GONTITI 35周年アルバム『we are here』スペシャルインタヴュー公開!

2018/12/19
デビュー35周年を迎えた、言わずと知れたアコースティックギターデュオの最高峰GONTITI。ニューアルバム『we are here』は、GONTITIの“今までとこれから”を感じさせる魅力溢れる作品となっていた。
ゴンザレス三上氏とチチ松村氏に加え、古くからGONTITIの作品に携わってきたエンジニアの中林慶一氏に、このアルバムの裏側を伺う事ができた。
●Text and Interview:e-onkyo music


『we are here」-40 years have passed and we are here-』/GONTITI

ー:結成40周年・デビュー35周年の節目となるニューアルバムの完成、おめでとうございます。振り返って感想はいかがですか?

三上:当初はいままでの歴史のまとめというか、集大成的なものにしようと最初は思ってたんですが、それが新しいアーティストやアレンジャーを迎えて作業をしていくうちに、7年ぶりとはいえオリジナルアルバムを創るスタンスがだんだん蘇ってきて。だから「集大成的なもの」を作ろうという気持ちが少し薄らいでいって、「新しいアルバムを作るんだ」という部分が強くなっていきましたね。だから出来上がったものを改めて聴いてみても、集大成という部分はありながらも、一方でゼロから作り上げるという空気を感じる作品になったなと思います。

ー:今作の『we are here』というタイトルに象徴的なものを感じましたが、ここに込められた思いはどのような?

三上:ジャケット写真の紋章があってその中に我々2人がいるというイメージだったので、元々はその紋章に寄せたようなタイトルを考えていました。それが調べたらどうも既に使われているようだったので、であればもっと等身大なものにしようかと考えまして。「ここにいる」という意味でこのタイトルになりましたね。

ー:ここにいる?

三上:ここにいる、という事は過去から続く流れの中にありつつも、この先のもっと色々な人たちとの交流ということも含めた“交差点”の意味合いも込めています。このアルバムを作っていて、録音やMIXなどの作業を通じて我々2人とも同じような感覚を心の中に持っていました。だから本音というか、飾らない素直な心持ちで『we are here』という名の作品を作り上げられたなと思っています。

ー:先ほどの「新しいアルバムを作る」という言葉にもあったように、今作ではサンプラーやシンセサイザーなどのデジタルな要素もあります。こういう要素を取り入れたものにしようと思ったのはいつ頃ですか?
三上:1983年にデビューして、その頃はまだレコードでしたけど、当時フェアライトCMIというシンセサイザーがある環境で作らせていただいて。その時も自分たちの音楽でギターの音と一緒にシンセサイザーを取り入れるという事はしていました。その後はデュオ形式の要素が強くなったりもしたんですけど、今回はある意味昔に立ち返ってそういうサウンドと融合させようというアイディアは最初からありましたね。

ー:もう一方で、ストリングスや木管楽器がふんだんに取り入れられています。この要素を1枚のアルバムの中でどのようなバランスに仕上げようとイメージしたのですか?
松村:制作開始の時に2人で色々な曲を持ち寄って、その中からアルバムに入れる楽曲を選んでいくのですけど、長年一緒にやってきたアレンジャーさんだと「こういう曲は彼ならこう弦を使うかな」という風にある程度想像できるんです。そういう曲はそういう曲でアコースティックな仕上がりを追い込むのですが、そうじゃない曲はこういうエレクトロニクスな要素を盛り込んでいって、特に最近僕はアナログシンセも好きなので、そういうバランスは自然に取れた気がします。

ー:お二人が楽曲の原型をそれぞれ持ち寄ったあと、楽曲を発展させていくプロセスはどのようなものなのですか?

三上:2人で作ったデモを一応シーケンサー等でラフアレンジみたいな形にして、それを各アレンジャーさんにメールで送ってやりとりしていくことが多いですね。その時点ではシンセで枠組みを作ってもらって、その後で生の楽器に差し替えていく場合が殆どです。今回もだいたいの曲がそうでしたね。

ー:今回のようにデジタルな要素を含む曲と、生楽器主体で作り上げていく曲、というものが混在する場合、アレンジのどの段階で方向性が決まるのですか?

三上:アレンジャーに依頼するタイミングでだいたい決まっているんですけど、届いたアレンジデモを聞いて切り替える事もありますね。完全にシンセを外してしまったりとか、あえて生楽器と両方混ぜたようなものにしたりとか、試行錯誤の末にようやく見えてくることもありました。パートによってはせっかく生で録ったけど結局外したりもしましたね。

ー:レコーディングはお二人がベーシックなものを固めてからそれに肉付けしていく流れですか?

三上:今回は曲によって違いました。シンセサイザーで作った枠組みにまず松村さんがベーシックなものを録音した上でそのほかの楽器を入れたり、逆に我々の録音が最後の方だったものもありました。いずれにしても、クリックを聴きながらなのでテンポはカッチリ固めた状態でレコーディングします。

ー:それはデジタルものを含む曲以外もですか?少し意外でした。

三上:うん、全部ですね。
松村:全編クリック有りでした。

ー:非常で心地よい揺れがあったので、曲によってはクリック無しなのかと思っていました。これはやはりタイム感の解釈であったりそういうニュアンスで表現している?

三上:そうですね。
松村:それに加えて、例えば3曲目の「dreamboat」はわざと途中でクリックのテンポを変えたりしています。ブレイクのような箇所からの復帰するところなんかは耳で合わせていますけどね。だからそういうところは揺らぎもあると思います。

ー:一発録りだったんじゃないかと思うようなニュアンスの妙を感じていました。

松村:そうですか(笑)
三上:もうこれに関しては相当に細かいテンポ設定を追い込んでいますね(笑)

ー:あの空気感の裏側を垣間見れたようで非常に嬉しいです(笑)ではレコーディングではお二人別々に?

三上:そうですね。我々が東京でレコーディングするときはいつもゴンチチハウスというスタジオを使っていて、その2階で寝泊まりもしているんですけど古くて小さなスタジオなんですよ。音が良くて気に入っているんですけど小さい。そういうこともあってだいたいいつも別々で録ります。

松村:ストリングスは大きなスタジオで録りましたけどね。

三上:アレンジャーの羽毛田さんが驚くくらい、このスタジオで録るギターの音は良いんです。我々自身の音に合っているのか、他のスタジオで録音するとなかなか自分の音にならないと感じるほどです。狭いスタジオだからケーブル類が短くて済むという点も作用していると思いますね。

ー:今作では中井雅子(Raynos)さんやドリアンさんという全く新しいアレンジャーさんも参加されていますが、どのような経緯で?

三上:YouTubeで偶然耳にしたりとか、中井さんはまさにそんな感じだったと思います。すごく弦の感じが良くて印象的だったんですよね。歌をPredawnさんという方が歌っていらして、中井さんがご自身のアルバムの中でその全体のアレンジをされていたんです。で、そのPredawnさんがまさかの同じ事務所で(笑)以前にサンプルCDも貰っていたのを思い出して、早速聴き直して中井さんにメールでオファーしました。ドリアンさんも直接メールを送って参加していただきましたね。

ー:ドリアンさんはとは何かきっかけがあったんですか?

松村:七尾旅人さんのTwitterを通じて知ったんですけど、七尾さんと何かで一緒になった時にステージでバンジョーを弾いていたんですよ。それで「バンジョー弾かれるんですか?」みたいな話をしていたのを七尾さんがTwitterで投稿して、そこのTwitter上でのやりとりでドリアンさんが出てきたんだったかな。

三上:そうそう。ドリアンさんはDJもやっていて、我々の古いアルバムをトラックに入れたりしていて「奇特な人もいるもんだな」って思ったのが最初です(笑)。で、実際に彼の仕事を色々聴いてみたらなかなか面白くて、じゃあいい機会だからやってもらおうかなという感じでした。

ー:実際に一緒に作業をされてみた感想はいかがでした?

松村:面白かったですね。中井雅子さんは若い女性なので、我々みたいな男だらけの現場に呼んだら萎縮されるかな?と思っていたんですけど、全くの逆で!すごく堂々としていて、僕なんかたくさん指示されました(笑)

三上:はははは(笑)

松村:ディレクションがすごいんですよ。とても秀でていて、学校の先生に怒られるみたいに「はいっ!」って返事してました。

ー:結構厳しかったですか?

三上:そうそう、優しいんですけど内容は厳しい(笑)

松村:とてもしっかりされていました。いい刺激になりました。

三上:「この人に着いて行こう!」っていう気持ちになりました(笑)。ほんと学校みたいやったね。

ー:ドリアンさんはいかがでした?

松村:ドリアンさんは本当に礼儀正しくて「この音いいですねえ」なんて褒めてくれて。「ありがとう!!」って感じ(笑)でも作ってくる音の感触とか、使い方とかものすごく新鮮で。我々の昔の音もよく知っていて、それでいながら自分でそれを発展させていて、すごく良かったです。

三上:やっぱり、アレンジャーもプロっぽくなりすぎるとフレーズの発展のさせ方が複雑になりすぎる時があるんですけど、ドリアンさんの場合はその辺がシンプルでジャストでとても気持ちよかったですね。

ー:一方で、もう長年一緒に作られている羽毛田丈史さんも参加されていますが、新しいアレンジャーさんとの曲の配分的なバランスはどのように考えられたんでしょうか?

三上:一言で言ってしまえば成り行きの部分もあるんですが、羽毛田さんに関しては非常に売れっ子なので単純に時間的な制約で曲数が決まった面もありましたね。一方でドリアンさんは最後に参加されたのでやってもらいたい曲をピンポイントで依頼する事ができたり。当初はもっと旧友というか慣れた方達だけで行こうかという話もあったんですが、こうして新しい人たちとの曲と混ぜる事で羽毛田さんの曲が際立つ部分もある。そういう相乗効果もとても面白いですね。

ー:仮に羽毛田さんが全曲やられていたら、おそらくアルバムの質感もかなり変わっていたかもしれないですね。

三上:間違いなくそうでしょうね。

ー:その意味でも今作の「今までとこれから」という部分が音からも感じられるように思います。
お話は変わりますが、今回使用されたギターは何か特徴はありましたか?


松村:僕は特に無いですね。いつも使っているギターを中心にという感じです。

三上:僕の場合はいつも使っていたギターが、少し音がくすんできたというかちょっと今回は気に入らなかったんですよね。なので、いつも寝室に置いている練習用のYAMAHAのガットギターがあるんですけど、なんとなくそれを弦を新しくして使ってみたら意外にいい感じの音がして。羽毛田さんとのセッションではかなりそれが活躍しましたよ。

ー:寝室に置いてあるということはかなりカジュアルに使っているギターですよね。

三上:そうなんですよ。練習とかなんとなく曲を作るときだったりとか。埃は被ってるし弦は変えてないしで相当いい加減な状態だったんですけど、改めて綺麗にして使ってみたら結構良かったです。

ー:今作の音作りについてエンジニアの中林さんにお聞きしたいのですが、今作のミキシングはいつもと違った点はありましたか?

中林:これといって無いですね。音をこういう風に作り込んでやろうとか、そういう事は一切無いです。ただ、昨今プラグインなんかも非常に優秀になってきていて、そういうものの選択には非常に気を使っています。

ー:音作りはプラグインがメインですか?

中林:そうですね。S/Nの良さがどうこうとかよりも利便性ですね。再現性の面で非常に有利ですから。デジタルの時代になってどうしても音が立ちすぎてしまう事があるので、エンジニアによっては意図的に音を丸めたり味付けのためにアウトボード機材にこだわる人もいますが、僕はあまりそういう事はしないです。

ー:GONTITIの作品に携わるときに特に注意している事は?

中林:音楽としてのノリを損なわないという点につきます。

ー:リヴァーブの掛かり方が非常に美しくて気持ちが良いですね。

中林:特に機材的にコレということはないのですが、いくつかのリヴァーブを組み合わせて作っています。こういう事ができるのはプラグインならではかもしれないですね。

三上:今回はトラックダウンをしたあとに細かな修正をお願いしていて、トラックダウンの5日後にマスタリングだったんですけど結局4日間にわたって細部の修正をお願いしました。聴いていると気持ちいいですけど、裏側ではこうして色々な工夫や苦労があって、その上に成り立っていますね(笑)

ー:今作では中林さんはレコーディングは担当せずにミキシングのみでの参加とのことですが、レコーディングの工程を把握しないままミックス作業に入るということでやり難さありませんでしたか?

中林:今回はそれがむしろ良い方向に作用したような気がしますね。すごくフラットな耳で音楽を捉えることができました。ラフミックスは度々もらっていたので、アルバムの様子自体はある程度把握できていましたしね。

ー:それでは最後に、e-onkyo musicのリスナーに一言メッセージをお願いします。

中林:なかなか世界を見渡しても類を見ないスタイルの音楽だと思います。ぜひ高音質で楽しんでほしいですね。

三上:また新たな出発点となるアルバムになったと思います。新しいGONTITIを聴いてみてください。

松村:クラシックファンの方も、ジャズのファンの方もそれからエレクトロニクスな音楽が好きな方にも聴いていただける作品だと思います。中林君が言うように世界でもなかなか無いようなアルバムになったので、ぜひハイレゾでたっぷり楽しんで頂けたら嬉しいです。

ー:お三方とも、本日はありがとうございました!




【GONTITI プロフィール】
GONTITI(ゴンチチ)は、ゴンザレス三上とチチ松村によるインストゥルメンタル・アコースティック・ギターデュオ。1978年結成、1983年デビュー。 彼らの創り出すシンプルで優しいメロディーは、聴く人、聴く場所、聴く時間を選びません。 様々なシチュエーションに自然にマッチするゴンチチサウンドは、TVやラジオ、CM、映画音楽等、日々の我々の身の周りで聴くことが出来ます。 まさに彼らの音楽は、「Very Special Ordinary Music」(直訳すると「とても特別な、日々の音楽」)であり、何時しか人々の心に自然に溶け込み、年齢・性別を問わない幅広い人々に愛好されるようになりました。 現在まで制作したアルバムは40枚を超え、10数枚のアルバムは全米、アジア他でも発売されています。
 また、1992年には竹中直人監督・主演の映画「無能の人」のサウンドプロデュースを手掛け、日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。 近年では、ミリオンセラーを記録したコンピレーション・アルバム「image」シリーズに収録され、同ツアーに参加するなど多くの話題を集め、2003年より、その収録曲であった「放課後の音楽室」が高校音楽教科書「音楽2」に掲載。 以降、2004年カンヌ国際映画祭で史上最年少・最優秀男優賞を受賞した作品「誰も知らない」(監督:是枝裕和)や、2008年公開の同監督(是枝裕和)映画「歩いても 歩いても」で音楽を担当し、同サウンドトラックもリリースされています。
 2008年8月6日には結成30周年記念アルバム「VSOD -very special ordinary days-」をリリース。2010年には20年ぶりのクリスマスアルバムをリリースする等、現在も変わらず精力的に音楽制作を行っています。
 一方、ゴンチチの活動は音楽だけではありません。ラジオ・パーソナリティーをつとめたり、CM出演など、その活動は多岐にわたっています。チチ松村はエッセイなどの執筆活動にも定評があり、これまで14冊の著書を上梓しています。ゴンザレス三上もCGやグラフィックデザインの分野で独自の活動を繰り広げており、ゴンチチのアルバムジャケットデザインも自ら手掛けるなど、それぞれの活動も幅広いものになってきています。
 このようにゴンチチは、音楽はもちろん、そのキャラクターや表現活動も含めて、非常に注目を集める存在となっているのです。

【エンジニア中林慶一 プロフィール】
中林慶一(なかばやし よしかず)br
1963年1月6日 東京都出身 O型
レコーディング・エンジニア

  1991年、オフィス・インテンツィオ所属。骨太な幹を持ち、その枝葉は緻密で繊細なサウンドを表現する。それは参加したアーティスト達の作品にもはっきりとうかがえる。「ボ・ガンボス」「大友康平」「Mizrock」といったビートの強いサウンドから、「GONTITI」「森山直太朗」「Kiroro」「松下奈緒」といったアコースティック主体のサウンドまでを多岐に渡って手掛ける。年齢やキャリアからも分かるように、アナログ機器時代から現在のデジタルに至るまでのサウンド・ノウハウを把握し、近年ではエレクトロニック・ミュージックまでもこなす頼もしい存在となった。

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