福岡発⇒カナダ⇒秋葉原経由で届けられた極上ウォーム・ヴォイス:菅原花月

2020/02/19

「新しい音楽との出合い方」にも様々な方法がありますが、ことオーディオを趣味としている皆さんの中には「オーディオのプロからの教えてもらう」ことで、新しい作品に出合ったという経験をされた方も多いのではないでしょうか?今回ここでご紹介するシンガー、菅原花月は、まさにそのオーディオのプロ、秋葉原の老舗ハイエンドオーディオショップ「DYNAMIC AUDIO 5555」島氏の「素晴らしいシンガーさんがいる」という一言から出会いがはじまった驚くべき逸材。福岡をベースに活動をつづけながらも、オーガニックな素晴らしいジャズが数多く生み出される彼の地、カナダでアルバムを制作。その極上ウォーム・ヴォイスが既に多くのオーディオのプロを虜にするシンガー、菅原花月。e-onkyo musicでは、「DYNAMIC AUDIO 5555」のご協力のもと、菅原花月に独占インタヴューを敢行。その素顔に迫りつつ、アルバム『Tenderly』の魅力を紐解いてみようと思います。

 

文・取材◎e-onkyo music 写真◎e-onkyo music 協力◎DYNAMIC AUDIO 5555


★カナダのミュージシャンと作りだしたオーガニックな響きのジャズ
『Tenderly』/菅原 花月


福岡を中心に10年以上活動するジャズボーカリスト菅原花月が、2018年から1年半のカナダトロント滞在中に、カナダを代表するジャズミュージシャン6人と収録した、渾身の1st Album。アレンジャーにはカナダでも今人気のボーカリストDiana PantonやEmillie Clair BarlowのギタリストであるReg Schwagerを招いて、シンプルながらカナダらしい優しく美しいサウンドを繰り広げる。ベーシストにはピアニストGeorge Shearingと長きに渡り時間を共にし、現在も世界的ミュージシャンと共演を続ける、カナダの重鎮、Neil Swainson。彼の参加により、サウンドに更なる重みと説得力あるサウンドに仕上がっている。その上で菅原花月のスモーキー&チャーミングな自然体で表現力豊かな歌が伸びやかに繰り広げられ、スタンダードジャズ、ボッサノバ、ホーンセクションによるミニビッグバンドの様なアレンジまで、聴き応え満点のスウィートテンダーな作品。




■菅原花月 独占インタヴュー


-- 簡単なプロフィールをお教えください。
菅原花月(以下:花月) -- シンガーの菅原花月(すがわら・かつき)です。出身は長崎で、高校を卒業するまで長崎にいました。その頃からシンガーとして活動はしていたのですが、当時はジャズではなくR&BやSOUL系の洋楽を歌っていました。実は父もミュージシャンで(サックス・プレイヤーの菅原彰司氏)、その当時福岡に住んでいたので、自分も高校を卒業して福岡に住むようになりました。20歳の時にジャズ・バーで歌うお仕事をいただいて、それをきっかけにジャズを歌うようになったのですが、そこからどんどんジャズに嵌っていきました。これまで、ジャズだけではなく色んな音楽に関わってきたのですが、自分の体にフィットするものが、やはりジャズでした。

-- ジャズ・ミュージシャンのお父様について少しお伺いさせてください。
花月 -- 父はサックス・プレイヤーで、元々長崎に住んでいたのですが、若い時は東京で演奏したりもしていたんです。その後、私が2歳くらいのころから高校を卒業するあたりまで、長崎で[Goody Goody」というジャズ・クラブを経営していたんです。父もそこで毎晩のように演奏をしていました。ジャズ・クラブを閉店したあとも演奏活動を続けていて、しばらくは福岡で演奏をしていたのですが、昨年、地元の長崎に戻って「これからは長崎の音楽を活性化させたい!」と言って現役で頑張っています。

-- お父様がジャズ・クラブを経営されていたことが、花月さんご自身がジャズに向かった事に大きな影響を与えていますか?
花月 -- それはあったと思いますね。父のお店はすごく良いお店だったんです。「長崎でジャズ・クラブといえばここ!」みたいな感じで。結構大きくてステージもしっかりあるし、中二階とかもあって「ザ・ジャズ!」みたいなお店だったんです。東京のアーティストの方がツアーで来るときは、長崎ではよくそこで演奏していました。あと海外のアーティストの方や大御所の方が長崎のホールとかで演奏した時は、打ち上げで来ていただいたりしていました。

-- その頃は花月さんもお店に出演したり、そういった方と共演したりとかは?
花月 -- それがないんです。東京から山本剛さんや中本マリさんたちが来るときはお店に行って観ていたのですが、自分がそこで歌うという事は無かったです。でも「私もいつかここで歌いたいな~」とは、ずっと思っていました。父親がミュージシャンという事もあるのですが、私が結構シャイだったで、毎日のように家で歌ってはいたのですが、父親に向かって私も音楽の道に進みたいとは言えなかったんですよ。






-- お父様から音楽的な影響は受けましたか?
花月 -- 私が本格的にシンガーとして活動を始めてからは、音楽理論を学んだり、楽譜の書き方や、いろんなアーティストのことなど、音楽の勉強は父に教えてもらったりしました。

-- そういった身近な存在に音楽を学べるのはうらやましい環境ですね。
花月 -- 私の中では普通の環境だったのですが、理解者が家族の中にいるのは恵まれているかもしれませんね。私がジャズを始めたときも父親の出演するライブに呼んでもらってステージで歌わせてもらったりしました。父は、トランぺッターの村田浩さんと仲が良くて、九州にいらしたときは良く一緒に演奏しているのですが、そのライブに連れて行ってもらって歌わせてもらったりもしました。最初はそうやって、歌う機会があったり、あとは若いミュージシャンを育てようという気概を持った先輩方に呼んでいただいたりしてステージを学んだ感じです。いろんな事に興味があったので、そのうち自分でライブがやりたくなって、自分で選曲して楽譜を書いたり、集客をしたり、若いミュージシャンを集めて自分たちのイベントを組んだり、色々なことをやってきました。

-- ご自身が一番影響を受けたシンガーや作品は?
花月 -- いろんな作品を聴いてきたので、すごく沢山います。時期によってもフォーカスして聴いているものも違ってくるし。10代の頃はローリン・ヒルや当時流行っていたアリシア・キーズなんかを聴いてよく真似してました。最初に聴いたジャズは、R&Bにも近かったこともありナタリー・コールでした。彼女は英語の発音もすごくきれいだし分かりやすく歌うので、最初に聴いていてよかったなと思います。いまはエラ・フィッツジェラルドとかサラ・ヴォーンとか王道の人たちですね。年齢を重ねるにつれて、そういった人たちに近づいていきたいなという想いが強くなってきました。いまの一番でいうとすごく難しいですけど、やっぱりエラ・フィッツジェラルドですね。当たり前ですけど表現力と歌唱力。スキャットも信じられないくらいアイデア豊富だし、スウィング感とかすべてにおいてスゴイです。

-- そんな福岡の活動を経て、今回のアルバム『Tenderly』が収録されたカナダに行かれる訳ですが、どのような経緯でそこに至ったのでしょうか?
花月 -- 自分はジャズの曲を歌っているので、英語力を上げたいなと思っていました。それで最初はアメリカに行きたいと思っていたのですが、ビザの関係で長期滞在が難しい事と、カナダはダイアナ・クラールやエミリー・クレア・バーロウ、ダイアナ・パントン、ソフィー・ミルマンなど素晴らしいジャズ・シンガーが沢山いるのを知っていたのでカナダに決めました。向こうには2018年3月から2019年8月まで滞在していました。

-- 向こうに行く前から、ミュージシャンとのコネクションなどはおありだったのですか?
花月 -- カナダに行く前は全くコネクションがありませんでした。でも向こうに行くにあたり何か情報が欲しいなと思っていた時に、ちょうど福岡の知り合いのカフェにカナダのミュージシャンが演奏にくるという事を教えていただいたんです。それがベーシストのニール・スウェンソン(Neil Swainson)で、そこで彼にカナダに歌の勉強をしに行くと伝えて連絡先を交換しました。それで、カナダに行ってメールをしたら色々と教えてくれたり、ミュージシャンの方を紹介していただいたりしました。それで、自分でもセッションやオープンマイクに顔を出すようになって、それからは次々と向こうのミュージシャンの方とつながっていくという感じでした。






-- アルバムの制作を始めたのはいつ頃ですか?
花月 -- アルバムを作ろうと決めたのは、向こうに行って数か月経った7、8月くらいだったと思います。シンガーとしての活動もそろそろ13年やってきて、1枚くらいアルバムは作っておいた方がいいなと思っていた時だったし、ここで作らないと次はいつチャンスがあるか分からないなと思ったので、カナダにいる間にと思って作りました。

-- 最初からカナダでアルバムを作ろう!という感じではなかった?
花月 -- 頭の片隅にはありましたが、絶対とは考えていなかったです。ミュージシャンとのつながりもさほどなかったのと、レコーディングをした経験もなかったので。イメージが湧けばやろうかなというくらいでした。

-- そのアルバム『Tenderly』ですが、本当に素晴らしい作品だと思います。アルバムのコンセプトやアイデアはご自分でお持ちだったのですか?
花月 -- そうですね。最初にイメージしたのは、今作でプロデュースを手掛けていただいたReg Schwager(ギター、サウンド・プロデュース)さんの作品を聴いたときに感じた、自然の豊かな土地の雰囲気とか、彼の性格もあると思うのですが、のんびりした雰囲気とか、聴いてカナダの豊かな感じがイメージできるような作品になればいいなという感じです。ただRegさんには「こうしてほしい!」みたいな事はあまり伝えず彼の感性に委ねた部分が大きいです。その方がプラスアルファの部分が大きくなるかなと思いました。

-- アルバムの選曲はご自身によるものですか?
花月 -- そうですね。大体は自分で選曲しました。でもRegさんとは、プロデュースをお願いする事になってからは、月に2回くらい、練習がてら一緒に演奏をさせていただいたりコミュニケーションを取っていたのですが、その中で演奏する曲やテンポなども決まっていったという感じです。

-- 今回レコーディングをされたスタジオは?
花月 -- トロントの「Canterbury Studio」というスタジオです。トロントでは名のあるスタジオで、腕の良いエンジニアがいるという事で教えて頂きました。Jeremy Darbyなんですけど、彼に頼んでよかったなと思っています。スタジオ自体はビルではなく、一軒家を改装して作ったような手作り感のあるところなのですが、雰囲気もすごく良かったです。本当は3月に2日間スタジオを押さえていて、そこですべてのレコーディングをする予定だったのですが、実は私が風邪をひいて声が出なくなってしまって、、、それで、その2日間は楽器と仮歌の録音だけをして、ヴォーカルの録音は別の日に改めてレコーディングしたんです。喉が治ってから、すぐにレコーディングをしたかったのですが、人気のあるスタジオで予約が取れなくて、結局1ヶ月くらい延期になってヴォーカルの録音をしました。

-- ヴォーカルの録音まで1ヶ月空いたのは、ご自身にとっていかがでしたか?
花月 -- 一か月のブランクはプラスに働きました。最初はどうしようと思って不安だったんですが、エンジニアさんが録音した音源のインストのみのものをくれたので、1ヶ月間それを聴きながら練習ができました。Regさんとはコミュニケーションも取っていたし、よく一緒に音も出していたんですが、それ以外のミュージシャンの方とはほとんどリハーサルをする時間もなかったし、特にNielさんのベースは、これまで体験したことのないくらいのスピード感があるので、1ヶ月間練習できて逆に良かったです。レコーディングついてもそうですが、自分のリズム感の練習という意味でも、すごく役に立った期間でした。






-- 初めて菅原花月さんの作品を知ったのは、ここ「Dynamic Audio 5555 H.A.L.3」のフロア・マネージャーの島氏から「素晴らしいシンガーさんがいるよ」という事で聴かせていただいたのですが、カナダにいらした花月さんの作品が、どのようにしてDynamic Audioにたどり着いたのでしょうか? 
花月 -- カナダから帰国する前に、ギタリストのReg Schwagerから「ここに連絡するといいよ」とDynamic Audioの島さんのことを教えて頂きました。日本に戻ってCDが完成したので島さんにお送りさせていただき、そこからやり取りが始まりました。その後、昨年の11月にカナダのシンガー、エミリー・クレア・バーロウがRegと私のアルバムのドラマーのFabioを含めたバンドで東京のCotton Clubにツアーで来たのですが、そこに私と島さん、(同じくRegがアルバムに参加した)シンガーのhisakaさんとYutakaさんと一緒に会いに行きました。島さんから、オーディオやハイレゾについて色々と教えていただいたおかげで、今回のe-onkyo musicでのハイレゾ配信にも漕ぎつける事が出来ました。出身も同じ長崎という事もあり、とても深いご縁を感じています。

-- リスナーの皆さんに、この辺を意識して聴いてほしいなどありますか?
花月 -- 面白い部分はたくさんあると思うんですけど、この作品はジャズ・スタンダードだけどポップスっぽい感じがミックスされた感じがあると思います。オールドファッションだけど新しさもあるという感じ。ビバップな部分もあったり、もっとポップな部分もあるみたいな、そんなユニークさを楽しんでいただければなと思います。

-- 最後にe-onkyo musicのリスナーの皆さんにひとことお願いします。
花月 -- 福岡を拠点に歌っているシンガーの菅原花月です。今回の初アルバムは自分なりにユニークな個性もあり、王道のジャズの雰囲気もありポップな部分もあり、初アルバムにしては良く出来たと思うので、一人でも多くの方に楽しんでいただければと思います。

-- 貴重なお話、大変ありがとうございました。







■今後のLIVE情報
4月19日(日) 長崎市メルカつきまちプラザホール ビッグバンドコンサート
5月9日(土)   福岡 柳川 Cafe de SATO
5月17日(日)  広島 ラ・カスエラ
5月30日(土)  長崎 佐世保 フラットファイブ
6月7日(日)  福岡 Jazz Club New Combo




 

■プロフィール
菅原 花月(Katsuki Sugawara)
長崎県出身
ミュージシャンであり、地元長崎でジャズクラブを経営していた父の影響を受け、幼少の頃から音楽に興味を持つ。
8歳の時に、クラシックピアノを習う。
学生時代から、地元長崎でシンガーとして音楽活動をスタート。
18歳から福岡に移り住み、20歳の時にピアノバーでの演奏をきっかけにJAZZを歌い初める。
定期的なジャズクラブでのLIVE、イベント等に出演し始め、本格的なプロの世界へ。
自らのリーダーバンド、コーラスグループ、弾き語りなど、活動は多岐に渡る。
20代中盤からは、LIVE活動を行いながら、ホテル、レストラン、バー、ナイトクラブなどのステージで、経験を積む。
2018年3月、英語、音楽、人生勉強のためカナダの最大都市トロントへ。
そこで出会った、カナダのトップジャズミュージシャン達と2019年6月にレコーディングを行い、10月に1stアルバムをリリース。
同年11月に福岡市内でのホールコンサートでも好評を博し、活動規模を拡大中。

■菅原 花月 オフィシャルサイト

 

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