巨匠・大野雄二が手がけた3DCG映画『LUPIN THE THIRD ~THE FIRST』のサントラがハイレゾで発売に

2019/12/05
23年ぶりの劇場版は立体的なルパン! 3DCGアニメーションによる映画『ルパン三世 THE FIRST』が公開されて話題となっていますが、そのオリジナル・サウンドトラック『LUPIN THE THIRD ~THE FIRST~』を手がけたのはもちろん大野雄二さん。一貫していい音へのこだわりを持っていたという大野さんに、本作のコンセプトや大野さん率いるYou & Explosion Bandを中心としたレコーディングの様子、さらに故モンキー・パンチさんとの思い出や「ルパン三世」シリーズの魅力などについて語っていただきました。

文・取材◎原田和典 写真(取材時)◎山本 昇

 


■1977〜80年のサウンドを意識して作った新しいサントラ


−−初めて3DCG化された『ルパン三世 THE FIRST』をご覧になって、いかがでしたか?

大野 ルパンをはじめ登場人物の顔が全員、アニメ(2D)の顔じゃない。実写に近いようなタッチで描かれている。次元(大介)のヒゲとか1本1本描いているような感じで、とにかくびっくりしたよ。

−−山崎貴監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや、『STAND BY ME ドラえもん』などを手がけてきた方です。監督から音作りに関する要望はありましたか。

大野 監督が聴いてきた1977~80年頃のサウンドを意識して作ってほしいということで、アレンジをあえて当時っぽくしたところはあるね。編成がゴージャスになっているから、厳密には同じではないんだけど。それにプラスして、変化球的なものも加えたんだ。

−−その「変化球的なもの」とは?

大野 サウンドトラックの後半の曲では、オーケストラが活躍している。今まで使ったことのないほど多人数のストリングスとか、チューバも入れてね。僕はクラシック畑の出身じゃないし、これまでの「ルパン」ではそういう傾向の音を使わないポリシーでやってきた。ストリングスが入ることがあっても、そこまで厚くしないようにしてきたんだ。まぁ、このくらいいれば十分でしょうという感じでね。だけど今回は違った。スタジオが弦楽器奏者だけでいっぱいになって「マイクが置けなくなるから、もう入れないでください」と言われたよ(笑)。

■作品もオーディオも、ずっといい音にこだわってきた


−−ストリングスに加えて、バス・クラリネットやバス・フルートの低音もすごく効果的です。加えて、コーラスやトランペットもたっぷり入っていて、音のレンジがものすごく広いという印象を受けました。オーディオ的な楽しみも満喫できます。

大野 僕は音楽を作るのも聴くのも好きだから。どっちかっていうと楽なのは聴く方だけどね(笑)。自分が好きな音楽を良いオーディオ装置で聴くことに、ずっと凝ってきた。僕が仕事をし始めた頃の話になるけれど、1960年代の作曲家やアレンジャーって、「ミキサーにおまかせ」っていう感じだったんだ。僕も最初はそう。その頃のミキサーはものすごく職人肌で、「作曲家であろうと、俺の録音には口出しするな」という感じ。作曲家は、作曲した段階で仕事が終わっちゃう。どのミキサーに出会うかは、もう運でしかない。でも僕は常にいい音で収録してほしかったし、要望を具体的にミキサーに伝えたいと思った。だから機材のことをすごく勉強したんだよ。

−−大野さんの作品は「すごく音が良い」というイメージを僕は持っているんですが、アナログの時代から現場で奮闘してきた積み重ねが奏功しているのでしょうね。

大野 やっぱり自分が音好きだからね。海外のレコードのクレジットを見ていると、よくミキサーの名前が書いてある。このミキサーの音作りがいいなって名前を覚えて、たまに機材の情報が書いてある時はそれもチェックして。スタジオや、機材がちょっと写っている写真が載っている時もあるしね。そういうのをものすごく注意して見てた。実際に、1970年代の途中からはレコーディングの仕方をさかんに研究していたよ。伊豫部富治さんという素晴らしいエンジニアにも恵まれてね。ところで一時、ロウファイという言葉があったでしょ?

−−ありましたね。

大野 変な音というか汚い音というか、バランスがめちゃめちゃみたいなのがカッコイイというような……。でも僕は、ずっとハイファイにこだわっている。悪い装置で聴けば、ひとりでにロウファイになるもの(笑)。「聴く人はだいたいラジカセで聴くから、最終的にミックスはカセットで音を聴きながら決めましょう」って言う人もいたみたいだね。だけど、ラジカセで聴く時にOKな音にしたら、良い装置で聴こうという人はどうなるの? 僕は賛成できないな。絶対に一貫して良い音で作りたいし、作ってきているよ。

■エンディング・テーマでは稲泉りんをフィーチャー


−−今回の『ルパン三世 THE FIRST』オリジナル・サウンドトラックには61曲も入っています。サウンドトラック盤といっても、だいたいは何曲かを抜粋して収録するパターンが多いような気がするんですが、この作品には、数秒のパッセージとか、1分くらいのものなども全部入っています。短い曲も、次につなぐインタールードとして聴こえてきます。

大野 今回はスタッフのみんなと相談して、時間的にCDに入れられる限度を上回ってないんだったら全部入れちゃおうってことになったんだ。

−−テーマがヴァイブ(ヴィブラフォン)入りで演奏されているのも、以前からのファンには特に嬉しいところです。

大野 ヴァイブを使うようになったのは、3年目からだね(1980年)。1年目、2年目は、どっちかって言うとフュージョンの世界。2年目はオーバーハイムというアナログ・シンセサイザーを入れた。だから、3年目のときに当時の日本テレビのディレクターに「フルバンド(=ビッグ・バンド)でやりたい」って言ってみたら、視聴率が良いからOKって言ってくれたんで、ヘェ~ってビックリしたよ(笑)。それじゃあどうしようかって考えた時に、いわゆるカウント・ベイシー楽団のような作風ではなくて、フルバンドをバックにひとつの楽器をフィーチャーした方がテレビから流れたときに映えるかなと思ったんだよ。歌が入っているのと同じような感じで、そこにガツンと居る感じの楽器がメインの方が面白いなと。それで、なんか武器になるスペシャルな楽器はないかなって考えた時に、ヴァイブを思いついた。ちょっとビブラートがかかっているやつね。フルバンドで演奏する時のライオネル・ハンプトンがモデルなんだ。

−−人気曲「SUPER HERO」での、まるでバリトン・サックスのように低いテナー・サックスのプレイも印象に残りました。

大野 要するにね、(テナー奏者の鈴木央紹氏には)セクシーに吹けって言ったの。低い方の音域を生かしてね。コールマン・ホーキンスのようなテナーの低音、ジョニー・ホッジスのようなアルトの高音、僕はそこにサックスのおいしさを感じていて、それを現在に復活させたいと思っている。特にテナーは、ジョン・コルトレーン以降、高めの音で吹くミュージシャンがすごく増えた気がするんだ。それを否定するわけではないけどね。

−−エンディング・テーマ「GIFT」では、Fujikochansでも活躍する稲泉りんさんがヴォーカルを担当しています。この曲で、彼女の実力と名前はさらに知れ渡ること確実です。

大野 ソウル・ミュージック的な声量たっぷりの曲もガツーンと出来るし、エラ・フィッツジェラルドのようなやわらかい感じのジャズも見事に歌うことが出来る。それから、コーラスをやっても凄く良い声を出す。底知れぬ、未知のパワーを持った逸材なんだ。スタジオ・ミュージシャン的な仕事も多いし本当の実力派だね。この曲の作詞を担当してくれた水野良樹さんも、すごく誠実なセンスを持っていると思った。僕は、(水野氏がメンバーの)いきものがかりに関しては普通に知ってる程度で、特に掘り下げて研究したわけじゃない。だけどいくつか詞を見せてもらった時に、「なるほど、スタンダードだな」って感じがしたんだ。人間味にあふれたことを良心的に普通に書く。その王道のところが、すごくハマったと思う。

■「ルパン三世」の見事な設定を作ったモンキーさんのすごさ


−−ところで今年の4月、原作者のモンキー・パンチさんがお亡くなりになりました。改めてモンキーさんとの思い出や「ルパン三世」の魅力についてお聞かせいただけますか。

大野 モンキーさんは、素朴な良い人だった。全然ああいう作品を書く感じではないんだよね。最初に会った時には「アメリカで警察関連の展示会や武器の展示会を見てきた」と言っていたかな。つまりマニアックなんだ(笑)。
 モンキーさんの凄さは、あの設定を作ったってこと。「ルパン三世」はあの人数なのに、一対一の感じがするんだよ。ルパンはフランスの血が入っていて外国人的な考え方だから、合理性を重視して迷信とかそんなことは一切信じない。彼のそばには武士の魂というか和をやたら強く出した石川五ェ門と、日本人なんだろうけど西部劇みたいな次元大介がいる。さらに、こんな人はいないよねって言う感じの峰不二子が加わって、もうひとり彼らを絶対的に追う銭形警部がいる。そこに、その都度「盗む対象」が出てくるわけだよね。そして、トムとジェリーが追っかけっこをしているような感じの展開。ものすごく良くできていると思う。今回の話に関しては、時代の設定をずらしたのがミソだろうね。ナチスが出てきた時代を背景にしてはいるものの、観てる時には時代性を忘れて、現代の物語として観ることができるんだ。そこが監督の山崎さんのうまいところでもあるんだけどね。

−−では最後に、e-onkyo musicのリスナーへ向けてメッセージをいただけますか。

大野 僕が音で一番こだわっているのは、例えばバスドラとベースのコンビネーションやギターのミュートの仕方、ラテン・パーカッションの入り方などリズム・セクションの絡みで、ものすごく計算して作っているんだ。ヘッドフォンならそうした細かい部分がよく聞こえるし、スピーカーであれば全体の奥行き感などを味わってもらえるはずで、聴き方としては両方あっていい。レコーディングでは音の粒立ちの良さにこだわって、エフェクターのかけ方も吟味しながら、はっきりと分離した形で録っている。リスナーの皆さんには、「リズムがしっかり聞こえて、その上にメロディが乗っているんだな」と、そういったあたりも聴いてもらえると嬉しいね。




◎ライヴ情報

開催決定! 「ルパン三世コンサート2020」
出演:Yuji Ohno & Lupintic Six with Fujikochans
日程:2020年02月11日(火・祝) 開場16:30/開演 17:30
会場:東京キネマ倶楽部

大野雄二 公式ホームページ
http://www.vap.co.jp/ohno/

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