チェリスト エドガー・モロー来日記念スペシャルインタヴュー!

2019/11/01
次世代のクラシック音楽のシーンを担うスターチェリスト、エドガー・モロー。東京都交響楽団との共演、そして無伴奏チェロ・リサイタルを終えたモロー氏に、超多忙な日程のなか短時間ながらお話を聞くことができた。

◎インタヴュー・テキスト・写真 e-onkyo music
―:10月2日の東京都交響楽団との共演に続き、その翌日はバッハ 無伴奏チェロ組曲全曲演奏会という忙しいスケジュールですね。

そうですね、特に昨日は、バッハの無伴奏チェロ組曲を1番から6番まで全て演奏しましたから。体力的にも精神的にも、とても挑戦的だったと思います。

―:もう何度かの来日公演を経験されていますが、回数を重ねるごとに印象の変化はありますか?

日本に来たのは17歳の頃にラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに呼んでもらったのが最初でした。それから公演で招聘していただけるようになって、もう4度目か5度目の日本です。今になって思い返すと、当時は文化的な事に興味を持ってちゃんと理解するには17歳は若すぎたかもしれないですね。それがだんだん年を重ねてきて、日本の伝統や文化、食べ物にも関心が湧くようになりました。今は日本料理の大ファンです。

―:空き時間にお一人でお蕎麦屋さんに行くこともあるとスタッフさんが話していました。

そうなんです(笑)蕎麦だけじゃなく焼き鳥やお好み焼きも食べてますよ。今回はまだ機会が無いですが、鉄板焼きも好きですし、とにかく色々な食べ物や料理を満喫しています。もちろんフランスだって食に関しては相当なものだと自負していますが、こうして様々な日本食に接するたびに、その奥深さと魅力を発見していますね。
芸術的な側面で言えば、例えば前回の来日でサントリーホールでドヴォルザークを弾く機会があったのですが、響きの美しさに驚きました!そして今回は初めて東京芸術劇場で演奏したのですが、あのホールの音響も素晴らしいです。もちろん、ソロ演奏会をやった銀座王子ホールもすごく良いですし、今まで演奏してきた金沢や琵琶湖、兵庫のどのホールもとてもいい響きでした。日本はとても良い環境に恵まれていますね。
会場に来てくれるお客様からも、クラシック音楽を真剣に受け止めて理解したいという熱意をいつも感じています。

演奏以外でも、美術館に行ったり公園を散歩したり、日本で過ごす何気ない時間はいつもとても特別なものなんですよ。

―:今年は秋になってもまだ夏の暑さが長く残っていて、楽器のコンディションもエドガーさんご自身の体調も心配していたのですが・・・

楽器的には湿気にはちょっと気を使うけれど、今のところ大きなダメージは無いですね。公演では極寒のロシアや猛暑のアメリカも経験していますから、今年のちょっと長い夏を日本で体感するのも悪くないと思っています。

―:そうですか、安心しました。
話は変わりますが、最近の音楽の楽しみ方は、ストリーミングなどのカジュアルなスタイルが主流になりつつあります。こういう時代にあえてハイレゾで音楽を楽しむという点においてクラシックの演奏家としてはどのような意義があると感じますか?

ストリーミングの時代だから、曲名やアルバム名は極力短くしたほうがいいというのは最近の演奏家は皆意識し始めています。残念なのは、カジュアルさと引き換えに古き良き時代のアナログ感や、温かみのあるオーディオ文化が失われつつあるということ。だけど、そういう大掛かりな機材を揃えたり扱ったりするのはとても大変なことからだから、ハイレゾ配信のように高品質な音源をオンラインで入手できて、なおかつ手軽な環境でも再生できるというものは素晴らしいことだと思います。音のクオリティというのは演奏家にとって非常に大事なもので、僕らは常に細心の注意を払っていますから。デジタルとアナログの狭間で、古くからの技術や魅了のある音もキープできたら最高です。

―:たしかにそうですね。

特にクラシック音楽の録音には、エンジニアや技術者たちの卓越した技術が必要不可欠です。演奏者としても、そのこだわりが生きた音を届けたいといつも考えています。だから正直なところ、CDにするためにマスタリングを経て削り落とさなきゃいけない部分があることに、少しフラストレーションを感じることもあります。だから尚更、伝えたかった音をそのまま届けることができるハイレゾ配信の存在を、すごく嬉しく思っています。

―:今回エドガーさんの音源(MQA Studio版)をDAPに入れてお持ちしましたので、実際にリスナーの元にどんな音で届いているか聴いてみてください。


 



もう少し先まで聴いていてもいいですか?

―:もちろんです。

<『Offenbach & Gulda: Cello Concertos』をしばし試聴>

なるほど、とてもいいですね。僕が表現したかった音の深みがちゃんと聴こえます。さっき言ったように、CDでは再現しきれていなかった部分なんですよ。リスナーがこれを聴くためには、何か特殊な機材が必要ですか?

―:いえ、ハイレゾ対応のDAPやスマホとヘッドフォンがあれば聴けます。

そうなんですか。いつもレコーディングでは、エンジニア達とどうニュアンスをつけるか、とても入念な話し合いをして臨んでいます。そうして録音した音そのものが、こういう最小限の環境でしっかり再生できるなら最高ですね。CDでは失われたものがハイレゾでは確かに残っています。特にオーケストラとの録音は、出来上がった音を想像しながらマイクを設置したり、80人の演奏者全員の音をいかにクリアに収めるか話し合いながら制作を進めています。やりすぎると逆にバランスが崩れてしまうんですけど...。そうして苦心して作ったものが最終的にこういう音で、自分たちが意図したものに限りなく近い形で届いていると知れて良かったです。低音も高音も、響きも理想的なバランスで出来上がっていますね。

―:いい音を届けるお手伝いが少しでもできて、とても光栄に思います。それでは最後に、e-onkyo musicのリスナーに向けて一言メッセージをお願いします。

クラシック音楽は“音楽の民主化”みたいなことでも言われるように、とにかくこの近年より一層身近になってきましたが、その一方で、演奏家としてはクオリティを無限に追及していかなくてはいけないと思っています。僕はオーディオには詳しくないから、具体的にどういう機材で聴いてほしいという事は言えないですが、今はこれだけ手軽に最高品質の音源が手に入る時代ですからね。手段の一つとして様々な機器と一緒に音楽の楽しさを追及してほしいと思います。

―:今日はお忙しいところありがとうございました!

アリガトウ!

Edgar Moreau
(エドガー・モロー)
1994年4月3日、パリ生まれ。4歳でチェロを始め、11歳でオーケストラとの共演を始める。幼い頃からその才能を認められ、マリオ・ブルネロ、アンナー・ビルスマ、ミクローシュ・ペレーニ、ダヴィド・ゲリンガスなど錚々たるチェリストのマスタークラスに参加。とりわけ2010年のヴェルビエ音楽祭のマスタークラスでは、世界的な注目を浴びる。その後、17歳で第14回チャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門で第2位を獲得、世界的な名声を得ることとなり、「若き俊英」としてコンサートやオーケストラの共演に招かれ、瑞々しい演奏を披露し続けています。これまで共演した指揮者には、ワレリー・ゲルギエフ、作曲家でもあるクシシュトフ・ペンデレツキ、グスターボ・ドゥダメル等がおり、演奏家では、ギドン・クレーメル、アンドラーシュ・シフ、ユーリ・バシュメット、ルノー・カピュソン等の名が挙げられる。2012年には初来日し、ラフマニノフ作品を演奏し、聴衆たちを感激の渦に巻き込んだ。2013/14シーズンでは、ベルリン・ドイツ交響楽団、フランス国立管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団等と共演。一方では室内楽の活動にも励み、ルノー・カピュソンらとともにエクサン・プロヴァンス・イースター音楽祭などにも出演した。2014年11月、ニューヨークで開催された若手演奏家の登竜門「ヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディション」で見事一位に輝き、ハリマン・ジュエルシリーズ賞など合計6つの賞を同時に受賞した。
2015年5月にはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにてドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏し再び日本の聴衆にその美音と高い音楽性を披露したばかり。2015年8月にはスイスのヴェルビエ音楽祭に登場し、大好評を博した。

 | 

 |   |