T-SQUAREメンバーが新作『PARADISE』をハイレゾで試聴!高音質ファイルでスクエア・サウンドはどう響く?

2015/07/10
1976年結成、1978年のレコードデビュー以来、長きにわたって日本のジャズ・フュージョン・シーンを牽引し、広くインストゥルメンタル・ミュージックの素晴らしさを私たちに提示し続けるT-SQUAREがニューアルバム『PARADISE』を発表。ハイレゾ音源の配信をスタートしました。現在は4人編成で活動しているT-SQUAREのリーダーでギタリストの安藤正容(まさひろ)さん(右)、スクエア・サウンドの顔とも言えるEWI(イーウィ)などのウィンドシンセ&サックス奏者の伊東たけしさんをオンキヨー試聴室にお招きし、新作や音に対するこだわりについてお話を伺いました。そして、お二人にはハイレゾ音源の試聴もお願いしましたが、果たしてその印象やいかに。
インタビュー・文◎大山哲司


『PARADISE』
/T-SQUARE



 T-SQUAREが通算41枚目のオリジナルアルバム『PARADISE』をリリースした。シンセベースのリフが印象的な「Mystic Island」に始まり、シャッフルのリズムが心地よい「Paradise」、リリカルなピアノに乗せて哀愁を帯びたサックスのメロディが切ない「Eternal Glory」などバラエティに富んだ9曲が収録されており、いずれもT-SQUAREの代表曲となり得る作品だ。夏をイメージした曲を持ち寄って作られたアルバムとのことだが、昼間の強い陽射しを感じさせるナンバーから夏の夕暮れの気怠さといった、さまざまな夏の表情を想起させてくれる。

 本作にはドラマーの坂東慧による作品が5曲、安藤正容とキーボーディストの河野啓三による作品が2曲ずつ収録されている。いずれも爽快でポップなT-SQUAREサウンドが継承されているが、その中にもトリッキーな仕掛けが随所に施された坂東の作品、緻密にオーケストレーションされた河野の作品、そしてメロディアスでバランス良くまとめられた安藤の作品と、作曲者の個性も色濃く反映されている。

安藤正容:坂東くんの曲はユニークですね。オリジナリティが素晴らしい。彼はキーボードもバリバリ弾くので、ハーモニー的にも面白いところがあるし、ドラマーでもあるのでリズム的な要素も面白い。それが合体してるところがすごく新鮮です。

伊東たけし:彼はT-SQUAREの曲なら何でも叩けちゃうんですよ。 譜面も見たことがないしコピーしたこともなくて、聴いて覚えてるだけなんだけど則竹(裕之)と全く同じフィルを入れたりするんでびっくりしました。ある意味T-SQUAREを熟知していて、T-SQUARE流をちゃんと分かった上で何かを提示してくるんです。ポップでキャッチーなメロディがあり、どこか爽やかで決してダークな方にはいかない。坂東の楽曲にはそういうところが息づいているんですよね。

安藤:河野くんの楽曲は 面倒くさいですよ。ものすごく音を詰め込むんです。その中にはギター・パートもたくさんあるので、まずはどのパートから弾くかというところから決めなくちゃならない。伊東さんとのハモりが多いので、たいていはメロディから弾いて、その後にリズムを弾くんですが、もう譜面が真っ黒なんですよ(笑)。しかも“息継ぎ”がないことが多い。「休符を入れてくれないと次に移れない!」みたいな。それでも一生懸命弾いて、データを河野くんに送ると、「安藤さんバッチリです。ありがとうございます。ついてはこれをもう一度ダビングしてください」とか言ってくるわけ(笑)。やっとできたのにもう1回最初から同じことをやらなくちゃいけない。

伊東:よく働かされているよね(笑)。

安藤:でも彼のアレンジは人を惹きつける力がありますね。ジャズやフュージョンといったインストの演奏をあまり知らない方でもスッと引き込まれるんじゃないかと思います。

伊東:どこかほのぼのとしているしね。広がり感や疾走感に対して、彼ならではのフレージングや音の選び方があるんでしょうね。それに日本人のアイデンティティが曲全体に出ているような気がします。

〈「音に関してはいつもこだわりを持っていますが、それを言葉にするのはなかなか難しいですね」といいながら、音作りの仕方を丁寧に語ってくれた安藤正容さん。また、伊東たけしさんは録音〜ミックスのポイントを「音の質感や芯の強さなど、いい意味でのリアリティをどう出せるかが大事」と説明してくれました〉

 “THE SQUARE”として最初のアルバム『Lucky Summer Lady Midnight Lover』を発表したのが1978年。それから37年の間にレコーディングのやり方も大きく変化した。デビュー当時に使用したMTRはアナログ24トラック。その後、ソニーPCM-3324によるデジタル・レコーディングに変わった当時はその音質に違和感があったというが、PCM-3348に更新されたことで落ち着いたそうだ。現在は各自のデモ音源と譜面をベースにプリプロでアレンジを手直しして作り込み、スタジオでのレコーディングに臨むという。オーバーダビングは各自の家で行われる。どのようなこだわりをもってこうしたプロセスを踏まえているのかを聞いてみた。

安藤:基本的には、作曲者がその楽曲について責任を持つので、レコーディングに入ると僕は自分のことばかりを考えていますね。ギターについては明確な音のイメージがあるので、それに近づけたい。エンジニアはけっこうイコライジングしがちなんですよ。その方がギターが立つとか、全体が締まるなど、エンジニア側からのアイディアがあるとは思うんですが、絶対譲れない僕のギターの音というのがあるので、基本的には「ノンEQで」とお願いしています。
 実は今、FRACTAL AUDIO SYSTEMSのAxe-Fxというアンプ・シミュレーターを使っているんですが、それを使うと家でオーバーダビングする音もスタジオで録る音も全く同じになるんです。以前はアンプで鳴らして録っていましたから、ライブで出している自分の音とマイキングして録る音が変わってしまって、調整が難しかったんです。

〈「今回のアルバムのマスタリングは日本で行なったのですが、音をなるべくいじらない方向でやってもらいました。ミックスしたそのままの音に近くなっていると思います」〉

伊東:レコーディングに入ってからは“いいテイクが録れるかどうか”が勝負。ただ淡々と譜面どおりに演奏できればOKというわけではありません。その曲がうまく何かを伝えられるだけの命を持つようになるかどうかということを考えます。録りに関しては、どのマイクを使うかという部分にこだわります。部屋の鳴りとの関係を考えて選ぶんですが、楽曲によっても変わってきます。 最近はNEUMANN(ノイマン)のU47 fet iやTELEFUNKEN ELA M 251Eあたりが気に入っています。また、マイクとの距離や外し方でヌケのいい音になったり固い音になったりするので、楽器の調整も含めて気にかけています。
 ミックスの段階では、周りとのバランスで気持ち良く聞こえているかどうか。ビートを出しているドラムやベースとの関係で、サックスの聞こえが悪くなることがあるんです。低域のアンカーになる部分がドンとあってサックスが鳴っていると安心して聴けるんですが、不安定だとうまくいかない。 録りにしてもミックスにしても、エンジニアの方との意思の疎通がないと良いものはできませんよね。今回はそのへんは満足できる出来になっていると思います。

〈「マイクと言えば、昔はNEUMANN U47といったビンテージものやELECTRO-VOICEのRE20などを曲に合わせて使い分けていましたが、今は新しいマイクも使っています」〉

 このように音に強いこだわりを持つ二人にとって、新作『PARADISE』はCDで聴いてもすごくいい音になったというが、同時発売のハイレゾ音源はまだ聴いたことがないそうだ。そこで、新作をCDとハイレゾ音源とで聴き比べてもらった。

安藤:基本的にレコーディングやミックスの時点ですでにハイレゾなので、そういう意味では聴いてはいましたが、こうして改めて聴くとドラマティックですね。

伊東:想像していたより全然いいですね。 CDだと音像がどうしてもお団子になっちゃうんだけど、ハイレゾは低音が抜けてくるし、中域も豊かです。EWIの音も全然違う。これを聴いちゃうと、EWIはハイレゾじゃなくちゃ嫌だなぁ。CDだとシンセと同じような音になっちゃうこともあるからね。僕らがスタジオで聴いているのはモニタリング環境で、今聴いたのはリスニング環境だから音の質感は違うんだけど、ハイレゾ音源のクオリティはレコーディング時と同じですね。

安藤:レコーディングしたまんまという感じです。CDで聴いているとギターがどこにいるのかわからないことがあったりするんですが、ハイレゾだとハッキリとわかりますね。

伊東:あと嫌な痛さがない。T-SQUAREのアルバムはみんなにハイレゾで聴いてほしいね(笑)。

安藤:スティーヴ・ガッドの最近のアルバムを聴くと、5人のバンドでオーバーダビングもせずに録音しているんですが、それぞれの音にリアリティがあるんですよ。スティックがスネアのヘッドの上でコロコロしている感じさえ伝わってくる。僕の方向性としてはそういうリアリティのあるT-SQUAREをやってみたいなぁという思いもあります。もしかすると、そういうサウンドだとハイレゾはさらに威力を発揮するんじゃないかと思います。

〈試聴中のお二人。「ドラムのフィルが、CDだと“トロロロ…”ってすぐに終わっちゃう感じなんだけど、ハイレゾではドラマティックになっていて“おっ!”って思いました。サックスもコワイくらいに生々しい(笑)」(安藤さん) 「今までハイレゾと言われても今一つピンと来なかったんですが、聴き比べてみるとすごくいいですね。レコーディング時の、あのグッとくる何かが感じられました」(伊東さん)〉

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