ベテランの域に達してなお弾けるような生命感をたたえ、推進性に富むフレーズのはしばしからエスプリに満ちた表情が迸り出るフルートは工藤の真骨頂。テクニカルなパッセージが無機的な音の連続体に終始したりせず、色彩感やニュアンスの変化を絶えずふりまくソロが、近代フランス音楽の命脈の何たるかを雄弁に伝える。そしてそれはパリ生まれの名匠パスカル・ロフェの指揮にもいえることだ。<木幡 一誠>
【イベール:フルート協奏曲 & ドビュッシー:交響詩「海」他/工藤重典, パスカル・ロフェ, 兵庫芸術文化センター管弦楽団/ハイレゾ】