【インタヴュー】Wakana アニソンをクラシックアレンジでカバー『Wakana Covers~Anime Classics~』

2020/12/09

2008年にKalafina(カラフィナ)のメンバーとしてデビュー。その後、2019年2月にソロデビューを果たしたシンガーのWakana。この度、アニメソングをクラシックアレンジで披露するカバーアルバム「Wakana Covers~Anime Classics~」をリリース。魅力溢れる声を自在に操っての歌の表現力はもちろん、アレンジャーとの共同作業でイメージを具現化した、サウンドにも注目してほしい作品だ。その歌、そしてアレンジやサウンドについてお話を聞かせていただいた。

取材・文◎高橋 敦

★日本のアニメの名作をクラシック・アレンジでカバー
Wakana Covers ~Anime Classics~』/Wakana



“アニメ”と“クラシック”をキーワードに、ピアノや弦楽器によるクラシックアレンジ演奏で、新旧、映画・テレビを問わず、日本のアニソンの名作を Wakanaがカバー

【収録曲】
1. 時には昔の話を (「紅の豚」より 原曲:加藤登紀子)
2. やさしさに包まれたなら (「魔女の宅急便」より 原曲:荒井由実)
3. Rain (「言の葉の庭」より カバー:秦 基博<原曲:大江千里>)
4. いのちの名前 (「千と千尋の神隠し」より 原曲:木村 弓)
5. やつらの足音のバラード (「はじめ人間ギャートルズ」より 原曲:ちのはじめ)
6. Get Wild (「シティーハンター」より 原曲:TM NETWORK)
7. 風のとおり道 (「となりのトトロ」より 原曲:井上あずみ)
8. 君をのせて (「天空の城ラピュタ」より 原曲:井上あずみ)
9. 愛にできることはまだあるかい (「天気の子」より 原曲:RADWIMPS)
10. 夢のゆくえ (「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」より 原曲:白鳥英美子)



■スペシャル・インタヴュー with Wakana


── 「アニメソングをクラシックアレンジでカバー」というコンセプトの作品はかねてから期待もされていたものと思います。それがこのタイミングになったのはどういった流れからでしょう?


Wakana ツアーの音楽監督をしていただいたご縁もあって、昨年の11月に武部聡志さんのライブ「武部聡志 Premium Duo Session Special Vol.9 武部聡志 × Wakana」に出演させていただいたんです。そこで武部さんが「カバーもやろうよ」と言ってくださって、「じゃあジブリやりたいです」ってジブリメドレーを歌わせていただいたらすごく楽しくて。その体験があって、クラシックの楽器とテクニックで洋楽ロックをカバーしている1966カルテットさんという女性グループと組んでアニメソングをカバーするライブを、本当は今年の春からスタートさせる予定だったんですよ。

── 今年の春の予定ということで残念ながら……

Wakana 発表する前に中止になってしまって。でも12月に第2回を行うこともそのときから予定していたので、そちらを改めてのスタートにしようということになったんです。

── 本来は、春のライブでこのアルバムの発売を発表、そしてそのアルバムをひっさげての冬のライブ!みたいな流れのはずだったのですか?

Wakana 実は当初はあくまでもライブ企画で、アルバムを出す予定はなかったんです。ですけどステイホーム期間に自宅で録音の環境を整えたりファンクラブ用に動画の撮影と編集をしてみたりしていた中で、ファンのみなさんに「わたしに歌ってほしい曲ってありますか?」と何気なく聞いてみたら、アニメソング、特にわたしが「好き!」と言い続けてきたジブリソングを挙げてくれる方がたくさんいて。こんなに望んでもらえているならライブの前にアルバムをリリースしたらもっと喜んでもらえるんじゃない?という話になったんです。それで密かに制作を開始しつつ、YouTubeにピアノとのデュオでアニメソングを歌う動画をアップしてみなさんの気持ちを盛り上げたところで、「実はアルバムを作ってます!」と発表させていただいた、という。

── いざ制作となったらまず難しいのは選曲ですよね。

Wakana わたし一人で選ぶとやっぱりジブリだらけになってしまうので(笑)、スタッフさんたちやいろんな方々の意見を集めて今の選曲になりました。例えば「ドラえもん」や新海誠監督の映画の曲はわたしからも提案したものですけど、「やつらの足音のバラード」や「Get Wild」はわたしだけだったら出てこなかった曲です。「Get Wild」をわたしがカバーする発想はなかったというか。

──ジブリ楽曲はあれも好き!これも歌いたい!と、どの曲を入れてどの曲は諦めるのかというのが特に難しかったのでは?

Wakana ですね。例えば今回は「風のとおり道」を入れたいからそれと雰囲気が近い「テルーの唄」は諦めよう……みたいな兼ね合いもあったりはしました。あと「君をのせて」は武部さんとのライブで歌ったときも特別に印象が強かったですし、その前からずっとずっと好きな曲で、愛してきた期間が半端ないわけですよ。だからこの曲はこのアルバムの選曲でもいちばん最初に頭に浮かびましたし、これは絶対に入れる!というのが大前提でした。でも泣く泣く外した曲も「これはライブ用!」ってことにしてます!12月のライブでは歌います!




── そうして何とか選び抜いた楽曲それぞれのアレンジはどういった進め方だったのでしょう?

Wakana 今回は3人のアレンジャーさんにお願いしたんですが、橋本しんさん、櫻井美希さん、兼松衆さんに、それぞれの曲のイメージに合わせて「この曲はこの人に!」とお願いしました。リモート会議でまずわたしからその曲をどういうイメージで歌いたいのかというお話をさせていただいて、それを受けてアレンジャーさんからの提案もあって……という感じです。みなさんわたしのイメージを超える素晴らしいアレンジをしてくださいました!

── カバー曲ではキーの設定も悩みどころと思います。そこもアレンジャーさんと相談して決めていったのでしょうか?

Wakana 元が男性シンガーさんの曲を女性が歌いやすいキーに変えるだけとかの単純な話ではなくて、それで曲の雰囲気が損なわれてしまってはだめですから。今回は最初に、曲ごとに何パターンかのキーで仮に歌ってみた録音をアレンジャーさんに送って、アレンジャーさんから「このキーで歌うといい意味での引っ掛かりがあるね」なんて意見や、そのキーに合わせた伴奏を返してもらうということをしたんです。その伴奏にわたしが自宅録音で改めて歌を重ねて雰囲気を確かめたり。そのやりとりを通してその曲に合うキーを選び出しました。

── 曲の雰囲気を崩さないキーという点で、例として挙げるとすればどの曲がわかりやすいでしょう?

Wakana 「Rain」は、歌いやすさでいったら自分には少し低いキーなんですけど、このキーで歌うからこそ大江千里さんや秦基博さんが歌っているあの世界に近付けるんじゃないかって思うんです。男泣きの世界というか。

── 「Rain」は男性視点な上に込められた感情が特に強い歌ですよね。

Wakana 歌詞を読み解くのも時間がかかりました。アレンジを担当していただいた兼松さんから男性目線での解釈を聞かせていただいたりもして。終盤に「口笛ふくぼくがついていく」っていうところがあるじゃないですか?わたしにはどうしてこの場面で口笛を吹くんだろう?ってわからなかったんです。それで兼松さんに聞いてみたら「かっこつけてる男の歌なんだなって思う」って。たしかにそう思うと冒頭の「言葉にできず」「人前では」みたいなところにもつながる、なるほどなあって。この曲に挑戦したことで「これからは男性の曲ももっと歌おう!」と思えました。歌詞を読み解いて歌う楽しみを教えてくれた曲です。

── 逆に「やさしさに包まれたなら」は少女の頃を歌う歌です。

Wakana まずアレンジから「この曲は絶対に女性!」ということで櫻井さんにお願いしました。「魔女の宅急便」の劇中での、曲と一緒に風景がさーっと流れていくイメージ。キキが空を飛ぶ場面やトンボがやっと作り上げた自分の飛行機で飛んでいくラストシーンのあのイメージ。この歌にはそういう、未来に向かって飛んでいく爽やかな疾走感があるんです。それは絶対に変えたくなかった、忠実でいたかったんです。だからこの曲には櫻井さんの爽やかなアレンジがほしくて。

── それだけの思い入れがあると、シンガーとして、歌い方のアプローチにも悩んだのでは?

Wakana ユーミンさんのライブを観に行かせていただいたとき、ユーミンさんが「少女の頃に描いた自分の世界を今もこうやって愛してもらえてすごく嬉しい」っておっしゃっていて……泣きますよね。もう大好き!わたしだって小さい頃から神さまを信じているし、キキのように何も諦めずにがんばりたい!だからこの曲には少女らしいかわいさは不可避!なんです。なんですけど、わたしの歌としてそれをどう表現すればいいんだろう?というのは悩ましくて。櫻井さん、あと全曲のディレクションを担当してくれた橋本しんさんとも相談してこういった歌い方になりました。

── 曲の世界に忠実にとはいっても、ユーミンさんの歌い方をなぞっているわけではありませんよね。例えばユーミンさんは語尾の伸ばし始めからビブラートをかけていますが、Wakanaさんはゆったり伸ばしてから揺らしていたり。

Wakana あの歌い方はユーミンさんならではですから。この曲だけではなく、原曲をなぞろうというわけでも超えようというわけでもなくて、わたしはそれぞれの曲が大好きだから、その大好きっていう気持ちを乗せた上でわたしらしくナチュラルに歌おうと。そういう気持ちで歌うことができたのは、ステイホーム期間という、曲に落ち着いて向き合える時間があったからだと思います。

── 本当に大好きな曲に、でも力まずに向かい合えた、と。

Wakana 歌い方でいうと、この春はブレスについてよりいっそう考えて練習していたので、その成果も自然と出ているかもしれませんね。ボイトレの先生に「人間は意識して息を吸ったり吐いたりしない。自然と出したら自然と吸う」と言われて、たしかになあと。「時には昔の話を」は特にそうなんですけど、語りかけるように歌いたいときには意識的な感じのブレスを乗せたくないなって。しゃべっているときには息継ぎのことなんか考えないわけですから。

── アレンジのサウンド面での聴きどころはありますか?

Wakana ぜんぶなんですけどあえて挙げていくと……兼松さんにアレンジしていただいた「いのちの名前」は「他の楽器なしで弦だけにしましょう」っていうのに驚かされました。この曲だけ聴いても素敵ですし、アルバムを通して聴いたときのサウンドの変化という意味でも素敵だなって。それに、あの現場での「音が流れているのに時間が止まってる」みたいな雰囲気が、その空気ごと録音されて音源にも収められているんです。

── 演奏の録音に立ち会われていて印象的だった場面は他にもありましたか?

Wakana 「愛にできることはまだあるかい」はピアノ、ヴァイオリン、チェロという編成なんですけど、ビクタースタジオのいちばん広いスタジオのメインエリアにはチェロの奥泉さん一人、ピアノのしんさんとヴァイオリンの今野さんはメインエリアに接するブースでの録音でした。その広さを生かしたチェロの響きを聴いてほしいですね。響きといえば逆に、歌とピアノだけの「やつらの足音のバラード」は、歌も響きの成分をあまり入れずあえてドライに録っていたりします。雰囲気を作りたくて、部屋を暗くして椅子に座って椅子の軋みもチェックしてと準備したんですけど、そうしたら今度は、普段だったら気にならないような服のカサカサが目立つようになっちゃって。そういう音が入っちゃうとこの曲は生々しくなりすぎるので、鳴らさないように苦労しながら録音しました(笑)。

── 「Get Wild」終盤で半音上に「転調しない」というアレンジにも驚かされました。

Wakana ……ああ!言われてみれば!

── でも間奏の緊張感のおかげか物足りなさとかはなくて、だから僕も最初は転調していないことに気付かなかったです(笑)。それにあそこで原曲通りに半音上に転調するとポップス的過ぎて、クラシカルな雰囲気が薄まってしまうのかなと。

Wakana 「Get Wild」については、女性キーにすることで曲のよさが失われてしまわないかというのが特に心配でした。だからこの曲はいちばん力強くいこうと。演奏を1966カルテットさんにお願いしたのも、ビートルズとかUKロックをガンガン弾いているあの疾走感をこの曲に与えてほしかったからなんです。歌い方も、例えば「Rain」は序盤は抑え気味に歌ってそこから徐々に強めていったんですけど、この曲は最初からなりふりかまわずAメロBメロもサビも同じ声、同じ強さで歌いました。仮歌では少し優しい歌い方をしていたんですけど「違う」と思って、「やっぱり最初から強めに行きます!」って。アレンジもそれを汲んでいただいたものになっています。




── その「Get Wild」も含めて、YouTubeに公開しているピアノとのデュオの映像では、モニターヘッドホンとしてVictorの新モデル「HA-MX100V」をお使いになっていますね。

Wakana あのヘッドホンは本当にクリアなサウンドで、ボーカルレコーディングのときはもちろん、トラックダウンやマスタリングのチェック、自宅での録音や動画編集でも使わせていただいています。あとレコーディング後半では兼松さんやエンジニアさんにおすすめいただいたShureのヘッドホンも使い始めました。これを使っていると、レコーディングブースで聴くこのヘッドホンの音とコントロールルームに戻ってきて聴くそこのスピーカーの音がそのまんま同じなんですよ!

── お仕事ではVictorとShureを使い分けていらっしゃるんですね。お仕事以外でのヘッドホンやイヤホンはどうでしょう?

Wakana わたしが外で音楽を聴くのって電車や自動車での移動中なんですよ。なのでSonyのノイズキャンセリングヘッドホンが活躍してくれてます。仕事の移動が大雨の高速道路だったときも、その雨の音もトンネルの中の轟音もぜんぶ静かにしてくれました!あとはワイヤレスイヤホンも持っていて使い分けています。

── いいヘッドホンやイヤホンは音楽ファンにとっても、どんどん増えてきている配信ライブのためにも、これまで以上に魅力的なアイテムになってきています。

Wakana ですよね。ワイヤレスだと映像と音のズレが気になったりしますけど、有線のいいヘッドホンなら配信ライブにもぴったりだと思います。12月に開催の「Wakana Anime Classic 2020」も、実際の客席は50%制限になってしまうので、生配信も実施してもらえることになったんです。

── 朗報です!

Wakana 東京までの距離の遠さや、今の状況でご家族に心配をかけたくなかったりなど、現地での参加は悩ましいという方もいらっしゃると思います。なので、生配信という形でもみなさんに楽しんでいただけるのはとても嬉しいです。初の試みなので手探りなところもあるのですけど、たくさんの方にご協力いただいて、ステージセットや映像演出などもいろいろ考えています。

── アルバムに入れられなかった曲はライブで!というお話もありましたが?

Wakana もちろん歌います!それにアルバムに収録した曲も、アルバム版はアルバム版で完成してるんですけど、ライブではライブならではの表現でお届けしたいんです。どちらも楽しみにしておいてください!

── 楽しみです。

Wakana あとこれはまだ内緒なんですけど……

── なんでしょう?

Wakana ライブのイメージキャラクターに4匹のカバたち「かば~ず」を起用します!カバーだけにカバ!

── ありがとうございました。





★日本のアニメの名作をクラシック・アレンジでカバー
Wakana Covers ~Anime Classics~』/Wakana




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■Wakanaプロフィール


Wakana(ワカナ)
12月10日生まれ、福岡県出身。
12歳から声楽を学び、17歳より多数のイベントに出演。
上京後、FictionJunction のプロジェクトに参加。
その後「Kalafina(カラフィナ)」のメンバーとして2008 年1 月にデビュー。
本格的にシンガーとしてのキャリアをスタート。
2019年2月『時を越える夜に』でビクターエンタテインメントより待望のソロデビューを果たし、3月にファーストアルバム『Wakana』、11月にはファーストEP『アキノサクラ EP』をリリース、2020年2月26日セカンドアルバム『magic moment』をリリース。

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