タンゴを基調に革新を続ける三枝伸太郎のトリオ・サウンド

2021/06/21

アストル・ピアソラ生誕100年を迎える2021年に三枝伸太郎の新作「Trio」がハイレゾで登場。タンゴのスタンダードを中心に、単語の奏法を基調としながらもクラシック、ジャズ、現代音楽の香りも感じられる、三枝伸太郎の革新を続けるオリジナルサウンドが堪能できる作品。

TRIO』/三枝伸太郎



アルバム計10曲のうち5曲はタンゴのスタンダード。タンゴの奏法を基調としながらもクラシック、ジャズ、現代音楽の香りも感じられます。
また、オリジナルの5曲はどれも美しいメロディと構成美に富んでおり、特にリードトラックの♯5.Boatman's songは、この世ではないどこかの別の場所の響きをイメージさせるような口笛、アナログシンセ、さらには波の音も加わりインパクトのある曲となっています。

メンバーは、ヴァイオリン、吉田篤貴氏、チェロ、島津由美氏。
二人とも10人編成のオルケスタ デ・ラ・エスペランサのメンバーで、長年、三枝氏の音楽をともに表現してきたパートナーです。

録音は、2020年10月、横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷ホールで行われました。
録音を担当した長江氏によると、トリオの音楽が音楽的に活性化するように、各楽器はお互いの音をよく聴きあえるように向かい合うように配置されました。そして、その間にメインマイクDPA 4006が配置され、各楽器のスポットマイクととに192kHz/24bitで収録されました。 

コロナ禍に革新し続ける三枝伸太郎のトリオサウンドをぜひお聴きください。 


All Tracks Arranged by Shintaro Mieda 

三枝伸太郎:ピアノ、吉田篤貴:ヴァイオリン、島津由美:チェロ、東俊介:口笛(#1、3、5、9)

Produced by 三枝伸太郎
Recorded at 横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷ホール on 9 Oct. 2020 
All tracks are recorded at 24bit/192kHz
Balance Engineer and Editing and Mixing:長江和哉
Assistant Engineer:村上健太
Piano Technician:按田泰司
A&R Director:三ヶ田美智子
Designer:竹内絵美
Cover Photographer:三田村亮
Special Thanks:土方裕雄  ♯5.Boatman's song's “Beach Sound”







■楽曲解説(文:三枝伸太郎)


1. Naranjo en flor
邦題、花咲くオレンジの木。過ぎ去った人生や過去の恋愛に思いを馳せ、生きることの苦しさを歌う。呆然と立ち尽くすようなイメージから、人生なんてそんなもの、というような軽やかな口笛のパッセージ、メロディとちぐはぐな五拍子の伴奏と、あてもなく彷徨うメロディーとオブリガート。今作の口笛は作曲家の東俊介くんが吹いてくれている。

2. Desde el alma
心の底から、というような意味。アルゼンチンのVals(ワルツ)の中でも非常に有名な曲だが、作曲者Rosita Meloは作曲当時まだ14歳だったとのこと。このアルバムの個人的なコンセプトの一つでもある、スタンダード曲に大胆なリハーモナイズを施す試みの、最初期にアレンジした中の一曲。フォーレのことを考えていた記憶が。

3. Milonga de mis amores
邦題、我が愛のミロンガ。ミロンガとは軽快な二拍子のスタイルを指す(時として軽快でない場合もある。アストル・ピアソラは非常に遅いミロンガを好んで書いていた)。メロディーとハーモニーが乖離しているような感覚をこのアルバムでは大事にしている。伴奏、というよりは、並走しているようなニュアンス。この曲にも冒頭に口笛が入っている。

4. Milonga Libra
オリジナル曲。天秤座のミロンガ、というような意味。こちらは遅いタイプのミロンガである。かなり昔に描いたもので、なぜ天秤座とつけたのかもう覚えていないが、このトリオの編成に書き直すに当たって、非常に遅い、ほとんど止まりそうなテンポのセクションを冒頭に付け足した。後半にはVn. 吉田篤貴くんの素晴らしいソロから、Vc. 島津由美さんの重音による迫力のエンディングへ繋がっていく。

5. Boatman's song
クラシックでよく使われる舟歌というスタイルで書かれたオリジナル曲。過去と現在をつなぐ、昔の曲に新しいハーモニーをつけてみる、ピアノトリオという、もしかしたらもう時代遅れな? スタイルでやってみる、しかもそれはタンゴの編成ですらなく、、、というようなことを考えていた。作曲時、ずっとJevetta SteeleのCalling Youが頭の中で流れていた。冒頭には口笛、エンディングには浜辺の音とアナログシンセのノイズが挿入されている。彼岸のイメージ。

6/7. 三月のショーロ1/2
東日本大震災のことを思って直後に書いた曲。本当は三番まで書こうとずっと思っているのだが、全然書けない。楽想としては投げ出されたように終わるのだけど、書けないので仕方がない。。

8. A Lull in the rain
元々はピアソラがやっていたキンテートと同じ五人編成のために描いた曲で、雨の止み間に、というような意味。このタイトルは当時のメンバーがつけてくれた。このアルバムの中では飛び抜けて明るい。当時ビクトル・ラバジェンのようなスタイルの曲を書きたかったのだが、今聴くとあまりそういう感じはしないかも。

9. Uno
アルゼンチンタンゴの中でも飛び抜けて有名な曲の一つだが、歌詞があまりにも難解なので解説は差し控える。スタンダード曲に大胆なリハーモナイズを施す試みの、やはり最初期にアレンジした中の一曲。フェデリコ・モンポウとモートン・フェルドマンを混ぜたようなハーモニーをイメージしていた。やはりメロディが伴奏と乖離し、亡霊のように聞こえたい、というモチべーション。

10. Quedemonos aqui
タイトルを直訳すると、ここに居よう、というような意味。タンゴにしては珍しく歌詞が前向きな内容の曲。このアルバムの中ではアレンジもいわゆるタンゴののスタイルに最も近いかもしれない。はっきりとタンゴ・スタイルの4ビートが顔を出す場所もある。



右より 三枝伸太郎:ピアノ、吉田篤貴:ヴァイオリン、島津由美:チェロ





吉田篤貴(ヴァイオリン)

島津由美(チェロ)

長江和哉(エンジニア)



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