世界の最難関「ミュンヘン国際音楽コンクール」1位獲得の快挙を成し遂げた〈葵トリオ〉をハイレゾ配信!

2019/04/24
第1位が滅多に出ない事で知られる世界の最難関「ミュンヘン国際音楽コンクール」で、2018年に見事1位を獲得した期待の若手ホープ〈葵トリオ〉。昨年12月に、凱旋記念公演と並行してレコーディングが行われた彼らのアルバムがハイレゾ配信開始。1次予選課題曲のハイドン、そしてファイナルで彼らを優勝へと導いたシューベルトを収録!


『ハイドン:ピアノ三重奏曲 第27番 シューベルト:ピアノ三重奏曲 第2番』
葵トリオ(小川響子, 伊東裕, 秋元孝介)



第1回が1952年に開催のミュンヘン国際音楽コンクールは、第1位が滅多に出ない事で知られる世界の最難関です。審査部門は年ごとに変わり、ピアノ三重奏部門の前回開催は2013年、これまでに1位はわずか4団体。「葵トリオ」は2018年にその第1位を見事獲得、まさに大変な快挙といえます。

葵トリオは、東京藝術大学及びサントリーホール室内楽アカデミー第3期生として出会い、2016年に結成。「葵/Aoi」は、3名の頭文字と花言葉「大望、豊かな実り」に由来しています。それぞれが輝しい受賞歴を始めとする充実したバックボーンを持つ、期待の若手ホープが集ったトリオです。

本アルバムは昨年12月に行われた、凱旋記念公演と並行して行われたレコーディング。1次予選課題曲のハイドン、そしてファイナルで彼らを優勝へと導いたシューベルトを収録した、注目のプログラムです。

レコーディング・データ
【指向性】単一指向、無指向、双指向
【最大周波数帯域】200KHz -3dB
【出力インピーダンス】67Ω
マイク・アンプ
【最大周波数帯域】500KHz
レコーディングから配信データまで一貫してDXD384KHz。




◯アルバムについて

木幡 一誠(ライナーノーツより)


 2018年9月に開催された第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で、葵トリオが第1位に輝いたというニュースが楽壇から喝采で迎えられたのは記憶に新しい。日本人グループが同部門で優勝を果たすのは史上初だが、2位がなく3位が2団体という結果からしても、圧倒的な支持を集めたことがうかがえる。室内楽部門で日本人グループが1位となるのも、1970年の東京クヮルテット以来48年ぶりの快挙だ。

 当アルバムは12月に開催された彼らの「凱旋コンサート」に並行しての収録である。会場となったサントリーホール・ブルーローズ(小ホール)は、まさに凱旋の舞台と呼ぶにふさわしい。サントリーホールが次代を担う若手音楽家を支援する「ENJOY! MUSICプログラム」の柱の1つとして2010年に開講した、サントリーホール室内楽アカデミー。その第3期生(2014?2016年)として3人の若者は出会い、2016年のトリオ結成に至ったのだ。団体名の葵(AOI)は、3人の苗字の頭文字からとられたものである。

 既に多くのコンクール入賞者や、国内第一線のオーケストラの首席奏者を世に送り出しているアカデミーは、ディレクターをつとめる堤剛のもと、我が国を代表する演奏家にして室内楽のエキスパートがファカルティ(講師)として名を連ねている。そこに国内外からのゲスト・ファカルティも交えつつ、月に2日のセッションを2年間にわたって継続し、古典から現代作品までカバーした実践的な研鑽を積むとなれば、得られるものの大きさたるや計り知れない。ちなみに現在の常任のファカルティに、東京クヮルテットの創設メンバーとしてミュンヘンを制した原田幸一郎(ヴァイオリン)と磯村和英(ヴィオラ)、さらには1974年から2013年の解散時まで同団に在籍していた池田菊衛(ヴァイオリン)が加わっているのは、偶然とはいえ感慨を誘う。室内楽の分野で世界を担う人材の命脈は、こうして受け継がれていく……。

 収録曲はいずれもミュンヘンのコンクールで葵トリオが演奏したもの。ハイドンに示す清新の息吹がこの作曲家一流のウィットと結びつきながら耳を捉え、なおかつ古典的な様式感覚の把握も怠りない。本選で客席を魅了したシューベルトでは瑞々しいカンタービレを一貫させながら、その晩年の作風を特徴づける和声的逍遥感や、寂寥の念と表裏一体をなす憧憬の思いまで、奇をてらわぬアプローチのもと自然に表出していく。作品に対して演奏者各人が抱き、そして発するべき言葉が深い次元で音として共有されているからこそ達成できる、若さゆえの華やぎと、若さに似合わぬ落ち着きと洞察性の備わったアンサンブル。3人それぞれがソロイストとしても優れた能力を有しながら、その「室内楽的に卓越したアプローチ」を審査員に評価されて、数多のコンクールでも最難関とうたわれるミュンヘンの覇者となったのも納得のいく話だ。葵の花言葉「大望、豊かな実り」が今後さらに高みを目指す姿を、期待と共に見守っていきたい。(文中敬称略)

ヨーゼフ・ハイドン (1732-1809)
ピアノ三重奏曲 第27番 ハ長調 Hob. XV:27
Ⅰ.アレグロ/Ⅱ.アンダンテ/Ⅲ.フィナーレ(プレスト)


 ハイドンが残したピアノ三重奏曲でも、ここに収められた第27番は最後期の所産にあたり、第28番ホ長調、第29番変ホ長調とワンセットでロンドンの出版社から1797年に出版を見たものだ。そこに献辞が掲げられた“バルトロッツィ夫人”はドイツのアーヘンに生まれ、ロンドンでピアニストとして成功を収めていたテレーゼ・ジャンセンのことで、彼女が1795年5月に画商ガエターノ・バルトロッツィと挙げた結婚式には、興行主ペーター・ザロモンの招きでロンドンに滞在中のハイドンも臨席していた。

 曲が書かれたのは、おそらくハイドンが1795年8月までの訪英からウィーンに戻って以降。ジャンセンへ捧げることも踏まえてか、ピアニスティックな感興は終始高く維持されている(ハイドンは第50番から第52番のピアノ・ソナタも彼女へ献呈していた)。ソナタ形式の第1楽章は第1主題の性格が支配的な提示部で始まり、それゆえ展開部に深い陰影を与える転調楽句がひときわ印象深い。第2楽章はイ長調に転じ、シチリアーノ風に優雅な主部に対して、イ短調の中間部が劇的なコントラストをおりなす。第3楽章はピアノのパートに2人の弦楽器奏者がオーケストラ的な充実感すら備わる背景を与えていくロンド。鍵盤を駆け巡る華麗な技巧的走句と、律動的なモチーフから立ち上る生命力は、ハイドンがその弟子ベートーヴェンに与えた影響の大きさも感得させるに十分だろう。

フランツ・シューベルト (1797-1828)
ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 D. 929
Ⅰ.アレグロ/Ⅱ.アンダンテ・コン・モート/Ⅲ.スケルツォ(アレグロ・モデラート)/Ⅳ.アレグロ・モデラート


 シューベルトは創作活動も終わり近くになって2つのピアノ三重奏曲に手を染めたが、この第2番は1827年11月頃に完成したものと推察されている。同年の初冬から翌年にかけて、スウェーデンの歌手イサク・アルベルト・ベリがウィーンを訪れ、お国の民謡や自作の歌を披露して評判を呼んでいた。それに接したシューベルトが「最も気に入った曲の旋律を変ホ長調のピアノトリオに使う予定」と、友人のレオポルト・フォン・ゾンライトナーに語っていたというのだ。裏付けとなる曲の存在は長らく謎のままだったが、1978年になってウィーンの図書館でベリが来訪時に歌った曲の楽譜が見つかり、そこに含まれていた彼の自作“見よ、陽は沈む”が、第2楽章の主要主題に(直接的引用ではなく)動機作法の面で影響を与えた可能性が研究者によって指摘されるに至った。

 完成した三重奏曲第2番の初版譜は作曲者が世を去る直前に刊行を見たが、初演の日時は詳らかでない。ベートーヴェンの一周忌にあたる1828年3月26日にウィーン楽友協会が主催したシューベルトの作品のみによる演奏会ではメインを飾り、好評を得たという記録が残されている。その第1楽章では、晴朗快活な身振りの中にも強い意志を秘めた(ときにシンフォニックなまでの)楽想が、ソナタ形式の枠組の中でウィーン風の典雅さと手を取り合う。ハ短調の第2楽章は作品の核をなす存在だ。上記のテーマがまずチェロによって歌われ、そこに2つの対比的なエピソードも挟みながら展開される音楽は、同じシューベルトの「冬の旅」を連想させずにはおかない。第3楽章のスケルツォでは模倣進行も多用され、調性感や響きの色合の精妙な変化が際立つ。トリオはウィーン舞曲調の楽想と、頻発するスフォルツァンドや同音連打の取り合わせが面白い。

 曲をしめくくる第4楽章は非常に構えが大きい、ロンドの要素を加味したソナタ形式。8分の6拍子の第1主題、2分の2拍子の第2主題という性格対比も鮮明な素材を活用しながら、展開部やコーダを導く過程では第2楽章のテーマも回想され、いつ果てるとも知れぬシューベルト的な世界が展開されていく(なお、この楽章は作曲者自身が初版譜刊行時に98小節のカットを施した形で伝わり、当録音もその版による演奏。上記のカット箇所を自筆譜に基づき復元した校訂譜も存在する)。



◯プロフィール

◆葵トリオ
東京藝術大学や、サントリーホール室内楽アカデミー第3期生として出会い、2016年に結成。「葵/Aoi」は、3人の名字の頭文字を取り、花言葉の「大望、豊かな実り」に共感して名付けた。
伊藤恵、中木健二、花田和加子、原田幸一郎、堀正文、松原勝也、山崎伸子 各氏に師事。
2018年第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門にて、日本人団体史上初の第1位を成し遂げた。
2018年度第28回青山音楽賞バロックザール賞、第29回新日鉄住金音楽賞フレッシュアーティスト賞受賞。
(新日鉄住金音楽賞は2019年4月より日本製鉄音楽賞に改称)

◆小川 響子 -- ヴァイオリン
奈良県橿原市出身。東京藝術大学、および同大学院修士課程を首席で修了。第10回東京音楽コンクール弦楽部門第1位、聴衆賞を受賞。これまでに東京都交響楽団などのオーケストラと多数共演し、アンネ゠ゾフィー・ムター、小澤征爾、大友直人らとソリストとして共演。サントリーホール室内楽アカデミー第3期、第4期フェロー。ヤマハ音楽支援制度2017年度奨学生。現在、ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーに在籍、樫本大進の指導を受ける。

◆伊東 裕 -- チェロ
奈良県生駒市出身。日本音楽コンクールのチェロ部門第1位、および徳永賞受賞。小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾オーケストラなどに参加し、紀尾井ホール「明日への扉」などに出演。東京藝術大学を首席で卒業し、福島賞、安宅賞、アカンサス音楽賞受賞。同大学院修士課程に進学し、ザルツブルク・モーツァルテウム大学にてエンリコ・ブロンツィに師事。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー。紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー。

◆秋元 孝介 -- ピアノ
兵庫県西宮市出身。東京藝術大学を首席で卒業、同大学院修士課程を首席で修了。学内にて安宅賞、大賀典雄賞、三菱地所賞、クロイツァー賞などを受賞。第2回ロザリオ・マルシアーノ国際ピアノコンクール第2位、第10回パデレフスキ国際ピアノコンクール特別賞などを受賞。ソロ、オーケストラ、室内楽をはじめ、アウトリーチ活動も積極的に行う。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー。現在、東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程に在学中。

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