高校の先輩に

ネリエ

2021/10/11

(P) 2021 ネリエソング
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高校の先輩に
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ネリエ[MainArtist], ネリエ[Lyricist], ネリエ[Composer]

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「高校の先輩に」 ネリエの活動初期からのファンの女性から 「私の高校の先輩がロックバンドをしていた時の曲を聴いてください」と昔の音源を聴かせて頂き、それをきっかけに「高校の先輩に」のサビだけ作ってYOUTUBEにアップしていたら「フルコーラスで作ってください」と言われました。時を経て、フルコーラスを完成。 そして今回もフェニ(Phoennix)さんに作詞に沿ったショート小説を執筆依頼。フェニさんの複数のお友達にも男心や女心を知るならこの曲を参考にという暖かなお力添えがあったと後から知り、一つの作品に多くの方の想いが込められたようで嬉しく思います。有難うございます。より多くの人に何かが伝わりますように、大切に歌って行きます 「高校の先輩に 小説」作者フェニ(海外名 Phoennix) (平成は終わったんだなぁ) と思いながらスマホで今日の会議の予定を確認しながら、 歯磨きして顔を洗ってメイクする。 スマホのカレンダー。 時間は容赦なく流れている。 私はもう18歳でも22歳でもないし 会社では自分が「先輩」と呼ばれる身分になった。 起床からここまでの所要時間15分。 すっかりメイクにもここでの暮らしにも慣れたと実感する。 メイクの工程は手が覚えている。 雨の音が聞こえて少しセンチメンタルな気分になった。 新しく買っていたランコムのチークをそっと開けると 気分と手元がウキウキした。 雨の音は好きだ。 ほっぺたの中に大事にしまってある飴のように。 十代と二十代のある時期の思い出を取り出してまた口の中で甘く転がす。 □□□ あの時。 高校の帰り道。 突然のゲリラ豪雨の中、すっと差し出された傘。 二人で一緒に入った少し雨のない空間。 「いや、ここまでに濡れたらもはや意味ないか」 先輩も照れて笑っていたんだろうな。 あの時先輩は先輩だったけど、今思えばあの人だってまだ高校生の男子だったんだから。 そして、まだ高校生の女子だった私は嬉しすぎて恥ずかしすぎて 「ありがとうございます」さえ言えなくてそのまま無言で駅まで歩いた。 「俺、東京の大学に行って法学部で勉強したいんだ。今はサッカーしかとりえないけどさ」 駅で反対方向の電車に乗るときに、返事を求めない言葉で先輩は手を振った。 私はまるで現実感がなかった。 雨も、一緒に入った傘も、先輩が地元からいなくなることも。 「えー!相合傘じゃん!先輩きっと練習見てる可愛い子がいるって気づいてたんだよ!」と親友が言ってくれて、その言葉で私は先輩と同じ東京の大学を受験することを決めた。 国立を『絶対素晴らしいもの』と思っている親の説得は少々難儀した。 けれど、オープンキャンパスで東京郊外の大学を見た母は 「東京っていうすけもっとチャラチャラしてるのかて思うたども、緑も多うて学校も広うて、周りも閑静でいいでねえ」なんてコロッと態度が変わった。 先輩は去年、この大学の法学部に入っている。 母と学食に入ったところで 「あれ?」と声をかけられた。 ぎゅっと縮む心臓。 「あらー。お母さまお元気?そういえばこちらの大学ってお聞きしたわ」 のんきな母。 「すごいところで会うね。こんにちは。オープンキャンパスどうですか?」 前半は私へ。後半は母へ。先輩は話しかけた。 『案内係』の腕章をつけた、相合傘の先輩に会えるなんて。 私は手元のトレイの天丼とうどんのセットを後悔した。 なんでこんな時に私はフェットチーネを頼まないんだ。 メニューにはなかったと思うけど。 「メイク一式そろえるなら、学校帰りに立川寄ろうよ!デパコスもドラストもある!」 モノレールに乗りながら、東京生まれの新しくできた友人は楽し気。 私は緊張でそれどころではなかった。 東京で一人暮らしを始めて一番驚いたのは歯磨きの時の水のまずさ。 『米どころ』『酒どころ』と言われる地元のありがたさをしみじみ実感した。 東京の郊外とはいえ、デパートやファッションビルが立ち並ぶ立川は私には大都会で、駅のコンコースで友人から離れないようあるくのが精一杯だった。 結局、伊勢丹でカウンターのお姉さんにフルメイクしてもらい、そのまま一式購入した。 そして、先輩と同じ一般教養を調べ上げ、それを選択。 今朝は頑張って、昨日買ったフルメイクを自分でやってみた。 緊張しながら入った大教室。 すり鉢状の大きな部屋でも、私の眼は先輩をすぐに見つけた。 そして、そろりそろりと後ろの席に座る。 綺麗にお化粧できたかな。なんていってくれるかな。 胸が高まる。 声をかけようとしたら先輩が隣の綺麗な女性と話しはじめた。 「今日帰りどうする?」 「カフェ気分」 「いいねー」 私は声を失った。 誰。誰。誰。その人。一緒に帰るんですか。誰なんですか。 時間の流れがゆがむ。 綺麗な人かと思ったけど、化粧が私より濃くて、髪の毛の色を染めてるから綺麗に見えただけじゃん。ただのケバイ女。先輩。そんなケバイ人がいいんですか?誰なんですか?制服の先輩を知っているのは私なのに。 東京での一年を知っている人ですか? 香水の匂いまでさせて。なにこの人。誰なんですか? もう頭の中はジェットコースターの回転だった。 前からプリントが配られてきた。 先輩は振り返り「どうぞ」と私にプリントを渡した。 そしてすぐに前を向き、また隣の女性と話す。 (気づかれなかった) オープンキャンパスでは気づいてくれたのに。 今朝、頑張ってフルメイクしたのに。 私には目もくれず。 そんなケバイ女といるなんて。 私は席を移動した。 二人が目に入らないよう端っこに行ったけど。 全身で二人の気配を感じていた。 授業が終わり、私は二人の前まで移動した。 「先輩。ご無沙汰してます」 全部の勇気で自分から声をかけた。 「あれ?同じパンキョだったんだ。じゃあまた見かけるかもな」 ケバイ女は顎をしゃくるように(多分私への挨拶だ)した後、 さっさとノート類を鞄にしまい始めた。 先輩と私はそこからは卒業まで、たまに学内で会うと挨拶した。 ばったり会うと学食でお茶も飲んだ。 それだけ。 □□□ 私は誰とも恋愛せず、先輩は猛勉強して弁護士になり卒業し、そこから私は猛努力して一流と呼ばれる会社の内定をとった。 学食でお茶を飲んでいると、成績証明書を取りに来たという先輩と会った。 今度は天丼じゃなくてカフェオレ。 小さいことにほっとする。 「久しぶりだね」 「はい。〇〇社の内定を取りました。先輩は弁護士なんてすごいです。高校の時から頭よかったですもんね」 「地頭の分を努力でカバーしたんだよ。それより〇〇社なんてすごいじゃん。お祝いだなぁ」 「じゃあ、学校の近くの動物園に一緒に行ってお祝いしてくれませんか?」 先輩は笑った。 「動物園?お祝いって感じじゃないなぁ。映画とごはんでもご馳走するよ」 私たちは、そのままモノレールで立川へ行った。 私はもう歯磨きにも慣れて、お化粧にも慣れて、モノレールにも慣れていた。 でも、先輩と二人歩くのはあの雨の日以来で慣れていなくて緊張した。 シネマシティで恋愛映画を見た後、お洒落なバーへ連れて行ってくれた。 田舎で相合傘してた二人が、東京のお洒落なバーで名前の分からないカクテルを飲んでいる。 随分時間がたったような気がしたけど、私の大学時代は先輩との時間が全てだったし、相合傘から一瞬のような気もした。 きっと、私の記憶は先輩に関する限り冷凍保存されて、必要な時に解凍して味わうのだろう。それは今までもそうだし、今日のこの瞬間もそうなんだ。 □□□ それ以来。 先輩と会うこともなくなり、同じゼミの子から先輩がケバくない女性と結婚したと聞いた。 私は仕事で認められ、女性ながらも役職がついた。 そして今。 手慣れたメイクと新しいチークでお洒落な靴を履き。 雨の中を傘を一人でさして歩く。 胸をはり、一歩一歩。 □□□小説を読んだネリエの感想ですが、「ケバイ」と言う言葉が何回も登場するところがツボ。化粧品のCMソングに起用されたい。オファーお待ちしております
【高校の先輩に/ネリエ/ハイレゾ】

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