溝口肇のカバーアルバム「yours ; Gift」配信スタート!
2014/11/19
チェリスト溝口肇さんのカバーアルバム「yours」シリーズ4作から選りすぐりの12曲に山下洋輔をフィーチャーした“上を向いて歩こう”、新録となる“ふるさと”、“夏の思い出”の全15曲を収録したベスト盤の配信を開始しました。本作は、全曲溝口肇さん本人によってリミックスされています。
ご本人から、ハイレゾ配信に寄せてのコメントが到着しました!
チェリスト、溝口肇です。
e-onkyoでのハイレゾリリース第4弾となるアルバム「yours ; Gift」です。このyoursは10年ほど前からバップからカバーアルバムとしてシリーズ化してきたものです。全4枚、40曲以上をチェロのメロディでカバーしています。
今回は全ての楽曲をマルチトラックからトラックダウンをし直して、DSD5.6MHz、そして96k・24bitをマスターとして作り直しています。
yoursシリーズは「yours」を2005年にリリースしました。当時、基本的なレコーディングはProTools というコンピューターベースのハードディスクレコーディングが主流でしたが、サンプリング周波数等は48k・24bitが基本でした。当時私は新しい試みとして96k・24bitというサンプリングレートで録音を始めていましたが、エンジニアからもハードディスクの無駄遣いと言われたことがありました。もちろんCDは44.1k/16bitですから48kでも十分だったわけです。しかし明らかに音は違い、特にチェロの音は96kでのレコーディングの音が好きだったので、高い周波数を好んでレコーディングを行ってきました。
ただ、当時としては良いことだけではありませんでした。コンピューター内でミックスなどを行う場合はEQやコンプなどの「プラグイン」を使うのですが、現在よりあまり質が良くなかったりハイレゾではコンピューターCPUパワーをより多く使うので、十分なミックス作業が出来ずにいました。ミックスにはSSLのような外部コンソールの必要性がありました。
また、ハイレゾにすれば全ての音が良くなるわけでもなく、J-POP等の打ち込み音楽などは、現在でも48kあたりでの録音の方がいわゆる「音が前に出る」ということで好んで使うプロデューサーも多く、音楽の質に合わせて録音方法を選択されるのが通常です。
yoursシリーズがリリースされてから9年ほど経ちますが、ハイレゾでのレコーディングをしてきて良かったと思います。ただ、この4枚の中には96k・24bit、192k・24bit、そして48k・24bitと様々なフォーマットが含まれています。4枚目は初めて外部アレンジャーを入れたため、その人のシステムに合わせたために48kとなってしまい少し悔やんでおりますが、もちろん48kでもハイレゾであることには間違いありません。
全ての楽曲は、ProToolsのマルチトラックからトラックダウンし直しています。当時の録音をそのまま伝えるべく極力音をいじらず、作りかえないよう務めました。MIX作業の初期段階では既発されているCDとなるべく同じ音にと思っていたのですが、作業を進めるうちに新しい今の音を、と考え直しました。MIX作業中に感じたのは、レコーディング時の私の精神状態、楽器の調子、スタジオ、レコーディングエンジニア、それぞれの思い、違いが如実に現れてくることが大変驚きでした。昔LPのことをレコードと呼んでいましたが、字のごとく「記録」であります。音楽と溝口肇の記録であるわけです。
「ハイレゾ」は聞こえてくる音がとても繊細です。プラグインのEQ(音質調整)などを入れるだけでも(スイッチを入れただけで)違いがわかります。何かベールがかかるというか濁るというか、表現は難しいのですが原音との「違い」がわかってしまうのです。
結局、良い音を残すために必要のないものは全て取り除きました。取り除いていったら、音を調整するプラグイン、アウトボードは全てなくなっていました。残響を追加するリバーブ装置だけが残りました。トラックにレコーディングされた時そのままの、ピュアな音でのMIXが今回の「yours ; Gift」です。
チェロの音はレコーディング時の楽器のコンディション、エンジニアによる録音方法、スタジオの違いで本当にこれは同じ人が弾いているのか、というくらい違いがあります。でも、その時代の溝口肇と思っていただければ幸いです。
新録した「ふるさと」「夏の思い出」は、やはり震災以降聴きたいという人が多い曲です。被災地にボランティアコンサートで出掛けていっても、リクエストされることが多いです。私なりのアレンジを施したこの2曲も、是非聴いていただきたいと思っています。
この2曲に関しては、技術的には現時点で一番高音質な方法で録音をしています。楽器の鳴りも明るく弾んでいます。ただ余談ですが、レコーディングスタジオは弦楽器に100%良い環境というわけでもないことも、このレコーディングから聞こえても来ます。もちろん、私にしかわからない領域の音ですが、制作者がいつも聴いている音を、皆さんと共有出来ることは素晴らしい時代だと思っています。
聴く人の心に音楽が素直に響くように、チェロの音が染み入るように希望を込めて制作をしました。楽しんでいただければと思います。
ありがとうございます。
溝口肇
『溝口肇 グローリア・チャペルコンサート』
【日 時】2014年12月23日(火・祝)
開場 16:30/開演 17:00
【会 場】キリスト品川教会 グローリア・チャペル
【料 金】7,800円(税込) 全席指定
お問合せはキャピタルヴィレッジ Tel.03-3478-9999