【連載】ヴァイオリニスト寺下真理子の「音楽の神様に愛される音楽家になるために」 第3回

2019/04/12
『AVE MARIA』『ロマンス』の2作のソロ・アルバムがオーディオファンからも高い人気を誇るヴァイオリニスト、寺下真理子。ソロでの活動のほか、最近では「美少女戦士セーラームーン Classic Concert」への出演やテレビのバラエティ番組への出演などでも注目を集める彼女の新連載、ヴァイオリニスト寺下真理子の「音楽の神様に愛される音楽家になるために」がスタート。演奏家がどのようなことを考え、どのように音楽を捉えているか、など、演奏家視点でクラシックをご紹介します。
◆第3回「ブラームスが語ったインスピレーション」

後世に残る作品を残した作曲家たちは、どのようにして作品を生み出したのか・・・

2、300年も前に作られた曲が、長い時を経て今もなお、多くの人に愛されているクラシック音楽の素晴らしさの根源は、何なのか・・・

(クラシック音楽を勉強している演奏家や、クラシック音楽を好きで聴いている人も、一度は考えることなのではないしょうか。)←これいらない?

まず、クラシックの作曲家にヨーロッパ人が多いですが、彼らの生活の背景にある、キリスト教と作品は切っても切れないものがあるように思います。

ヨーロッパにも様々な宗教が存在しているとは思いますが、圧倒的にキリスト教信者が多いようです。ヨーロッパの人々にとって宗教は生活の一部になっているように思います。

それゆえ、偉大な作品を残した作曲家にとっても、キリスト教は大きな存在だったのではないかと考えられます。

さて、この一冊の本を通して、とても興味深い事実を私は知ることになるのですが・・・




この本は、「作曲家が霊感を得るとき」という本の改訂版なのですが、旧版からハマって読んでいた本です。

実は、誰にも教えたくない!と思うほど、私の中でとっても大切にしている本です。

この本の中で、私の大好きな作曲家の一人のブラームスが、ヴァイオリニストで彼の友人でもあったヨアヒムと共に、創作の秘密を語っています。

ブラームスの作品はどの作品も、どうしてこんなにも美しいのだろう・・・とため息が出てしまいます。そして、演奏していても、聴いていても、何か違う次元の(神の)世界に誘われる瞬間があるように思うのです。

ブラームスは、創作の動機を最も親しい間柄だったクララ・シューマンに聞かれても、決して語らなかったようですが、この本では、彼の死後50年経ってから出版することを約束に、初めて語ったそうです。

それほど、彼の中で、人に簡単に介入してほしくない、神聖な領域だったのではないかと思います。人にもよりますが、特に芸術家は、何か自分の中で大切にしているものと対峙する時、簡単に人に話したり、また誰かに介入されることを、あまり好まないのではないでしょうか。

その世界観(自身と神との対話)を発散させる場所が、作曲家であれば作品であり、演奏家であれば演奏だと私は思います。おこがましいですが、そのスピリットを大切にする気持ちは大変共感します。

この本の記述によると、ブラームスは、作曲を始めるときに、まず神に祈りを捧げ、いわばトランス状態に入り、そこから神とつながり、(大いなる存在、やエネルギーの源泉、something great等、それぞれ人によって捉え方は違うと思いますが・・・)インスピレーションを受け、創造の発想を得ていくようです。

ブラームスは、イエス・キリストを神の子として捉え、この世に与えられた奇跡は、神の御業によって行われたものであるということを語り、それと同じことが、素晴らしい作品を残している作曲家の内にも行われているというのです。

つまり、自分から生まれたものだけでは無く、神が自分の内に存在し書かされているのだと。その霊感を得て、神のエネルギーと繋がっていながら作曲をすることが出来なければ、一時的に流行する曲を書けたとしても、後世に残る偉大な作品を残すことはできないと断言しています。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、当時「ヴァイオリン的ではない」「ヴァイオリンのことを何もわかっておらず書かれた曲」と音楽界から酷評を受け、演奏を禁止していたオーケストラもあったそうですが、ブラームス自身は「必ず、私の死後に、評価されていく曲になるだろう」と予言していたことがこの本には書かれています。

その証拠に、今やどうでしょうか・・・!

世界中で最も愛されているヴァイオリン協奏曲の一つではないでしょうか。

私自身も大好きな作品です。

神のエネルギーと交わり、霊感を得た作品の中には、人々の心を感動させる普遍性があるのではないかな?と私は思います。

何年、何百年経っても、人が深いところで求めているものは、同じなのかもしれません。

霊感を得た作品は、どの時代に何人が聴いても、魂を揺さぶるようなエネルギーに満ちているのではないかと思います。

ブラームス曰く、それこそが偉大な作品と、そうでない作品の決定的な違いだそうです。

演奏者も、いわゆる、ゾーンという精神状態に、演奏中に入ることが度々あります。

舞台に立っている間、ずっとそのトランス(ゾーン)状態の人もいると思います。

ブラームスも、霊感だけではダメで、霊感と、裏付けされた技術の両方が絶対に必要だと話していたように、私たち演奏家も、技術はもちろんですが、人の心を揺さぶる演奏をするには、大いなる存在とつながっていくことが大切なのかもしれません。

私は小さい頃から、ちょっとスピリチュアルなところがありましたし、家族の中に、熱心なキリスト教信者もいたため、この感覚には親近感を覚えています。

この本を通じてブラームスが語ってくれたことに対し、共感していると言ってしまうとおこがましいですが、この感動を大切に私の心の中に仕舞っています。

そして、私もその感覚について語ることは気が進みませんが(自分の中だけで大切にしたいため)、私の演奏を聴いてくださった皆様にその世界観を感じてもらえるような演奏をしていきたいと思っています。

今回は、偉大な作品が生まれる背後にあるインスピレーションについてでした!








「ライプツィヒの教会~バッハが務めていた聖トーマス教会(2018年2月ドイツにて撮影)」









『Brahms: Symphonies』
シュターツカペレ・ベルリン, ダニエル・バレンボイム




『Violin Concertos & Violin Romances』
ダヴィッド・オイストラフ






◆寺下真理子 関連作品







◆美少女戦士セーラームーン Classic Concert ALBUM 2018

◆寺下真理子×SUGURU(TSUKEMEN)「ムーンライト伝説」弾いてみた動画

◆寺下真理子×SUGURU(TSUKEMEN)「乙女のポリシー」弾いてみた動画


寺下真理子 プロフィール

5歳よりヴァイオリンを始める。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校、
同大学、ブリュッセル王立音楽院修士課程卒業。

1993年、第1回五嶋みどりレクチャーコンサートに出演。
1996年、第50回全日本学生音楽コンクール中学生の部、大阪大会第2位受賞。
1997年、第2回宮崎国際音楽祭にて、故アイザック・スターン氏の公開レッスンを受講。
五嶋みどりデビュー20周年記念コンサート(大阪NHKホール)にて五嶋みどりと共演。
2004年には第2回東京音楽コンクール弦楽器部門第2位(ヴァイオリン最高位)受賞し注目を集めた。
2014年、大桑文化奨励賞を受賞。
2015年11月6日には初の台湾公演を行い大成功を収めた。
2015年2月4日「Ave Maria」(KING RECORDS)をリリースし、高音質ハイレゾ音源配信サイトにて全ジャンルの中から週間1位を獲得。Yahooニュースにも掲載された。
韓国の大手ハイレゾ音源配信サイト”groovers”にて、4位にランクイン。その後も長期間に渡りTOP50にランクインした。
2017年2月22日に2枚目のアルバム「ROMANCE」(KING RECORDS)をリリース。
同年4月から全国5都市にて、「ハウス食品グループ ファミリーコンサート」、8月2日、3日には「美少女戦士セーラームーン 25周年記念Classic Concert」にソリストとして出演。

また同年、「平成29年度 和歌山市文化奨励賞」を受賞。

これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、九州交響楽団などと共演。

各地での様々なコンサート・リサイタル・公演の他、テレビ・ラジオなどにも積極的に出演中。

オフィシャルサイト


◆寺下真理子 コンサート情報

4/28(日)13:00~13:30
【サンデー・ブランチ・クラシック】寺下真理子(Vl.)×伊藤優(Pf.)

4/28(日)1st 18:00~ / 2nd 19:00~
【sunday-living-live】寺下真理子(vl.)×伊藤優(Pf.)

★eplus LIVING ROOM CAFE&DINING オフィシャルサイト


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