴けるなんて! このご時世の影響でJIMSAKUをライブで見ることができなかったのは残念ですが、ニューヨークでミックス&マスタリングされたハイレゾ版 『JIMSAKU BEYOND』 があれば、もうそれだけで赤飯ものです。


西野正和 (にしの まさかず)
株式会社レクスト
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー 株式会社レクスト代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』をプロデュース。




長谷川教通

『Silver Lining Suite』
Hiromi





ジャズピアノと弦楽四重奏とのコラボ。ピアノの鍵盤をまるで打楽器のように弾きまくる上原ひろみの感性と新日本フィルの西江辰郎のヴァイオリンが化学反応を起こして、野心的&斬新な音の世界を創り出す。生々しくも臨場感溢れる録音が、その勢いを増幅する。

『Neujahrskonzert 2021 / New Year's Concert 2021 / Concert du Nouvel An 2021』
RICCARDO MUTI, Wiener Philharmoniker, Riccardo Muti & Wiener Philharmoniker


 2021年のニューイヤー。パンデミックの最中コンサートは世界中に放映されたが、会場に聴衆はいなかったが、ムーティ指揮ウィーン・フィルの演奏はすばらしかった。そして録音も最高だった。特別のコンサートとして音楽ファンの記憶に刻み込まれるだろう。


『Berlioz: Requiem, Op. 5』
Concertgebouworkest, Antonio Pappano, Chorus of the Accademia Nazionale di Santa Cecilia, Hector Berlioz, Javier Camarena


コンセルトヘボウの空間を揺るがす壮大な音響。ティンパニーの連打が鳴りわたり、オケの全合奏にコーラスが加わる。スピーカーから飛び出す圧倒的な音圧感と弱音の美しさ。このダイナミックレンジをとらえきった録音……これこそハイレゾならではの凄さだ。


長谷川教通(はせがわ のりみち)
クラシック音楽評論&オーディオ研究家

・CDジャーナルweb連載「ハイレゾハイカラ生活/注目タイトル Pick Up





原典子

『Let the Soil Play Its Simple Part』
Caroline Shaw, Sō Percussion, Ben Tousley, Camila Cossio, Shervin Lainez


キャロライン・ショウは1982年生まれ、ニューヨークを拠点に活動する注目の作曲家。この最新作はブルックリンの気鋭パーカッション・カルテット、ソー・パーカッションとの共作だが、ショウ自身がヴォーカルとして参加しているのが大きなポイント。聖書からジェイムズ・ジョイス、アメリカン・ルーツ曲、ABBAまで、自由に広がるイメージネーションをパーカッションの多彩なサウンドに乗せて展開する摩訶不思議世界。「クラシック」にカテゴライズされているけれど、インディ・ロックとかを追いかけている人は絶対にチェックしておいた方がいいアルバム。

『Of All Joys』
Attacca Quartet



1枚目に挙げたキャロライン・ショウのアルバム『オレンジ』で第62回グラミー賞を受賞したアタッカ四重奏団の最新作。アルヴォ・ペルトの《スンマ》が冒頭に、《フラストレス》が最後に置かれ、ジョン・ダウランド、オルランド・ギボンズ、グレゴリオ・アレグリなどルネサンス作曲家の作品が並ぶプログラムの中ほどに、フィリップ・グラスの弦楽四重奏曲第3番《ミシマ》が。私好みすぎる選曲! ソニークラシカルへ移籍し、前作ではダンスビート炸裂の配信アルバム『REAL LIFE』もリリースしており、ますます活動の幅を広げているアタッカ四重奏団。未来のクロノス・カルテットなるか?!


『Reflections』
Víkingur Ólafsson



今、いちばん新譜リリースが楽しみなピアニスト。2020年にリリースした『ドビュッシー - ラモー』のあとに、リワークとして発表されたのが、この『リフレクションズ』。 あたたかみのあるくぐもったアップライト・ピアノの響きで幕を開けるが、これはコロナ禍におけるSTAY HOMEという状況のドキュメントであり、ポスト・クラシカル勢のアルバムで近年よく聴く手法でもある。ハニャ・ラニ、ヘルギ・ヨンソン、ヒューガー、クラーク、バルモレイなどジャンルを横断した多彩なゲストを迎えながら、後半ではオラフソンの演奏するドビュッシーの世界にぐいぐい引き込まれていく。


原典子 (はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。
2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。
・e-onkyo music 連載「音楽ライター原典子の“だけじゃない”クラシック



牧野良幸

『Brahms: Piano Concertos』
András Schiff, Orchestra Of The Age Of Enlightenment

「e-onkyo musicではじめるハイカラハイレゾ生活/こちらハイレゾ商會」の第94回として今年の8月に取り上げたが、その時に今年の「マイベストハイレゾ」に入れることも早々と決めていたタイトル。それほどに演奏が素晴らしかった。これをCDではなくハイレゾで聴ける幸せ。自分の中では「ハイレゾ時代の名盤」にしている。

『POP IN CITY ~for covers only~』
DEEN


これも「こちらハイレゾ商會」に取り上げたが(第88回、2021年2月)、エッセイを書き終えた後、プライベートでもよく聴いていたハイレゾ。原曲がどれもいいしDEENのカヴァーもオリジナルと同じくらいいい。日本のシティーポップの良さをあらためて噛み締めた。何度も聴きたくなるアルバムで僕の中ではコストパフォーマンスの高いハイレゾNo.1。


『All Things Must Pass[50th Anniversary / Super Deluxe]』
George Harrison

『オール・シングス・マスト・パス』のリミックスもハイレゾで聴いて感銘を受けた。今後オリジナルと同じくらい聴くであろうことは確実。新ミックスの仕上がりと音質の良さが一体となって新たなスタンダードの誕生かもしれない。3タイトルしか上げられないのではずしたが、ビートルズの『レット・イット・ビー スペシャル・エディション』も同様だった。


牧野良幸(まきのよしゆき)
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家として活動するかたわら、音楽や映画に関するイラストエッセイも執筆中。単行本最新刊として『オーディオ小僧のアナログ放浪記』(株式会社シーディージャーナル)を2022年2月8日に出版予定。
・ホームページ「マッキーjp」/ Twitter
・CDジャーナルweb連載「ハイレゾハイカラ生活/こちらハイレゾ商會




山崎 健太郎(AV Watch)

「Let Somebody Go」
Coldplay X Selena Gomez


イギリスのロックバンド、コールドプレイ9枚目のオリジナルアルバムとして2021年10月に発売された「Music Of The Spheres」。中でもお気に入りは、歌手・女優とマルチに活躍するセレーナ・ゴメスがデュエットした「Let Somebody Go」だ。
ゆったりと音楽に包み込まれるような実に気持ちのいい曲だが、中低域が音圧豊かに再生できていないと、この気持ちよさが味わえない。ヘッドフォンやスピーカー自体の低音の再生能力、それをドライブするアンプの能力をチェックする時に使える。
1曲の中に、情感豊かな男性ボーカルと、まったり広がる空間の中で清涼感のあるシャープな女性ボーカル、2種類の声が含まれているのもポイント。声の質感の違いを上手に描きわけられるかも、再生機器の能力が問われるところだ。

Fourplay』
Fourplay


フォープレイは、ピアノのボブ・ジェームス、ベース兼ボーカルのネイザン・イースト、ギターのチャック・ローブ、ドラムのハービー・メイソン 4人によるスムーズジャズ、フュージョングループ。
1991年のアルバム「フォープレイ」に収録されている、その名も「Foreplay」が必聴。ムーディーなフュージョンで、聴いていて癒やされる一曲なのだが、この曲は再生機器によってかなり印象が変わる。
具体的には、低音が出ないイヤフォンやスピーカーだと“スッキリとした心地良さ”を感じるだけなのだが、低音が出せるヘッドフォンやスピーカーで聴くと、ベースの「グォン」という深さと、肉厚な中低域がパワフルに押し寄せてくる“肉汁たっぷり”な、迫力のある曲に変化する。聴いていて“溢れる低音に身をまかせたくなれば”、その機器には確かな実力がある。

『One Last Kiss』
宇多田ヒカル


言わずとしれた人気映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のために、宇多田ヒカルが書き下ろした楽曲。多くの人の耳に残っている楽曲でもあるため、レビュー記事の試聴曲としても使いやすい。
音楽の構成として、短いフレーズが何度も繰り替えされるのも使いやすい理由だ。例えば、イヤフォンケーブルによる音の違いや、旧機種と新機種の聴き比べなどをする時に、短時間に同じフレーズで比較できる利点がある。
ささやくような宇多田ヒカルの高音域は、かすれそうで、かすれない絶妙なラインだが、高域の描写がキツイ製品や、再生時の情報量が少ない機器では、この神秘的な高音が、荒く聴こえてしまう。神秘的かつ凛とした楽曲の雰囲気を正確に再生できるか? オーディオ機器にとっては手強い相手でもある。


山崎 健太郎(やまざきけんたろう)
好きな音楽や映画をより身近で便利に、時には最高のクオリティで! そんなオーディオ・ビジュアル趣味の楽しさを日々お伝えする総合情報サイト AV Watch編集長。最近では映像・音楽配信や映画作品、映画館情報にも力を入れています。アニメ系記事も多いのは編集長の趣味です。
AV Watch




山本 昇

Let It Be[Super Deluxe]』
The Beatles


『サージェント・ペパーズ〜』から始まった半世紀ぶりのニューミックス・シリーズもいよいよ大トリ。ついに最後のオリジナルアルバム『レット・イット・ビー』もジャイルズ・マーティンの手で甦ることに。タイトル曲や「ゲット・バック」など人気曲も多いアルバムだが、よく知られるように複雑な制作過程を経て出来上がったサウンドは良くも悪くも独自の音場感と肌触りを持つ。それだけにリミックスの方向性は気になるところだが、元のミックスを尊重するとみせかけて、オリジナルのイマイチな部分をさり気なく修正しているのがこのハイレゾでもよく分かる。“Super Deluxe”では幻のアルバム『Get Back』もようやく公式に収録された。

音楽殺人』
高橋ユキヒロ


毎年楽しみにしている1980年前後のある種の邦楽、まぁざっくり言ってシティポップのハイレゾ・リイシュー。あの頃の手練れが状態のいいアナログマシンでテープに残した音楽を紐解くには、音の見晴らしがいいハイレゾに限る。ただ、今年はちょっと不作かなと思っていたら、高橋幸宏の初期2タイトル『音楽殺人』と『ロマン神経』が24bit/96kHzで登場。どちらも作品として素晴らしいのは言うまでもないが、ここでは、盟友・坂本龍一と大村憲司が音作りの面でより強く関わっていそうな前者を挙げておこう。坂本のシンセも大村のギターも、そして高橋のドラムも何もかも、その1音1音がすっきりと立ち上がる様が気持ちよく、新たな感動を届けてくれる。


Billie』
MAYA


ドキュメンタリーや劇映画の上映と重なったのは偶然とのことだが、注目度が高まるビリー・ホリデイをこの時期に取り上げたのは必然でもあるらしい。伝説のジャズシンガーが残した音楽を、時間をかけて内在化し、丁寧に吐き出している。松尾明をはじめ馴染みのベテラン勢との世代を超えたミュージシャンシップの交歓も聴きどころの一つ。沸き上がる空気感をSTUDIO Dedeのアナログレコーダー(テレフンケン)がしっかりと捉えている。録音やミックスにも自らの感性を反映させるためのセルフプロデュースという新たなチャレンジは“女子オーディオ”の実践者としての面目躍如でもあるのだ。興味のある方は、こちらのインタビューをどうぞ。


山本 昇 (やまもと のぼる)
音楽誌、オーディオ誌などの編集を経てフリーランスの編集者・ライターに。編集を担当した書籍に『ああ詞心、その綴り方』(鈴木博文著)、『THE DIG presents ハイレゾ音源ガイド』、『Ciao! ムーンライダーズ・ブック』、『50年目に聴き直す「ホワイト・アルバム」深掘り鑑賞ガイド』、『50年目に聴き直す「アビイ・ロード」深掘り鑑賞ガイド』、『51年目に聴き直す「レット・イット・ビー」深掘り鑑賞ガイド』など。ピーター・バラカン氏のWebマガジン「A Taste of Music」のほか、「e-onkyo music」のインタビューコーナーでも一部、編集・執筆を担当している。





関連企画:麻倉怜士の「e-onkyo musicベストテン」 2021年版



 

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