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GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第19回 The Isley Brothers

2018/05/04
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎えe-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をランダムにご紹介するハイレゾ・コラムです。

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連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第19回
The Isley Brothers『Wild in Woodstock: The Isley Brothers Live at Bearsville Sound Studio (1980)』



『Wild in Woodstock: The Isley Brothers Live at Bearsville Sound Studio (1980)』
/The Isley Brothers



ライヴ盤の魅力とは、端正に構築されたスタジオ・ヴァージョンとは違い、ミュージシャン自身の感情、演奏の熱気、そして時には不安定な揺れまでもリアルに感じられることにあると思います。

レコーディング時には曲を書いたばかりで、まだこなれていなかった演奏が、ツアーを経て大きく成長した様が記録されている、なんてことも往々にしてありますし、ライヴでしか聴けない特別なアレンジを施されたナンバーにも惹かれますね。

そしてハイレゾで聴くライヴ、その臨場感がもたらす極上の体験は言うまでもありません。このコラムでも素敵なライヴ盤をどんどん紹介していきたいと思っております。

というわけで今回取り上げるのは、ジ・アイズレー・ブラザーズが1980年、ニューヨーク郊外のウッドストックにあるベアズヴィル・スタジオ(トッド・ラングレンが70年代に所属していたレーベルとしても有名なベアズヴィル。このスタジオからはザ・バンドなどが数多くの名盤を生み出しています)で収録した、スタジオ・ライヴ盤です。

実はこのアルバム、2015年に発売された「THE RCA VICTOR & T-NECK ALBUM MASTERS 1958~1983」という、アイズレーがこの期間に残したオリジナル・アルバムをすべて収めた23枚組のBOXセットの目玉として初登場した未発表ライヴ音源でした。

脂の乗りきった6人編成アイズレーによる1980年の録音。彼らのアルバムは全部持っている自分のようなファンにとっては、まさにこの1枚のために買ったBOXセットだったといっても過言ではありません。それがこうして単体で、しかもいつの間にかハイレゾでリリースされていたとは…若干ショックを受けたわたくしでございます。

しかしこのBOXセット、いままでのオリジナル・アルバムも実に素晴らしいリマスターが施されていたので、まったく買ったことを後悔しておりません。マスタリング・エンジニアはマーク・ワイルダー。オリジナル・マスターからアナログ時代のふくよかで芳醇な音が、あますことなくCDでも表現されていることに驚かされました。

数多くBOXセットがリリースされる昨今ですが、音質的には、このアイズレーの23枚組と、大滝詠一氏の「NIAGARA CD BOOK 1」が好みでございます。ハイファイうんぬんの基準ではなく、どちらもレコードで聴いていたときの感動がそのままCDに刻み込まれた、実に音楽的なマスタリング。これぞ名匠の仕事だと思います。

そして現在e-onkyoではこのアイズレーBOXセットから16タイトルがハイレゾ・リリースされているようです。無論こちらも輪をかけて最高。なぜか1981年の「Grand Slam」から1983年の「Between The Sheets」までの80’sメロウ期を代表する大好きな4枚が未ハイレゾ配信なので、ぜひコンプリートでの配信に期待しております。

さて、話をライヴ盤に戻しましょう。近年、ケンドリック・ラマーによるサンプリングであらためて脚光を浴びた名曲「That Lady」からはじまるオープニング。このさわりを聴くだけで、この盤の凄さが分かることでしょう。とにかく熱い!タイト!そしてテンポが速い!(笑)。スタジオ盤以上の興奮にアドレナリンが身体中を駆け巡ります。

このいきなり全力疾走するようなスピード感、アース・ウインド&ファイアが「Live in Rio」の中でターボをかけて演奏したような「September」と並び、元気がない時のカンフル剤として一生聴き続けたいライヴ・バージョンです。

そしてスタジオ・ライヴならではのコントロールされた録音クオリティも絶品です。メンバー全員が集中して演奏に挑み、互いに高めあう様子が目に浮かぶ、リアリティあふれる音。特にアーニー・アイズレーのギター・カッティング、絶倫なリズムセクションには眩暈がしそうなくらいの魅力的を感じます。

続いて演奏されるのはアーニー印の粘っこく絡みつくリード・ギターではじまる「Say You Will」。あれ!?こんないい曲だったっけ!?と思わずオリジナル盤を聴き返したくなるほど鮮烈なヴァージョンではありませんか。次の「Here I Go Again」共々、いわゆるAOR的な解釈もできるミディアム・グルーヴでありながら、沸々と煮えたぎるようなファンク魂が同居しているところが最高です。

さらにトッド・ラングレン「Hello It’s Me」のカヴァーから「Footstep in the Dark」を経て、名曲「For the Love of You」へ至る、トロトロのバラード地獄。スロー・ナンバーの仕上がりも驚異的で、腰くだけ?落涙必至のライヴ盤なのです。

そしてイントロのギター・カッティングだけで、思わずソファーから立ち上がり頭上でハンド・クラッピングしてしまうディスコ・チューン「It’s a Disco Night」。この曲、オリジナル盤で聴いた時は、ほとんど印象に残ってないんですよね。また「こんないい曲だったっけ!?」現象が起きるマジックが生まれています。

ここまでクオリティの高いライヴ盤はそうそうありません。なぜ当時、レーベルがこのアルバムの発売を却下したのか、まったく理解できません!とにかくアイズレーが、ファンクが、ソウルが好きな人には、ぜひとも聴いて頂きたい貴重なタイトルでございます。



【バックナンバー】
<第18回>Bill Withers『Watching You Watching Me』
<第17回>David Robert『All Dressed Up』
<第16回>「Elvis Costello (後編)」
<第15回>「Elvis Costello (前編)」
<第14回>「James Taylor (後編)」
<第13回>「James Taylor (前編)」
<第12回>「The Beach Boys & Brian Wilson (後編)」
<第11回>「The Beach Boys & Brian Wilson (前編)」
<第10回>「特別対談 with jan」
<第9回>「Deodato (後編)」
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」




片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト


『愛の関係』/GREAT3





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