【期間限定プライスオフ】ワーナー・ミュージック音源から麻倉怜士が厳選した「永遠の名演奏・名録音」

2020/11/06

オーディオファンから絶対的な支持を得るオーディオ評論家、麻倉怜士のセレクトによる独自プライスオフ企画。今回は、ワーナークラシックスが世界に誇る豊富なカタログから「永遠の名演奏・名録音」と題して珠玉の作品をセレクト。「交響曲編」、「管弦楽曲編」、「協奏曲編」、「室内楽曲、器楽曲編」、「歌劇、歌曲編」そして「超高音質アルバム編」の6つのテーマに沿ってピックアップ。12月6日までの期間限定で、最大30%オフにてダウンロードいただけます。是非この機会に、オーディオファン必聴のハイクオリティな音と超一流の演奏をご堪能ください。


■□■ワーナー・ミュージック音源から麻倉怜士が厳選した「永遠の名演奏・名録音」■□■
オーディオ評論家、麻倉怜士のセレクトによるオーディオファン必聴のワーナー・ミュージック作品が、
期間限定最大30%プライスオフ!

期間:2020年11月6日(金)~12月6日(日)まで
対象アイテム:本ページでご紹介のタイトル
※プライスオフは「アルバム購入」のみ対象となります。




 ワーナー・クラシックスには、イギリスのEMI(1931年~2012年)、ドイツのTeldec(11950年~2001年)、フランスのErato Disque(1953年~、休眠を挟んで現在は活動中という)20世紀のヨーロッパの名門レーベルが蝟集している。さらに「ライジングスター」という新人発掘、プロモーション活動も積極的に行っているのも注目だ。

 e-onkyo musicには、ワーナー・クラシックスの無数のハイレゾアルバムが上がっているが、あまりに数が多すぎ、何から聴けばよいかが、なかなか分からないだろう。そこで、これから私がセレクトした名アルバムを、①永遠の名演奏・名録音、②生誕250周年ベートーヴェンの名演奏・名録音、③スーパースターの名演奏・名録音、④躍進のライジングスターの名演奏・名録音---と、4回に渡ってご紹介しよう。

 初回は、まさにエバーグリーンな永遠の名ハイレゾアルバムを採り上げる。交響曲編、管弦楽曲編、協奏曲編、室内楽曲、器楽曲編の計29作品だ。ウイルヘルム・フルトヴェングラー、シャルル・ミュンシュ、アンドレ・クリュイタンス、ジョン・バルビローリ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、マリア・カラス……という20世紀の巨匠から、アントニオ・パッパーノ、イツァーク・パールマン、チョン・キョンファ、アンジェラ・ゲオルギュー……などの21世紀の巨匠たちの名演奏、名録音を聴こう。

麻倉怜士

■交響曲編


 ウイルヘルム・フルトヴェングラー&バイロイト祝祭管弦楽団による1951年の「第九」ライヴアルバムは、クラシック音楽史上に燦然と輝く世界遺産だ。幽玄な足音から始まるこのハイレゾでは、誰しも音の鮮明さに、衝撃を受けることだろう。第1楽章の冒頭のかそけき5度和音の弱音からのクレッシェンド。時間の経過と共に音量とエモーションがリニアに増す様子が、ハイレゾでは実にリアルだ。

 モノラル音像はセンターに凝縮的に位置する。さすがにパートごとの明確な分離は望めないが、弦と木管の掛け合いは、とてもスリリングだ。第2楽章のティンパニは音量的に、まるで主役のようだ。 

  ハイレゾはフルトヴェングラーならではの官能性を、より際立たせる。オーケストラの音色は高貴で、艶艶している。特に第3楽章は、弦の微細なポルタメント風な奏法が色っぽい。ホルンも美的。ハイレゾは音色とハーモニーを手掛かりに、フルトヴェングラーの音楽のより精緻な部分を聴き取ることを可能にしている。第4楽章フィナーレの驚速もハイレゾは味わい深い。1951年7月29日、バイロイト祝祭大劇場でモノラル録音。


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 イタリアの名指揮者、グィード・カンテッリ(1920-1956)が1951年に録音したモノラルのメンデルスゾーン。トスカニーニの後継者と目され、若くしてスカラ座の首席指揮者に就任が決定しながらも、飛行機事故で亡くなった、悲劇の指揮者として知られる。

 現代のソノリティ重視のホール録音とは違う明確で明瞭、そして色っぽいダイレクトサウンドだ。モノラル音像がセンターに凝縮し、密度感が圧倒的に高い。響きに邪魔されない生の音が今、ハイレゾ化されて十全に聴けるのはたいへん幸せなことだ。従来のディスクメディアでは、この当時の録音はここまでのクオリティでは聴けなかった。

  ところが、もともとマスターに入っていた音楽的、音的なリソースが、まるで玉手箱を開けたように、噴出。本「イタリア」の弦の麗しさ、高弦のセクシーさ、低弦の雄大さ、木管の華麗さ……など、今の進んだ技術によるオーケストラ録音でも、望めないようなレベルだ。イタリアの指揮者ならではの軽やかな溌剌なカンタービレは官能的だ。第4楽章の「舞曲」はいまにも踊り出しそう。1951年10月12, 13, 16日、EMI Recording Studioでモノラル録音。


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 エバーグリーンな名演奏だ。私も、本レコードが発売された1960年代初頭に初版を買った記憶がある。カラフルな面だけでなく、音楽的な深みと文学的な意味合いも感じさせる『幻想』は当時、一世を風靡した。レコードでは端正で淡泊な音調だったが、マスターテープまで遡った本ハイレゾでは、しっかりとした音の構築の上に、ベルリオーズらしい熱い絢爛が繰り広げられていることが、わかる。

 第1楽章「夢、情熱」 では、弦の倍音の響きが素晴らしく豊潤。第2楽章「舞踏会」冒頭の左のハープと中央のチェロの位置的な対比が面白い。高弦のテーマワルツがたいへんエレガントでチャーミング。当時、このクリュイタンス版が特に高く評価された第3楽章「野の風景」 は、冒頭のオーボエの音場での距離感、澄んだ空気感が印象的。木管と弦のやり取りがスリリング。

  第4楽章「断頭台への行進」では、中央のティンパニの堂々さ、偉容さが凄い。行進の部分のトランペットが奥の上に位置し、それに向かって全楽器が立体的に音場を埋め尽くす。第5楽章「魔女の夜宴の夢」 ではカラフルな音色の大饗宴に昂奮。特に木管の際立った存在感が刮目だ。

 1958年録音という年代の古さをまったく感じさせない、触ると火傷しそうな新鮮で、熱い名演の復活だ。1958年11月4,5日、ロンドンのキングズウェイ・ホールで録音。2017年リマスター音源。


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 アナログ時代から愛聴盤だったアンドレ・クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン全集がハイレゾで再リリースされたのは、たいへん嬉しい。数年前に再発されたSACDのディスクは、私の最近のヘビー・ローテーションだ。
 ベルギーの指揮者によるベートーヴェンは軽やかで闊達、生命力に満つる。最もしっくりくる形容詞が「みずみずしい」。ベルリン・フィルらしい音の安定感、重層感に加えて、フレーズのあちこちで、おしゃれな輝きが聴ける。

 演奏はもちろんだけど、音も精彩、そして活気に満つ。しなやかで、同時にあでやかな、洒落た音色だ。第1ヴァイオリンが奏でた響きが、長い残響を伴いながら、グリューネヴァルト教会の広い空間に拡がっていくのを聴くのは、大いなる音楽的快感。弦の類い希なる色気感、繊細さ、倍音の豊潤さ……にも感動だ。
 これほどの清涼な音が1957~60年に録音されていたのにも驚かせられる。ピラミッド的で重厚なドイツ・グラモフォンとは違う、明らかにEMIのサウンドだ。第6は1960年に録音。ハイレゾマスターは、2017年にフランスの東部のアヌシーはStudio Art & Sonで、オリジナルテープから96kHz/24bitに変換されたもの。



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 天下の名演奏。マルロー文化相の肝いりで結成したばかりの新生、パリ管弦楽団をシャルル・ミュンシュが縦横無尽にドライヴしたブラームス。同時期の「幻想交響曲」と並び、この曲の永遠の定番とされている。冒頭のエネルギーを溜めに溜めた凝縮感、悠々とした大河のようなテンポ感、歌いの深さ……という本演奏の美質が、ハイレゾでさらに濃い。冒頭から2分12秒の、ティンパニの連打を背景にした高弦の上昇旋律の凄まじいエネルギー感は、まさに本演奏だけの美質だ。

 第4楽章の第2テーマ。ベートーヴェンの第九から継続するような旋律は、第1楽章冒頭の悲愴的な響きとは異なり、明朗、明解に奏される。憧れのベートーヴェンの「苦悩から歓喜へ」のコンセプトをフォローしたブラームスの構造意図が暗と明の対照で、深く理解できる演奏だ。フィナーレの凄まじい追い込み、畳み込みこそ、まさに不滅の名アルバムだる所以である。ラストのハ長調トニック和音トゥッティの鮮烈な切れ味!

 

  録音は50年以上前という年代を少し感じさせるが、演奏と同じく音のエネルギー感も強靭だ。音場では、木管の奥行き感の再現が見事。弦の艶感も聴きどころ。1968年1月8,12日、パリのサル・ワグラムで録音。


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■管弦楽曲編


 1947から1948年に録音された78回転のSP盤からの復刻だ。もちろんモノラルだし、低音域にはノイズが乗っているが、そんなことを忘れさせるような意外なほど明瞭なサウンドだ。中域から中高域は端正でクリヤー。強音のトゥッティでも歪みが、ない。SP盤もきちんと再生し、適切なマスタリングを与えれば、アナログの色彩がひじょうに濃いスペシャルなハイレゾとして、SP名盤復刻の今後の展開も考えられよう。 

 

  ジョン・バルビローリの「エニグマ」には多くの録音が残されているが、その初録音がこれ。第9変奏の「NIMROD」の悠然たる美しさに感動しない人はいないだろう。弦楽奏者でもあるバルビローリによって歌わせられる弦の音のみずみずしいこと。ヴォーン・ウィリアムス:グリーンスリーヴスによる幻想曲も叙情的で、繊細。メインメロディがこれほど高貴たつたのかと再発見する。この曲への深い愛情と尊敬が感じられる演奏だ。1947年12月、1948年4月,マンチェスターのHouldsworth Hallで録音。


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 ヘルベルト・フォン・カラヤンは「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」というタイトルの完全に同一選曲のアルバムを、モノラル(1953年~55年録音)とステレオ(1960年4月録音)で制作している。いずれもオーケストラはフィルハーモニア管弦楽団、プロデューサーはウォルター・レッグ、エンジニアはダグラス・ラーターだ。

 カラヤンの凄いところは、小品でも決して手を抜かないことだ。短い、ポピュラー曲でも全力投球。ワルツ 『スケートをする人々』のチャーミングな節回しは印象的だ。逆にウィーンもの(トリッチ・トラッチ・ポルカ、ラデツキー行進曲)は、後年の87年のニューイヤー・コンサートのような巨匠風ではなく、あっさりとステディ。演出性というより、敏捷性と鮮明さが特徴だ。録音も鮮明。録音年代にしては、ひじょうにワイドレンジで、解像感も高い。バランスが佳く、しかもヴィヴットだ。1960年4月、ロンドンのキングスウエイホールで録音。


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 アナログ・ステレオ全盛期の超優秀録音アルバム。乗りに乗ったアンドレ・プレヴィンの覇気が爆発。緊迫感とエネルギー感に満ち、音楽が描写する対象として、現代的テーマの宇宙にふさわしい、ファンタジー感と情報感を満喫できるモダーンな演奏だ。

  音も目が覚める。奏される音の一粒一粒が、きわめて鮮明で、輪郭はナイフで切ったような鮮烈さ。まるで今、そこで生まれた音がスピーカーから弾き、飛翔するような新鮮さだ。2つのスピーカーいっぱいに音場が拡がり、各パート、各楽器の描写はたいへん鮮明で、解像力が高い。 ホールで眼前で聴いてるような、生々しい臨場感だ。

  

  「木星、快楽をもたらす者」のホルンの当たりを睥睨する堂々たる響きはまさに「快楽」。中間部の平原綾香で有名な「ジュピター」の旋律は、ホルンと弦楽が融合した快感音が高解像で聴ける。1973年9月28,29日、ロンドンのキングズウェイ・ホールで録音。

各惑星のインプレッションを一言で述べる。

    3.1 「火星、戦争(戦い)をもたらす者」の剛毅と迫力。

    3.2 「金星、平和をもたらす者」の神秘的なロマンティシズム。

    3.3 「水星、翼のある使者」のハイファイな諧謔。

    3.4 「木星、快楽をもたらす者」の雄大なスケールと快感。

    3.5 「土星、老いをもたらす者」の瞑想的で静かに迫り来る緊迫感。

    3.6 「天王星、魔術師」の宇宙的なファンタジー。

    3.7 「海王星、神秘主義者」の幻想的な飛翔感。


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 アントニオ・パッパーノとサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団のコンビで2008年から2014年にかけて、本拠地のサラ・サンタ・チェチーリア・アウディトリウム・パルコ・デッラ・ムジカでのライヴとセッションを集めた音源。flac 96kHz/24bitと44.1kHz/24bitが混在している。異なるセッションが集められたわけだが、同コンビの演奏、同会場なので、音調は同一されている。

 演奏も録音も極めて鮮明で、高解像度だ。第1曲「絹の梯子」。冒頭の弦の急激なパッセージに次ぎ、木管がオーボエ、フルート……と、しずしずと登場する場面から、録音の素晴らしさと、演奏の躍動感、進行感に耳を奪われる。弦が手前に、その奥に木管、さらに奥にホルンという、奥行き方向の定位がひじょうに明確で、音調もきわめて透明感が高く、清んでいる。オンマイクの明瞭さが際立つ。この曲は44.1kHz/24bitだが、それが信じられない高品位で、高透明感だ。低弦のスタッカートの弾み感が、いい。
  アルバムの最後は序曲でなく、フルート、クラリネット、ファゴット、ホルンの四重奏『アンダンテ、主題と変奏』。名手の合奏が楽しめる。


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■協奏曲編


『Grieg: Piano Concerto - Schumann: Piano Concerto』
<DSF 5.6MHz/1bit>
Dinu Lipatti


『Grieg: Piano Concerto - Schumann: Piano Concerto』
<DSF 11.2MHz/1bit>
Dinu Lipatti


 世界遺産的アルバムだ。詩情と歌いの深さは、比類無い。どんなに速く、どんなに複雑なバッセージにもロマンティックな歌が輝くのがリパッティの真価だ。若きカラヤンの前進力の強い躍動的なサポートを得た、高貴なピアニズムが聴ける。レコードやCDでは「演奏は素晴らしいのだけれど、音がね……」という評価が多かったが、ワンビットのDSD11.2MHzでリマスタリングした効果は絶大で、モノラルらしい凝縮感と、ノーブルな力感、そして高潔な尖鋭感が聴ける。

 このリバッティ/カラヤンのシューマンのピアノ協奏曲は、「ウルトラセブン」最終回の最後の戦いに挑むモロボシ・ダンが、愛するアンヌ隊員に自らがウルトラセブンであることを告げる印象的なシーンの背後に流れる。

  「僕は……、僕はね……人間じゃないんだ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだよ!」と、ダンが溜に溜めていた言葉を発した時、第1楽章の冒頭のイ短調のテーマが衝撃的に発せられる。印象的なのは、それを聞いたアンヌ隊員のシルエット、黒一色の横顔にあの哀愁のオーボエが流れる。その後、別の曲になるが、怪獣との戦いでは第1楽章の中間部が奏される。激しい戦闘を、シューマンの激しいバッセージが盛り立てる。戦いは第1楽章のフィナーレと共に終わった。

  この印象的な挿入は、ウルトラセブンファンの間に語り継がれ、なぜリパッティなのかという本(「ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた」青山通 /アルテスパブリッシング)もあるほどだ。ウルトラセブンの音楽担当の作曲家の冬木透氏が、本演奏を選択したのは慧眼だ。33歳で夭折した天才、リバッティの持つ悲劇的なイメージと、志半ばでM78星雲に戻らなければならないウルトラセブンの無念との二重写しなるからだ。円谷プロダクションに尋ねた。「あの衝撃的なシーンにぴったり合う楽曲が既存の劇伴の中に無く、満田監督が冬木さんに相談したところ、(冬木さんは作曲のみならず各話の選曲も担当されていました)

冬木さんは、ダンの告白の衝撃には、このシューマンのピアノ協奏曲が合うのではと提案されたそうです。当初は、告白の瞬間に印象的なフレーズのみを使う想定でしたが、さらにその後のシーンにも当ててみたところ、想像以上に合っていたため、そのまま最後の決戦まで使用したとのことです」。

 オーディオ的にも本アルバムは注目だ。オリジナル録音はグリーグが1947年、シューマンが1948年。2018年にアビイロードスタジオにてオリジナルアナログマスターテープよりDSD11.2MHz化したマスターが音源だ。e-onkyo musicには、このパラメーター通りのDSD11.2MHzと5.6MHzの2つのバージョンが配信されている。

 聴き比べてみた。5.6MHzも素晴らしく、躍進感、カラフルな音色、高域までのワイドレンジ感は、さすがDSDだ。ところが11.2MHzはまったく別次元だ。グリーグ協奏曲の第1楽章。ティンパニの轟きに、ピアノが強靭な下行を聴かせるシーン。DSD11.2MHzでは、ピアノの音色がここまで澄んでいて、なおかつ倍音がこれほど多いのかには、驚かされる。それこそが、リバッティのピアニズムをより豊潤に再現している。打鍵した時の、時間と共に変化する音色の綾がこれほど、リアルに聴けるとは。幾重にも倍音が重なる様子が、まるでビジュアルに見える。空間に飛び出す音の粒子の数も明らかに増えた。空間感もより透明で、透徹している。データ量は莫大だが、DSD11.2MHzではリバッティの本質が分かる。


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 ロストロポーヴィチは8回も、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を録音している。本ハイレゾのジュリーニ/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とのコンビは、7回目のもの。77年の録音であり、ロストロのドボルザークの決定的名盤とされていた演奏だ。

  実に堂々たるドボルザークであり、闊達なサン=サーンスだ。音質はいかにもアナログ録音らしい音調。音の器量感が大きく、伸びやかで、会場の空気感も伝わってくる。オーケストラのマッシブな響きを高忠実にクリヤーに捉えている。中央のロストロポービッチのチェロ音像と奥のオーケストラとが良くバランスしている。チェロの朗々感、スケールの雄大さも印象的だ。ロンドンのアビー・ロード・スタジオで、1977年4~5月に録音。


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 人気の高いチャイコフスキー・コンチェルトの20世紀の定番中の定番として人口に膾炙した演奏だ。パールマン33歳の溌剌とした、前傾姿勢が聴ける。後年のような甘美さはそれほど濃くなく、直裁的で、ストレートな物言いが若さの魅力だ。オーケストラ音場は2のつのスピーカーいっぱいに拡がり、ヴァイオリンは豊かな空気感を伴って中央に定位する。空間的な浮上感も確実。1978年録音だが、丁寧なリマスターにより、鮮明な音調に甦った。2015年にハイレゾでリマスタリング。


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■室内楽曲、器楽曲編


 20世紀を代表する巨匠ピアニスト、クラウディオ・アラウの1956 & 1959年、ロンドン録音。最近のようにホールの響きをたっぷり入れ込むという様式ではなく、スタジオにて、ピアノの音をストレートに、素直に録る時代の名録音だ。決して煌びやかではないし、響きも少ないけれど、その分、誠実で、滋味深いピアニズムに親しく接することができる。デジタル的な解像度やワイドレンジという尺度でなく、アナログ的な凝縮感が心地好い音調だ。『幻想曲ハ長調「さすらい人」はモノラル。2016年の24bit/96kHzリマスター音源。


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 アメリカの名ピアノ三重奏団「ボザール・トリオ」の創設者にして、2008年の解散時まで合奏ピアニストとして長く活躍したメナヘム・プレスラー。90歳の誕生を迎える2013年12月に先立って、11月にパリのサル・プレイエルで行われた記念コンサートを収録。1999年に設立された若き奏者によるエベーヌ四重奏団との協演だ。元トリオのピアニストなのだから、弦楽団と合奏するのは、そもそもお手のものだ。

 ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲イ長調 Op.81。たいへん、みずみずしい。エネルギーに満ち、闊達なエベーヌたちと、一歩も引かず、対等以上に存在が際立つ。独奏で聴かせる優しく煌めく美音はそのままに、弦楽たちと美的な調和を聴かせる。第1楽章が終わって拍手が湧くのは、演奏の素晴らしさに加え、「誕生コンサート」という祝賀的なイベントだからだろう。第2楽章の夢幻的な繊細さも素敵だ。

 シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調 D.667『ます』の第1楽章のピアノの優しさと燦めきを秘めたアルペジォが絶品だ。コントラバスが加わっただけで、これほど低域のスケールが増すのかも驚き。ライブ収録だから、生っぽい低音感が出るのが面白い。第4楽章「鱒の変奏曲」は、優しいヴァイオリンのテーマから始まり、メナヘム・プレスラーの明晰で、ロマンの香りに満ちたピアノが旋律を継ぐ。ビオラが主旋律の時の軽やかに飛翔するヴァイオリンのオブリガードとピアノとの掛け合いこそ、ライブの愉しさだ。48kHz/24bitだが、音は優秀。ライブ収録だが、個個の楽器は音像を持ち、音場の見渡しもクリヤー。


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 チョン・キョンファとワーナークラシックス契約第1弾は「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ」だった。第2弾はフランス作品。

 天下の名演である。フォーレもフランクも人口に膾炙した名曲だが、チョン・キョンファで聴くと、この曲にはこんな隠された魅力があったのかと再発見する。フランクの冒頭、ケヴイン・ケナーが弾くテンションコード、E9の幽玄なこと、チョン・キョンファの繊細で滑らかな音運びから、音に秘めた確固たる意志が聴ける。ロマンに耽溺しすぎない、明晰な語り口だ。フランスものの4曲の小品も、チャーミング。ハイレゾ版にはCDにないエルガー:愛の挨拶が、収録されているのも嬉しい。

 録音もたいへん良い。空間感が立体的。ヴァイオリンもピアノもセンターに定位しているが、ピアノが奥、ヴァイオリンが手前という奥行き関係が明確に聴き取れ、音像が豊かな浮力を伴って空間に明瞭に浮かぶ。濃密な響きが、ピアノとヴァイオリンを美しく引き立てる。チョン・キョンファの意志力の強固な調べが、響きに変容して音場に広く拡散する様子は、まことにダイナミック。2017年10月31日~11月7日、イギリスはサフォークのポットン・ホールにて録音。


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 ベルリンを拠点に活動するアルテミス・カルテットの2018年録音作品。まことに鮮烈なショスタコビッチだ。弦楽四重奏曲第5番は音の弾け、音の飛翔、音の融合……と音のふるまいのすべてが極度の緊張の中にあり、最高度のテンションが張られている。どの音も重い意味を持ち、その内実を深く考えずにはおられない。エリザーベト・レオンスカヤと共演したピアノ五重奏曲も、穏やかさと激烈な燃焼性が聴ける。第3楽章のリズムの饗宴のアンサンブルは見事の一言。

 録音も圧倒的だ。演奏内容と同コンセプトのハイテンションで、切れ味が抜群にして、新鮮な音。まさしく松ヤニが飛び散るアルテミスの弦と、燦めきと輝きに彩られたレオンスカヤの打鍵が実にリアルに、そしてナチュラルに捉えられている。ピアノを含め各楽器の音が豊かな体積感を持ち、立体的な空間を音が飛び交う。臨場感溢れる音だ。2018年4月、5月、ベルリン、ダス・ベルリナー・スタジオ、6月にブレーメン、ブレーメン放送スタジオで録音。


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 複数の管楽器とオーケストラによる、フランス革命期のパリを中心に人気を博した木管協奏交響曲集。このジャンルは、ソロ楽器との関係が、特に重視される。アンサンブルでは木管五重奏として協調し、ソロでは主役を張るという2つのミッションが必要だ。その意味で、本アルバムはメンバーの全員が超一流のソリストである天下のレ・ヴァン・フランセだからこそ実現した。

 各楽器の音色の美しさには惚れ惚れする。どの楽器も素晴らしいが、特にモーツァルトの協奏交響曲の第1楽章フィナーレの五重奏だけのカデンツは聴きどころだ。第2楽章では表情豊かなフランソワ・ルルーオーボエが陶酔的だ。第3楽章は、主題と10のバリューション。フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットの各メンバーの名技が順番に聴けるのが嬉しい。

 2チャンネルの音場に広く展開する室内オーケストラをバックに、レ・ヴァン・フランセの奏者たちはセンター付近に定位。協奏交響曲では複数の楽器が同時にアンサンブルを成すので、センター付近に居るメンバー達の微妙な位置の違いが、空気感の違いになって聴ける。第3楽章でのソロ楽器たちのアンサンブルには、豊かなアンビエントが花を添えている。第3バリューションのポール・メイエのクラリネット技には感嘆。2017年4月17日~21日、ミュンヘンのバイエルン放送協会(BR)のスタジオ1で録音。


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 ヴァイオリンソナタとして馴染んでいるフランクのイ長調ソナタを、チェロが奏でる。高音で始まるE9の響きが、悠々とした深い低いチェロ音で始まると、初めは戸惑うが、すぐにフランクのロマンティック世界に引き込まれる。超絶技巧の持ち主ユジャ・ワンは、それには封をしているが、その分、一音一音に慈しみ、ロマンを湛えたピアノの表情が美しい。ゴーティエ・カピュソンの濃密に思いを込めたフレージングも素晴らしい。

 第2楽章は、火花を散らす激情が聴け、ハイテンションの中にも優しさと、洗練さが息づいている。掛け合いも濃密だ。第3楽章の繊細で豊かな表情も佳い。第4楽章のカノン形式では、フレーズの綾の掛け合いの緻密さが印象に残る。チェロが朗々と息の長い旋律を弾く背後で、ピアノが弱音で、でも華麗に舞う。その対比と融合が面白い。二つの楽器はセンターに定位し、すべらかで端正な音調。音の伸びも自然。2019年4月11~13日、2019年の北米ツアー、カナダでの演奏後にトロント王立音楽院、ケルナー・ホールで録音。



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■歌劇、歌曲編


 カラヤンの「薔薇の騎士」は、1960年7月のザルツブルク祝祭大劇場でのウィーン・フィルとのライブ(ドイツ・グラモフォン、映像もあり)、82~84年のウィーンフィルとのスタジオ録音(同)も名盤だが、1956年にカラヤン48歳の時にロンドンで録音されたフィルハーモニア管弦楽団版は、まさに世界遺産だ。

 シュヴァルツコップの妖艶にて高貴な圧倒的な元帥夫人。そのニュアンス表現はまさに神技だ。オックス男爵役のオットー・エーデルマンは百戦錬磨のベテランの味。オクタヴィアン役のクリスタ・ルートヴィヒのフレッシュさ。48歳の壮年カラヤンが紡ぐオーケストラのみずみずしい響きも素晴らしい。R.シュトラウスならではの高弦の輝き。第2幕フィナーレのオックスのワルツのチャーミングさ、ウィーンらしさ(フィルハーモニア管弦楽団なのに?!)、溢れて出る色気……もう身も心もとろけそう。第3幕のマリー=テレーズ、オクタヴィアン、ゾフィーの三重奏は、まさに音楽の神が降臨した。

 録音も55年前のレコーディングとは思えない、段突のフレッシュさだ。EMI作品でもこれほどグロッシーな音色を得ているものは少ない。レンジの広さ、細部までの見渡しの良さ、R.シュトラウスらしい濃密な官能性、奥行きまでの舞台感……など、まさに世界遺産と言うにふさわしい名録音だ。1956年12月、ロンドン、キングズウェイ・ホールで録音。2017年にオリジナル・マスターテープより、アビイ・ロード・スタジオで24bit/96kHzのリマスター。


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  カラス、サザーランド、グルベローバ、デッセイと続いたコロラトゥーラ・ソプラノの系譜。現代における最高のスターは何と言ってもディアナ・ダムラウだ。緩急自在に声を操り、華麗に声を高域で転がす。まさに声の快感という意外に語彙を持たない。透明でパワフル、表現力豊かな屈指のコロラトゥーラだ。十八番は『ランメルモールのルチア』。

 第3幕の第2場「狂乱の場」は圧倒的。人はここまで細やかに、そして強く感情が入れられるかに驚嘆だ。通常はソプラノ独唱にフルートが絡むが、ここではオリジナル指定のグラス・ハーモニカが演奏された。その幻想的で繊細、そして艶艶した音色は、ルチアの狂いを濃厚に演出する音の道具としてまことにふさわしく、狂乱の場の一方の主役だ。小鳥のさえずり場面での掛け合いの劇的なこと。ダムラウは天女のような可愛さと共に、その対極とも言える鉄のようなフォルテッシモの強靭強固さも持つ。最後のハイノートEbには驚嘆。

 録音も素晴らしい。舞台の解像感がひじょうに高く、オーケストラ、独唱、合唱がきれいに空間に融合し、しかも、ひとつひとつの音源の存在も明確だ。2013年7月、ミュンヘンのガスタイクフィルハーモニーで演奏会形式上演のライヴ収録。
 

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 2017年のマリア・カラス(1923ー1977年)没40年を記念して、代表するオペラアリア名唱を収録したベストアルバム。ベッリーニ、プッチーニ、ヴェルディ、 ビゼー、マスネ、ドニゼッティ、 ロッシーニ、 サン=サーンス……など3時間半の時間に46曲がコンパイルされている。これでe-onkyo musicでは2306円だから、大サービスだ。

  ちなみにマリア・カラスはもの凄く多作で、e-onkyo musicで購入できるハイレゾアルバムは、何と63枚!。しかも多作というだけでなく、作品のコンセプトと世界観を反映し、そのタイトルロールを見事に歌い、演じきることでも世紀のディーヴァとされてきた。多彩な人物を表現するカラスの芸術のすべてが、堪能できる名アルバムだ。「可憐さ」「傲慢なほどの自信」「思いの深さ」、そして「コロラトゥーラの超絶技巧」という切り口で代表作を分類してみた。

 「可憐さ」では<2,プッチーニ『ラ・ボエーム』の「わたしの名前はミミ」> 、<14, ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』の「あの方がこの上もなく燃える情熱に」>、<16, ロッシーニ『セビリアの理髪師』の「今の歌声は」>を挙げよう。"高貴なラブリーさ"ではカラスの右にでる者は、いない。単に可憐なだけでなく、そこに超絶技巧が加わるのがカラスだ。

 「傲慢なほどの自信」は<11, ビゼー『カルメン』の「ハバネラ?恋は野の鳥」>。これほどの色気と説得力なら、ぜひ口説かれてみたい。「思いの深さ」では<13, ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』の「あたりは静けさに包まれ」>。このトラックは録音も素晴らしい。

 「神秘的な抱擁力」では,<1 ベッリーニ:歌劇『ノルマ』 の「清らかな女神よ」>で決まりだ。「超絶技巧」では<8,ヴェルディ『椿姫』の「花から花へ」>。最後の1オクターブ上がるハイEsを見事にやってのけた。その前のコロラトゥーラ部分も凄い。「コロラトゥーラの超絶技巧」と言えば、ベルカントの<24 ベッリーニ『夢遊病の娘』の「親愛なる皆さん、優しいお友達? 私には最高の日です」>だ。

 録音の質はばらついているが、なかでも素晴らしいのが、今述べた ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』。1954年9月に、ロンドン近郊ワトフォード・タウンホールで録音されたアルバムだ。きわめてクリヤーで、音場の透明度が高く、カラスの声のグロッシーさが、カラフルな彩りを湛えて聴ける。1963年12月に録音された<15, ロッシーニ『チェネレントラ』の「悲しみと涙のうちに生まれ」>も粒立ちが細かく、伸びもすっきりと。音場の見通しもいい。

 1954~1964年に録音。2014年に、アビイロード・スタジオでリマスター。


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 ヴェリズモ・オペラの神髄を教えてくれる名アリア集。アンジェラ・ゲオルギューの声は、ドラマティックにして、どこまでも突きぬける強靭で鮮鋭な強音と、やわらかな輪郭を持つ表情豊かな弱音の対照が特徴だ。声質は濃密でグロッシー。その大きなヴィブラートにて、オケ+合唱の強音トゥッティでも、声を突出して音場に広く、深く響き渡らせる。 濡れた声の光沢を艶やかな色彩感にて、豊かに伝える録音も素晴らしい。オーケストラもすみずみまで、クリヤーに発音する。オーケストラの背後に備える合唱も濁りがなく、透明度が高い。2016年11~12月, プラハのスメタナ・ホールで録音。


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 アントニオ・パッパーノが手兵のサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団&合唱団を率た「アイーダ」、本拠地、サンタ・チェチーリアホールでのセッション録音だ。ラダメスはヨナス・カウフマン。最近ではソニー・ミュージックの同ホール、同コンビの「オテロ」が有名だが、2015年2月録音のアイーダは、久方振りの大規模オペラ録音として話題を呼んだ。アニャ・ハルテロス(アイーダ)、ヨナス・カウフマン(ラダメス)、エカテリーナ・セメンチュク(アムネリス)とカウフマンと並び、現代オペラ界を代表する顔ぶれも豪華。

 ヨナス・カウフマンの「清きアイーダ」ではは、快感的にシャープな突き上げとスウィートな感情表現が聴ける。直情径行なラダメスを何としても手にいれようとする、アムネリスのエカテリーナ・セメンチュクの粘着的な心理描写も素晴らしい。2018年の新国立でのゼッフェルリ「アイーダ」でのドスの効いたアムネリスはいまだ瞼に焼き付いている。

「勝ちて返れ」のアニャ・ハルテロスの鋭く、感情の起伏が大きな鋭いアイーダも最高だ。 第二幕第二場「凱旋の場」では、アイーダトランペットがステージの奥の左右から空気を引き裂くように鮮烈に奏される。オーケストラ+合唱+独唱のまことに豪奢なグランドサウンドの、ここぞの聴きどころをパッパーノは躍動的に、たっぷりと歌わせる。「ドラマチックにカンタービレを表現するのがアイーダのポイントです」と言うアントニオ・パッパーノの言葉とおり、オーケストラも歌うのがイタリア流だ。「GRORIA」の合唱団のハーモニーもたいへん美しい。左はバス、右はテノールのステレオ効果満点の男性合唱も昂奮だ。

 録音も臨場感と明確さが両立した素晴らしいもの。これだけの大編成にも拘わらず、音の一粒一粒が実にフレッシュ。現実のオペラ劇場でも、ここまでの明晰さとクリヤーは、とうてい聴けるものではない。歌手のフューチャー感とバックのオーケストラ、合唱とのバランスも良好。


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■超高音質アルバム編


 ジャン・フランソワ・パイヤール指揮のパイヤール管弦楽団とは、懐かしい響き。さまにエラートの至宝だ。1980年2月の録音なのに、まるで昨日、録音したような鮮烈さ、鮮明さ、清涼さはいったい何だ!  当時からのエラート録音の優秀さは喧伝されていたが、ハイレゾにリマスターされた音を聴くと、より明確に分かる。各木管楽器の音色感が丁寧にキャプチャーされ、特に「密度の高さ」。粒子のサイズが細かく、音場内部でそれらが濃密に絡み合っている。音が生命感に満ち、幸福なモーツァルト的な躍動感が耳の快感だ。


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 素晴らしい。圧倒的に透明感が高く、ワイドレンジで躍動的だ。解像度も高く、楽器の質感再現もひじょうに上質だ。何より感動したのが、ナチュラルであることだ。オーディオ的な切り口だけでなく、音楽的な、そして臨場感的な文脈において、実にナチュラルにして、魅力的な音である。弦から無限の倍音が放出されていることが、明瞭に聴ける、生々しく、弾力感に溢れた質感も大いに魅力的。弦楽の各パート、木管パート、そして2つのソロ楽器が明確に見え、低音部、内声部も明瞭。

 変ホ長調の協奏曲交響曲第1楽章のいかもモーツァルト的な愉悦の表情、第2楽章のその対極とも言える哀愁、それと打って変わる第3楽章の、また嬉々とした気分……というモーツァルトならではのアンビバレントな表情変化を、この演奏と録音は的確に表現している。2012年4月12~15日、スイスのラ・ショー=ド=フォンのムジカ・テアトルで録音。


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 佐藤俊介/イル・ポモ・ドーロのJ.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調。これぞピリオドだ!と快哉を叫ぶ音楽的な勢いの強さ、バッハ音楽としての峻厳性、そして快適に音楽を進める進行力の強さ---が美質だ。弓が弦を震わせ、それが胴で豊かなサウンドとなり、広く拡散していくプロセスが、時間の流れの中で、リアルに聴ける。ピリオド的な即興的な細かなアゴーギクも、エキサイティング。
  音の飛翔の軽快さも、このアルバムを聴く楽しみ。音の質感が繊細で、まさに絹の感触。ホ長調のメジャー調ならではの明るさと、メジャー調にしてはのほの暗さとのミックス感も、音楽的。2018年2月12~18日に、イタリアはロニーゴのヴィラ・サン・フェルモで録音。 



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 ワーナー・クラシックスが押す「ライジングスター」の一員。イタリアの俊英ピアニスト、ベアトリーチェ・ラナは、1993年にイタリアの音楽一家に生まれ、4歳から音楽の勉強を始め、9歳でバッハのヘ短調協奏曲のソリストとしてオーケストラと共演。ーノ・ロータ音楽院で16歳にてピアノの学位を取得。2013年6月にはヴァン・クライバーン国際コンクールで2位賞と聴衆賞を獲得。2011年のモントリオール国際コンクールに入賞、他にも多くのコンクールで受賞し。これらが彼女の知名度を決定的にした。

 ひじょうに鮮明。センターに安定的に位置するピアノから、輪郭の強い打鍵音が勢いよく発せられる。そのスピードは速く、前進力が強靭で、音の生命感が強い。低域の切れ味、中域の解像度の高さ、高域のキラキラとした燦めきと、現代ピアノからバッハの新しい魅力を引き出している。まさに現代のグールドと形容しても過言ではない。30変奏までダイナミックで、躍動する変奏を聴き続けると、最後のアリアが最初に聴いた時より遙かに静謐に、神秘的に感ずる。ダイアモンドのように輝く高音が、カラフルな響きとなって音場に拡散していくさまはたいへん美しい。響きの量もピアノ独奏としては適正だ。2016年11月7~9日、ベルリンのテルデックススタジオで録音。
 

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 1978年、サンフランシスコで結成された、男声アンサンブル「シャンティクリア」。ソプラノ・パートまで男声だけで歌い、グレゴリア聖歌からポップスまで幅広いレパートリーを持つ。

 合唱の録音は難しく、ハイレゾであっても、濁りや歪みが生じることも多々ある。本アルバムはひじょうにクリヤーで、濁りがたいへん少ない合唱録音だ。多彩なハーモニー、裏声の蝟集でも、クリヤーでクリーンな質感を保っている。夾雑物に邪魔されないから、男声ア・カペラによる協和音、不協和音の多彩なハーモニーが、ストレートにリスニングルームに解き放たれる。2018年6月、カリフォルニアのスカイウォーカー・サウンド・スタジオで録音。


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