リーダー安藤正容が在籍する最後のアルバムとなるT-SQUARE の最新作『FLY! FLY! FLY! 』のハイレゾ版が発売に!

2021/04/21

日本のフュージョンバンドの大御所としてシーンに君臨し続けるT-SQUAREが通算48枚目のオリジナルアルバムとしてリリースする『FLY! FLY! FLY! 』は、バンドからの“引退”を表明したリーダーでギタリストの安藤正容(まさひろ)さんが在籍する最後のアルバムに……。本作を高音質なハイレゾでリリースするe-onkyo musicは、その安藤正容さん、盟友でありバンドの看板を担ってきた伊東たけしさん、若い感性からバンドを支えている坂東慧さんのお三方にリモート取材を敢行。衝撃の引退宣言を、バンドはどう乗り越えていくのでしょうか。そして、この新作にどんな手応えを感じているのでしょうか。ファン必読のロングインタビューをぜひお楽しみください。

文・取材◎山本 昇 写真提供◎ティースクエア・ミュージックエンタテインメント


FLY! FLY! FLY!』/T-SQUARE




■衝撃のバンド“引退”宣言

――今年2月、まさかのニュースが公式ホームページでアナウンスされました。1978年のデビュー以来、バンドを牽引し続けた安藤さんが“引退”を宣言するに至った背景について、あらためてお聞きしてもよろしいですか。

安藤 その理由についてはもう、文章や動画でお伝えしたとおりで、あえてそれに付け加えることもなくてね。だから何と申し上げてよいのやら、悩むところではあるんですけれど……。

――少し想像するのは、年に1枚以上のペースでアルバムをコンスタントに出し続ける中で生まれてくるたくさんの曲に対して、ライブなどを通じてもっと深掘りをしたいというお気持ちもあったのかなと……。

安藤 そうですね。ツアーも最近は東名阪、福岡など5箇所くらいとなっていますから、新しい曲を披露できる機会が少ないのはもったいないというか、そういう感じはずっとありました。昔はお客さんの反応や自分たちの手応えによって、「この曲は継続してやりたいな」という気持ちが自然と生まれていたものです。新しい曲が育っていかないもどかしさは、ちょっと感じていましたね。

――非常に高い密度で長期にわたって活動してきた希有なバンドならではの悩み、ということなのでしょうか。

安藤 僕らは実際に毎年アルバムを作ってきましたから、1年ごとに10曲近い新曲が生まれいくわけで、5年も経てば50曲になってしまう(笑)。その中でどの曲をやろうかというのはすごく悩ましいことなんです。新しい曲をコンスタントにファンの皆さんへ届けられるのは嬉しい反面、いまお話ししたような「もったいない」というジレンマも、なんとなくありますよね。

――伊東さん、坂東さんは、今回の安藤さんのご決断をどのように受け止められたのでしょうか。

坂東 僕は去年の5月くらいに聞いたのですが、いつかこういうことはあるだろうなとは思っていました。でも、「まさかこのタイミングで!?」というのが正直なところで、「意外と早くきたな」という感じがしました。「安藤さんはまだまだいけるじゃん!」って。

安藤 ……(笑)。

伊東 僕も10年くらいバンドを離れていた時期があるから、あまり偉そうなことは言えないんだけど(笑)、何年も前から、安藤自身の音楽的なことも含めて、毎年アルバムを出し続けることに対する想いは聞いていました。その都度、「まあまあ」となだめながら、「もうちょっと一緒にやろうよ」と引き留めてきました。今回、安藤がそう決意したことには、「ああ、とうとうその日がきたか」とは思ったけど、一人の音楽家として下した真摯な決断なのかなと捉えています。

――そこは尊重すべきだと。

伊東 そうですね。音楽に対する純粋な部分はとても立派だし、安藤とは、“スクエア”だけでなくても、いろんな形で互いに音楽を高めていくことができると思っています。今回の決断はバンドにとってはかなり高いハードルとなりますが、この現実を受け止めながら、先を見て進んでいこうという感じですね。



本作のレコーディングが行われたサウンドイン・スタジオにて



■最新作『FLY! FLY! FLY! 』の新機軸

――では、ニューアルバム『FLY! FLY! FLY! 』について伺います。そうした中で制作された本作ですが、事前にコンセプトについて話し会ったりはしたのでしょうか。

安藤 いや、特に決めたことはありません。いつもどおり、みんながそれぞれに「いま出すならこんなのをやりたい」という曲を持ち寄って、それをみんなで選んで仕上げていきました。ただ、今作は河野(啓三)君がメンバーからは抜けてしまったので、キーボードは(白井)アキト君に全面的に協力してもらいました。また、坂東の提案で、いつもの田中晋吾君に加え、森光奏太君とTaiki Tsuyama君という二人の若いベーシストにも参加してもらいましたが、おかげで演奏も楽しかったし、いいアルバム作りに繋がったと思います。

――坂東さんはどんな狙いでお二人を引っ張ってきたのでしょう?

坂東 ここ数年で出会った、すごく好きなベーシストです。Taiki Tsuyama君はLA在住のベーシストで、僕のソロアルバム『Step By Step』にも参加してくれています。森光奏太君は23歳ですでに大活躍中のベーシスト。彼とは去年、僕の「Music Chemistry」というイベントで共演しましたが、このセッションがとても良かったんです。グルーヴの懐が深いというか、若いのにシブい(笑)。ぜひ、T-SQUAREでも弾いてもらいたいなと思いました。
 T-SQUAREもちょうど新しい形に変わっていく時期を迎えていますので、リズム隊としてもいろいろ実験をしてみたいという思いもあったんです。もちろん、晋吾さんとはいつも一緒にやっていて安心感があるのですが、ちょっと違ったテイストを採り入れてみるとどうなるかなという興味がありました。

安藤 奏太君とは僕も何度かセッションしたことがあるんだけど、そのときは、彼が大ファンだという須藤満君とやっているような感じだったんです。ところが、今回のレコーディングでは全然違って、彼の独自のスタイルが感じられてびっくりしました。23歳であのようなベースが弾けるのはすごいなと感心しました。

伊東 今回の新しいベーシストの起用は、坂東がプロデューサーとして自分の楽曲をどう表現したいかというビジョンに対する明解な選択だったと思います。それぞれの個性もよく出ていたし、楽曲の狙いにもぴったりハマっているんじゃないかな。僕にとってもすごく新鮮でした。

■楽曲に込められたそれぞれの想い

――作曲は、安藤さんが2曲(「Only One Earth」「The Hotrodder」)、河野啓三さんが1曲(「Brand new way」)、そしてタイトルチューンを含む6曲が坂東さんです。まずは坂東さんから、過去最多となった今回の曲作りについて、特に意識されたことなどがあれば教えてください。

坂東 それはもう、安藤さんの最後を飾るアルバムということで、ギターメロは多めです(笑)。

安藤 フフフフフ。

坂東 そして、個人的にはエンディングにギターソロがくる曲が最近はなかったんですが、1曲目の「閃光」の最後は安藤さんに「いっぱい暴れてください!」と注文したところ、ものすごい演奏が録れました(笑)。今回は、こんな感じで終わる曲をぜひ作りたいと思っていました。
 「回帰星 -kaikiboshi-」は、伊東さんと安藤さんの2トップをフィーチャーしたくて作った曲で、最後はお二人がソロをトレード(交換)して終わります。思えば、伊東さんと安藤さんのこういうバトルはあまりなかったような気がします。お二人の鉄壁なコンビネーションを前面に打ち出していますので、そのあたりをぜひ聴いてほしいですね。

安藤 どれほど絡めたかは分からないけど(笑)、確かに伊東さんとのトレードってこれまではあまりなかったですね。それにしても坂東は今回も、作曲でもアレンジでも、新しいものを持ってきてくれました。本当にいろんなアイデアが豊富で、いつもいろんな提案をしてくれる。例えば「閃光」も、ハーモニーがすごく新鮮だったし、他の曲も新しい驚きを伴ったサウンドで満ちています。ここ何作かでも、すごくいいアルバムなんじゃないかなと思っています。

伊東 やってるうちに「あ、なるほどね」って気付くところが随所にあるアルバムで、楽曲自体の良さはもちろんなんだけど、そういうことを考えさせてくれるアレンジになっているのはさすがだと思っていたんですよ。

――坂東さんのそんな目論みを受けて、お二人も楽しんで演奏できたと。

安藤 そうですね。大変でしたけど(笑)。

――このアルバムで、安藤さんは「Only One Earth」、「The Hotrodder」を作曲しています。ぜひこの2曲に込めた想いなどお聞かせください。

安藤 「Only One Earth」は曲作りの特徴として、1曲を通して同じループを使っていて、コード進行はほとんど一緒なんですよ。最近、好きな音楽を聴いていると、ハーモニーの変化が少なくて、同じコードのループの中でいろんな場面を作っているものがけっこうあったんです。あまりハーモニーを凝ったものにせず、同じループの中で展開していくというのをやりたいと思って作ったのがこの曲です。
 ファンの方たちからは「ドライブで盛り上がれる曲が欲しい」というリクエストも寄せられるのですが、「The Hotrodder」はそんな声に僕なりに応えたもの。それほどヘビイではないけどもロックナンバーとして聴ける曲を作ってみました。

――どちらの曲もいまの安藤さんが提示するロックとして興味深く聴きました。「Only One Earth」というタイトルにはどんな意味を込められているのでしょうか。

安藤 このところ、コロナもそうですけど、大きな災害が起きたり、社会情勢も良くなかったり、なんか嫌なことがすごく多いじゃないですか。どこか、人間って愚かだなという想いが自分の中であって……。「たった一つの地球なんだから、みんな平和に生きようよ」みたいな気持ちがあったんです。この曲が持つムードは、そういうものとリンクしています。まぁ、自分からのメッセージとして聴いてもらえたらなと思っています。



レコーディング中の安藤正容さん。自ら作曲した2曲ではロックなギターも披露


安藤さんがスタジオに持ち込んだギターの一部。真ん中の黒いボディは現在のメインとなっているFender Stratocaster



■嬉しいハプニングを誘発する伊東たけしのプレイ

――伊東さんの演奏は今回、EWIとサックスが半々くらいですね。どの曲でも気迫に溢れるソロが展開されていますが、それぞれ奏法の点で変化させていることなどはあるのでしょうか。

伊東 サックスに関しては、マウスピースをドレイク(Drake Mouthpieces)というメーカーのものに変えてみました。これまでよりもさらにエッジが利いた音になっていると思います。

――伊東さんのソロは、楽曲の中でどのような存在なのでしょう?

坂東 スタジオで伊東さんのソロをレコーディングしていると、いい意味でのハプニングがよく起こるんですよ。とてもキャッチーなフレーズがその場で生まれたり。それに触発されて、僕もはじけちゃうみたいな瞬間がある。そこはいつも、レコーディングで楽しみなところの一つですね。

[伊東さん、リモート画面で得意気にVサインを出す]

坂東 今回もそうでしたが、スタジオではサックスとドラムはブースが隣り合わせになることが多いので、伊東さんがノッて吹いているのが見えるんです(笑)。それに合わせて叩いていくと、すごくいいテイクが録れるんですよ。

伊東 途中でちょっとヤバイ部分があっても、最後まで吹き倒すしかない(笑)。気になった部分をあとで録り直すと、どこかつまらなくなってしまいますからね。インスト・バンドにとってはそんな掛け合いも醍醐味ですから、ハプニングはできるだけ大切にしています。

――「せーの」で一発録りしたテイクを大事にするのが“スクエア”のレコーディングということですか。

安藤 そうですね。どの曲もベーシックトラックは「せーの」で録るなど、できる限り、同時に演奏しているムードを出せるようにしています。僕のパートはわりと変えてみることも多いんですが、やっぱり「ここは捨てられないな」と思うところはちゃんと取っておくようにしていますね。

――安藤さんは、伊東さんのソロの魅力をどう感じていますか。

安藤 (画面ごしに)本人の前では誉めにくいけど(笑)。何だろう、やっぱり自由奔放なところかな。恐れを知らぬというか……。

伊東 恐れも何も知ったうえでの根性だよ(笑)。

安藤 そうそう、根性で突き進むところがすごいなと思いますね。

伊東 レコーディングのときは、その曲の世界観を自分なりに解釈して吹いています。そういうイメージがないと、音は出ないのでね。アドリブにしても、ハプニング性とかエモーショナルな部分、スリリングな部分といった要素も必要だとは思うんですけど、ただやみくもに演奏するのではなく、やっぱりその場面というものをどう表現できるかをいつも考えています。どこまでできているかは分かりませんけども、いま坂東が言ってくれたような瞬間、つまり定石ではないラインを自分なりに捉えられたときは嬉しいですね。

――そこに至るまでには相当な鍛錬と集中力、そしてイマジネーションの力が必要なのでしょうね。

伊東 でも実は、そういうのって自分にとっては嫌な部分だったりもするんですよ。それでも「さらけ出さないといけないんだよね」と思いつつ、恥ずかしい部分も出しているというような……。スマートに、きれいにできて「ハイOK」というのはなしだと、常々思っているんです。





曲によりAKAIのEWI(上)とサックスを持ち替えて演奏に臨む伊東たけしさん



■レコーディングで巻き起こるメンバー同士の化学反応

――今回のレコーディングでは、エンジニアリングの面などで新しい試みはありましたか。

坂東 レコーディングはサウンドイン・スタジオで行いましたが、アコースティック・ピアノがすごくいい音で録れましたね。レコーディング・エンジニアの大迫浩さんもいろいろ工夫してくれて。もちろん、アキト君のプレイも光っています。彼はエレピやオルガンも弾いていますが、プレイヤーとしてのセンスが随所で際立っている印象です。

――レコーディング中のエピソードとしてその他に思い出すことは?

安藤 アキトがソロを録音するとき、まず2~3テイク録ってみると、「ああ、それいいね」っていうのがあるんですね。でも、彼は「記念にもう1テイク録っていいですか」と、最後にもう1回録るんですけど、たいていそれが最高なんですよ(笑)。アキトも伊東さんにちょっと似ていて、「この先どうなるんだろう」ってところに突入していくプレイヤーで、それが行き切ると本当にいい演奏になるんです。彼も本当に素晴らしいミュージシャンです。

――そして、坂東さんも切れ味鋭いスリリングなドラムを披露しています。お二人は坂東さんのドラミングに対して、どのような印象を?

伊東 テクニックもさることながら、「そう反応してくるか!」とかね。これまでのドラマーとのセッションではなかったことが、坂東がきてからは起こるんです。フィルの入れ方とか、フレーズの捉え方にもすごく独自性がある。とてもシリアスな場面があったり、あるいはウィットに富んだものだったり、喜怒哀楽が妙に出てくるので(笑)、特にライブをやっていると楽しいんです。
 レコーディングのときに感じるのは、坂東が書いてくる曲はやっぱりリズムがキモとなっていて、どういうグルーヴなのかというのがすごく楽しみだったりします。今回も坂東の曲はどれもそういう要素が明解に表れています。そして、ドラマーとしての彼は、そんなグルーヴを大切にしながら最後まで完成させている。しかも最近は、シンプルなドラミングでそれを表現していて、音数はそんなに多くはないけどドラムの懐がでかいんですよね。

坂東 ありがとうございます!

安藤 今回のレコーディングで、坂東はいろんな音に挑戦していて、チューニングも変えているんだろうけど、かなり凝った音作りをしています。スネアにしても、あまりリバーブをかけずに、目の前で鳴っているようなサウンドにしたり。そして、ミックスのときも明確なイメージがしっかりとありました。それを受けて、エンジニアの大迫君が前向きにいろいろやってくれたのもすごく良かったですね。坂東はプレイヤーとして上手いだけでなく、サウンドクリエイターとしても秀でたものがあると思います。

伊東 アキトのバッキングにしても、充分いいテイクが録れても、坂東が「もっと音数を少なく」とか「アタック感を大事に」などいろんな指示を出してくれて。やってみるとなるほど、さらに良くなっていたりするんです。ミュージシャンは、何も言われなければ好き勝手にやりますからね(笑)。
 そして、先ほども話したことだけど、やっぱりベーシストが変わるとこんなにも楽曲の印象が変わるんだというのは今回の大きな発見でしたね。僕もソロアルバムのレコーディングでは、例えばプージー・ベル(ドラム)とアンソニー・ジャクソン(ベース)のリズム隊であれば、二人の確固とした音になるわけだけど、今回はベーシストが3人参加してくれたことで、ここまで景色が変わるのかと。特にTaiki Tsuyama君が参加してくれた「FLY! FLY! FLY!」では、ドラムの音が全然違って聞こえるほど新鮮な驚きがあってね。ドラムとベースのコンビネーションでは、音色の違いもさることながら、ベーシストがビートやグルーヴのツボをどう捉えるかでドラムの印象もまた違ってくるんです。今回はそういうメンバー同士の化学反応がすごく多くて面白かった。もちろん、お互いが理解し合っていてこそですけどね。



ドラム演奏はもちろん、作曲や編曲などでも類い希な才能を発揮する坂東慧さん



■元メンバー河野啓三が作曲した「Brand new way」

――河野さん作曲による「Brand new way」にはどのような印象を持ちましたか。

坂東 「Brand new way」はまさに河野さん節というか、河野さんワールド全開の曲ですね。この曲では、伊東さんにこれまではやってこなかった歌い方だったり、EWIの音色のチョイスをしてもらっていて、僕はとても盛り上がりました。音色も近かったので「あっ、エヴァレット・ハープがいる!」って(笑)。

伊東 すかさず、「誰がエヴァレットだよ!」って(笑)。

坂東 でも、この曲のエンディングのソロにも、いいハプニングがありました。伊東さんがすごくキャッチーなソロを吹いていたので、僕はそこについて行ったのですが、その様子は音源にそのまま残っています。

――「Brand new way」はギターソロも素敵ですね。

安藤 ありがとう。でもこの曲、河野君にしては、ギターに関する指示がなんにも書いてなくて(笑)。いつもはすべて書き譜になっているんだけど、今回は「好きなように弾いてください」と。僕がいつも緻密な指示に文句ばかり言うから、ついに諦めたのかもしれません(笑)。それはともかく、「Brand new way」は河野節と言えるエッセンスを感じさせる1曲で、彼のナイーブな部分もよく表れた、すごくいいナンバーだと思います。

伊東 彼の曲は展開が凝っているし、メロディラインの跳躍の仕方にも意外性があるんです。ぱっと聴くと、日本人的な情緒が漂っているように感じるんだけど、実はフックのかけ方が独創的だったりする。「ここでそっちに転調して、またこっちに戻るのか」とかね。ソロから戻って、もう一つ展開があって次にいくとか。「Brand new way」もそんなドラマチックな作りになっています。ストレートに流れるようで変化に富んでいる。すごくよく考えられた曲だと思いますね。
 EWIの音色については、さっき坂東も言ったように、確かにエヴァレット・ハープが使っている音がこの曲には合うかなと思って試したら、意外に良かったんです。マイケル・ブレッカーも使っていた音色なんですけどね。エヴァレット・ハープは叙情的に吹くサックス奏者で、僕も好きな歌い方をします。彼のEWIの音色もいいなと思いながら、これまでは使わなかった音を今回、お初でやってみました。そして、この曲は安藤とのユニゾンもないし、自由にレイドバックしたり、ちょっとラインを崩しすぎかなというのもあったけど(笑)、そんなアプローチでこの曲の良さをさらに引き立てることができればいいなと思ってやりました。おかげで、エンディングのソロも含めていいテイクが録れましたよ。

■T-SQUAREのこれから

――では、今後の展開についてお聞きします。これからのT-SQUAREというバンドのデザインを、伊東さん、坂東さんはどのように描いていかれるのでしょうか。

坂東 伊東さんと僕が中心になって、若い世代のミュージシャンとT-SQUAREをやり続けたいと考えています。40年以上も続いてきたバンドで、名曲もいっぱいありますので、それを含めてやり続けたいし、若いリスナーにも、「こういうバンドがあるんだぜ」と伝えるというか、繋げていきたいなと、そんなことを強く思っています。

――過去の作品も大事にしながら、新たな活動を続けていくと。

坂東 はい。このままバンドの活動を止めようとはとても思えなくて。なんか繋げていきたいなという気持ちです。

伊東 安藤がバンドを離れるというのは大きいんですけど、そこは自分なりに理解して前に進むしかありません。今後、レギュラーメンバーは坂東と僕という二人となり、他のメンバーはサポートという形になりますが、一気に何かを求めるというよりは、新しい出会いの中で何が起こるかを楽しみにしているところです。“スクエア”には、名曲と言われるものもあれば、ファンからもっとやってほしいと言われる曲も多々あります。そういう曲を新しいメンバーがどう捉え、実際にどう変化するのか……。
 ただ、オリジナルがあるってけっこう大変なんですよ。僕も“スクエア”に戻ってきたときに、他のプレイヤーが吹いていたオリジナル曲をやるのは大変だった。本田(雅人)からは「僕だって伊東さんがやってた曲はやりにくかったんだから」って言われたけど(笑)、逆に言うとそういうことはこっちも経験済み。新しい出会いも含めて、安藤にも喜んでもらえるようなグループに成長していければいいなと思っています。

――T-SQUAREのこれからについては、伊東さんも前向きな気持ちでいらっしゃるということですね。

伊東 こんなことをいま話していいのか分からないけど、安藤とはそんなにいつも話すわけじゃないから、この場を借りて言わせてもらおうかな。(今回の脱退宣言は)ある意味「バカヤロー」とは思っているんだけどね(笑)。ただ、僕自身はいま、すごく強くなってきている気がするんです。人間的な意味も含めて、プレイヤーとしても目の前のハードルを越えるための強さというものを、自分でもすごく感じる。そして、そういう気持ちはプレイにも表れてきている気がするんですよ。でね、今回のアルバムは先ほども言ったように、安藤とのユニゾンも少なくて、わりと自由に吹かせてもらったけど、そこには僕から安藤に対するメッセージもあったりする。乗り越えるにはあまりに大きなものだけど、いまは不思議と自分でも今後が楽しみになりつつあるんです。聴いてくれる人たちがどう反応してくれるかは分からないけれど、いまはそんな気持ちですね。僕はこれまでもいい仲間に恵まれてきたので、これから出会う人たちとどんな化学反応を起こせるか。みんなも楽しみにしてもらいたいなと思います。

安藤 これまでも“スクエア”はメンバーチェンジが多かったじゃないですか。伊東さんだって10年間不在だった時期があるし、のりちゃん(則竹裕之)、すとちゃん(須藤満)、和泉(宏隆)君が抜けたときのショックも相当なものだったと思うんです。でも、なんだかんだ続いているわけで。別に僕が抜けても、伊東さんと坂東がいれば、また面白いものができて、続いていくと思うし、そこは心配ない。かえって面白い“スクエア”が生まれるような気もして、すごく楽しみにしています。
 “スクエア”も5年後には50周年ですか。そのときにはちょっとゲストで入れてもらおうかなって思ってます(笑)。でも、その頃は僕も伊東さんも70歳を超えているから、伊東さんのサックスが鳴るかどうかも分からないし、僕もギターのチョーキングができるかどうかも分からない(笑)。でも、“スクエア魂”ってのがあって、なんか面白く続いていくような気がしますけどね。





――安藤さんの今後についても教えてください。

安藤 いまは何も考えてなくて、まったく白紙の状態です。ソロ活動についてはマイペースに、「あ、こういうのがやりたいな」とモチベーションが上がればチャレンジしたいなと思います。決められたものをこなしていくのではなく、本当に心から沸き上がるものができたらいいなと、なんとなく思っています。

――安藤さんにとって、THE SQUARE、T-SQUAREのリーダーとして過ごした43年間とはどんな時間でしたか。

安藤 そうですね。“スクエア”をやっていたおかげで本当にいろんな経験をさせてもらったし、音楽的にどれだけ成長できたかは分からないけど、自分の好きなことをやりつつ、いろんな感動がありました。本当に自分の人生の宝物だと思っています。

――では最後に、e-onkyo musicリスナーへのメッセージをお願いします。

坂東 今回の『FLY! FLY! FLY! 』は、各々の楽器の録り方からミックス、マスタリングまで、いままでにないほど隅々にまでこだわって作ったアルバムです。e-onkyo musicの皆さんにも、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

伊東 新たに参加してくれたメンバーやエンジニアたちと一緒になって、本当に楽しく、いいアルバムができました。一応、“スクエア”としての安藤が在籍する最後のオリジナルアルバムということで、そんな歴史的瞬間がこの1枚に収められています。これを聴いて、“スクエア”と安藤正容が今後どうなっていくかを皆さんに想像していただきたいですね。我々は頑張って音楽をやり続けていきますので、これからも応援をよろしくお願いします。

安藤 ニューアルバムは本当にいい曲が揃いました。みんなの演奏も良かったし、音作りの面でもエンジニアの大迫君とコミュニケーションしながら進められたので、僕らとしても納得できるこだわりのミックスができました。もちろん、いつも一生懸命に作っているんですが、今回はそうした努力がよりいい形に結実したことですごくいいアルバムになったと感じています。ぜひ多くの方に、できることならハイレゾのようにいい音で、いい音環境で楽しんでもらいたいなと思います。

――ありがとうございました。






■ライブ・インフォメーション


◎T-SQUARE CONCERT TOUR 2021「FLY! FLY! FLY!」
5月23日(日) KT Zepp Yokohama (神奈川) 開場 16:30 / 開演 17:00
6月6日(日) Zepp Sapporo(北海道) 開場 16:00 / 開演 16:30
6月20日(日) Zepp Nagoya (愛知) 開場 16:00 / 開演 16:30
6月26日(土) なんばHatch (大阪) 開場 16:00 / 開演 16:30
7月23日(金・祝)Zepp Fukuoka (福岡) 開場 16:00 / 開演 16:30

◎安藤正容Farewell Tour 「T-SQUARE Music Festival」
7月29日(木) Zepp Namba(大阪)
8月7日(土) LINE CUBE SHIBUYA(旧渋谷公会堂)

*各ライブの詳細は公式ホームページをご確認ください。




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