音に定評のあるレコーディング・エンジニア、タッド・ガーフィンクル氏の主宰するMAレコーディングスからの新作は、世界的フォルテピアノ奏者、金子陽子によるモーツァルト ピアノ作品集。モーツァルトが25歳から晩年までの、正にピアノ作品が最も充実していた「黄金時代」の作品全6曲を収録。
"アントン・ワルターのフォルテピアノと言えば、モーツァルトやベートーヴェンが生きた時代のウィーンで愛された楽器。構造はシンプルだし、鍵盤数も66鍵と少ない。今回の録音で使用された楽器は1795年製ワルターのレプリカで2004年製だ。現代のピアノに比べれば音量も小さいし、強靱なアタックや華麗な音色も持ち合わせていない。でも「ロンド イ短調」が鳴ったとき“あっ、モーツァルトはこの音をイメージしていたのか!”と感じる。現代ピアノによる演奏も魅力的だが、この軽やかな粒立ちと芯のある音色、繊細で蝋燭の炎のように揺らぐ響き……その表現の奥深さ。フランスをはじめヨーロッパ各地や日本で高く評価される金子陽子の弾くフォルテピアノはすばらしい。録音の良さも特筆される。モーツァルトがザルツブルクからウィーンに出て没するまでの10年間に味わった希望と挫折、明るく快活な表情に隠された哀しみが、この響きから漂い出てくる。"(text by 長谷川教通)提供:
CDジャーナル
演奏:金子陽子 (フォルテピアノ)
使用楽器:Christopher Clarke (Donzy le National en Bourgogne, 2004)
録音:2011年7月/オータイユリフォーム教会、パリ
録音エンジニア:タッド・ガーフィンクル (Ma recordings)
【Wolfgang Amadeus Mozart Works From His Golden Age (1781-1791)/金子陽子/ハイレゾ】