【連載】生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」 1時限目その6「現代」

2019/04/15
音元出版が発行するオーディオ雑誌「NET AUDIO」誌との連動企画【生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」】がスタート!本企画は、オーディオアクティヴィスト(音楽家/録音エンジニア)、そして評論家としての肩書を持ち、オーディオファンのみならず、録音愛好家や音楽ファンからも支持を得る、生形三郎氏を講師にお迎えし“クラシック音楽の頻出ワード”を1から分かりやすく解説。そして関連する音源を合わせてご紹介することで、クラシック音楽の魅力をより深く知っていただこう、という連載企画です。

「NET AUDIO」誌Vol.33掲載の、生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」とあわせてお楽しみください。

◆季刊・Net Audio vol.33 Winter 2019年1月19日全国一斉発売




◆1時限目「クラシックの歴史」そ6 「現代」

 クラシック音楽は、様式化が始まる16世紀中頃から数えても、実に450年以上もの歴史を持っています。そして、時代ごとに音楽の様式は勿論のこと、作曲の目的や楽器の編成なども、当然、大幅に異なってきます。そこで、まずはそれら時代ごとの特長を大まかに把握して、予め全体像を掴んでしまいましょう。そしてその後、クラシックの「頻出ワード」を毎回テーマに挙げ、攻略を行なっていく予定です。

 時代の分け方は様々にありますが、ここでは、「中世」、「ルネサンス」、「バロック」、「古典派」、「ロマン派」、「近代」、「現代」と分けてご紹介します。これらの特長と代表的な曲を、駆け足で見ていきましょう。そして勿論、紹介する音源は高音質タイトルを厳選。今回は、前回の「近代」に続いて、「現代」をご紹介していきます。

【現代】
 クラシック音楽史の大まかな振り返りも、いよいよ最後の回になりました。ここでは、第二次世界大戦後くらいから現在までの作品を「現代の音楽」としてご紹介します。戦後は、20世紀に進められた「新たな表現」を求めるモダニズムの動きが絶頂を迎えますが、60年代以降から次第に行き詰まりを見せます。そこで、これまでの作曲手法に、即興要素や偶然性・不確定性といった、コントロールできない要素を取り入れたり、限られた音素材を反復するミニマル・ミュージックなどの手法が生まれます。その後、70年代以降は、表現に回帰する「ポスト・モダニズム」の流れが音楽にも広まり、過去の音楽様式やジャズなどを取り入れた多様な音楽が生み出されていきます。それとともに、次第に音楽の在り方自体も細分化を遂げていき、様々な潮流が同時多発的に交錯する現代へと行き着きます。また、戦後は、電子楽器をはじめ、テープ・レコーダーなど軍事技術の恩恵によってもたらされたテクノロジーが音楽創作に浸透していきます。


!必聴音源その1!


『Ligeti String Quartets / Barber Adagio』
/ケラー弦楽四重奏団

 モダニズム音楽の典型とも言える優れた作品を多く残したのが、リゲティ・ジェルジュです。1950年代初頭に作られた彼の2つの弦楽四重奏のこの録音は、音楽的にも音質的にも大変面白い作品です。極小音から激しい大音量までの音量幅、ハーモニクスと呼ばれる倍音奏法の組み合わせなど、緻密かつ多様な表情による表現の可能性が極限まで追及されています。一聴すると突飛で猟奇的ともいえる音響ですが、それは単なる表面的な奇抜さだけを狙ったものでなく、古典派の時代から続く弦楽四重奏曲の流れを受け継ぐものです。モダニズムの音楽では、12音技法をさらに発展させた、セリー音楽やトータル・セリー音楽が生み出され、作曲技法の主流となりました。


!必聴音源その2!


『Reich: Electric Counterpoint』
/Daniel Lippel

 モダニズム音楽の行き詰まりの末に珍重されたスタイルの一つがミニマル・ミュージックです。代表的な作曲家の一人、スティーブ・ライヒは、同一の音型をずらして重ねていくことによって様々な様相を描き出す音楽を作り出しました。本作のほか、手拍子が重なっていく「クラッピング・ミュージック」やパーカッション・アンサンブル作品なども代表作として知られます。ライヒと同じく、ミニマル・ミュージックの創始者とも言われるラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリーフィリップ・グラスも高名な存在です。また、ミニマル音楽をよりポップな響きへと昇華した流れをポスト・ミニマルと呼び、マイケル・ナイマンジョン・アダムスギャヴィン・ブライヤーズなどが知られます。なお、ミニマル・ミュージックは、美術におけるミニマル・アートから名付けられました。


!必聴音源その3!


『cantus』
/KUNIKO

 アルヴォ・ペルトは、ポスト・モダニズムを代表的する作曲家の一人です。中世の宗教曲のような、極めてシンプルなハーモニーと長い持続音をもった美しい響きが追及され、クラシック音楽の根源的なハーモニーの美しさを堪能することが出来ます。イギリスのオーディオメーカーLINNが展開する、高音質で知られるLINN RECORDSからリリースされている加藤訓子による本作は、ペルトの代表作をパーカッションで演奏した美しい作品です。停滞する持続音の中で透明感あふれる響きが展開していく様が繊細に捉えられています。ペルトやギヤ・カンチェリジョン・タヴナーらの音楽は、「祈りの音楽」や「癒やしの音楽」などと呼ばれるとともに、同じく同世代の作曲家、ヘンリク・グレツキの交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」が全英ヒットチャート第6位を記録するなど、時としてポップスなどの音楽と同等の存在感を持つようになりました。


 なお、音元出版「NetAudio」誌の当該連載では、国産ハイエンド・ネットワークプレーヤーメーカー、「スフォルツァート」試聴室でのハイレゾ音源試聴レポートを掲載しています。ぜひそちらも併せてご覧下さい。

SFORZATOの試聴室
ネットワークプレーヤー:DSP-Vela
NAS:fidata HFAS1-XS20
プリアンプ:QUALIA INDIGO Line Amplifier
パワーアンプ:QUALIA DOGMA600
スピーカーシステム:B&W 802D3







生形三郎 プロフィール

オーディオ・アクティヴィスト

音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家。昭和音楽大学作曲学科首席卒業。東京藝術大学大学院修了。音楽家の視点を活かした録音制作やオーディオ評論活動を行なう。「オーディオ=録音⇔再生」に関して、多角的な創造・普及活動に取り組む。各種オーディオアワード及びコンテスト審査員を務めるほか、スピーカー設計にも積極的に取り組む。

オフィシャルサイト


◆季刊・Net Audio vol.33 Winter 2019年1月19日全国一斉発売



 | 

 |   |