Calmスペシャル・インタヴュー。field.echo名義による新作を語る。

2014/10/10
デビューから18年。これまでCalm、K.F.、OrganLanguage、Japanese Synchro System等様々な名義を使い分け、日本のクラブシーンにおいて数々の重要作品をリリースしてきたCalmが、4年半の製作期間を経てfield.echo名義による新たな作品を完成させた。
今作はCalmの活動初期から行動を共にし、最も信頼を寄せるサックス奏者、Yuichiro Katoとのプロジェクト「field.echo」による作品。お互いの、その場のフィーリングを大切にするジャズ的ジャム要素を主軸とした演奏と「ウォーキング・グルーヴ」形容される、チルアウトでもダンスの高揚感ともまた違った、日常に溶け込むテンポ感とグルーヴでクラブ・ミュージック/エレクトロニカの新たな流れとして注目していただきたい作品。

また、自身のレギュラー・パーティー「Bound for Everywhere」においても、最高のアナログ再生をめざし徹底した機材のセレクトを行うなどクラブシーンで、もっともサウンド・クオリティにこだわりを持つアーティストの一人としても知られるCalm。今作でも、自身でマスタリングを担当し、192kHzというスペックを存分に生かした音作りがされている。

そこで、ここではfield.echo名義による新作『field.echo』に加え、Calm、Calm presents K.F.名義による過去作のハイレゾ配信をスタートしたCalmにお話を伺ってみた。


『field.echo』
/field.echo




―今回新たにリリースされる、サックス奏者、加藤雄一郎氏とのユニット「field.echo」についてお教え下さい。

Calm:二人でトラックを作り、主にサックスは加藤、ギターはCalm、その他楽器は二人でという形を取っています。基本的にライブ主体のユニットとして始動したので、今後のリリースは未定です。ライブも現時点それぞれのソロ活動のため休止している状態です。なので音源が聴ける貴重な配信です。


―アルバム『field.echo』の主題は〈ウォーキング・グルーヴ〉という事ですが、どのようにしてこのコンセプトにたどり着きましたか?

Calm:まずはライブが主体というスタートでしたが、例えばフェス等に出演する際にもどの時間帯にでも当てはまるスピード感ということで、歩くくらいのスピードが一番かなと思い、グルーヴ感を統一しました。自分個人としてはDJとして、またトラックメーカーとしてダンスミュージックの奥深くまで模索した後だったので、なんとも言えないこのウォーキンググルーヴというスピード感・グルーヴ感が新しく心地よく感じていた時期。4年半前くらいに作ったのですが、逆に今だからこそこのせかせかしないグルーヴが必要な時代になってきていると思います。


―アルバム『field.echo』ではオーバーダブは一切されていないとの事ですが、レコーディングは具体的にはどのように進められましたか?

Calm:スタジオに入って仮想ライブのようなスタイルで録音しました。各パートや楽器をパラで録音したのですが、編集すればするほどライブ感が失われてきます。かといってライブ出演の同録となると、演奏時間的な制約や録音の状態などに問題あります。その二つを両立させるためにはスタジオで一発録音・ノー編集・ノーオーバーダブというところにいきつきました。基本的にはライブの息吹を持ったスタジオ録音と考えていただければと。


―レコーディングはどういった機材を使用して行われるのですか?

Calm:基本的にはこのユニットの場合においては二人ともAbleton Liveでトラックを製作・演奏しています。(普段はApple Logicをメイン製作に使ってます)やはりライブを想定するとAbleton Live の操作性やフリキシブルな動き、スピードの確保などが一番フィットしています。その他ギターやサックスの録音には真空管マイクプリやスタジオの高品質なマイクを使用しています。その辺りは通常のライブよりハイファイに音が出るように工夫・差別化しています。


―今作は、マスタリングを自身で手掛けられたとの事ですが、作品を作る上でサウンドの方向性はどのように考えていましたか?またCD版とハイレゾ版とのマスタリングで違いを出した点は?

Calm:CD版、ハイレゾ版、それぞれ特に違った方向性はありません。とにかく原音に忠実に。自分のマスタリングスタイルとして、作者・アーティスト・エンジニアが意図した音に変化をつけすぎない、空間は広く取ったまま、その結果として音圧を突っ込み過ぎないで作品の世界観を広げていくというのがあります。なのでハイレゾ版は一番劣化していない、マスタリングマスターに近い音。CDはmp3とは言いませんが、さすがにマスタリング時よりは劣化しています。これはしょうがないことですね。ただしどちらも同じ処理をしています。ハイレゾからダウンコンバートするのではなく、ハイレゾ版はハイレゾ版で録音、CD用の16bit 44.1kはそれで別に録音しました。あくまでも結果としてハイレゾの音、CDの音になってしまうということです。



―Calmさんは、以前より自身の作品をハイレゾ音源でリリースしたり、また自身のパーティー「Bound for Everywhere」の機材リストを見てみてもそうなのですが「音のクオリティ」に対しては並々ならぬこだわりを持っています。音質にこだわるようになった原体験などございますか?

Calm:一番最初に音の変化に気づいたのは、PCの電源ケーブルを変えてみたこと(aet社)。たかが電源ケーブルと思いましたが、音がクリアにスピード感も増し、結果として太く強い音へとPC音源が変化したのが始まりです。そこから自分のオーディオの電源やケーブルを変えて、やはり同じような体験をし、最終的に機材自体のクオリティにもはまりだしました。


―作品作りをするうえで〈音質〉に対してはどのような考え、信念をお持ちですか?

Calm:クリアだから良いという訳ではないです。その音楽に合った音質というのがあります。ただし良い音を悪くすることはできますが、悪い音を良くするのは至難の業だと分かってますので、出来る限り高音質で作業するように心がけてます。作業工程で、やっぱりローファイにしたいなと思えば簡単にローファイにできますので。逆は無理ですが。音楽に合った伝わる音にすることが、良い音質ということになるかもしれません。


―最初にハイレゾでリリースしようと思ったのはどういった経緯で?

Calm:2010年発売の『Calm』というアルバムのときが最初のリリースです。このときは自分のウェブサイトオンリーのリリースでした。DSDやハイレゾという言葉をよく耳にするようになった時期で、確かにその時期のマスターは24bitなのになぜCDで16bitまで落とされ、マスターよりも密度が薄い音のCDという形でリリースしなければならないのか疑問に思い始めていた時期でした。ハードウェアやソフトウェア、そして通信のインフラの整備が進むにつれ、デジタルフォーマットの基準であったCDという音質が古いものへと変化し始めた時期と丁度重なったのだと思います。


―自身の作品をハイレゾでリリースする事のメリットは?

Calm:より自分のマスターに近い音、伝えたかった音ということ以外に言うことはありません。細かいニュアンスが曲の感動の善し悪しを心に訴えかけることもあるはずです。現時点、高音質の昔のアナログに次ぐ心へ届くフォーマットはハイレゾだと思います。


―今後ハイレゾに期待することは?

Calm:ハイレゾにというよりは、ソフトの充実、通信速度等のインフラの整備、そして何より再生装置・ハードウェアの普及の3本の矢が足並み揃えて進まなければいけないと思います。ビジネス的に言えばの話ですが、アナログ盤からCDへと変化した時期と同じように誰でもが手に入れ聴くことが出来る世界に発展していかなければ、これから良い音楽というものが出現しにくくなり、最終的に心のオアシスが減っていくと思います。良い楽曲のリリースは増えるかもしれませんが、今言っているのは音のテクスチャーまで聴かせる良い音の話です。


―最後に、リスナーの皆様にひとことお願いします。

Calm:ハイレゾに関してはまだまだ進化の途中ですが、現時点CDしか聴いていないような人にとっては衝撃に近い音の密度があると思います。結果としてそんなに音量を上げなくても心まで染み入ってきます。それは音楽のジャンルは関係ありません。良い音楽は良い音楽として。CDやmp3の音に支配されている今の世の中から、もっと豊かな音楽ライフへと一緒に突き進んでいきましょう!


―貴重なお話大変ありがとうございました。


◆Calm's Favorite Album Top 5

今回は高音質という部分のくくりにしました。-- Calm

◇Pink Ployd / Dark Side of the Moon
◇The Beatles / Abbey Road
◇Mokave / Afrique
◇James Blake / James Blake
◇Toumani & Sidiki / Toumani & Sidiki




◆Calm関連作品

『Dreamtime from Dusk Till Dawn』
/Calm presents K.F.



『From Dusk Till Dawn』
/Calm presents K.F.



『Calm』/Calm



『Flycatcher』
/Yuichiro Kato






Calm プロフィール

デビューから15年以上もの間、Calm、K.F.、OrganLanguage、Japanese Synchro System等様々な名義を使い分け、数々の楽曲やアルバム、リミックス、ライブなどを手がけているクリエーター。
活動の幅は日本だけに留まらず、欧米を始め世界各地でもコアな人気を誇る。
また制作活動と平行して行っているDJ活動も、原音忠実再生を基本として、ときにはオリジナルのミキサー、ハイエンドの機材、カートリッジを持ち込み、もはやDJという枠に収まりきらないパーティーの選曲を繰り広げている。
最も得意とするのは、離陸から着陸までをたった独りでプレイし、これぞまさにCalmと言わんばかりの様々な音楽をミックスするスタイルだろう。
ダンスミュージックにフォーカスしたBound for Everywhere@Zero青山、自由気ままにラウンジミュージックをプレイする Oasis@Bar Music渋谷という両極端なパーティーを主宰している。
現在は活動の幅を広ろげ、バンド等のプロデュース、エンジニア、ミックス、マスタリング、CM音楽、クラブやカフェの音響/音楽のコーディネイト、執筆活動,,,etc、「Back to Basic」 「No Limit」を信条に、様々なことにチャレンジしている。
Cosmic Blessing.

オフィシャル・サイト

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