連載 『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』第76回

2020/01/24
『Time Remembered』 須川崇志バンクシアトリオ
~ハイレゾのデモに最適なピアノトリオはこれだ!~

■ピアニスト林正樹さんの音に出会う


2017年の個人的ベスト音源と、自身のブログに書いたCD盤が、『Delicia/金子飛鳥&林正樹』でした。

バイオリニストの金子飛鳥さんと、長いお付き合いがあるから選んだのではありません。そういう関係性を抜きに、素晴らしいサウンドのアルバムが『Delicia』でした。なによりも、そのあまりの音の良さに驚いた!

音楽エネルギーの分厚さは感動的ですらあり、まだまだCD規格44.1kHz/16bitの限界は超えられるということを再認識させてくれた1枚です。単にリスニングを楽しむだけでなく、機器やケーブルのエージングにも最適。今でも、新機材やケーブルのエージングの際には、『Delicia』をリピート再生しています。

亡くなられたエンジニア赤川新一さんの、最後まで良い音を探求し続ける魂が成し得た、ある意味で奇跡的なCD盤。そんな『Delicia』のハイレゾが聴けるなら、どんなに素晴らしいことでしょう。エンジニアの赤川さんも、きっとハイレゾ化は視野に入っていたはず。その志を受け継ぐ誰かが現れ、『Delicia』のハイレゾ化を実現してくれることを祈ります。その暁には、私も何かお手伝いできれば嬉しいのですが・・・。

『Delicia』で初めて聴いたピアニストが林正樹さん。なんと美しいピアノを弾く人なんでしょう。一聴して、金子飛鳥さんと同じタイプのミュージシャンだと分かります。例えるなら、宇宙的な音色が放出できる演奏と言いましょうか。エモーショナルっぷりが半端ないピアノに感動しっぱなしです。

『Delicia』の衝撃から2年が経ちました。e-onkyoさんの記事 『若き俊英ベーシスト須川崇志が石若駿&林正樹を迎えたピアノ・トリオ作品をリリース!』で、林正樹さんが参加するピアノ・トリオがハイレゾ音源をリリースするとの情報をゲット! 林さんの演奏でピアノ・トリオが、しかもハイレゾで楽しめるなんて。期待は高まるばかりです。

■輝くシンバルに、分厚い弓弾き低音、そして美しいピアノの余韻!

 
再生ボタンを押した瞬間からノックアウト。この音は、絶対にCD規格では出ない! そう思えるほどの超高音質が飛び出しました。



シンバルのキラッキラがたまりません。ハイレゾらしいというか、ハイレゾが活きる演奏と録音というか。このシンバル、単にマイクが良いだとか、録音規格が優れているとか、そういうパラメーターだけでは実現しません。演奏良し、録音良し。この当たり前の公式が見事に成り立った瞬間にだけ現れる美音なのです。

オーディオ好きなら、ご友人を招いて音を披露する機会もあることでしょう。そんなとき、『Time Remembered』の1曲目を、ちょっぴり大きめの音量で攻めてみてはいかがでしょう。このシンバルに驚くご友人の顔が目に浮かびします。「これ、何てアルバム?」と、興奮したご友人から質問攻めに合うこと請け合いです。

私のピアノ・トリオの好みは、ワイルドなドラム、極太なベースといったガツンとくるリズム隊の土台に、どこまでも美しいピアノが浮遊するというスタイルです。ピアノまでガツガツくるのがお好みという方もおられることでしょうが、本作のピアノは余韻を楽しむような柔らかい音色が特長といえるでしょう。ベースとドラムは、そこまでゴリゴリではなく、パワー型ではありません。ですが、ベテランミュージシャンには無い、若々しいグルーヴと攻めのサウンドが好印象。そのリズム隊と、林正樹さんの美しいピアノの対比こそ、本作の魅力だと思います。

音質的には、個人的な好みからすると、あと2dBくらい音圧を抑えても良かったかなと感じました。いや、あと1dBだけ小さくても良かっただけかも? このあたりは音源制作で大いに悩まれたところだと思います。おそらく90%以上のリスナーは、このくらいの音圧のほうが迫力があって好きということでしょう。ですが、10年後、100年後を見据えて、音楽の記憶を残し後世に伝えるという大きな視野で見ると、あと1dBから2dBは小さくしても良かったのかな? と考えてしまいます。こんな辛口を書くのは、そのギリギリを議論したくなるまで、本作が最高音質作品のひとつである所以です。

夜にお酒のお供として楽しむも良し、ドラムのシンバル、ベースの弓弾きといったオーディオ的好物サウンドに酔うも良し。私もオーディオイベントで披露する機会があれば、太鼓判ハイレゾ音源である本作の1曲目をガツンと鳴らし、お客様の度肝を抜いてみたいと思います。





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筆者プロフィール:


西野 正和(にしの まさかず)3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー 株式会社レクスト代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』をプロデュース。

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