【スペシャル・インタヴュー】南佳孝 7年ぶりのオリジナル フルアルバム!

2018/09/26
“モンローウォーク”、“スローなブギにしてくれ~I Want You”などのヒット曲で知られる、日本のポップス界を牽引するシンガー、南佳孝。今年デビュー45周年を迎える南の約7年ぶりとなるオリジナルフルアルバム『Dear My Generation』が遂にリリースされました。ここでは、南佳孝ご本人と、今作のレコーディングを手掛けた世界的エンジニア、Goh Hotodaへのメールインタヴューをご紹介します。


『Dear My Generation』/南佳孝


「ずっと恋して、音楽したい」
南佳孝、45 年目のラブソング
いつもよりロックしていて やんちゃです
いつもより大人していて 人生感じます
いつもより豪華にハモってます



上質なシティポップスを待ち続けていた大人たちへ

1973 年9 月21 日、南佳孝のデビューアルバム「摩天楼のヒロイン」が松本隆のプロデュースにより 発売された。その記念すべき日に文京公会堂で行われた, はっぴいえんどの解散コンサート。最初に ステージに登場したのは、ストリングスを従えピアノの前で歌う南佳孝その人だった。70 年代80 年 代に青春を送った世代には「モンローウォーク」「スローなブギにしてくれ~I Want You」などのヒッ ト曲で独特の歌声が深く胸に刻まれていることだろう。日本のミュージックシーンおいてOne & Only のシンガーソングライター。

南佳孝デビュー45 周年に当たる2018 年9 月26 日発売の「Dear My Generation 」は、7 年ぶりとな る待望のオリジナルフルアルバムである。近年書きためていた楽曲の中から収録曲を厳選。いくつか の恋を経た男と女の微妙なニュアンスを描く大人のラブソングから、やんちゃなロックチューンまで、 成熟したBoys & Girls に送る全12 曲。

今回のアルバム制作では初めてプロデュースチームを編成。1 年以上の制作期間を経て音楽業界以外 のスタッフの意見に耳を傾けながら、ジャンルに捉われない幅広い音作りを目指した。

作詞は本人の5 曲に加え、「モンローウォーク」「プールサイド」など数多くの南佳孝作品を手がけた 来生えつこが20 数年ぶりに4 曲の大人のドラマを書き下ろした。その中の1 曲「ニュアンス」は NHK ラジオ「ラジオ深夜便」2018 年1 月から3 月の深夜便のうたとして放送され話題となる。さらに「ス ローなブギにしてくれ~I Want You」をカバーしている斉藤和義が2 曲に作詞を提供、合わせて 「Mystery Train」ではコーラスとギターを、「はないちもんめ」では南佳孝と斉藤和義のデュエットが 実現した。この曲ではギターにChar も参加してストレートなRock を聴かせる。

アレンジには南佳孝作品には欠かせないベテラン井上鑑、デビューアルバムにも参加している日本を 代表するロック・ベーシスト小原礼と世界的ドラマー屋敷豪太のデュオ・ユニットThe Renaissance、 ジャンルを超え多岐にわたる音楽活動で注目される森俊之、数々の映画音楽やテレビドラマの作曲で 知られ、最近の南佳孝作品でもアレンジヤーを務める住友紀人、以上4 ユニットで構成。参加ミュー ジシャンにはファースト・コールの常連が名を連ね、ドラムスに鶴谷智生、屋敷豪太、ベースに小原礼、 岡沢章、バカボン鈴木、松原秀樹、ギターに天野清継、梶原順、スペシャルゲストとして斉藤和義、 Char、尾崎亜美。デュエットのパートナーとして太田裕美が参加。他にも名うてのミュージシャンの 名前が並ぶ。

優しく歌われるスローな曲からロックチューンに至るまで、レンジの広いアルバム収録曲のトラック ダウン、マスタリングは、グラミー賞を2 度受賞したGOH HOTODA が担当。トータリティのある1 枚のアルバムに仕上っている。

◆南佳孝 メールインタヴュー

「みんなそれぞれの音楽人生を全うしているな」

――今回のアルバム『Dear My Generation』の制作では、プロデュースチームを初めて編成されたとのことですが、それにはどのような心境の変化があったのでしょうか。

全く新しい風を入れようと思いました
元電通の社員だった二人を立てました
前から知っている友達ということもあり、ざっくばらんにいろんなアイデアを出せたのが良かったのかなと

――本作にはまた、井上鑑さん、The Renaissance(小原礼さん、屋敷豪太さん)、住友紀人さん、森俊之さんといった方々がアレンジ参加されています。シンガー・ソングライターである南さんにとって、アレンジャーとはどんな存在なのでしょうか。

とても大事な役割です
仮に良い作品が出来たとしましょう
それを活かすも殺すもアレンジ次第だとも思っています

――収録曲は、近年書きためていた楽曲の中から厳選されたとのことですが、どのようなテーマで選ばれたのでしょうか。

漠然とした答えですが、クォリティーの高さだと思います
楽曲はそれが全てです

――今回も多くの素晴らしいミュージシャンの方々が参加されています。彼らとのリハーサルやレコーディングの場面で、何か印象に残っているエピソードがございましたらご紹介ください。

みんなそれぞれの音楽人生を全うしているなと思いました
昔から知っている連中は特にそうでした
Charなんか本当ロックしてるなと、ギターもドライブしてた
レコーディングは15分で、話しが30分ぐらいだったけど面白かった



――斉藤和義さんをフィーチャーした曲が2曲収録されています。斉藤和義さんのような、南さんから見て若い世代のアーティストとのセッションには、どのような面白さがありますか。

みんなそれぞれの音楽人生を全うしているなと思いました
ぼくらの時代と違って皆上手いなぁと思います
斉藤くんは、柔らかな感性でオールマイティなミュージシャンだなと思う
歌詞の才能も本当あるね

――今回はすべての楽曲を96KHz/32bit floatで収録するなど、サウンドへのこだわりも見られるようです。そうした音質の追求は、音楽の伝わり方にどのような作用があるとお考えですか。

最近は、圧縮された音源を当たり前の様に普段聴いているのですが、確かに昔々のなんちゃってステレオよりはクリアで粒だちもいいです
でも、ふくよかな奥行きのある、余裕のあるサウンドはまた違うものです
それに慣れると今度はいままでのものが陳腐に聴こえるはずです

――昨今、“日本のシティポップ”が世界的なブームを呼び、国内での再評価の気運も高まっています。ご当人でもある南さんは、こうした動きをどうご覧になっていますか。

ぼくがデビューした頃はフォークソング全盛で全くのマイナーな存在でした
それが今光りを浴びているのはとても嬉しく思います
でも、過去の事です

――今年はデビュー45周年に当たりますが、創作へのモチベーションを維持し続ける秘訣は何でしょう。

下手な鉄砲数打ちゃ当たる、と思ってずっとやってきました
これからも多分そうだと思います

――最後にe-onkyo musicのリスナー向けて、メッセージをお願いします。

制作に1年と4ヶ月、ストックしてきた曲は7年前から
ささっと聴いてもらっても結構ですが、できたらもう一度ささっと聴いてください
きっと何かあるはずです

――ありがとうございました。



◆エンジニア Goh Hotoda メールインタヴュー



「ミックスのテーマは“南さんが演じる男の歌”です」

――南佳孝さんの新作『Dear My Generation』のミックスは、どのような方向性で行われ、音作りをされたのでしょうか。

今回のご依頼では、収録曲がバラエティーに富んでいること、編曲家の方が数名参加されていることなどから、ミックス/マスタリングエンジニアとして統一感を求められました。まして南さんのようにキャリアがある方は、これまで培ってきたストーリーがあります。
“南さんが演じる男”があるんですね。
これをテーマにし、これを見失わないようにしながらミックスしていきました。

――今回のような96KHz/32bit floatでの録音は、24bitに比べて音楽的にはどのような違いがあると思われますか。

現在では32bitを再生する事のできるD/A コンバーターは存在しませんが、DAWの内部ではこの+16bitが有効に処理されます。
僕のミックスはAvid Pro-Toolsで行いますが、マスタリング処理は64bit MAGIX SEQUIAで行います。最後までファイルを32bitで通すことにより、最終段階で使う64bitのプラグインの効き方で大きな結果をもたらします。

――レコーディングではヴィンテージ・マイクに加え、最新のレンジの広いマイクも使用されたとのことですが、それらをミックスする上で苦労された点、あるいは面白かった点は何でしょうか。

最新のマイクは新鮮でみずみずしい音がするので現代のニーズには素晴らしくマッチします。しかし古いマイクは過去の時代の最先端であった栄光が、ともすればミックスのレンジを狭めて足枷になることも多大にあります。ですが、これはある意味、雑味を含んだ古着を南佳孝さんが現代においてオシャレに着こなしたいのだという解釈で処理しました。

――マスタリングについては、どのようなポイントで作業されたのでしょうか。

最終ミックスが終わった時点で簡単なレベル調整をして曲順に並べます。その仮のアルバムを、クルマの中や簡易Bluetoothスピーカー~iPhoneの内蔵スピーカーなど違う環境で何度も、1アーティストのアルバムとして聴きます。
僕はヘッドホンでミックス作業はしませんが、電車の中では当然Bluetoothヘッドホンで聴きます。このスタジオでの解像度100%以上の精巧なモニターで聴くのとは正反対な、もっぱら圧縮されたBluetooth環境です。聴く基準は自分がリスナー、ファンとしての音楽ファンの立場、あるいはアーティストとしての立場から見てこの作品を世に出すという耳であって、そこには僕はエンジニアとしての耳は全く持ち合わせていません。
ここで自分から、統一感や音像の決定がダメ出しを食らう曲があれば、エンジニアの耳に戻り再ミックスします。それらの微調整を施してから初めてマスタリングに臨みます。ここで僕は、うちのスタジオのスピーカーをノイズ検知~18kHz以上の周波数の動きが鮮明に分かるHi-Fiスピーカーに切り替えます。そしてレファレンスのデータを作って、またBluetooth環境でのチェックを繰り返します。
それら以外にも、マスタリングは結構事務的で地味な作業がたくさんあります。

――ミックスとマスタリングの両方を行うことのメリットがございましたらご紹介ください。

これは僕のキャリアからの根幹にある考えですが、ミックスとは常に能動的?現在進行形であって決して客観的に聴いてはならないということです。
客観的に聴かれて客観的に処理された音は死んだと同然だからです。
マスタリングとは正反対で客観的に冷静にフレームに収めて行く作業だと思っていました。しかし実際は、ミックス段階には存在していた緩急や興奮が押し並べて平らになってしまうことに不満を感じることも多くありました。しかし、昨今はプラグインやDAWの進化により、この作業を同時に行うことで、最終ミックスから印象を変えずに緩急や興奮をそのままフレームに閉じ込める作業ができるようになったのは事実です。

――南さんの音楽のような“シティポップ”らしい音作りや音像というものをどう捉えていますか。

都会(シティ)ならではの孤独な寂寥感~憧れ~裏切り~期待を待つドキドキ感、しかし現実と実際のすれ違い?経験した方にはもちろん、実際に経験したことがなくてもその感触が誰にでも分かり得る時代に反映されない都会(シティ)ならではの感覚や感情、表現かと。だからこその明暗(コントラスト)、冷たさ、暖かさ、絶望と高揚感、心情風景を音に色付け、分かりやすい形にして行くスタイルです。

――南さんのヴォーカルや演奏を聴いて、特に気付いたことなどはありますか。

“南さんが演じる男の歌”というのを今回はとても印象的に思いました。
アルバムを通して聴いていると、南さんが歌う南さんの世界が、自分を含むリスナーと重なって繋がってゆくライヴ感があっていいです。

――最後に、e-onkyo musicのリスナーに教えたいハイレゾ試聴のポイント、そしてメッセージをお願いします。

僕がハイレゾミックスに臨むポイントは、信じられないようなワイドレンジで超高音や重低音でもなく、スタジオ録音のそのままをリスナーに届けたいという意思でもなく、「何処までも自然である」ということです。
CDのようにダイナミックレンジを威圧的な音量や音圧に変えることなく、僕というミックス/マスタリングエンジニアのフィルターを通したアーティストが、丹精込めて作られた音楽が芸術作品として、リスナーの生活にや人生に溶け込むということです。
最新のBluetoothスピーカー/イヤホンでもヴィンテージのスピーカーでも、今の南さんの世界をe-onkyo musicのハイレゾでとことん堪能してください。

――ありがとうございました。



◆南佳孝 関連作品



南佳孝 プロフィール
東京都大田区出身 シンガーソングライター
1973年に松本隆プロデュースによるアルバム「摩天楼のヒロイン」でデビュー。
1979年に発売された「モンロー・ウォーク」を郷ひろみが「セクシー・ユー」のタイトルでカバーして大ヒット。1981年 片岡義男の小説が原作の映画「スローなブギにしてくれ」の主題曲を歌い、印象的な歌いだしでヒットとなり、1991年にホンダのイメージソングとなる。オリジナルを創作するかたわら、JAZZ、ボサノバ、ラテンなどジャンルを超え様々なミュージシャンとのセッションも充実させている。
2016年3月、パーソナリティーを務める FM COCOLO「NIGHT AND DAY」とのコラボレーション作品。洋楽邦楽問わずさまざまな楽曲をレコーディングした究極のカバーアルバム「ラジオな曲たちNIGHT AND DAY」を発売。 ライブ活動のほか、楽曲提供、CMソングなど、またナレーションもおこなう。
◆南佳孝 オフィシャルサイト


GOH HOTODA プロフィール
1960年生まれ。東京都出身。シカコ?て?キャリアをスタートし、1990年マト?ンナの『VOGUE』のエンシ?ニアリンク?を務め、今て?はホ?ヒ?ュラーとなったハウス・ミューシ?ックの基盤を作った。 その後シ?ャネット・シ?ャクソン、ホイットニー・ヒューストン、坂本龍一、宇多田ヒカル、松任谷由実なと?の一流アーティストの作品を手か?け、トータル5800万枚以上の作品を世に送り出す。2度のク?ラミー賞受賞作品なと?世界的にも高い評価を受けている。
仕事を通し?10年来の付き合いのあった『REBECCA』のNOKKOと2001年に結婚。『NOKKOandGO』を結成。現在はミックスとハイレヘ?ルなマスタリンク?スタシ?オを可能とした2世代目となるstudio GO and NOKKOを所有。
インターネットによるオンラインミックスサーヒ?スを行い世界中からのクライアントに貢献している。
◆GOH HOTODA オフィシャルサイト


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