【6/1更新】 音楽ライター原典子の“だけじゃない”クラシック

2021/06/01

4月よりe-onkyo musicにてクラシック音楽を紹介する新連載がスタート!その名も“だけじゃない“クラシック。本連載は、クラシック関連の執筆を中心に幅広く活躍する音楽ライターの原典子が、クラシック音楽に関する深い知識と審美眼で、毎月異なるテーマに沿った作品をご紹介するコーナー。注目の新譜や海外の動きなど最新のクラシック事情から、いま知っておきたいクラシックに関する注目キーワード、いま改めて聴きなおしたい過去の音源などを独自の観点でセレクト&ご紹介します。過去の定番作品“だけじゃない“クラシック音楽を是非お楽しみください。


★☆★


24bit衛星デジタル音楽放送MUSIC BIRD

【新番組】「ハイレゾ・クラシック」
■出演:原典子  ■初回放送:2021年4月2日(金) 
■放送時間:(金)14:00~16:00  再放送=(日)8:00~10:00
毎月ひとつのテーマをもとに、おすすめの高音質アルバムをお届け。
クラシック界の新しいムーヴメントや、音楽以外のカルチャーとのつながりなど、いつもとはちょっと違った角度からクラシックの楽しみ方をご提案していきます。出演は音楽ライターの原典子。
■番組HP→

★☆★




■❝だけじゃない❞ クラシック 6月のテーマ


あなたの「推し」を見つけよう



コロナ禍により海外アーティストの来日公演が激減したこの1年あまり、日本を拠点に活動するアーティストの演奏に触れる機会が多くなり、そのレベルの高さをあらためて実感した方も多いだろう。1年あるいは数年に1度しか来日しない海外アーティストとは違い、国内アーティストの場合はコンサートに定期的に足を運び、演奏の変化を定点観測することができる。さらに出演するラジオに耳を傾け、雑誌のインタビュー記事を読み、その活躍を我がことのように喜び、応援する楽しみもある。そう、いわゆる「推し活」である。

たとえクラシック音楽に興味がなくても、気になるクラシック演奏家=「推し」に出会えば、その活動を追いかけるうちにおのずとクラシックが身近なものになるはず。そこで今月は、あなたの「推し」を見つけるべく、注目の若手をご紹介していこう。


★☆★


The Senses ~ブラームス作品集~
佐藤晴真(vc)大伏啓太(p)


2019年、ミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門において、日本人として初の優勝を果たした佐藤晴真。デビュー・アルバムは留学先であるドイツの大作曲家、ブラームスの作品集となった。アルバムの冒頭、チェロ・ソナタ第2番がはじまった瞬間に情熱がほとばしり出る。ロマンティックに、豊かに歌いながらも、決して暑苦しく独りよがりにならない表現が、今の20代らしいと言えるかもしれない。2つのソナタだけでなく、チェロで演奏された歌曲も収録されており、海のような深さを感じさせて絶美。



★☆★


seasons
木嶋真優(vn)ほか


テレビのバラエティ番組でもおなじみの木嶋真優だが、数々の国際コンクールを制し、かのロストロポーヴィチに「世界でもっとも優れた若手ヴァイオリニスト」と絶賛された輝かしいキャリアの持ち主。その木嶋が、松野弘明率いる日本のトップ・プレイヤーたちと録音したヴィヴァルディの《四季》を聴いて、即興性に富んだ目の覚めるように鮮やかな描写に息をのんだ。インタビューでは「自然は人間が思い描くほど美しくはない。完璧に整えられた美ではなく、人間の手に委ねられていない厳しさを持った世界。風景画のように美しすぎる《四季》には、私は少し違和感を覚えてしまうのです」と語ってくれたが、その言葉通り、ときにリスクをとってでもリアルな表現に挑む姿勢が素晴らしい。
なお、カップリングの《恋するフォーチュンクッキー》は木嶋が「推しちゃん」と呼んで敬愛する指原莉乃(元AKB48)が歌った曲である。



★☆★


In A Landscape
LEO(箏)ほか


箏アーティストとして注目されているLEOは、9歳のときにインターナショナルスクールで箏と出会い、16歳で邦楽界の登竜門「くまもと全国邦楽コンクール」の最優秀賞を史上最年少受賞。2017年にメジャー・デビューし、古典のみならずクラシックやポップスにも挑戦して箏の新たな可能性を追求してきた。ニュー・アルバム『In A Landscape』にはバッハ、ダウンランド、藤倉大、八橋検校、ドビュッシー、坂本龍一、スティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージが収録されており、時代もスタイルも超越した、LEOにしか創り出せない世界が広がる。リュートのように響くダウランド、ジャポニズムが浮き出てくるドビュッシー……それぞれの曲を「箏で弾く意味」が考え抜かれたアプローチはさすが。



★☆★


【もっと聴きたい国内若手アーティスト】




パッション
角野隼斗(p)

絶大な人気を誇るピアニスト、角野隼斗の1stアルバム。ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、東京大学大学院を卒業、フランス音響音楽研究所(IRCAM)にて音楽情報処理の研究に従事、さらに“Cateen”名義でYouTuberとしても活動しているという話題に事欠かない新時代のスター。


イリュージョンズ
阪田知樹(p)

フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位に輝いたヴィルトゥオーゾ、阪田知樹がチャイコフスキーの交響曲からショパンの協奏曲、ラフマニノフの歌曲まで、「10本の指×ピアノ1台」で奏でたアルバム。




Klangfarben ~響きの彩~
東紗衣(cl)守重結加(p)

兵庫芸術文化センター管弦楽団を経て渡独し、2017年に帰国後、日本を拠点に活動するクラリネット奏者、東紗衣が30歳を迎える年に、同じく30歳のシューマンが書いた作品を収録したアルバム。ジャケットも素敵。


【Opus One】ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
石上真由子(vn)船橋美穂(p)

コンクール歴や活動実績にとらわれることなく、新たな才能を発掘する日本コロムビアのレーベル、Opus Oneの第一期生。十八番だというヤナーチェクのソナタは、ヴァイオリンという楽器を超えて、表現者としての創造性を感じさせる演奏。




【Opus One】Meine Lieder
黒田祐貴(Br)山中惇史(p)

Opus Oneレーベルの第3期生。YouTube動画『鬼のパンツ20万回再生のオペラ歌手が【アベノマスク】を熱唱!!!』ですっかり有名になったが、デビュー・アルバムはマーラーの《美しいトランペットが鳴り響くところ》、コルンゴルトの歌劇《死の都》より「私の憧れ、私の空想」など、深みがなければ歌えないプログラム。


J.S. バッハ:チェンバロと弦楽のための協奏曲集 Vol.1
鈴木優人(cem&指揮)バッハ・コレギウム・ジャパン

今回ご紹介したなかでは年長だが、鈴木優人は日本の若手アーティストが彼のまわりに集まってくる磁場のような存在ではないだろうか。このBCJとのコンチェルトは、ときにロック・スターのようにアグレッシヴな表現で攻める痛快なアルバム。




ドレミのうた
坂東祐大

ENSEMBLE FOVEの主宰者であり、最近はTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の音楽を手がけていることでも話題の作曲家、坂東祐大。自身で設立した新レーベル“yuta bandoh studio”からのリリース第1弾は、誰もが知る「ドレミ」を題材にしたキッチュな作品。聴いてびっくりしてください!

-




筆者プロフィール



原 典子(はら のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在フリーランス。音楽雑誌・Webサイトへの執筆のほか、演奏会プログラムやチラシの編集、プレイリスト制作、コンサートの企画運営などを行う。鎌倉で子育て中。脱ジャンル型雑食性リスナー。

2021年4月より音楽Webメディア「FREUDE(フロイデ)」をスタート。



 

 | 

 |   |