設立時よりハイクオリティなSACDをリリースしているクラシック専門レーベル、アールアンフィニ(ART INFINI)が、ファンの熱望に応えてこのたび配信解禁となりました。第1弾として、日本を代表するピアニスト・
横山幸雄の演奏による、ラフマニノフやドビュッシーほかピアノ名曲の数々を収めたアルバム全9タイトルをお届けいたします。なお最新作「ドビュッシー:前奏曲集」はCD発売に先駆けての配信開始となります!e-onkyo musicでの配信フォーマットはDSD11.2MHz/1bit, DSD 5.6MHz/1bit , DXD 352.8kHz/24bit, PCM 192kHz/24bit, PCM 96kHz/24bitの5種類。多彩なスペックを取り揃え、ハイレゾ・リスナーのニーズに幅広く応える形での配信スタートです。
■■アールアンフィニ・レーベル 第1弾~横山幸雄(ピアノ)による9タイトル■■
【新譜/先行配信】

『ドビュッシー: 前奏曲集(全24曲)』
横山幸雄
【新譜】

『ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番/パガニーニの主題による狂詩曲』
横山幸雄, 新日本フィルハーモニー交響楽団, 下野竜也

『ファンタジー』
横山幸雄
バッハ「半音階的幻想曲とフーガ」モーツァルト「幻想曲」ほか

『ファンタジー』
横山幸雄
ショパン「革命のエチュード」「英雄ポロネーズ」ほか

『雨だれのプレリュード~ショパン名曲集』
横山幸雄
シューベルト「4つの即興曲 Op. 90」「同 Op. 142」

『アンプロンプチュ』
横山幸雄
モーツァルト「きらきら星変奏曲」「ピアノ・ソナタ第8番」ほか

『プレイズ・モーツァルト2015』
横山幸雄
シューマン「クライスレリアーナ」「ピアノ・ソナタ第1番」

『プレイズ・シューマン2014』
横山幸雄
リスト「ピアノ・ソナタ ロ短調」「愛の夢」ほか

『プレイズ・リスト2013』
横山幸雄
チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」

『チャイコフスキー: ピアノ協奏曲第1番/ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第3番』
横山幸雄, 東京都交響楽団, 小泉和裕
■■横山幸雄からのメッセージ動画■■
■■横山幸雄プロフィール■■

(「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番/パガニーニの主題による狂詩曲」ブックレットより)
横山幸雄
日本を代表する若き巨匠。生誕200年のショパンイヤーには、全国各地でショパン演奏を積極的に展開し、その功績に対し、ポーランド政府よりショパン生誕200年の年にショパンの作品に対して特に顕著な芸術活動を行った世界で100名の芸術家に贈られる「ショパン・パスポート」が授与された。デビュー20周年を迎える2011年5月3日に東京オペラシティにおいてショパン・ピアノ・ソロ全212曲コンサートを行い、大きな話題となる。この18時間におよぶ全曲暗譜演奏を成し遂げた偉業は、大きな感動と反響を巻き起こすと同時に、2010年の自身の持つギネス世界記録を更新した。そのほか、リサイタル、室内楽、協奏曲、そして、コラボレーション企画等様々な演奏会が全国で展開されている。
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アールアンフィニ・レーベルのオーナーであり、横山幸雄氏の演奏の録音を長年にわたって手がけてきた音楽プロデューサー・武藤敏樹氏に、レコーディングの特性や横山氏とのエピソードについてお話いただきました。
アールアンフィニ・レーベルオーナー/音楽プロデューサー 武藤敏樹氏
(2018年10月15日 ナクソス・ジャパン会議室)
■■アールアンフィニ・レーベルオーナー武藤敏樹氏インタビュー■■
CDを愛するレーベルオーナーが配信に踏み切った理由
──アールアンフィニ・レーベルの設立の経緯を教えてください。
武藤敏樹(以下、武藤):私はソニーミュージック出身で、長年、クラシックの制作を行ってきました。横山幸雄さんの録音も、ソニーミュージック時代から数多く手がけていました。ソニーミュージックにはグループ会社がたくさんあるのですが、2007年にソニー・ミュージックダイレクトという別のグループ会社に異動になり、横山さんや他のアーティストの方々とこれまで築いてきた関係がどうなってしまうのかが心配でした。そんな矢先、横山さんご本人や後援会の方々から、武藤さんのもとでまたアルバムを作りたい、というご要望をいただき、それが新レーベルの設立のきっかけのひとつになりました。検討の末、ソニー・ミュージックダイレクトが企画制作、ミューズエンターテインメントが発売というパートナーシップの元、2009年にアールアンフィニ・レーベルを立ち上げました。それが軌道に乗り、現在に至っています。
昨年ソニーミュージックを独立して、その後もソニー・ミュージックダイレクトとのパートナーシップの元、レーベルオーナーとプロデューサーを務めています。最近はレコーディング・エンジニアを兼ねる現場も増えていますが、大変な反面、直接マイクの機種選定やマイクポジションをオペレーション出来るので、アーティストとのコミュニケーションもより緻密に迅速に行えるようになりました。
──アールアンフィニ・レーベルは設立時から「高品位なDSDレコーディング」をうたっていますが、なぜDSD録音にこだわりをお持ちなのですか?
私自身が、ソニーミュージック時代にDSDの技術開発チームと深くかかわる機会があり、そこでDSDの魅力に惹かれたからです。PCMにはPCMならではの魅力がありますが、DSDの音には、アナログに通じるなめらかさと上品さがあります。クラシック音楽、特に弦楽器や声楽にはとてもマッチしていると思います。
ハイレゾ・リスナーの皆様に、いろいろなフォーマットの音を聞いて頂ければと思います。好みや感じ方は人それぞれですから。今回のe-onkyo musicでの配信では、DSD11.2MHz/1bit, DSD 5.6MHz/1bit , DXD 352.8kHz/24bit, PCM 192kHz/24bit, PCM 96kHz/24bit の5種類のスペックを揃えました。SACD(DSD2.8MHz/1bit)を含めると、なんと6種類です。ぜひ、聴き比べていただけるとうれしいですね。
2018年新譜「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番/パガニーニの主題による狂詩曲」ライブ風景(同アルバム ブックレットより)
──これまで配信をあえてしなかった理由、そして配信に踏み切った理由をおきかせください。
私が、CDという手にリアルに取ることが出来、長く残る「モノ」に強い愛着を持っていたからです。そして、当初は配信にともなってCDの売上が低下してしまうことを懸念していました。しかし、世の中の趨勢を見ても、いつまでもCDだけというわけにはいかない。特に、国際的に活躍しているアーティストから配信の要望があったことは決断の決め手になりました。CDを世界にくまなく流通させるのは簡単ではありませんが、配信ではそれが可能ですから。もちろん、ハイレゾ配信開始によって、よりマスターに近い、SACD以上のスペックでお愉しみいただけるメリットも強く感じています。
武藤氏が構えるスタジオ兼オーディオルーム。MAGICO製スピーカー(写真)に加え、ベーゼンドルファー・ピアノも並ぶ。
横山幸雄さんは「地獄耳」なんです(笑)
──さて、このたびはレーベル配信解禁第1弾として、横山幸雄さんの作品9タイトルの配信がスタートしました。横山さんは、最近では2017年に「雨だれのプレリュード~ショパン名曲集」「ファンタジー」の2タイトル、そして2018年も「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番/パガニーニの主題による狂詩曲」「ドビュッシー: 前奏曲集」の2タイトルをリリース。年に2枚リリースという驚異的な録音ペースですね!
レコーディングに積極的なアーティストさんでも、年に1度、あるいは2年に一度が普通ですよね。ここまでペースが速い方はそうそういらっしゃいません。
横山さんは、何事にも貪欲な方です。ヒマという状態を好まず、常にアクティブに仕事をしていたいタイプですね。コンサート活動、音楽大学での指導、プライベート・レッスン、テレビやラジオへの出演、それに実業家としてレストランのオーナーまでされて……。まさにスーパーマンです。レコーディングも、そうしたエネルギッシュな活動の一部なのでしょう。
アルバム制作のプロジェクトは、たいがい横山さんからのお声がけによってはじまります。内容は双方で話し合って決定しますが、彼の頭の中であらかじめ設計図が出来上がっていることが多いです。
──横山さんは、レコーディングされた音源に対して意見されたりするんですか?
編集は相当チェックが入りますね。横山さんは「地獄耳」なんです(笑)。極めて些細な音の濁りやカスレなど、誰がこんな指摘わかるのよ?というような指摘が満載です(苦笑)演奏したご本人が大変にこだわっているということもありますが、それだけレコーディングの完成度を求めていらっしゃるということでしょう。
また、ピアノの状態にもかなり気を配られる方です。ソニーミュージック時代には、レコーディング日程4日間のうち2日間を調律に費やすこともありました。もちろん調律だけでなく整調、整音含めてですが。アールアンフィニ・レーベルが立ち上がってからは、マネージャー、後援会の皆様と共にチーム横山としてあうんの呼吸でスムーズにレコーディングを行っています。もっとも、会場が変わるとセッティングも変えねばならず、初めて使用した五反田文化センターでレコーディングした「ファンタジー」(2017年)では、久々に緊張を味わいました。横山さんのお好みで従来ご用意していたマイクでは横山さんのOKが出ず、別のマイクを急遽用意したりとか。やはりマイクについては、アーティストの希望に対応するべく、常に様々なタイプのマイクを準備しておくべきと改めて思った次第です。
横山さんとのレコーディングのエピソードを語る武藤氏
──逆に、武藤さんの方からアーティストさんにご意見されることはありますか?
アーティストによりますが、横山さんの場合には、私からはいっさい何も申しません。テイクナンバーをトークバックでアナウンスしたり、「この部分をもう一度」「次の曲にいきましょう」といった指示を出すことはせず、彼の意のままにずっと弾きっぱなしという独特なレコーディング・スタイルです。もちろんテイク数はこちらで記録していますが、あえてトークバックはしません。テイク番号を意識すると集中力が邪魔されますし、演奏がうまくいっているかどうかは、ご本人が一番良くご存知ですから。私はアーティストにはcomfortable(快適)な状態で演奏に臨んでほしいですし、そのための配慮を怠らないように心がけています。その後の編集作業は地獄ですが(笑)
──今回の9タイトルのうち、オーケストラとの共演はライブ録音、ソロ演奏はセッション録音ですが、レコーディングに際しての両者の違いはなんですか?
ライブ・レコーディングで大事なのは、勢いやほとばしるパッションでしょう。2018年新譜の「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番/パガニーニの主題による狂詩曲」の場合は、時間との闘いの中、ゲネプロと本番の2回のテイクを録っていますが、基本的には多少のミスやかすれがあっても本番のテイクを使うことが多いです。
それに対して、セッション・レコーディングは、ひとつの制作物としての完成度の高さを目指します。同じく2018年新譜の「ドビュッシー: 前奏曲集」は、繊細なピアニッシモが多い曲ですが、これを美しく録るためには、S/Nをあげていく(=グランドノイズを抑える)必要がありますので、収録会場とマイクを慎重に吟味しました。
この2つの新譜は、レコーディングのコンセプトが対象的なので、それぞれの違いを味わっていただくのも面白いかと思います。
2018年リリースの2タイトル(右のドビュッシーは配信先行リリース)
「ドビュッシー: 前奏曲集」の録音環境(五反田文化センター)
──今後のご予定をお聞かせください。
配信第2弾として、年明けにチェロの新倉瞳さん、ギターの河野智美さん、テノールの村上敏明さんほか約40タイトルを一挙配信開始予定です。横山さんに限らず、さまざまな素晴らしい日本人アーティストの新譜を予定していますので、こちらもお待ちいただければと思います。
中長期的なビジョンとしては、やはり若手のアーティストを育てていきたいですね。特にピアノやヴァイオリンに関しては、すばらしい演奏をする10代の若手がたくさん出てきていいます。たとえばピアノの八木大輔君は若干14歳の普通の中学生ですが、ノった時の演奏は神がかるものがあります。まだまだ若いので未熟な部分もありますが、期待の新人です。藝大の私の同門のピアニスト、黒田亜樹さんの元で研鑽を積んでいますが、先日私のプロデュースで、プライベート盤CDをリリースしたばかりです。
──このたびアールアンフィニ・レーベルをはじめて聴くハイレゾ・リスナーに向けて、ひとことお願いいたします。
アールアンフィニは、発足当時からDSD録音とSACDハイブリッド盤でのリリースをレーベルのポリシーとして例外なく行ってきました。ハイレゾ・リスナーの皆様にも、この質の高い音源をお愉しみいただきたいですね。そしてパッケージのジャケットやブックレットも、写真撮影から紙質に至るまでこだわりをもって制作されていますので、もし機会がありましたら配信音源だけでなく、SACDハイブリッド盤のパッケージもお手にとっていただければと思います。
──ありがとうございました。