2014年、20歳の誕生日を迎える若きチェリスト、エドガー・モロー。4歳でチェロを始め、幼い頃からその才能を認められ、マリオ・ブルネロ、アンナー・ビルスマ、ミクローシュ・ペレーニ、ダヴィド・ゲリンガスなど錚々たるチェリストのマスタークラスに参加、とりわけ2010年のヴェルビエ音楽祭のマスタークラスで世界的な注目を浴びることとなりました。その後、17歳で第14回チャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門で第2位を獲得し、世界的な名声を得ることとなり「若き俊英」としてコンサートやオーケストラの共演に招かれ、瑞々しい演奏を披露しています。2012年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも出演。その時はラフマニノフ作品を演奏し、聴衆たちを感激の渦に巻き込んだことも記憶に新しいところです。そんな彼のエラート・レーベルへのデビュー録音がこの「PLAY~チェロとピアノのための作品集」です。この小品集は、音楽性と超絶技巧のどちらもが表出された、現在の彼をそのまま映し出すものであり、モンティの「チャルダッシュ」を始めとした技巧的な作品はもちろんのこと、溢れるような歌心を必要とするフォーレの「エレジー」やサン=サーンス、シューベルト作品、諧謔性と現代的なセンスが求められるプーランクやロストロポーヴィチの作品・・・と現在の彼の全てをあますことなく味わえるヴァラエティに富んだアルバムとなっています。聴いてまず驚くのはその音色の美しさとストレートに響く歌心。この恐るべき才能の行方を見届けたい!と強く思わせる訴求力に満ちた1枚です。
エドガー・モロー(Vc)
ピエール=イヴ・オディク(P)
"2012年、ラ・フォル・ジュルネに出演し、ずば抜けた感性の豊かさを印象づけたエドガー・モローを記憶している音楽ファンは少なくないだろう。この音源は、翌年9月にパリで録音されたもので、彼のエラート・レーベルへのデビュー・アルバム。まだ19歳の瑞々しいチェロがすばらしい。彼の歌う旋律はよどみなく流れ、アーティキュレーションも自在。モンティの「チャルダッシュ」など、これほど正確な音程で軽々と弾けるなんてヴァイオリンでも難しいのに……と呆気にとられてしまう。ドヴォルザークの「森の静けさ」やフォーレの「エレジー」ではちょっと哀しげな表情を見せて、それがたまらなく魅力的だ。サン=サーンスの「あなたの声に私の心は開く」も十分美しいけれど、さすがに大人の陰りは……それは10年後20年後の愉しみにとっておきましょう。チャコフフキーの「感傷的なワルツ」やマスネの「悲歌」で聴かせるフレッシュな音色と爽やかなロマンティシズムは、ティーンのモローでなければ弾けない表現。時間を忘れて聴き入ってしまう。"(text by 長谷川教通)提供:
CDジャーナル
【Play: Works for Cello and Piano/Edgar Moreau, Pierre-Yves Hodique, Alexander Glazunov, Antonín Dvorák, Camille Saint-Saëns, Christoph Willibald Gluck, David Popper, Ernest Bloch, Francis Poulenc, Franz Schubert, Frederic Chopin, Gabriel Fauré, Jean Françaix, Jules Massenet, Mstislav Rostropovich, Niccolò Paganini, Pyotr Ilyich Tchaikovsky, Sir Edward Elgar, Vittorio Monti/ハイレゾ】