「幻想交響曲」といえば輪郭がシャープで先鋭なサウンドをイメージするかもしれないが、この録音は違う。意図的に演出された音ではなく、カーネギー・ホールの空間に鳴り渡る響きをそのまま収録している。だから、各セクションごとに何本ものマイクロフォンを立てて、ミキシング段階で細かく動かすといった操作は控えている。ヴァイオリンや木管のバランスもホールで聴いている感じでナチュラルだが、その一方で低域の押し出しの強さには凄まじいものがある。終楽章で登場する大太鼓など、空気を圧するような重低音がスピーカーから飛び出してくる。唸りを上げるコントラバスやティンパニの迫力も強烈だ。これほどの音をCDフォーマットに押し込めるのは少々苦しいが、そこは192kHz/24bitのポテンシャルの高さ。ストレスなくグーンと音が伸びてくるし、第4、5楽章の凄絶な全合奏や鐘の音も混濁感なく鳴ってくれる。何よりカーネギー・ホールの熱狂を感じられるのが素晴らしい。”(text by 長谷川教通)提供:
CDジャーナル 小澤征爾が長い病気療養から初の本格復帰となった2010年12月のカーネギー・ホール「JapanNYC」でのコンサートから、2日目後半に演奏された《幻想交響曲》を収録。前日のブラームスに続き、この日も小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラが一体となって躍動感溢れる演奏を披露。満員の聴衆を圧倒し、最後は盛大なスタンディング・オヴェイションが沸き起こりました。世界のオザワ復活を強く印象づけた、記念碑的ライヴの記録です。
録音:2010年12月15日
録音場所:スターン・オーディトリアム・ペレルマン・ステージ、カーネギー・ホール、ニューヨーク(ライヴ録音)