プロ音楽録音賞 受賞エンジニアMick沢口による「オーディオで楽しむ自然音」

2020/05/29

日本音楽スタジオ協会主催による、優れたレコーディングエンジニアに贈られる「日本プロ音楽録音賞」にて、数多くの受賞経験を持つエンジニア、Mick沢口。自身が運営するレーベル「UNAMAS」からもジャズからクラシック、そしてフィールドレコーディング作品など幅広い高音質作品を数多くリリースし、国内外のオーディオファンから高い評価を得る。そのMick沢口による、フィールドレコーディング・シリーズ4作品が一挙配信開始。

今回配信となるのは「Nature Whisper」と題されたフィールドレコーディング・シリーズ4作品。それぞれ「雨音」「波音」「川せせらぎ・鳥の声」「滝音」というテーマがもうけられ、各アルバムとも4つの異なるロケーションで録音された自然音が収録されている。

本シリーズが誕生したきっかけは、今作のプロデューサーでもあるSonyselect Music ChinaのNaofumi Yazaki氏が、自身の持病である耳鳴りの治療のために、沢口氏の所有していた自然音の音源をいただけないかと相談したことが始まりとの事。自然音に含まれる「1/fゆらぎ」と呼ばれる超音波成分による、ヒーリング効果やストレスの軽減、集中力の向上にも効果が期待されるとの研究も進んでいる。




■雨音 -- Nature Whisper vol01 Rain
Nature Whisper vol01 Rain』/Mick Sawaguchi


【収録ロケーション】
M-01 熊野
M-02 高麗
M-03 熊野
M-04 遠雷

【解説】
弱い雨でも、強い雨でも降り方は一定ではなく、強くなったり弱くなったり絶えず変化しており、典型的な「1/fゆらぎ」を持った「音」であるが、激しすぎると逆に不安感がでてくるため、しとしとと降る雨、中程度の雨音にした。雨の降る夜には不思議と気持ちが落ち着き、読書しやすくなったり、安眠できるといった経験をお持ちの方もおられるだろう。雨の音にはこのような効果があるのだ。




■波音 -- Nature Whisper vol02 Wave

Nature Whisper vol02 Wave』/Mick Sawaguchi

【収録ロケーション】
M-01 珊瑚礁
M-02 竹富島
M-03 砂浜
M-04 屏風浦

【解説】
浪の音にもいろいろあるのだが、特に砂浜に寄せては繰り返す波の音は、とても優しい音色を持っている。これも毎回同じようでいてよく聴くと一つの波ごとに違っている。また、波の音は、母親の胎内の音によく似ているといわれている。そのため、波の音を聞くことで母親の胎内回帰をしたような安心感を覚えリラックスできるとも言われている。




■川せせらぎ・鳥の声 -- Nature Whisper vol03 Stream

Nature Whisper vol03 Stream』/Mick Sawaguchi

【収録ロケーション】
M-01 Regina 
M-02 十津川
M-03 分杭
M-04 秩父

【解説】
川の音は、波の音よりも一定しているが、同じようでいて絶えず変化している。時折、聴こえる小鳥の声もまたゆらぎ成分が満載で、ウグイスでもホトトギスでも、何気なく聴いていると同じように聞こえるのだが、鳥も自然界に生きる動物なので、それが出す声は毎回微妙に違い完全に同じというのはあり得ない。また、このせせらぎと小鳥が持つすがすがしいイメージで心が和むという効果も期待できる。これを仕事場で流していると自分が高原にでもいるようで、仕事の集中力がアップするのを感じる。




■滝音 -- Nature Whisper vol04 Waterfall
Nature Whisper vol04 Waterfall』/Mick Sawaguchi

【収録ロケーション】
M-01 熊野
M-02 華厳
M-03 稲取
M-04 五常

【解説】
耳鳴り治療の定番音源。川の流れの音と基本的に同じで変化がないのだが、滝の音はより広範な帯域の周波数が含まれているため、さまざまな音の耳鳴りを中和させる効果があるとしている。滝が落ちる一定の音がいわゆる「ノイズ」に最も近い音色であり、自然界の中では「ピンクノイズ」に最も近いといわれる。




■アルバム コンセプト
Naofumi Yazaki (Sonyselect Music China, Chief Editor)

このアルバムを制作しようと思ったきっかけは私の持病である耳鳴、(正確には頭鳴り)の治療のため沢口氏が所有されている自然音源をいただけないかと相談したのがきっかけだった。これといった根本治療法がないというのがこの耳鳴りという症状のやっかいなところだ。その音原を聴いても耳鳴りを失くすわけではなく、耳鳴り音が気になるとき、例えば就寝時周りが静かな際などに、「音」を流しておいて耳鳴りに対する意識レベルを減弱させるのが目的で、専門的にはTRT(Tinnitus Retraining Therapy) という治療法を参考にしている。
そのため、いろいろな音を探して聴いてきたが、ラジオの周波数を合わせるときに出るザーザーという雑音、つまり「ホワイトノイズ」と言われるもの、及び「自然音」のいくつかがどうも私の頭の中で鳴っている雑音を中和させるには適しているようだと感じていた。
音楽配信という仕事を通して、UNAMASの作品群は愛聴していたのだが、その中でも沢口氏が自らフィールド録音された多くの自然音源と音楽を融合させた芸術性の高い音楽作品があることも知っていた。私はそのうちのいくつかを就寝時に聴くことが多かったのだが、ある夜、音楽演奏の部分を取り除いた純粋な自然音だけにすると、もっと耳鳴り中和及び安眠効果があるのではと思い立ち相談したわけである。

なぜなら、これらの音源は、沢口氏が自ら純粋な自然の音をハイレゾ録音しているところが最大の特徴で、自然状態で発生する全ての周波数がそのままの形で含まれていると考えられる。これは、音の成分的には電子音で作られたいわゆる癒し系、瞑想系音源とは全く違うものだ。私自身が過去いろいろ探した中では、ここまで質の高い自然音源はなかった。

さらに、「自然音」自体には癒しの効果があることも分かってきている。それは自然の音は一定のようでいて実は予測できない不規則性、いわゆる「1/f ゆらぎ」という超音波成分が含まれている。この「1/fゆらぎ」を聴くと脳内がα波の状態になり、ヒーリング効果だけでなく、ストレス解消や集中力の向上、さらには免疫力の向上に至る効果が期待されており研究がすすんでいる。そのため、今回は、耳鳴り治療だけでなく、もう少し幅広く、安眠、リラックス、仕事の集中にも効果がありそうな音源を選ばせていただいた。

人によって適した音があると思うので、4種類の音源を選び、切りのいい時間を考え各15分。通して流して聴いて1時間で終わるようにした。また、好みの音源があればそれだけを選んで再生を繰り返すのがいいと考えてこのような構成とした。

私たちは自然の一部として生きており、心拍、血圧、呼吸に至るまですべてが規則性持っているが、一回一回違うという不規則性の「1/f ゆらぎ」を自らが刻んでいる。そのため、これら外部の自然音を聴くと自らの持つその「ゆらぎ」が共鳴して自律神経が整えられ、その結果として、精神が安定しリラックス状態になると考えるのはとても自然なことだと思う。

ただでさえ、都会で暮らす人々は様々なストレスにさらされ精神的に不安になる方々も多いようだ。このような中で、沢口氏の録音した純粋な自然の音が、同じような悩みを持つ人々の癒しの一助になれば幸いだと思いひとつのアルバムとしてまとめさせていただいた。

それぞれの「音」に耳をすませば、本当に何も足さない、何も引かない純粋さがそこにはある。


2020年5月7日 北京



■沢口真生(Mick Sawaguchi)
沢口音楽工房 UNAMAS- Label 代表。Fellow member AES and ips

1971年よりNHK にてキングエンジニアとして芸術祭大賞・放送文化基金賞・IBC ノンブルドール賞・バチカン希望賞等の受賞作を担当しAES ips,ABU.JASなどから優れた業績と貢献に対して顕彰された。1985 年以降は次世代HD-TVにおける音響表現として未開発のサラウンド制作に取り組み海外からは「サラウンド将軍」と敬愛されている。2001 年より AES や東南アジアを中心にサラウンド制作ワークショッフ・セミナー・ 技術発表を行ないアジアのサラウンド制作を推進。2005年制作技術センター長としてNHK退職後2007 年より高品質音楽制作UNAMASレーベルを立ち上げ高品質音楽制作を行なっている。
日本プロ音楽録音賞ではハイレゾ部門で2013 年、2015 年、2016 年受賞し続く2017年2018年、2019年と同部門最優秀賞とBEST STUDIO賞受賞。
2014 年からは POST 5.1CHサラウンド音響となる11.1CH没入感サラウンドによるアルバム制作に傾注しその成果は、2018年8月のAES INT CONFERENCE Spatial Reproductionにて発表。

オフィシャルサイト
YouTube UNAMAS4K
サラウンド寺子屋塾 5.1 Surround Terakoya Lab

近著は、
サラウンド入門(東京藝術大学出版)
サウンドデザイン・バイブル(兼六館出版)





■制作クレジット
Producer: Naofumi Yazaki (Sony Select China Chief Editor)
Field Recording: Mick Sawaguchi (Mick Sound Lab)
Mix/Edit/Mastering: Mick Sawaguchi (Mick Sound Lab)

Field Recording by
SANKEN CUW-180 
SONOSAX SX-R4 4CH with 96KHz-24bit/192KHz-24bit

Album cover: Alex Stemmer
Photo by Mick Sawaguchi .Ari Trofeo
J.K Design: M-Works
Text translator:  董霞 Dongxia

Produced by
Mick Sound Lab  UNAMAS-Label  Mick.Sawaguchi

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