【連載】生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」 1時限目その5「近代」

2019/04/11
音元出版が発行するオーディオ雑誌「NET AUDIO」誌との連動企画【生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」】がスタート!本企画は、オーディオアクティヴィスト(音楽家/録音エンジニア)、そして評論家としての肩書を持ち、オーディオファンのみならず、録音愛好家や音楽ファンからも支持を得る、生形三郎氏を講師にお迎えし“クラシック音楽の頻出ワード”を1から分かりやすく解説。そして関連する音源を合わせてご紹介することで、クラシック音楽の魅力をより深く知っていただこう、という連載企画です。

「NET AUDIO」誌Vol.33掲載の、生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」とあわせてお楽しみください。

◆季刊・Net Audio vol.33 Winter 2019年1月19日全国一斉発売




◆1時限目「クラシックの歴史」その5 「近代」

 クラシック音楽は、様式化が始まる16世紀中頃から数えても、実に450年以上もの歴史を持っています。そして、時代ごとに音楽の様式は勿論のこと、作曲の目的や楽器の編成なども、当然、大幅に異なってきます。そこで、まずはそれら時代ごとの特長を大まかに把握して、予め全体像を掴んでしまいましょう。そしてその後、クラシックの「頻出ワード」を毎回テーマに挙げ、攻略を行なっていく予定です。

 時代の分け方は様々にありますが、ここでは、「中世」、「ルネサンス」、「バロック」、「古典派」、「ロマン派」、「近代」、「現代」と分けてご紹介します。これらの特長と代表的な曲を、駆け足で見ていきましょう。そして勿論、紹介する音源は高音質タイトルを厳選。今回は、前回の「ロマン派」に続いて、「近代」をご紹介していきます。

【近代】
 ここでは、20世紀初頭から第二次世界大戦くらいの作品を「近代の音楽」としてご紹介します。この時期は、ちょうど、エジソンの蓄音機や、レコードの原型ともいえるベルリナーの蓄音機が発明されるなど、重要な音響テクノロジーが生まれた直後の頃です。20世紀は、これまでにない新しい表現を求めるモダニズムの動きが音楽にも押し寄せ、クラシック音楽の表現も急激かつ大きな変容を遂げます。音楽的な特徴として、ロマン派の末期から表われていた、これまで遵守されてきた機能和声、つまりは長調や短調などの枠組みから徐々に抜け出す動きが強まります。同時にこれらは、「未来派」と呼ばれるテクノロジーに影響を受けた価値観や、伝統的な芸術観へ反抗するダダイズム、そして2度の世界大戦に向かう情勢など、時代の動きとも密接に関わっています。


!必聴音源その1!


『Debussy: La Mer, Images』
/Emmanuel Krivine

 印象派と呼ばれるドビュッシーやラヴェルの作品は、それまでのハーモニーの典型から逸脱する音程や和音を用いて、斬新で美しい響きを生み出しました。ドビュッシーといえば「月の光」や「アラベスク」などのピアノ曲も有名ですが、管弦楽曲であるこの「海」は、様々な楽器が生み出す色彩的なハーモニーが、視覚的な情景を呼び起こす傑作です。同じくラヴェルのピアノ作品「夜のガスパール(Gaspard de la nuit)」や「水の戯れ(Jeux d'eau)」、知名度も高い管弦楽曲「ボレロ」なども、これまでの音楽語法では描けなかった微妙なニュアンスを引き出した美しい作品です。


!必聴音源その2!


『Stravinsky: Minnesota Orchestra』
/Minnesota Orchestra, Eiji Oue

  印象派と共に現れたのが原始主義です。人間が本来持っているプリミティブな力強さ激しさを形にした表現で、イーゴリ・ストラヴィンスキーによるバレエ音楽「春の祭典」や「火の鳥」が代表的な存在です。こちらもロマン派後期の交響曲と同じく非常にダイナミックな表現が派手に繰り広げられます。本タイトルは、HDCDの発明者でもあるキース・ジョンソン博士のエンジニアリングによって知られる高音質レーベルReference Recordingsならではの明晰な音響が楽しめます。他に、民族音楽の研究家でピアノの名手でもあったバルトーク・ベーラも、初期の「弦楽四重奏曲」などで原始主義的な作品を生み出しました。原始主義に近づいた作家はその後に作風を移行していきますが、バルトークは後に「管弦楽のための協奏曲」や「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」などの傑作を生み出します。後者の第3楽章(上記リンク先8曲目)は、鬼才キューブリックの映画「シャイニング」などでも効果的に使用されました。


!必聴音源その3!


『Schoenberg / Berg: Piano Music』
/Roland Pontinen

 印象主義の反動として生まれたのが、表現主義の試みです。アルノルト・シェーンベルクは、これまでクラシック音楽を300年あまりに亘って支えてきた機能和声から完全に脱却した作品を生み出します。それがこの「3つのピアノ作品」で、世界初の「無調」の作品として知られています。やがてそれらは、12音技法と呼ばれる、1オクターブの中に存在する12音すべてを均等に扱う作曲手法へと進化していきます。表現主義は、人間の内側に潜む複雑かつネガティブな感情さえも表現としてそのまま表わすことが特徴です。無調時代の代表作として、感情表現を言葉の響きに反映させるシュプレヒゲザングと呼ばれる独自の歌唱法を生み出した「月に憑かれたピエロ」も非常に印象的な作品。シェーンベルクは、弟子のアントン・ヴェーベルン(リンク先6~11曲目「6つのバガテル」)、アルバン・ベルクとともに、古典派のウィーン学派になぞらえて「新ウィーン学派」と呼ばれています。


 なお、音元出版「NetAudio」誌の当該連載では、国産ハイエンド・ネットワークプレーヤーメーカー、「スフォルツァート」試聴室でのハイレゾ音源試聴レポートを掲載しています。ぜひそちらも併せてご覧下さい。

SFORZATOの試聴室
ネットワークプレーヤー:DSP-Vela
NAS:fidata HFAS1-XS20
プリアンプ:QUALIA INDIGO Line Amplifier
パワーアンプ:QUALIA DOGMA600
スピーカーシステム:B&W 802D3



次回は、現代の音楽をご紹介します。






生形三郎 プロフィール

オーディオ・アクティヴィスト

音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家。昭和音楽大学作曲学科首席卒業。東京藝術大学大学院修了。音楽家の視点を活かした録音制作やオーディオ評論活動を行なう。「オーディオ=録音⇔再生」に関して、多角的な創造・普及活動に取り組む。各種オーディオアワード及びコンテスト審査員を務めるほか、スピーカー設計にも積極的に取り組む。

オフィシャルサイト


◆季刊・Net Audio vol.33 Winter 2019年1月19日全国一斉発売



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