ジャズ・シンガー、情家みえ。ここe-onkyo musicでも、ジャズ・ファンやオーディオ・ファンをはじめ、幅広い層に人気の高い彼女が待望の新作をリリース。『THE REST OF YOUR LIFE』と名付けられた今作は、情家みえがこれまでのライブで取り上げてきた数々のレパートリーの中から選りすぐりの7曲を、ピアノとのデュオ、そしてベースを加えたトリオによる最小限のアンサンブルで収録。レコーディング・エンジニアに、数々の高音質録音を手掛けてきた長江和哉を迎え、繊細かつピュアなサウンドが楽しめる作品が完成。e-onkyo musicでは、そのお二人にメールインタヴューを敢行。アルバム『THE REST OF YOUR LIFE』について、そしてそのピュアなサウンドの秘密についてお話を伺ってみた。
★ヴォーカルとピアノ、そしてベース
最小限のアンサンブルで響く、繊細で高精細な情家みえの歌声
『THE REST OF YOUR LIFE』/情家みえ
ファーストアルバム、シングズ・バラッズから7年。ヴォーカリスト情家みえ、満を持して制作したニューアルバム。ピアニスト後藤浩二とのデュオに加え、気鋭のベーシスト本川悠平も3曲に参加。全国のステージで演奏した数々のレパートリー、ジャズスタンダードから隠れた名曲まで、情家みえが特に思い入れのある7曲を収録。 コンサートホールの響きと臨場感を余すところなく捉えた長江和哉による192kHz/24bitフォーマットでの高精細レコーディング。 the Rest of your LIFE、これからの人生、このアルバムがそのひとときの潤いになれば、と願っています。
演奏:
情家みえ(ヴォーカル)
後藤浩二(ピアノ)
本川悠平(ベース)
Recorded, Mixed, Masterd by 長江和哉
Recorded at 守山文化小劇場
Piano Technician 三ヶ田美智子
Assistant Engineer 高橋 未那美
Produced by MADOKA FUKUTANI mdk music japan
MIE JOKE new album THE REST OF YOUR LIFE
■情家みえ インタヴュー
――『THE REST OF YOUR LIFE』のリリースおめでとうございます。ファン待望の新作がリリースされますが、率直に今の感想をお聞かせください。
情家みえ(以下、情家):2020年3月にレコーディングを予定していましたが、緊急事態宣言下ということもあり、いったん延期しました。2021年になって状況を判断、3月と4月にレコーディングをしました。昨年よりも深刻なコロナ禍にもかかわらず、ファーストアルバムと同じスタッフで7年ぶりに録音できたこと、そしてアルバムをリリースすることができたこと。関わっていただいた皆様に感謝です。
――タイトルの『THE REST OF YOUR LIFE』に込められた思いやテーマなどありましたら教えください。
情家:昨年亡くなった父、ずっと父を支えてきた母、そんな二人の姿を想い、自分の人生を見つめ直した一年でした。私も人生の折り返し地点のような場所に来ているので、プライベートでも音楽的にも、これからの人生に何に出会い何を残せるのか。そんなことを自分に問いかけるような言葉をタイトルにしました。表記は、「ユアライフ」にしようか「マイライフ」にしようか悩みましたが(笑)
――今回はピアニストの後藤浩二氏とのデュオがメインで、3曲でベーシストの本川悠平氏が参加という非常にシンプルな編成ですね。
情家:まずは後藤さんとのデュオでアルバムを企画しました。曲によってはベースをプラスしたほうが良いかと打ち合わせし、この3~4年ライブやツアーで演奏活動をしてきた本川さんに加わっていただきました。

――今作はジャズ・スタンダードを中心に様々な楽曲が収録されていますが、選曲は全て情家さんによるものでしょうか?また今作のキーとなるような曲があれば教えてください。
情家:はい、私の選曲です。今まで歌ってきた150曲のソングリストの中から、後藤さんとのデュオの演奏をイメージした曲を選びました。どの曲にも思い入れがあり、この1曲は選べませんが、しいてあげればタイトル曲の「What Are You Doing the Rest of Your Life」、長江さんは「Save the Last Dance for Me」がお好みのようでした(笑)
――今作の録音は長江和哉氏が担当されておりますが、どのようないきさつで長江氏が手掛けることになったのでしょうか?
情家:長江さんは後藤さんに紹介していただいて7年前の1stアルバムも録音していただきました。アーティストと一緒に音を作り上げてゆく長江さんの1stアルバムでの録音をもう一度、とずっと思っておりましたのでお願いいたしました。
――ウルトラアートレコードからリリースされた前作『エトレーヌ』は、アナログ録音に徹底的にこだわった作品という事で、レコーディングの際にも苦労が多かったようですが、今回のレコーディングで音質にこだわることで、苦労された点などございますか?
情家:音質については長江さんにお任せしていますので、不安はありませんでした。長江さんの極めてピュアなレコーディング・サウンドには大満足です。
――ヴォーカルとピアノのデュオ作品をホールで録音されたことに関して、いかがでしたか?
情家:非常に柔らかくかつ艶やかな音で録音していただいたこと、その出来上がりにびっくりしました。レコーディングそのものは、ヘッドフォンのモニターの向こうにホールの残響音が聞こえて来たりして少しびっくりしましたが、無人のホールでの録音とは、贅沢で貴重な経験をさせていただきました。
――今作の聴きどころ、是非こういった点を聴いてほしい、などございましたら教えてください。
情家:歌い継がれてきたスタンダード・ナンバーの素晴らしさを伝えたいという一心で、常に歌っております。ヴァースから歌っている曲もありますので、ヴァースの美しさもぜひ聴いていただきたいと思っています。
――最後にe-onkyo musicをご覧の皆さんに一言お願いいたします。
情家:e-onkyo musicさんには1stアルバムから配信していただいていますが、今までとは違うホールでの録音をぜひe-onkyo musicさんでのハイレゾ配信でお楽しみいただきたいと思っております。
――貴重なお話、大変ありがとうございました。

■レコーディング・エンジニア 長江和哉 インタヴュー
――今回、レコーディング会場に守山文化小劇場を選ばれた理由などお教えください。
長江:私は、情家みえ氏の音楽を録音する際、後藤浩二氏のピアノと本川悠平氏のベースの音が空間的な印象を持ちながら情家みえ氏のヴォーカルを「包み込むようなサウンド」で表現したいと考えました。このような編成では、スタジオで録音を行う方法が一般的ですが、今回はその「包み込むようなサウンド」を実現するためにホールで録音することを提案しました。現代の日本では、ホールは様々なところにあり、その多くのホールにスタインウェイD274があると思います。今回の録音はまず、長年、後藤浩二さんと懇意にされている調律師の三ヶ田美智子氏に、後藤さんのピアノにふさわしいピアノと空間がどこにあるかを相談するところから始めました。そして、三ヶ田氏のアドヴァイスによりこのホールで録音することとなりました。


一方でヴォーカルは、スタジオで録音しているような、クリアで深い印象にしたいと考えました。それをホールで実現するためには、かぶりをある程度防ぐことと、そして、音源にマイクが近づくとて低域が強調される近接効果用いながら録音したいと考えました。そのために私は自作の仮設ブースを持ち込み、ヘッドホンとCueボックスを用いて、お互いの音をふさわしく聴きあうことができるようにしました。このようにすることで、かぶりを防ぎながら、ダビングすることも可能で、スタジオと同様の感覚で録音作品を制作することが可能となりました。


――今回の基本的なセットアップをお教えください。
長江:DAWは、Magix Sequoia、HA / ADCは、RME MicstasyとRME Octamic XTCを用い、192kHz/24bitで録音しました。マイキングについて、ピアノは近接配置したDPA4006を中心とし、ルームマイクも用いました。ベースにはNeumann M149とKM184のステレオ、そしてVocalにはNeumann M149を用いました。ミックスでは、三つの楽器がより一体化するようにトータルコンプとして、Manley Stereo Variable Muを用いました。
――小編成のヴォーカルものをホールでレコーディングすることに関して、難しかったこと、特に気を使ったことなどあればお教えください。
長江:ホールでの小編成の録音はどうしてもマイクのゲインが高くなります。その際、空調をOffにすることで、音がないところから音楽が始まり、そして音がないところへめがけ音楽が終わる作品として仕上げることができるようになります。大編成では気にならなくても、小編成では、作品が仕上がった際に、その違いがかなり大きく出ると感じています。ただ、夏場はそれが難しいので、空調がOffにできる時期に録音を組織しました。



――今作の聴きどころなどポイントがあればお教えください。
長江:情家みえさんのヴォーカルは、とても表情豊かです。後藤さんのピアノの音色は曲のシーンで七変化します。その2人のデュオは、VocalとPfの一対一の音楽の対話が聴こえてくると思います。また、本川悠平氏のベースが加わったトリオでは、そのデュオに本川さんが加わって支えるという時と、本川さんと情家さんが対話し、後藤さんが見守っている時なども垣間見れると思います。3人のそれぞれの音楽の瞬間をリスナーの皆さんに楽しんでいただけたらと思います。
――貴重なお話、大変ありがとうございました。


■情家みえ スケジュール
日程:10月08日(金)
会場:成田 CLOUD9
開店18周年記念ライブ
演奏:石井彰(piano) 金澤英明(bass)
ウェブサイト:https://www.jazzbarcloudnine.com
日程:10月10日(日)
会場:渋谷公園通りの newBODY&SOUL
移転開店記念ライブ
宮本貴奈(piano) trio
ゲスト伊藤君子(vocal) 情家みえ(vocal)
ウェブサイト:https://www.bodyandsoul.co.jp
日程:10月22日(金)
会場:渋谷公園通りの newBODY&SOUL
演奏:永武幹子(piano) 楠井五月(bass) 中村海斗(drums)
ウェブサイト:https://www.bodyandsoul.co.jp
日程:10月28日(木)
会場:六本木 アルフィー
演奏:後藤浩二(piano) ゲストヴォーカル有
ウェブサイト:http://alfie.tokyo
日程:10月29日(金)
会場:名古屋 jazz inn LOVELY
演奏:後藤浩二(piano) 荒川悟志(bass) 浅井翔太(drums)
ウェブサイト:https://www.jazzinnlovely.com
■関連作品
情家みえ プロフィール

情家みえ (じょうけ みえ)
愛媛県宇和島市出身。
幼少時に父親の影響で音楽に親しむ。
6歳よりピアノを始めると同時に、歌唱にも興味を抱き、声楽のレッスンを受ける。四国大学家政学部にて児童教育を専攻し、授業の一環としてクラシック音楽を学ぶが、間もなくジャズと出会い、徳島県内のホテルやクラブでジャズを歌い始める。
大学卒業後、上京。南青山の老舗ジャズクラブBODY&SOULでスタッフとして勤務。ほどなく、同店オーナー関京子の勧めでデビュー。ピアニスト山本剛のライブレコーディングにも参加するなど、本格的に音楽活動を開始するも、3年で中断。
2008年、復帰を決意し、ヴォーカリスト伊藤君子に師事。2009年2月、代々木NARU・ヴォーカルオーディションを機に活動を再開。
現在、南青山BODY&SOUL、代々木NARU、六本木ALFIEを中心に、都内および全国で演奏活動中。
2014年9月 アルバム『MIE JOKE sings BALLADS and other love songs』リリース。
2015年11月 アルバム『Goodbye today』リリース。
2018年1月 アルバム『ETRENNE / エトレーヌ』リリース。
2020年5月 アルバム『Kiss the Cats』参加。
2021年9月 アルバム『THE REST OF YOUR LIFE』リリース。
■情家みえ オフィシャルサイト⇒