【5/15更新】 ハイレゾで聴く 世界音楽漫遊記 musical travel around the world ~カナダ編~

2020/05/15
e-onkyo musicでは世界各国の文化に触れていただこうと「2020 ハイレゾで聴く世界音楽漫遊記」と題して、世界の音楽を連載形式でご紹介しています。
それぞれの国を代表する「オーケストラ」「作曲家」をはじめ、その国の「伝統音楽」や「民謡」、そして現代の「ジャズ」「ポピュラーミュージック」をご紹介。日本ドイツ、イギリスと続きましたが、今回は北米の「カナダ」の音楽をご紹介!。是非この機会にハイレゾで世界各地の音楽にふれてみてください。

◆メニュー

カナダを代表するオーケストラ
カナダの作曲家/演奏家
カナダの伝統音楽
カナダのジャズ
カナダのポピュラーミュージック


◆カナダを代表するオーケストラ

カナダのクラシック音楽には、ヨーロッパからの入植者が17世紀以降にもたらした西欧やヨーロッパのクラシック音楽の伝統に根ざしたさまざまな音楽スタイルが含まれます。1867年にカナダが国家として誕生して以来、カナダは独自の作曲家、音楽家、アンサンブルを生み出してきました。また、教育機関、音楽院、コンサートホール、公共ラジオ放送CBCなどの音楽インフラも整備されています。楽団としてはモントリオール交響楽団トロント交響楽団、バンクーバー交響楽団といった交響楽団をはじめ、ターフェルムジーク・バロック管弦楽団、イ・ムジチ・ドゥ・モントリオールなどの有名なバロック・オーケストラや室内合奏団を輩出してきました。


モントリオール交響楽団(Orchestre symphonique de Montréal、略称OSM)

現在のモントリオール交響楽団は、ウィルフリード・ペルティエ(Wilfrid Pelletier)により1934年に結成された「交響楽団」(Les Concerts Symphoniques)にさかのぼり、1954年から現在の楽団名に改名された。創設時から1963年までプラトー・ホールを本拠としたが、1964年からプレイス・デ・アーツとザール・ウィルフレッド・ペレティエで演奏活動を行うようになった。2011年から本拠をモントリオール・シンフォニー・ハウスに移した。歴代首席指揮者には、イーゴリ・マルケヴィチズービン・メータなどが名を連ねている。1977年にシャルル・デュトワが音楽監督に就任し来日公演も行い、日本各地での演奏会は好評を博した。2006年に、ケント・ナガノが音楽監督に就任した。




The John Adams Album
モントリオール交響楽団ケント・ナガノ

アメリカの作曲家ジョン・アダムズの代表的な管弦楽作品を、ジョン・アダムズの長きにわたる擁護者の一人ケント・ナガノモントリオール交響楽団演奏で指揮。作曲者と指揮者との強い信頼関係から生まれたアルバムといえる。1979年の最初のオーケストラ作品「Common Tones in Simple Time」、1985年の「Harmonielehre」、1986年の「Short Ride in a Fast Machine」というアダムズの対照的な3つのオーケストラ作品を収録。


死の舞踏~魔物たちの真夜中のパーティ
モントリオール交響楽団ケント・ナガノ

DECCAでの2作目となる本作は、"ハロウィーン"をテーマにしたコンセプト・アルバム。長く親しまれている名曲から、演奏される機会は少ないながらも魅力溢れる珍しい作品を収録。サン=サーンスの「マカーブルの舞踏曲」、ムソルグスキーの「禿山の夜」、デューカスの「魔術師の見習い」、ドヴォルザークの「昼下がりの魔女」等、いずれも「魔法・魔女・悪魔」といったテーマを題材にした作品で、各作曲家たちの美しく、おどろおどろしい描写表現が聴きどころ。



Ludwig Van Beethoven: Piano Concertos Nos. 4 & 5
Till FellnerMontreal Symphony OrchestraKent Nagano

ECM New Seriesからリリースされた2枚のバッハのアルバムが世界的に高い評価を得ているオーストリアのピアニスト、ティル・フェルナーが、指揮者のケント・ナガノモントリオール交響楽団と組んで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と第5番を繊細かつ綿密に解釈しています。この作品がフェルナーのECMでの初のオーケストラ録音。透明感と静謐な美しさが際立った演奏です。


トロント交響楽団(Toronto Symphony Orchestra、略称:TSO)

1922年に設立。1982年まではマッシーホールで定期演奏会を行い、それ以降はロイ・トムソンホールで演奏している。例年20万人の集客を誇り、しばしば生演奏がCBC放送を通じて放送されている。RCAやフィンランディアなどのレコード会社や、CBCの自主レーベルに録音を残してきた。1965年から1969年まで小澤征爾が首席指揮者を務めた事は日本でもよく知られている。直近の音楽監督は2004年から2018年までピーター・ウンジャンアンドルー・デイヴィスが現在、TSOの暫定芸術監督を務めている。2018年9月17日、ウンジャンの後任としてグスターボ・ヒメノが発表され、2020-21シーズンからの在任が発表された。



Vaughan Williams: Piano Concerto, Oboe Concerto, Serenade to Music & Flos Campi
Toronto Symphony Orchestra

ピーター・ウンジャンが、カナダのスター・ソリストたちに支えられて、ヴォーン・ウィリアムスの精巧なプログラムを指揮した2018年録音。オーボエ協奏曲ではサラ・ジェフリー、Flos campiではエルマー・イゼラー・シンガーズ、ピアノ協奏曲ではルイ・ロルティを迎えている。ウンジャンのTSOの音楽監督としての14年間の最後にふさわしい記念すべき作品。


Handel: Messiah, HWV 56
Toronto Symphony OrchestraAndrew DavisAndrew StaplesToronto Mendelssohn Choir

アンドルー・デイヴィスが桂冠指揮者を務めるカナダの名オーケストラ、トロント交響楽団とトロント・メンデルスゾーン合唱団を指揮した新たな『メサイア』は、アンドルー・デイヴィス自身の校訂によるもので、管楽器やマリンバを含むパーカッションも加わったモダン・シンフォニー・オーケストラと合唱団に最適な編成を実現した。


Rimsky-Korsakov: Sheherezade, Op. 35
Toronto Symphony OrchestraPeter Oundjian


トロント交響楽団ピーター・ウンジャンの英CHANDOSレーベルでの一作目。取り上げたのはアラビアン・ナイトを題材としたロシアの作曲家リムスキー=コルサコフの大作『シェエラザード』。4つの楽章を通して、リムスキー・コルサコフはアラビアの夜の物語の個々のエピソードやイメージを、まばゆいばかりの大胆なオーケストラの色彩で暗示しています。ここではウンジャンとTSOによる非常に洗練された演奏で聴くことができる。


ターフェルムジーク・バロック管弦楽団(The Tafelmusik Baroque Orchestra)

カナダのトロントを本拠に活動する古楽器オーケストラ。オーボニストのケネス・ソルウェイとファゴット奏者のスーザン・グレイヴスによって1979年に設立された。1981年よりジャンヌ・ラモンが音楽監督兼コンサートマスターを務めており、2017年にイタリア出身のエリサ・チッテリオが引き継いだ。また1981年にターフェルムジーク室内合唱団を併設した。レコーディングは、ヴィヴァルディやJ・S・バッハ作品集など、主要なバロック作曲家のものが出ている。また古典派以降のものとしては、ブルーノ・ヴァイル指揮でハイドン・モーツァルトの交響曲シリーズや声楽曲、ヴァイル指揮ヨス・ファン・インマゼールのフォルテピアノ独奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲全集などがある。



Vivaldi con amore
Tafelmusik Baroque Orchestra

ターフェルムジークのこの画期的な録音、『Vivaldi con amore』は音楽監督エリサ・チッテリオとのオーケストラの最初のもの。この全曲ヴィヴァルディでまとめられたアルバムは、ヴァイオリン、オーボエ、ファゴット、リュートのための各協奏曲でヴァイオリンのソリストでもあるチッテリオとオーケストラのメンバー、そしてアンサンブル全体の技術の高さを示している。個々のパートがどのようにして全体を構成しているのかを聴き手に味わせてくれ、ターフェルムジークの新しいリーダーを歓迎するのにもふさわしい録音となった。


Tales of Two Cities: The Leipzig-Damascus Coffee House
Tafelmusik Baroque Orchestra


ライプツィヒとダマスカスというヨーロッパと中東の二つの都市にまつわる音楽劇のサウンドトラック。両都市は古代の交易路の十字路に位置しており、”コーヒーハウス”は、当時最も優れた音楽家たちが音楽を演奏していたことでも有名だった。この音楽劇では、バッハ、テレマン、ヘンデルなどの作品をはじめ、アラビア音楽の宝庫であるクラシック音楽を、当時のコーヒーハウスの人々が楽しんでいたかもしれないスタイルで演奏している。録音時の音楽監督はヴァイオリニストのジャンヌ・ラモン。


Beethoven: Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125 "Choral" (Live)
Tafelmusik Baroque OrchestraBruno WeilSigrid PlundrichMary-Ellen Nesi,  Tafelmusik Chamber Choir,他


カナダを代表する古楽器集団ターフェルムジークによるベートヴェン第九。北米の古楽器グループによるベートーヴェンの交響曲9曲録音は史上初の快挙となった。トロント王立音楽院のケルナー・ホールにて2016年2月に録音が行われた。この録音は、ターフェルムジークが創立以来初めて「クラウド・ファンディング」により実現したもので、120人を超える支援者から1万6千カナダドルが集められた。



◆カナダの作曲家 / 演奏家

作曲家
カナダの著名な作曲家にはクロード・ヴィヴィエ、アンドレ・マテューヒーリー・ウィランジャン・パピノー=クーチュアバーバラ・ペントランドハリー・サマーズなどがいる。また、映画音楽の作曲家としてハワード・ショア、ヒーリング音楽の作曲家としてアンドレ・ギャニオンが世界的によく知られている。ポピュラー音楽の分野ではパーシー・フェイスデイヴィッド・フォスターなどがカナダ出身である。


Mathieu: Concerto de Québec & Works for 2 Pianos
Alain Lefèvre, Hélène Mercier

ケベック出身のピアニスト、作曲家アンドレ・マテュー(1929-1968)。「カナダ、ケベックのモーツァルト」とも称され、ラフマニノフからも一目置かれていましたが、39歳の若さでこの世を去ってしまいました。そんなマテューの作品ですが、カナダのピアニスト、アラン・ルフェーヴルはすでに40年間も彼の作品を演奏し続け、その復権に尽力しています。このアルバムに収録された「ピアノ協奏曲第3番」は、1942年の秋、まだ13歳だったマテューが作曲を初め、翌夏に完成させたという作品。他の2曲も、1940年代に書かれた表現力豊かな驚くべき作品。


Papineau-Couture: Quatuors à cordes Nos. 1-4 & Trio Slanò
Quatuor Molinari

2016年に生誕100年を迎えたカナダの作曲家ジャン・パピノー=クーチュアによる4つの弦楽四重奏曲。ジャン・パピノー=クーチュアは1945年からモントリオール音楽院で教鞭をとり、その他にも地元の音楽教育に大きな貢献をしました。パピノー=クーチュアの音楽は、新古典主義から徐々に進化し、ポリモードとポリトーナルを駆使した無調音階を用いたスタイル。演奏するモリナーリ弦楽四重奏団はモントリールを拠点とするカナダを代表するグループで、現代音楽をレパートリーの中心としています。完璧な技術と鋭敏な感性で、輝くような演奏を繰り広げています。


Staniland: Go by Contraries
Erika Switzer

ピアニストのエリカ・スウィッツァーと二人の声楽家によるアルバータ州出身の若手作曲家アンドリュー・スタンランド作品集。スタンランドはトロント大学で作曲の修士号と博士号を取得し、2010年にはニューファンドランド記念大学音楽学部の教授に就任、作曲と電子音楽を教えている。収録された3つのドラマチックな曲は、作曲家に対する敬意と音楽性、確かなテクニックをもって演奏されています。それぞれの作品は、言葉と音を組み合わせて、示唆に富む表題音楽的な作品を生み出す作曲家の天性の才能を示しています。少しメロドラマチックすぎるかもしれませんが、これらの素晴らしい作曲、演出、演奏は必聴です。


演奏家
カナダ出身の著名なクラシックの演奏家にはピアニストのグレン・グールドルイ・ロルティヤン・リシエツキ、ヴァイオリニストのジェームズ・エネス、指揮者のヤニック・ネゼ=セガン、チェロ奏者のジャン=ギアン・ケラス、フルート奏者のティモシー・ハッチンズなどがいる。


バッハ:インヴェンションとシンフォニア
Glenn Gould

グールドは1932年トロントに生まれ。わずか50年の人生を疾走した孤高の天才グレン・グールドの芸術の精華は、生涯にわたって演奏し続けた大バッハの音楽とされています。1964年録音のこのアルバムでグールドは、教育用音楽と考えられていた「インヴェンションとシンフォニア」に新たな生命を与えたといえるでしょう。ノン・レガート奏法によって二声、三声のからみ合いがくっきりと浮かび上がり、グールドのうなり声や椅子のきしみ音までが異常なリアルさで聴き手に迫ります。アクションに改造を施したスタインウェイの独特の響きも堪能できます。


James Ehnes plays Prokofiev
James EhnesBBC Philharmonic OrchestraGianandrea NosedaAmy Schwartz MorettiAndrew Armstrong

「地球上に存在する完璧なヴァイオリニストの1人」という最大級の評価を受ける21世紀のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニスト、ジェームズ・エーネス。カナダ中央部のマニトバ州生まれ。世界中で称賛を受けてきたエーネスが、ここで手掛けるのはプロコフィエフのヴァイオリン作品。「ヴァイオリン・ソナタ」では、バルトークで見事なコンビネーションを披露してくれたアンドルー・アームストロングと再共演。世界トップクラスの才能と音楽性の共演は、別次元のスケールを持つプロコフィエフを聴かせてくれる。


シューマン:交響曲全集
ヨーロッパ室内管弦楽団ヤニック・ネゼ=セガン

オペラとオーケストラの双方で才能を開花させ、現代的で柔軟な演奏で頭角を現しているヤニック・ネゼ=セガンによるシューマン交響曲全集。パリで大絶賛を浴びたヨーロッパ室内管弦楽団とのコンサート・シリーズの演奏で、ライヴ録音ならではの生命感あふれる名演を繰り広げています。ネゼ=セガンは1975年モントリオール生まれ。2008年から2018年までロッテルダム・フィルの首席指揮者を務め、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、メトロポリタン歌劇場などにも客演しています。
 



◆カナダの伝統音楽

カナダの伝統音楽には長い歴史があり、古くは16世紀までさかのぼることができます。その多くはイギリス、アイルランド及びフランスからの初期開拓者が持ち込んだ音楽に由来しており、それを土台にして先住民やその後に世界各国からやってきた移民たちが持つ伝統音楽の要素を取り入れながら発展、変化していきました。カナダの伝統音楽で欠かせない楽器はフィドル(バイオリン)で、1645年にケベックでの結婚式で演奏されたという記録があります。広大なカナダには、その歴史を通じてそれぞれの地域で特有の音楽シーンがあり、北部のイヌイットの音楽、大西洋に面した東海岸の音楽、フランス語圏のケベックの音楽など、さまざまなコミュニティの音楽スタイルが複雑に絡みあって存在しています。1940年以降はその伝統の影響を受けながらも自作の曲を歌うスタン・ロジャース、ブルース・コバーン、ゴードン・ライトフットジョニ・ミッチェルレナード・コーエンなどのフォーク系シンガー・ソングライターが現れ、活躍し始めました。


Valse de Noël: An Acadian-Cajun Christmas Revels
Cambridge Symphonic Brass EnsembleThe Revels ChorusThe Revels Children Chorus、他


東部大西洋岸のアカディア地方(現在のノバスコシア州周辺)のフランス語の民謡とそこからアメリカのルイジアナに進出していった人々が作りだしたケイジャン音楽の数々を収録。現在、この2つは大きく異なりますが、歴史的なつながりは残っています。 フィドルは、アカディアンとケイジャンの両方のダンスミュージックの原動力であり、伝統的な歌の多くは、深い郷愁を体現しています。このコレクションには、これらの文化的に豊かなコミュニティの両方からの声楽と器楽の両方が含まれています。


Skye Consort & Emma Björling
Skye Consort

スカイ・コンソートはケベック州モントリオールを中心に活動するアンサンブル。このグループの目標は、さまざまな世界の伝統の音楽を芸術音楽の解釈で演奏すること。このアルバムではスウェーデンのフォーク・シンガーEmma Bjrlingを迎えケベック、スウェーデン、ノルウェーの伝統音楽とケルト音楽をミックスして演奏しています。それぞれの演奏者は、これらの伝統に独自の解釈をもたらし、声、フィドル、ニッケルハルパ、チェロ、シターンで構成されるこの並外れたコラボレーションを造り出します。渦巻くポルスカ、躍動感溢れるリール、情熱的なラブソング、息をのむような賛美歌、そしてオリジナルの作品を収録。


The Very Best Of Stan Rogers
Stan Rogers

スタン・ロジャースはオンタリオ州生まれのシンガーソングライター。1970年にシングル「Here's to You Santa Claus」でRCAよりデビュー、1977年に1stアルバム『Fogarty's Cove』を出し人気を博すが、惜しくも1982年33歳の若さで飛行機の火災事故により亡くなった。子供の時しばしは夏を過ごした大西洋岸のノバスコシア州での体験が彼の音楽に大きな影響を与え、しばしば使われるフィドルの伴奏や特徴的なギターチューニングも含め彼の音楽らケルトのテイストが感じられる。こちらは「Northwest Passage」、「Barrett's Privateers」、「The Mary Ellen Carter」等彼の代表作を収録したコンピレーション。



◆カナダのジャズ

カナダの最初期のジャズミュージシャンはアメリカから興行にやってきたミュージシャンたちで1910年代半ばから後半にかけて、ボードビルのステージとキャバレーに出演しました。1920年代になると多くのダンスバンドが幅広いレパートリーの一部として、当時のアメリカンジャズのヒット曲を演奏しました。1940年代は伝統的なディキシーランドスタイルのジャズと新しい形式のビバップがカナダのジャズの発展に重要な影響を与えました。オスカー・ピーターソンはちょうどその頃に演奏を開始して、ラジオなどを通じて有名になり、カナダの最初のジャズスターとなりました。ハードバップを通過して1960年代になるとポール・ブレイケニー・ホイーラーが前衛ジャズの分野で世界的に活躍するようになります。ブレイはオーネット・コールマンのキャリア初期にバンドメンバーを紹介するなど尽力し、1952年にイギリスに移住したホイーラーはメイン・ストリームのジャズバンドで働く傍ら、ロンドンで急成長するフリー・ジャズのシーンでエヴァン・パーカーらと実験的なジャズを探求しました。1970年代~1980年代は他の国と同じく、他のジャンルとの融合が進みますが、この時期には世界的に活躍するアーティストはあまり出ませんでした。1990年代になるとトロント出身のホリー・コールがカナダ出身のジャズ・ヴォーカリストの中ではかつてないほどの人気を博しました。その後も現在に至るまでカナダはダイアナ・クラールエミリー・クレア・バーロウモリー・ジョンソンジル・バーバーダイアナ・パントンスージー・アリオリ等の女性ジャズ・シンガーの他、マイケル・ブーブレマット・ダスクなどの世界で活躍する男性ジャズ・シンガーも多数輩出しています。

We Get Requests
The Oscar Peterson Trio

オスカー・ピーターソンはケベック州モントリオール出身。1949年にノーマン・グランツの手により、ニューヨーク市のカーネギー・ホール出演にてアメリカに進出した。その後グランツが創設したヴァーヴ・レコードに籍を置き、重要なキャリアを築いた。こちらはその時期の代表作。ベースはレイ・ブラウン、ドラムスはエド・シグペンでこのトリオでのヴァーヴ最終作となる。タイトルどおりファンのリクエストによって人気の高いスタンダードやボサノヴァを取り上げ、短い中にもピーターソンの技術と粋が凝縮。粒のそろった美しいタッチと端正なフレージングで綴られる音楽は、まさに珠玉。


A Message From Newport
Maynard Ferguson

ピーターソンと同じくモントリオール出身のトランペッター、メイナード・ファーガソン。1949年、21歳の時にアメリカに移住、スタン・ケントン楽団に加わり頭角を現す。非常に高い音を奏でる事ができるハイノートヒッターとして知られている。日本では『アメリカ横断ウルトラクイズ』のテーマ曲「スター・トレックのテーマ」での演奏が一番有名だろう。こちらのアルバムは1958年発表のビッグ・バンド作品だが、タイトルとは異なり、実際はNYでのスタジオ録音。タイトで切れの良い13人編成のビッグ・バンドをバックに、思う存分テクニックを披露する。


Out Of The Cool
The Gil Evans Orchestra


1912年オンタリオ州トロント生まれのジャズ・ピアニスト/編曲家。アメリカのジャズビッグバンド界に革命をもたらした一人として著名で“音の魔術師”の異名を持つ。マイルス・デイヴィスとの協作が多く、「マイルスの知恵袋」とも呼ばれた。1948年には、マイルス・デイヴィス、ジェリー・マリガンらと九重奏曲楽団を結成。1949年から1950年にかけて録音されたセッションは、後に『クールの誕生』として発売された。本作は1961年インパルスより発表された意欲作。エルヴィン・ジョーンズロン・カーターら精鋭を従えて、鮮やかな音の万華鏡を紡ぐ。



Deer Wan
Kenny Wheeler


ケニー・ホイーラーはオンタリオ州トロント生まれのトランペット奏者。1950年から1951年まで、トロントのロイヤル・コンセルヴァトワールで和声を学び、1952年にロンドンに進出。ダンス・バンドで演奏するかたわら、1959年にはジョン・ダンクワースのオーケストラのメンバーとなり、作曲を学ぶ。その後フリー・ジャズのムーブメントに身を投じる。独ECMに多数の録音を残しており、本作もその一作。このアルバムでのホイーラーの演奏はメランコリーなものから勢いのあるものまで幅広く、彼の代表作の一枚と言える。


Canada Day II
Harris Eisenstadt

トロント生まれの中堅ドラマー、ハリス・アイゼンシュタット。現在はNYブルックリンを拠点に活動しており、2000年以降60枚以上のレコーディングに参加している。こちらのアルバムはバンクーバーのSONGLINESレーベルより2011年にリリースされた。ピアノの代わりにヴィブラフォンを入れたカルテットでメロディアスで洗練されたリズムを持つという点で現代のメインストリームにスムーズにフィットする。全体としては朴訥と優しく明るいサウンドで鼻歌を歌いながら聴くには最適な曲の数々を提供してくれている。

Nudging Forever
The Mike Janzen Trio


カナダ、トロントを拠点として活動しているジャズ・ピアニスト/作曲家マイク・ジャンゼンによる美しくダイナミズムに溢れたストリングスとの共演盤。次世代に台頭するアーティスト / クリエイターを発掘し世界へ発信するトロントのレーベルCREATOR'S LOUNGEからのリリース。マイクのピアノは憂いを帯びた落ち着いたプレイと残響を生かしたトーンで楽曲を締め、リズム隊も最低限の音使いで楽曲を支えており、アルバム全体のアンビエントなトーン、美しく奥深いサウンド作りに大きく貢献している。威厳と甘い香りに包まれた美しき名作。


Stepping Out 
Diana Krall

ダイアナ・クラールはカナダ西部のブリティッシュコロンビア州のブルースとブギウギの流れる家庭で生まれ育ち、17歳でボストンのバークリー音楽へ入学、1990年にNYへ転居。こちらはモントリオールのJustin Time Recordsより1992年リリースされた1stレコーディング。すでにジャズ~ブルース・オリエンテッド・シンガーとしての真価を発揮しており、ピアノ・プレイには“ビハインド・ザ・ビート”的な味わいを見せており、単なる歌の伴奏レベルにはないことがはっきりと判る。今やジャズ界トップのシンガーであり、優れたジャズピアニストでもある、ダイアナ・クラールの原点がここに。

The Very Thought of You
Emilie-Claire Barlow

トロント出身で今もカナダを中心に活躍するエミリー・クレア・バーロウの2007年のアルバムで、2008年のジュノー賞ではヴォーカル・ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた。トロントでプロのミュージシャンである両親のもとに生まれたバーロウは、レコーディングスタジオで育ち、7歳の時にはテレビやラジオのコマーシャルを歌い始めていた。本作は自身のプロデュースでスタンダードからボサノバ、シャンソンまで取り上げており、高速のスキャットやベースだけをバックにしたヴォーカリーズなど確かなテクニックを堪能できる。この配信バージョンはモントリオールを拠点とする高音質レーベル2xHDより2015年にリイシューされた。

MY FUNNY VALENTINE THE CHET BAKER SONGBOOK
MATT DUSK

ジャズ・シンガー、マット・ダスクの2013年作。トロント出身で7歳の頃から声楽の学校へ通いオペラやクラシックを歌っていたが、17歳の時にトニー・ベネットサラ・ヴォーンの曲を聴いてジャズへと転向する。本作は、彼の憧れの存在とも言うべきチェット・ベイカーに捧げたソングブック形式の作品。80人編成ものオーケストラを従えて、チェットの楽曲を大人の魅力で歌い上げ、その歌声は<21世紀のフランク・シナトラ>と形容されるほど。奥ゆかしい魅力漂う、正統派なオトナのJAZZアルバム。



◆カナダのポピュラー音楽

カナダの音楽は、先住民族、アイルランド人、イギリス人、フランス人それぞれの文化同士が影響しあって育まれ、その後隣国であるアメリカとの接近や住民の移住等で、音楽的にも大きな影響を受けた。通底する音楽性としては、概ねカントリーやフォーク、ブルース等をベースしたものが多いのが特色。
現在ではカナダの音楽産業は世界でも6番目に大きな市場となり、ニール・ヤングやブライアン・アダムス、アヴリル・ラヴィーンやセリーヌ・ディオン等、数多くの世界的なスターを生み出している。


1960~1970年代

最初のカナダ人ポップスターは、「ダイアナ」の大ヒットでも知られるポール・アンカだったとされている。その後映画『イージー・ライダー』で「Born To Be Wild」が使用されたことで、ブルースロック/ハードロックバンドのステッペンウルフが世界的なヒットを記録。60年代後半以降も、レナード・コーエン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル等、ブルースやカントリーをバックグラウンドとしつつ、現在でも高い人気を誇るアーティストが誕生している。


『Love Songs』
Ginette Reno

セリーヌ・ディオンが最も敬愛する歌手のひとりとしても知られる、フレンチ・カナディアンの女優、作曲家、歌手ジネット・リノが、1965年から75年の間にイギリス、およびアメリカで制作したテイクからベストテイクを詰めた作品集。


『Steppenwolf』
Steppenwolf

映画『イージー・ライダー』に使用されたことで誰もが知る名曲となった「Born To Be Wild」を含む、ステッペンウルフのデビュー作にしてハード・ロックの祖としても名高き作品。ジョン・ケイのワイルドなヴォーカルとマイケル・モナークの歪んだギターが、武骨な男臭さを演出する。

 

『Music From Big Pink』
The Band
カントリー、フォーク、ロック、R&B、ソウルといったさまざまな音楽性を内包したThe Bandの記念すべきデビュー作。シングルとしてもスマッシュヒットした「ザ・ウェイト」や密接な関係にあったボブ・ディラン作の「アイ・シャル・ビー・リリースト」等を収録。ディランはジャケットに使われた絵も手がけている。


『New Skin For The Old Ceremony』
Leonard Cohen

カナダの音楽史が誇るシンガーソングライター、レナードコーエンの4thアルバム。フォーク・ロックをベースにしながらも、独特のデカダンな雰囲気で特にヨーロッパで絶大な人気を獲得。これ以降、コンスタントに音楽活動を展開。90年代にはトリビュート盤も制作されるほど、後の世代に多大な影響を与えている。


『Neil Young』
Neil Young

バッファロー・スプリングフィールドの解散を経た、ニール・ヤングの1stソロアルバム。
カントリー・ロックをベースに 入念に作り込まれた世界観が光る。ジャック・ニッチェのストリングス・アレンジが美しい超名曲、映画『いちご白書』挿入曲「The Loner」も収録。

 

『Blue』
Joni Mitchell
今も世界中から敬愛される偉大なる女性シンガー・ソングライター、ジョニ・ミッチェルの最高傑作の誉れ高い通算4作目のアルバム。特殊なリズム解釈のヴォーカルとオープン・チューニングされたギターによる響きが、単なるフォークに留まらない奥行きを描いている。


1980~1990年代
80年代に入りイギリスやアメリカでロックが全盛となる頃、やはりカナダでも多くのロックミュージシャンが台頭してくる。ブライアン・アダムスはカナダでブレイク後、活動の拠点をアメリカ⇒イギリスへと移すなど国際的なスターとなる。Rushはプログレをベーシックとしたハードロックで70年代から人気となり、80年代以降も数多くのヒット作を放つ。90年代になると、アラニス・モリセットやセリーヌ・ディオンを始めとしたポップスターも誕生。たびたび世界のヒットチャートを席巻した。


『Reckless』
Bryan Adams

全世界で1200万枚以上を売り上げ、世界中にその人気を轟かせたブライアン・アダムスのキャリア史上最高の成功作。名手エンジニア、ボブ・クリアマウンテンによるプロデュースとミックスもオーディオ好きにはたまらない1作。


『Test For Echo』
Rush

ラッシュが1996年に発表した今作は、ハードロック・バンドとしてキャリアをスタートさせたラッシュの、その事実を再認識させてくれるかのような、最もヘヴィでシャープな作品に仕上がっている。

 

『Voice Of Reason』
Harem Scarem
日本でも高い人気を誇る、カナディアン・ハードロックの旗手ハーレムスキャーレムの3rdアルバム。出世作となった2ndアルバム「Mood Swings」のメロディアスさは影を潜めたが、クオリティの高い楽曲と卓越した演奏能力は本作でも健在。


『Jagged Little Pill』
アラニス・モリセット

21歳にしてジャニス・ジョプリンの存在感とジョニ・ミッチェルの繊細な世界観を兼ね備えた、90年代最後の個性派女性ヴォーカリスト、アラニス・モリセットの1995年リリースのデビュー・アルバム。全世界で3,000万枚という驚異的なセールスを記録した大ヒット作。


『The Best so Far...』
セリーヌ・ディオン

全世界トータルセールス驚愕の約2億5千万枚を誇る、グラミー賞5冠、アカデミー賞2冠の世界的歌姫=セリーヌ・ディオン。「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」(映画『タイタニック』主題歌)、「トゥー・ラヴ・ユー・モア」等の大ヒット曲をコンパイルしたベストアルバム。
 


2000年代
2000年代に入ると、ニッケルバックやアヴリル・ラヴィーンがスマッシュヒットを連発し、名実ともにカナダ産ロックアイコンとなっていく。カナダらしいカントリーソングの人気も衰えず、ベテランのKDラングがヒット。ショーン・メンデスをはじめとした若い世代のシンガーソングライターも誕生している。カーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Maybe」が爆発的なヒットとなるなど、女性ポップシンガーの強さも衰えない。ジャスティン・ビーバーも若い世代を中心に全世界で高い人気を得る。アメリカのみならず世界中のヒットチャートでメインストリームとなったヒップホップ/R&Bはカナダでも例外ではなく、ドレイクやザ・ウィークエンドが世界中のヒットチャートを賑わせている。


『Invincible Summer』
k.d. lang

カントリー・ベースなスタイルのシンガーソングライター、k.d. langの2000年リリースの8thアルバム。カナダを離れカリフォルニアで制作された、それ以前の作風とは異なるポジティブで明るい雰囲気が満ちた作品。


『Handwritten (Revisited)』
Shawn Mendes

トロント出身、98年生まれのシンガーソングライター、ショーン・メンデスの1stアルバム。YouTubeやSNSにアップされたオリジナル曲がティーンの間で火が付いた新時代のアーティスト。「Handwritten」はカナダだけでなく全米でもチャート1位となり、プラチナディスク認定を獲得。
 

『Emotion』
カーリー・レイ・ジェプセン
「Call Me Maybe」が爆発的なヒットとなった、カーリー・レイ・ジェプセンの2ndアルバム。グラミー賞アーティストでもあるマックス・マーティン等のコラボレーションでも話題となった。


『Purpose』
ジャスティン・ビーバー

YouTubeを主な活動の場としていたが、2010年にCDデビュー。瞬く間にカナダの新時代のセレブリティとしての座を確立した。以降様々なスタイルで音楽活動を続け、2015年リリースの本作は世界7か国以上でナンバー1を記録。


『Feed the Machine』
Nickelback

2000年代の世界的なモダン・ヘヴィネスブームを勝ち抜いた、カナダを代表すロックバンドNickelback。2017年リリースの本作でもその勢いと音楽性は衰えておらず、全米チャートでも5位を記録。
 

『Head Above Water』
アヴリル・ラヴィーン
2002年、ロック・プリンセスとして鮮烈なデビューを飾り、ガールズロックブームの立役者ともなった。「アメリカ合衆国で活躍する最もパワフルなカナダ人ベスト7」にも選ばれた。本作はライム病から復帰した2019年の作品。8カ国以上でTOP10入りを果たした。


『Scorpion』
Drake

北米の音楽シーンを代表するアーティストの一人。キャリア5作目となるスタジオ・アルバムは全米アルバム・チャート1位を獲得、89の国と地域で‟1日で最もストリーミングされたアルバム”として記録された。「アメリカ史上、最も売れているソロ男性アーティスト」とも評される。


『After Hours』
ザ・ウィークエンド

US、UKでもヒットチャート1位を総ざらいする新世代のR&Bスター、ザ・ウィークエンド。4thアルバムである本作「After Hours」は、本国カナダを含む8か国でチャート1位を記録。
 

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