【9/1更新】 音楽ライター原典子の“だけじゃない”クラシック

2021/09/01

e-onkyo musicにてクラシック音楽を紹介する連載がスタート!その名も“だけじゃない“クラシック。本連載は、クラシック関連の執筆を中心に幅広く活躍する音楽ライターの原典子が、クラシック音楽に関する深い知識と審美眼で、毎月異なるテーマに沿った作品をご紹介するコーナー。注目の新譜や海外の動きなど最新のクラシック事情から、いま知っておきたいクラシックに関する注目キーワード、いま改めて聴きなおしたい過去の音源などを独自の観点でセレクト&ご紹介します。過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を是非お楽しみください。


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24bit衛星デジタル音楽放送MUSIC BIRD

【新番組】「ハイレゾ・クラシック」

■出演:原典子  ■初回放送:2021年4月2日(金) 
■放送時間:(金)14:00~16:00  再放送=(日)8:00~10:00
毎月ひとつのテーマをもとに、おすすめの高音質アルバムをお届け。
クラシック界の新しいムーヴメントや、音楽以外のカルチャーとのつながりなど、いつもとはちょっと違った角度からクラシックの楽しみ方をご提案していきます。出演は音楽ライターの原典子。
■番組HP→

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■❝だけじゃない❞ クラシック 9月のテーマ


ファイナル直前! ショパン・コンクール



クラシックをあまり聴かない人でも「ショパン・コンクール」という名前は聞いたことがあるだろう。5年に1度、ショパンの故郷ワルシャワで開催されるショパン国際ピアノコンクール。本来は2020年が第18回目のコンクール開催年だったが、コロナ禍のため1年延期となり、今年10月にいよいよ本大会が幕を開ける。

本大会に先駆けて、今年7月行なわれた予備予選には151名がエントリーし、87名(予備予選免除者を含む)が本大会への出場を決めた。角野隼斗、反田恭平、古海行子、小林愛実、牛田智大ら日本でもおなじみのピアニストも出場するとあって、本大会はおおいに盛り上がりそうだ。

そこで9月は「ファイナル直前! ショパン・コンクール」と題して、予備予選にエントリーしたピアニストのなかから、注目のコンテスタントのアルバムをご紹介していこうと思う。ショパン・コンクールはすべての課題曲がショパンに限られるが、ここでご紹介するアルバムは、当然ショパン以外も含まれる。ピアノ界の輝く星となる若きピアニストたちの演奏をご堪能いただきたい。


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Literary Fantasies~リスト&シューマン
アレクサンダー・ガジェヴ(p)


1994年、イタリア生まれのアレクサンダー・ガジェヴは、2015年の第9回浜松国際ピアノコンクールの優勝者。さらに今回のショパン・コンクールの予備予選と同時期に、オンラインで開催されていた第12回シドニー国際ピアノコンクールにも出場し、見事優勝を飾ったことでも話題となった。近年のコンクールはオンライン化が進み、ショパン・コンクールも予備予選からすべての演奏をインターネット中継で観ることができるが、さらに今年はコロナ禍により現地に行かなくても審査が受けられるコンクールが出てきたことで、コンテスタントにとってはさらにチャンスが広がる形となった。
リストとシューマンが収録されたこのアルバムでは、起伏に富んだ大きな流れを作りながら、豊かに歌うガジェヴの魅力を存分に味わうことができる。



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ニュー・ステージ~リスト&ショパンを弾く
小林愛実(p)


小林愛実は前回(2015年)のショパン・コンクールでファイナル進出(最終審査ではオーケストラとの共演でショパンのピアノ協奏曲を演奏する)を果たしている。幼少時より天才少女として注目を集め、14歳のときにCDをリリースしてメジャー・デビューした小林だが、一度すべてのコンサート活動をストップし、2013年にフィラデルフィアのカーティス音楽院に留学、勉強に専念したことが大きな転機となった。
2017年に録音されたこのアルバムでは、「天才少女」から、みずからのアイデンティティを持ったピアニストへと脱皮を遂げた小林の演奏を聴くことができる。先に挙げたガジェヴのアルバムと、一部同じ曲目が収録されているので、聴き比べてみるのも面白いだろう。



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Watercolour~ヤン・ユァンファン リサイタル
ヤン・ユァンファン(p)


ヤン・ユァンファンは1997年、エジンバラ生まれの中国系ピアニスト。ロンドンの王立音楽院で学び、2014年に第4回フランツ・リスト国際コンクールで第1位、2015年のクリーヴランド国際ヤング・アーティスト・コンクールでも第1位を獲得している。
『Watercolour』と題されたこのアルバムには、シューベルト、ショパン、リストなどのほか、ヤン・ユァンファン自身が作曲した《3枚の水彩画》という作品が収録されている。とくに素晴らしいのがショパンの《幻想曲》。13分ほどの作品だが、水彩画のようなやわらかな色彩の前半から、ぐいぐいとドラマティックな奔流に飲み込まれていく。



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【もっと聴きたいショパン・コンクール出場者のアルバム】




【Opus One】シューマン:ピアノ・ソナタ第3番
古海行子(p)

2018年の第4回高松国際ピアノコンクールで日本人初優勝を果たし、2019年に日本コロムビアのOpus Oneレーベルからデビューした古海行子。このアルバムに収録されたシューマンからは、うねるような情念を感じる。


ショパン:バラード第1番、24の前奏曲
牛田智大(p)

主要コンクールでの上位入賞者は、その実績により予選免除が免除される。2018年の第10回浜松国際ピアノコンクール優勝者である牛田智大は、今回のショパン・コンクールにおいて予備予選が免除されたひとり。小林愛実と同じく幼少時から「天才少年」として注目を浴び続けてきた牛田が、あらためてショパンと真正面から向き合ったアルバム。




ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第2番
反田恭平(p)

日本で絶大な人気を誇る反田恭平だが、かねてからショパン・コンクールのような大きな場に出て、世界の反応を見てみたいと語っていた。このアルバムのドラマティックなラフマニノフを聴いていると、彼がショパン・コンクールの舞台でオーケストラと共演する図が想像できてワクワクする。


リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 他
ニコライ・ホジャイノフ(p)

2010年の第16回ショパン・コンクールで最年少のファイナリストとなり話題となったホジャイノフ。さらに数々のコンクールで受賞を重ね、国際的な活躍をするようになってからふたたび挑むショパン・コンクールでは、どのような演奏を聴かせてくれるだろうか。




キム・ホンギ ピアノ・リサイタル
キム・ホンギ(p)ブレトン弦楽四重奏団

1991年、韓国生まれのキム・ホンギ。このアルバムは、2018年にスペインで開催されたハエン国際ピアノ・コンクールの優勝記念アルバム。課題曲だったスペインの現代作曲家サンチェス=ベルドゥの《鏡の庭》のほか、ブレトン弦楽四重奏団とのシューマンの五重奏などが収録されている。

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筆者プロフィール



原 典子(はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。

2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。



 

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