音元出版が発行するオーディオ雑誌「NET AUDIO」誌との連動企画【生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」】がスタート!本企画は、オーディオアクティヴィスト(音楽家/録音エンジニア)、そして評論家としての肩書を持ち、オーディオファンのみならず、録音愛好家や音楽ファンからも支持を得る、生形三郎氏を講師にお迎えし“クラシック音楽の頻出ワード”を1から分かりやすく解説。そして関連する音源を合わせてご紹介することで、クラシック音楽の魅力をより深く知っていただこう、という連載企画です。
「NET AUDIO」誌Vol.33掲載の、生形三郎の「学び直し! クラシック攻略基礎講座」とあわせてお楽しみください。
講座一覧
第0時限目
1時限目その1「中世~ルネサンス」
1時限目その2「バロック期」
1時限目その3「古典派」
1時限目その4「ロマン派」
1時限目その5「近代」
1時限目その6「現代」
2時限目「ピアノ」
2時限目「ピアノ」 その2
◆1時限目「クラシックの歴史」 その1「中世~ルネサンス」
クラシック音楽は、様式化が始まる16世紀中頃から数えても、実に450年以上もの歴史を持っています。そして、時代ごとに音楽の様式は勿論のこと、作曲の目的や楽器の編成なども大幅に異なってきます。そこで、まずはそれら時代ごとの特長を大まかに把握して、予め全体像を掴んでしまいましょう。そしてその後で、クラシックの「頻出ワード」を毎回テーマに挙げ、攻略を行なっていく予定です。
時代の分け方は様々にありますが、ここでは便宜上、「中世~ルネサンス」、「バロック」、「古典派」、「ロマン派」、「近代」、「現代」と分けてご紹介していきます。これらの特長と代表的な曲を、駆け足で見ていきましょう。そして勿論、ご紹介する音源は、特にオススメの高音質タイトルを厳選してお届けします。今回は「中世~ルネサンス」をご紹介します。
【中世~ルネサンス】
クラシック音楽は、中世から始まったキリスト教の教会音楽を中心に礎が形作られていきます。それらは、皆でひとつの旋律を歌うプリミティブなものから始まり、それぞれの声が独立して動いていく「多声音楽」という形態に進化します。今のポップスなどでは当然である「メロディ+伴奏」という形ではないため、なかなか聴き慣れないうちは戸惑うかもしれませんが、これらの音楽は、楽曲的にも演奏編成的にも非常にピュアな美しさを秘めたジャンルとも言えます。ルネサンス期では、教会音楽は勿論のこと、世俗音楽と呼ばれる各国の民族的な特徴が活かされた、娯楽のための音楽も発展します。
!必聴音源その1!

『EXAUDIAM EUM - gregorian chant for Lent and Holy Week』
/Consortium Vocale
クラシック音楽の祖とも言われるグレゴリオ聖歌。全員で同じ旋律を斉唱する、いわゆる単旋律のシンプルな歌です。伴奏も勿論ありません。しかしながら、豊かな残響に支えられた歌声は、無限の拡がりを感じさせます。クラシックの録音でも現在最高音質を誇るノルウェーの高音質レーベル「2L」が手掛けたこの音源は、透明感溢れる声と残響とが、驚異的なまでにピュアで幻想的な聴き応えを実現しています。まさにハイレゾの醍醐味が存分に味わえる作品と言えます。
!必聴音源その2!
※配信停止
『Scattered Ashes』
/Magnificat, Philip Cave
イギリスのオーディオメーカーLINNが展開する高音質「LINN RECORDS」の作品。ルネサンス期の教会音楽の様式を築いたジョスカン・デ・プレや、その流れを組むラッスス、そしてルネサンス後期に新たな展開を見せたパレストリーナなどの教会音楽作品が収められています。非常に有機的かつ荘厳な美しさに満ち溢れ、まるで無限の光の中へと吸い込まれるようです。世界最古の聖歌隊と言われるシスティーナ礼拝堂聖歌隊による、瑞々しい声と浮遊感溢れる残響が楽しめる「Palestrina」も秀麗です。
!必聴音源その3!

『Orpheus in England』
/Emma Kirkby, Jakob Lindberg
世俗音楽もひとつご紹介します。ルネサンス後期には、「エール(Ayre)」というリュート伴奏による独唱の歌曲が流行しました。イギリスは大陸より少し遅れて多声の世俗音楽が隆盛しましたが、リュート奏者ジョン・ダウランドはその中の重要人物のひとりです。軽妙で上品な旋律とその歌声は、リュートの親密な響きと相まって、まるで当時にタイムスリップしたかのような錯覚を味わわせてくれます。ヤコブ・リンドベルイの音源は演奏と録音ともに秀逸で、夜を想起させる静かなリュート作品のみの集めた「夜の曲(Nocturnal)」も絶品の快適さです。
なお、音元出版「NetAudio」誌の当該連載では、国産ハイエンド・ネットワークプレーヤーメーカー、「スフォルツァート」試聴室でのハイレゾ音源試聴レポートを掲載しています。ぜひそちらも併せてご覧下さい。

SFORZATOの試聴室
ネットワークプレーヤー:DSP-Vela
NAS:fidata HFAS1-XS20
プリアンプ:QUALIA INDIGO Line Amplifier
パワーアンプ:QUALIA DOGMA600
スピーカーシステム:B&W 802D3
次回は、バロックの音楽をご紹介します。
生形三郎 プロフィール
オーディオ・アクティヴィスト
音楽家、録音エンジニア、オーディオ評論家。昭和音楽大学作曲学科首席卒業。東京藝術大学大学院修了。音楽家の視点を活かした録音制作やオーディオ評論活動を行なう。「オーディオ=録音⇔再生」に関して、多角的な創造・普及活動に取り組む。各種オーディオアワード及びコンテスト審査員を務めるほか、スピーカー設計にも積極的に取り組む。
◆オフィシャルサイト
◆季刊・Net Audio vol.33 Winter 2019年1月19日全国一斉発売